レースで見る腰をズラした『リーンイン』。そもそもなぜ腰をズラすのか?
レースで見る腰をオフセットしたリーンインのフォーム。近年は膝どころか肘を擦るほど腰というか身体を大きくオフセットするフォームが主流だ。もちろん公道で大きく身体をオフセットする必要はないが、やっぱりスポーツライディングというと腰をズラしてみたくなるもの。特にコーナリング好きは、リーンインのフォームに憧れもあるはずだ。
では、腰をズラす効果や意味はなんだろう?どんなバイクが腰をズラすと効果的なのだろう?
そもそも腰をズラす乗り方が主流になってきたのは、『70年代の後半あたり=後輪が太くなってきた』から。もちろんタイヤ太くなったことだけが理由ではないが、この時代、タイヤは目まぐるしく進化。グリップ力が向上し、構造はバイアスからラジアルに変わっていった。
昔のバイクやレーサーを見ると現代のバイクよりも明らかに後輪が細いのが分かるはず。このタイヤの進化が乗り方を変えていったのだ。なので、後輪の太いバイクは腰をズラした方が曲がりやすいというわけだ。
最初は5cm腰をズラせばOK。それで、バイクの曲がり方に違いが出ることを体感しよう!
では、腰はどのくらい、どのタイミングでズラスノか?腰をズラした走りの効果である曲がり始めのレスポンスの良さを得るには、『5〜10cm』で十分。数値で聞くと大した移動量ではないが、リーンウィズとの曲がり方の違いは体感できるはず。そして腰をズラして思い通りに曲がれる感覚が体感できたら、少しずつ移動量を増やしてみよう。
そして、ズラす際のポイントは少し後ろに座ること。ちなみにこの向き変えがきちんとできると、その後の旋回や立ち上がりがとても楽になり、安心感も向上するため、これはとても大切なテクニックなのだ。
もちろんその際に心がけるのは【ライテク上達講座#7】「ハンドルの操作」意識してますか? 入力・脱力ってみんな意識してる?で紹介した乗り方。バイクが曲がりたがる動きを妨げないようにリラックスしよう。
ちなみに腰をズラす乗り方でよく見るのが、曲がる瞬間に腰を「エイッ」とズラしている方。リラックスして繊細に重心移動しなければいけないタイミングで、車体に力を加えてしまうと、バイクの挙動が安定せず、腰をズラしたメリットを感じにくくなる。腰をズラすタイミングはカーブの手前、ブレーキングの前にズラしておくのが正解だ。
リーンウィズを極めることも、走りの楽しみの一つ
『腰をズラすメリットはわかった。でも公道で腰をズラすのは大袈裟……』そんな声もよく分かる。また、リーンウィズでリズム良く峠を駆け抜けているカッコいいベテランライダーを見かけたこともあるだろう。そんな彼らはどのように走っているのだろうか?
もちろん大きなアクションをしているように見えないリーンウィズでもベテランは、身体の中で繊細に荷重移動をしながら体重の預け方を変えているのだ。例えば、右コーナーの場合、腰をズラしていなくてもシートに座る左右のお尻の面圧を、右側だけ強めたりするそんな動きだ。
そんな身体の中での荷重移動と同時にイン側の肩を下げたりして旋回性を引き出す。また、上半身の角度も大切で、とにかく積極的に荷重バランスを変化させるいくつもの技を駆使して、思い通りのラインをトレースしているのだ。
「常に良いところを探す」「ライディングスキル向上に貪欲になる」そんな気持ちで積極的に身体を動かすとバイクの反応はどんどん変わる。その一つひとつの反応をモノにしていくことが、スムーズかつリズミカルに乗りこなすコツだ。
投稿者プロフィール
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1974年、東京都生まれ。18歳からバイクライフをスタート。出版社に入社後、 20年以上バイク雑誌一筋で編集者生活を送り、バイク誌の編集長を8年ほど
経験。編集人生のモットーは、「自分自身がバイクに乗り、伝える」「バイクは長く乗るほど楽しい!」。過去 には、鈴鹿4耐などの様々なイベ
ントレースにも参戦。海外のサーキットで開催される発表会に招待いただくことも 多く、現地で試乗して感じたことをダイレクトに誌面やWEBに展開してきた。
2022年、フリーランスのモーターサイクルジャーナリストとして始動。