3種のバリエーションを持つ、ロイヤルエンフィールドの水冷ロードスター
スペインのバルセロナを訪れるのは3度目。訪れる度に明るい街並みに感動する。カラッと乾燥している夏の感じもこの街ならでは。ガウディが残した建造物も多く、美しい教会や公園がたくさんある。その街並みを様々なバイクが通り過ぎていく。欧州は市街地にバイクを自由に停められるスペースがあり、日本よりもバイクが市民権を得ている印象が強い。
そんな中でも群を抜いて存在感を発揮していたのが、この夏に突如発表されたロイヤルエンフィールドのゲリラ450である。試乗したのはメインカラーであるイエローリボンだが、このカラーを初めて見た時のインパクトは凄かった。1970〜80年代からインスピレーションを受けたというゲリラ450のカラーデザインは斬新で、イエローリボンだけでなくゴールドリップとプラヤブラックはどことなく国産旧車を感じさせるし、ブラヤブルーの前後ホイールの色が異なる感じも新鮮だ。
そんなゲリラ450は「フラッシュ」「ダッシュ」「アナログ」の3バリエーションを展開。最上級の「フラッシュ」は簡易ナビであるトリッパー内蔵のTFTメーターの他、様々な装備が与えられ、カラーはイエローリボンとブラヤブルーの2色展開。「ダッシュ」はTFTメーターを装備し、ゴールドリップとプラヤブラックの2色展開。「アナログ」はアナログ式メーターを装備しプラヤブラックとスモークの2色展開となる。
ゲリラ450のプラットフォームであるアドベンチャーバイクのヒマラヤは、ロイヤルエンフィールドとして初の452cc水冷エンジンを搭載したモデル。ゲリラ450はヒマラヤと同じ環境で5年前から開発をスタートし、海抜5000m以上のヒマラヤ山脈を走り、タフさや燃調を磨き続けた。さらにゲリラ450は、新しいカスタマーを獲得するためのロードスターとして、バイクや若い世代の市場調査だけでなくファッショントレンドも研究してきた。
もちろんライダーがアクセスしやすいこと、ライダーが手に入れよう&乗ってみようと思うこと、可能な限り軽快でニュートラルに感じさせるというロイヤルエンフィールドが語る「アクセシビリティ」のフィロソフィーはそのまま。400ccクラスにしては少し大型で、存在感が強いのも特徴。欧州やアジアマーケットでは小さなバイクは、人気がないのだという。
ゲリラ450の排気量は452cc。日本では大型自動二輪免許が必要になる
ゲリラ450の欧州でのライバルはKTMやハスクバーナ、トライアンフの400ccモデルだが、日本では排気量的にちょっと異なるだろう。そうゲリラ450のエンジンは、452ccで大型自動二輪免許が必要となるのだ。ただ、結論から言うと、ゲリラ450は大型免許を取得してでも乗って欲しいとおすすめできる絶妙なパッケージを備えていたのだ。
跨ってみると、安心感のあるポジションを約束。400ccにしては少し大柄なのはライバルと比較しても明らか。その数値をライバル達と比較してみよう。
★トライアンフ スピード400
ホイールベース:1377mm
シート高 :790mm
★KTM 390デューク
ホイールベース:1357mm
シート高 :820mm
★ハスクバーナ スヴァルトピレン401
ホイールベース:1368mm
シート高 :820mm
★ロイヤルエンフィールド ゲリラ450
ホイールベース:1440mm
シート高 :780mm
こうして見てみると、ゲリラ450のパッケージはかなり独特。ホイールベースは長いがシート高は低く、ポジションの快適さはこの中でも群を抜いていて、それはとても好感が持てるもの。そして走り出しても車体の大きさがネガティブに感じることは一度もなかったのである。それどころか、ホイールベースの長さは安心感や快適さ、操りやすさに貢献し、400cc比+50ccのアドバンテージと合わせると、ゲリラ450の完成度はとても高い水準にあったのだ。
新たなるロイヤルエンフィールドスタイルを多くのライダーに知って欲しい
バルセロナの街並みをまずは「エコ」モードで走り出す。エンジンはトルクに溢れ、それでいて気持ちよさを併せ持つ空冷エンジンのロイヤルエンフィールドを匂わせる味付け。スロットルを開けた時の応答性や気持ちよさ、そして後輪が路面を蹴り出す動きには胸の空く気持ちよさもある。
