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Moto Connect(モトコネクト) > 記事 > コラム > 知識 > 【元車両開発関係者が解説】キャストホイールとスポークホイールのメリット・デメリット
コラム知識

【元車両開発関係者が解説】キャストホイールとスポークホイールのメリット・デメリット

NTMworks
最終更新日 2024/05/29 16:50
NTMworks
Published: 2022年4月7日
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バイクのホイールは、大きく分けてキャストホイールとスポークホイールがあります。
オンロードはキャスト、クラシカルな車種やオフロードはスポークというイメージが強いと思いますが、それはなぜなのか?どうしてどちらかに統一されないのか?

それぞれの特徴などからその理由を、見ているだけならかっこいいからスポークが好き、でも自分で所有するなら絶対キャスト、理由は磨くのが大変だから、という実は結構面倒臭がりな私がお話していこうと思います。

目次
  • ホイールの進化の歴史
  • 現在のキャストホイールの特色
  • スポークホイールが必要とされる理由
  • キャストホイールとスポークホイール、それぞれに適したバイク
  • キャストホイールはメンテナンスフリー?
  • スポークホイールは面倒臭い?
  • まとめ

ホイールの進化の歴史

昔のバイクは現在と違い、オンロードの大排気量もみんなスポークホイールでした。昔と言っても70年代前半くらいまで、旧車と言われてもてはやされているホンダCB750fourやカワサキZ1などの頃ですね。その後、より剛性の高いキャストホイールが開発され、オンロードのホイールはスポークからキャストへと進化していきました。

その後、チューブレスタイヤに対応したこともあり、オンロードではキャストホイールが主流となります。その過程ではスポークホイールの長所とキャストホイールの長所を併せ持つといううたい文句の、ホンダのコムスターホイールなども開発されましたが、設計、製造技術の向上により、キャストホイールでも重量や剛性面のコントロールがかなりのレベルで可能となり、現在では姿を消しています。

ホンダのコムスターホイール  引用元:ホンダ公式サイト

現在のキャストホイールの特色

登場当初のキャストホイールは、大排気量のオンロード車種を中心に、高剛性を武器に普及していきました。高性能化が進み、重量も増加していく大排気量車に対し、スポークホイールでは重量とパワーに負けてたわんでしまい、操縦性に問題を抱えつつあったのです。

ただし、初期のキャストホイールは剛性と引き換えにとても重いものが多く、サーキットの高速コーナーの安定性など、限られた状況以外では運動性に関してはどっちもどっち、というのが本当のところでした。しかしその後、軽量化が進むにつれてオンロードでは性能的にキャストホイールが圧倒的に有利になっていきます。

初期のキャストホイールは精度に関しても褒められたものではなく、真円度や重量バランス等に問題があり、性能的にスポークホイールに対するアドバンテージとしては疑問を覚えるものが多くありましたが、現在では製造技術の進歩により、精度、重量など全ての面で性能的にスポークホイールを上回るものがほとんどとなっています。

引用元:スズキ公式サイト

スポークホイールが必要とされる理由

現在では軽量、高剛性、高精度と、性能的にはスポークホイールを圧倒しているキャストホイールですが、スポークホイールにはかなわない部分もあります。それは数値に表れにくい柔軟性、しなやかさという部分です。大きな衝撃、急激な入力を適度にたわんで逃がす、と言った部分は、キャストホイールよりもスポークホイールのほうが得意とするところです。この特性はなかなかキャストホイールでは再現するのが難しく、これがスポークホイールが必要とされ続けている大きな理由です。

引用元:ヤマハ公式サイト

昔は街の自転車屋さんでもパンク修理ができるという理由で、小排気量の実用車には好んでスポークホイールが採用されました。現在でも海外向けの小排気量車にスポークホイールが多いのはこのような理由もあります。

キャストホイールとスポークホイール、それぞれに適したバイク

キャストホイールは高い剛性やメンテナンスの手軽さから、多くのオンロードスポーツに採用されています。オンロードに関しては、性能的にスポークホイールに勝ち目はないでしょう。

スポークホイールの持つ長所が最大に発揮されるのがオフロードです。衝撃吸収性でキャストホイールに勝るスポークホイールは、ほとんどのオフロード向けの車種で採用され続けています。
また、微妙なたわみが生み出すライダーの操作に対するおおらかな反応は、クラシカルな車種やアメリカンにマッチします。なかなかスポークホイール独特の操舵フィーリングや乗り心地は、他の部分の味付けで再現するのは難しく、これもスポークホイールが根強く支持される要因となっています。

引用元:カワサキ公式サイト

キャストホイールはメンテナンスフリー?

