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Moto Connect(モトコネクト) > 記事 > コラム > お役立ち > 【元車両開発関係者が解説】重いバイクはダメなのか?
コラムお役立ち知識

【元車両開発関係者が解説】重いバイクはダメなのか?

NTMworks
最終更新日 2023/10/19 17:05
NTMworks
Published: 2022年1月27日
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バイク選びの際、車重は比較的上位にくる選択条件だと思います。

目次
  • 重いバイクはなぜ重い?
  • 重いバイクのメリットは?
  • 重いバイクのデメリットは?
  • 重いバイクでなければ味わえない世界
  • 重いバイクはライダーを鍛える!
  • まとめ

エンジン停止時の取り回しや、停車時にグラッときた場合の支えやすさなど、軽ければ軽いほど身体的負担は少ないですよね。ではバイクの車重は軽ければ軽いほど良く、重いバイクはダメなバイクなのでしょうか。車重が重くなりがちな大排気量車を中心に、車両重量250kgの車両を普段の足としている私がお話しましょう。

重いバイクはなぜ重い?

まずはどんなバイクがどれくらいの車重なのか、現在販売されている車種の車両重量をいくつか確認してみましょう。

250cc
二気筒 カワサキNinja 250 166kg
四気筒 カワサキNinja ZX-25R SE 184kg

600~650cc
ホンダCBR600RR 194kg
ホンダCB650R 201kg

1000cc
ヤマハYZF-R1M 202kg
ヤマハMT-10SP 212kg

超重量級、ホンダGold Wing Tourは、389kgという驚くべき数値となっています。実際にはそんなことはありませんが、軽く造ろうという意思は全く無いのではないかと疑う数値です。250cc二台分以上ですから。重心の低さやバランスの良さから、平地で取り回す限り意外とそこまで重さを感じないですけどね。

車両重量389kg!ホンダGold Wing Tour  引用元:ホンダ公式サイト

これらの例から、単純に排気量が大きくなれば車重も増加することがわかります。

排気量が大きくなるとエンジン単体が大きく重くなり、その重さに耐える強度に各部を造っていくと、自然と車体全体が大きく重くなってしまうのが原因です。
また、排気量が増すと出力が増大し、その出力とバランスを取るための安定性が必要となります。大きな車体のほうが安定性を確保しやすく、大きい分だけ重くなるという結果となります。

また、サーキットでの性能を優先した車種は軽く、レースやサーキットをそれほど意識していない車種は重くなる傾向なのもおわかりいただけると思います。実はこれ、ある程度の車重を確保するため、あえて軽く造っていない場合もあります。

重いバイクのメリットは?

レースでの性能を求めるなら軽ければ軽いほど有利ですが、公道ではそうとも言えない場合も多くあります。

高速道路を使って長距離のツーリングに行く場合、強い横風に悩まされる事は意外に良くあると思います。強風の日の高速の橋の上なんて地獄ですよね。そんなときは、横風に流されやすい軽いバイクと比較して、その重量のおかげで流されにくい重いバイクは圧倒的に有利です。
高速道路などでの長距離の移動に関しては、車重の重い車種のほうが疲れず、安全に走ることができます。

また、車重の重い車種のほうが乗り心地も良くなります。段差を超える際など、軽い車種が跳ね上げられやすいのに対して、重い車重で跳ね上がるエネルギーを吸収することができるためです。大きな段差に限らず、路面の細かな荒れに対しても同じ効果を発揮します。

これらが公道で使用することを目的とした車種が、あえて極端に軽さを狙わない理由となっています。レースを前提とし、軽く造ることに身血を注がれた車種では全く考慮されていない部分ですね。

重いバイクのデメリットは?

反対に、エンジンを停止しての取り回しや、狭く低速な峠道などは、その車重が災いして不得意な分野となります。重いバイクと軽いバイクでは、得意、不得意が全く違うんですね。たまに長距離を走るなら重い車種、頻繁に短距離を走るなら軽い車種が向いています。自分の使い方に適した車種を選択するというのもバイク選びの方法のひとつですね。

重いバイクでなければ味わえない世界

重いバイクは走り始めるまでが大変です。真っ直ぐに車体を立ててスタンドをしまい、バックで駐車位置から移動して、場合によっては切り替えして、などの作業をこなしているうちに、気が付けば息が切れている、なんてこともしばしばです。しかし、大変な思いをして走り出したからこそ、すごいものに乗っている、という感覚を味わえます。
単純かもしれませんが、「なんかすごいものを自分が動かしている」というのは、バイクに乗る楽しさのひとつだと思います。段々麻痺して感じにくくなってしまう感覚ですが、重いバイクは乗るたびに嫌でもこの感覚を思い出させてくれます。

重いバイクのほとんどは排気量の大きな車種です。排気量の大きな車種は車体も大きく、高価な車種が多いので、わかりやすくすごいバイク、という印象がありますね。
シンプルに大きくて重くてすごい、そんな車種は所有する満足度も大きくなります。

そして、重さからくる安定感や乗り心地の良さは走行中に感じ取りやすく、常にすごいものに乗っている、という感覚を得やすい部分です。取り回しでの苦痛や様々な難関も、この快感と引き換えなら我慢できる車種も多いと思います。

引用元:ドゥカティ公式サイト

重いバイクはライダーを鍛える!