渋滞路での極低速でのバランスの取りやすさは、ホイールベースの長さがもたらすもの。だからといって鈍重さはまったくない。ライダーを急かさず、乗り心地はとても穏やかだ。
峠ではモードを「パフォーマンス」に。すると穏やかな表情を保ったまま、スポーティな一面が顔を出す。ゲリラ450はコーナリングも得意なのだ。峠でも安定型のキャラクターではあるが、それが良い方向に働いていて、ライダーの操作にとても忠実。サスペンションはアベレージを上げても腰砕けになる感じがなく、それどころかライダーが荷重を強めると減衰力を高め、タイヤのグリップを引き出す走りも可能にしてくれるのだ。
ゲリラ450に装着されるシアット製の専用タイヤはブロックパターンとは思えないほどスポーティな走りに応えてくれ、深いバンクもしっかり許容。景色を見ながらクルージングできるし、コーナーも楽しめるスポーツネイキッドとしての魅力も持っているのだ。ロイヤルエンフィールドが打ち出す新たなるロードスターの形は、抜群のバランスを持ち、ライダーのさまざまな要求を満たしてくれる。
エンジンは「パフォーマンス」モードでは3000rpm付近では唐突に加速する部分もあり、これがゲリラ450の元気さをアピール。ただ、その加速は使っているギヤによっては結構唐突なので、慣れるまでは注意した方がいいだろう。
確かに大型自動二輪免許のハードルはある。でもゲリラ450に乗っているとバイクが好きになるし、バイクに乗るのが楽しくなるし、ライディングテクニックも早く身につくだろうなぁ、という手応えを感じる。スポーティかつアグレッシブ、それでいてアクセシビリティなキャラクターを持つゲリラ450。この、新たなるロイヤルエンフィールドスタイルを多くの方に楽しんでいただきたい。
ゲリラ450 主要諸元
エンジン形式 | 水冷単気筒DOHC4バルブ |
ボア×ストローク | 84mm×81.5mm |
圧縮比 | 11.5:1 |
最高出力 | 40.02PS(29.44kW)/8,000rpm |
最大トルク | 40Nm/5,500rpm |
始動方式 | セルフ式 |
潤滑方式 | セミドライサンプ |
クラッチ | 湿式多板 |
トランスミッション | 6速リターン式 |
燃料 | フューエルインジェクション 42Φスロットルボディ ライドバイワイヤ |
フレーム形式 | スチール製 チューブラーフレーム |
サスペンション(前) | テレスコピック 43mm |
ホイールトラベル(前) | 140mm |
サスペンション(後) | リンゲージ式モノショック |
ホイールトラベル(後) | 150mm |
全長 | 2,090mm |
全幅 | 833mm |
全高 | 1,125mm(ミラー含まず) |
ホイールベース | 1,440mm |
最低地上高 | 169mm |
シート高 | 780mm |
重量 | 191kg |
燃料タンク容量 | 11L |
タイヤサイズ(前/後) | 120/70 R17 / 160/60 R17 |
ブレーキ(前) | 油圧 310mmベンチレーテッドディスク 2ポッドキャリパー |
ブレーキ(後) | 油圧 270mmベンチレーテッドディスク 1ポッドキャリパー |
ABS | デュアルチャンネルABS |
装備 | ライドモード USBポート(タイプC) 4インチTFTモニター(スマホ接続可) 地図ナビゲーション メディアコントロール |
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投稿者プロフィール
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1974年、東京都生まれ。18歳からバイクライフをスタート。出版社に入社後、 20年以上バイク雑誌一筋で編集者生活を送り、バイク誌の編集長を8年ほど
経験。編集人生のモットーは、「自分自身がバイクに乗り、伝える」「バイクは長く乗るほど楽しい!」。過去 には、鈴鹿4耐などの様々なイベ
ントレースにも参戦。海外のサーキットで開催される発表会に招待いただくことも 多く、現地で試乗して感じたことをダイレクトに誌面やWEBに展開してきた。
2022年、フリーランスのモーターサイクルジャーナリストとして始動。