なんとかひねり出してキャストホイールの取り扱い上の注意点をお話しようと思いましたが、ほぼ無いというのが実際のところです。タイヤ交換時の作業上の注意などはありますが、ほとんどのライダーには関係無いでしょう。信頼できるバイク屋さんにお任せしておけば大丈夫です。

現在流通しているキャストホイールはほぼ全てチューブレスタイヤ用ですので、タイヤ交換時にゴム製エアバルブの交換時期の相談などができるお店が安心です。このあたりの知識やノウハウをどれだけ持っているかで、ホイールやタイヤに関する技術レベルが判断できると思います。意外と気を使われることの少ない部品ですが、トラブルを起こすと走行不能になる重要な部品ですからね。

スポークホイールは面倒臭い?

スポークホイールは、ハブとリムをスポークで繋ぎ、ニップルという部品でスポークを締め付けることで組み立てられています。

スポークホイールの長所は上手くたわんで力を逃がす部分ですが、たわむのは主にスポークです。スポークがたわんだり、戻ったりを繰り返すうちにニップルに緩みが発生することがあります。
そしていくらスポークホイールが衝撃に強いといても限度があり、過度の衝撃によってリムが変形し、ハブとリムの距離が部分的に変わることによって緩みが発生する場合もあります。
そのため定期的にニップルの緩みを点検する必要があります。そんなに難しい作業ではなく、洗車の際などに、スポークを2本づつ、指でつまんでみるだけでじゅうぶんです。
ゆるみがあればその部分だけ手ごたえが違いますので、ゆっくりバイク屋さんに行って修理してもらいましょう。安易にニップルを締め込んだりすると、部分的に力が集中してスポークが折れたりしますので注意してください。

リムが歪んでしまっている場合など、キャストホイールではホイールごと交換になってしまうのに対し、組み換えによりリムのみを交換することができるのもスポークホイールの長所です。
とはいっても、最近はスポークホイールを組み立てられるバイク屋さんは減りつつあります。旧車専門店などでもホイールを組むのは外注、というお店も多くなっています。オフロード車を得意とするお店のほうがスポークホイールには強いかもしれませんね。

また、最近では純正で採用されることも増えてきたステンレススポークですが、ステンレスのメリットはサビないことです。逆に言うと、メリットはそれしかありません。ステンレス製のスポークは鉄製のスポークに比べて弾性が低いため、スポークホイールの長所である柔軟性で劣ります。柔軟性が低いため、鉄スポークが上手く力を逃がすような状況でも、ストレスを溜め込んで折れてしまうことがあります。これはバイクメーカーも開発時に、特に径の小さいスポークホイールで苦労しているところです。では剛性が高いのかというと、当然キャストホイールにはかないません。

引用元:ホンダ公式サイト

ステンレススポークが鉄スポークより優れているような、誤解をまねく情報が多くありますが、スポークとしての性能、柔軟性に関しては鉄スポークのほうが優れています。長所、短所が違うものであると理解してください。競技用のモトクロッサーなどは現在でも鉄スポークが主流なことでもおわかりいただけると思います。

まとめ

オフロードではまだまだ柔軟性に優れるスポークホイール一択の時代が続きそうですね。
オンロードでは正直なところ、使い勝手やメンテナンス性など、スポークホイールが優位な部分はほとんどありません。乗り味が好みな場合以外は、性能的にスポークホイールを選択する理由は無いでしょう。

しかし、キャストホイールには絶対に真似できない部分もあります。細いスポークが織り成す繊細なスタイルです。もちろん人によって好みは分かれますが、メーカーがわざわざスポークホイールの車種を用意するのは、このスタイルを重視している部分が大きかったりします。
つまり性能より見ため、かっこいいから採用されているスポークホイールは意外と多いということです。

かっこいいバイクに乗りたい、かっこよく乗りこなしたい、これ、とても大事です。
そんな思いを持ったライダーがたくさんいるかぎり、キャストホイールもスポークホイールも、それぞれが進化しながら今後もバイク選びの選択肢として存在し続けるのではないでしょうか。
性能が良いにこしたことはありませんが、やはり自分がかっこいいと思うバイクに乗りたいですもんね。

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長年オートバイ業界を裏側から支えてきた、元、車両開発関係者。
バイク便ライダーの経験や、多数のレース参戦経験もあり。

ライダー・設計者、両方の視点を駆使して、メカニズムの解説などを中心に記事を執筆していきます。
実は元、某社のMotoGP用ワークスマシンを組める世界で数人のうちの一人だったりもします。

あなたが乗っているオートバイの開発にも、私が携わっているかもしれませんよ。
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