サスセッティングその前に! サスの役割って?
サスセッティングっていうフレーズは、その行為をとても難解なものに感じさせる。そう思って、自分には関係ないと思っているライダーは本当に多いし、さらに近年はサスペンションの調整機構を持たないバイクも多いから、あまり一般的ではないのかもしれない。
ただ、サスペンションの調整で走りの不安や悩みの大半は解決できるのは事実。ようは調整機構が装備されているバイクに関しては、触らないともったいないということである。
サスペンションは特殊なものを除き、スプリングとオイルの入ったダンパーで構成されている。それで路面の凹凸のショックを吸収して乗り心地を良くしたり、タイヤをグリップさせている。また、曲がりやすかったり、止まりやすかったり、加速しやすい車体姿勢を作り出すのもサスペンションの役目だ。
ただし、サスペンションを触る前にタイヤの摩耗や空気圧、チェーンの張りは必ずチェック。この辺りの整備がきちんとしていないとサスペンションを触っても意味がないからだ。
サスペンションは基本的な動きはスプリングが決め、ダンパーは補助的な役割。スプリングだけだといつまでも伸縮が収まらないため、ダンパーで止めているのだ。
足着き性を良くしたい。それもサスセッティングの第一歩
曲がったり、止まったりを考え始めると難しくなるサスセッティングだが、足着き性を向上させる役割もサスペンションは持っている。また体重が重いライダーと軽いライダーが同じサスセッティングだとなんとなく合わないのは想像できるだろう。
モデルやメーカーによって異なるが、バイクは概ね標準体重で開発されているため、体重が軽かったり重かったりする場合は、調整した方が良いのだ。
では、どこを調整するのか? 簡単に考えるとまずは標準体重の方が跨ったくらいにサスペンションが沈み込むようにスプリングプリロードを調整する。ようは重い人はサスペンションが沈み込み過ぎるためプリロードを強め、軽い人は沈まないためプリロードを弱めてやるのだ。
また、体重に関係なく足着きが不安な方はプリロードを弱めて、サスペンションを沈みやすい状態にすることで、改善することが可能だ。慣れるまでは少しでも走行中や停車時の不安を少なくするのが得策のため、せっかく付いている機能は積極的に使いたい。
プリロードに関しては大半のバイクのリヤサスペンションに装備されているので、触ってみよう。ここがサスセッティングの出発点だ。
まずはプリロードを触ってみてバイクの挙動がどう変わるかを感じてみよう。ちなみに好みでなかったらノーマルの位置に戻せばOKだ。
プリロード調整は車載工具でできることが多いが、硬くて動かしにくいことも。中古車などで長年触られていない場合は固着している場合もある。また中古車を購入した際は、前オーナーが変更している可能性もあるため、標準設定を確認しよう。さらに2本サスはまだ調整しやすいが、1本サスは大抵困難なため、ショップにお願いするのが無難だ。
体重の軽い方はプリロードを弱めに設定してみよう。標準の体重の方が跨った時と同じくらいサスペンションが沈み込むようにするイメージだ。
反対に大柄なライダーは標準設定だとサスが沈み込みすぎるため、プリロードを強めてサスペンションが沈み込み過ぎないようにしよう。
他にもサスセッティングはたくさんある
プリロードを合わせたら、減衰力調整機構も触ってみよう。触る順番はリヤの伸び側減衰力から。気になるのはフロントでも、まずはリヤを決めてからフロントを触るのがバイクとの一体感を得る近道になる。バイクの駆動やライダーの体重の大半をリヤサスが受け止めており、フロントはバランスをとっているに過ぎないからだ。
これはあくまでもイメージだが、まずプリロードを決めたら、次にリヤの伸び側減衰力、そして圧縮側減衰力。リヤが決まったらフロントを触ってみよう。
ハンドリングの軽さや曲がり始めの前輪がステアするフィーリングに影響する。後輪のグリップ感など様々なシーンに影響するため、頻繁に調整する。
リヤサスの沈み込み方に影響。向きを変え、旋回に移行する際の姿勢を決める際に有効。そんな時に跳ね気味だったら弱めたり、リヤが低すぎる場合は強めたりする。
前輪の舵角の付き方やハンドリングの軽さに影響する。強めすぎるとハンドリングが重くなる傾向に。弱め過ぎると鋭過ぎて、腕に力が入ってしまうことも。
ブレーキング時のフロントフォークが沈む動きなどに影響。装着されていないバイクも多い。各部を触るときは一度に何箇所も触らないこともポイントだ。
各減衰力アジャスターは構造上、絶対に強く締め過ぎないこと。また減衰力に関しては、これも構造上、最強(いちばん締め込んだ位置)から戻した位置で計測。「最強から1回転戻し」クリック式の場合は「最強から●クリック戻し」といった具合で管理しよう。
まずは触って変化を感じこと。それがキャリアになっていく
確かにサスセッティングは難しい。そもそも何が不安かもわからないかもしれないからノーマルのままで十分かもしれない。また、下手に触ってしまって元に戻せなくなったらどうしよう、と思うのも当然だが、迷ったり好みでなかったらノーマルに戻せば良いだけだ。
正直、躊躇していることがもったいない。サスを触ればバイクとの一体感を得るための近道になることは間違いなく、それがバイクをコントロールすることにも繋がるからだ。まずはサスを触って愛車のフィーリングが変化することを知ろう。
サスセッティングに正解はない。速い人や上手い人のセッティングが万人に合うとも限らないので、自分の気持ちいいや怖くないを探しながら試してみよう!
投稿者プロフィール
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1974年、東京都生まれ。18歳からバイクライフをスタート。出版社に入社後、 20年以上バイク雑誌一筋で編集者生活を送り、バイク誌の編集長を8年ほど
経験。編集人生のモットーは、「自分自身がバイクに乗り、伝える」「バイクは長く乗るほど楽しい!」。過去 には、鈴鹿4耐などの様々なイベ
ントレースにも参戦。海外のサーキットで開催される発表会に招待いただくことも 多く、現地で試乗して感じたことをダイレクトに誌面やWEBに展開してきた。
2022年、フリーランスのモーターサイクルジャーナリストとして始動。