坂道を押したりするとそれはもういい筋トレに、という意味ではありません。
重いバイクはエンジンを止めてからも大変ですよね。下り気味の駐車場に頭から駐車してしまうと、バックギヤが欲しくなることも。重いバイクの扱いに慣れてくると、駐車する場所も停める前に良く考えるようになったり、軽い車種では考えもしなかったノウハウが身に付きます。そして、そのひとつひとつのバイクを扱う技術が自分の財産となっていきます。
バイクを扱うのが上手い、下手って、走っている間のことだけではないですからね。
スマートに駐車して、スッと出て行ったりすると、それだけで上手く見えます。軽いバイクではその軽さでごまかせてしまうためになかなか身に付かない技術も、重いバイクに乗り続けると嫌でも鍛えられていきます。

ライディングに関しても、重い車種は先を予測して走らなければならない要素が大きくなります。これは軽いバイクでも必要な能力ですが、重いバイクでより重要になるのは、重ければ重いほど慣性が付きやすく、遠心力も大きく働くため、機敏な動作を苦手としているからです。
技術の進歩によって、重い車重を感じさせない軽快な動きをする車種も増えましたが、慣性という物理法則は絶対に変わりませんから、軽いバイクよりも早めに減速し、旋回速度も落とさなければ安全を確保できないことに変わりはありません。
その速度調節の判断は、全てライダーの能力に委ねられます。速度調節を適切に行うためには先の状況を的確に読む能力が必要となり、重いバイクに乗ることによって、その能力はより鍛えられることになります。

先を予測して走る能力は、安全に大きく関わります。スピードを出さなければ安全、性能の良い車種に乗れば安全というほど単純な乗り物ではないのは、バイク乗りの皆さんには言うまでもないことですよね。軽いバイクでなんとなくできているつもりになっていることも、重いバイクに乗ると自分の技術のレベルが良くわかります。
重いバイクに乗ったらコーナーにオーバースピードで突っ込みすぎて冷や汗をかいた、なんていう場合、それまでは自分の技術ではなく、実は車重の軽さに助けられていただけだったということも、重いバイクに乗るとはっきりとわかります。

まとめ

自分の好きなバイク、乗りたいバイクに乗ることがバイクを楽しむ一番の秘訣であることは間違いありません。重いバイクが好きな人、軽いバイクが好きな人、色々な人がいるでしょう。
しかし、重いバイクでしか味わえない世界、乗り味や、特に技術の向上については、軽いバイクばかりに乗っていると経験できない部分が多くありますので、一度は車重の重い車種を乗りこなす挑戦をしてみることをお勧めします。

重いバイクを経験した上で、軽いバイクのほうが好み、というのであれば、また軽いバイクに戻ればいいんです。その時には重いバイクで身に付けた技術が間違いなく役に立ちますので、経験は決して無駄にはなりません。
注意しなければいけないのは、好みの問題なのか、技術不足で楽しめていないのか、違いをきちんと把握することです。重いバイクは思ったようにコントロールできないから嫌だ、では何も得るものはありません。重いバイクをきちんと扱えるようになって、その上で自分の好みを考えることが重要となります。

そして重いバイクに乗る際にはひとつ、重大な注意点があります。私も軽く機敏な車両が好み、大きくて重いバイクは年をとってからでいい、と考えていたのですが、いざ乗ってみると、特に取り回しに関しての体力的な負担が大きく、年齢を重ねて体力が衰えてからではとても無理なことに気が付きました。考えてみれば当たり前のことですけどね。
できれば体力が有り余っている若いうちに、重いバイクを乗りこなす挑戦をしていただきたいと思います。その経験は必ずその後のバイク人生に大きく役に立つはずです。

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投稿者プロフィール

NTMworks
長年オートバイ業界を裏側から支えてきた、元、車両開発関係者。
バイク便ライダーの経験や、多数のレース参戦経験もあり。

ライダー・設計者、両方の視点を駆使して、メカニズムの解説などを中心に記事を執筆していきます。
実は元、某社のMotoGP用ワークスマシンを組める世界で数人のうちの一人だったりもします。

あなたが乗っているオートバイの開発にも、私が携わっているかもしれませんよ。
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