みなさん、コーナーのどこから曲がり始めていますか?
初めて走るワインディングでもベテランライダーはまるで先が見えているかのようにコーナーを駆け抜けていく。もちろんキャリアを重ねても先が見えるようになるわけはなく、ベテランはきちんとテクニックを使ってコーナーをクリアしている。
では、ベテランはどのように走っているのだろう?
まずは、コーナリング=定常円旋回という考えでなく、コーナリングを「減速」「曲がるポイント」「旋回」「立ち上がり」という4つに分けて考えよう。そしてその一つひとつの操作を確実に終わらせてから次のステップに行くことを心がけよう。
定常円旋回として考えている方は、きっと旋回中にスロットルを開け閉めしたり、バイクを寝かしたり起こしたりを繰り返しながら中途半端に曲がっているはずだ。
「減速」や「立ち上がり」はブレーキをしたりスロットルを開けたりする行為があるため、意識しなくてもできていることが多いけれど、実は「曲がるポイント」を明確にすることがとても大切。
「コーナーのどこから曲がり始めていますか?」という答えは、この「曲がるポイント」のこと。ライテク用語としては「向き変え」なんていう表現でも使われるこのシーンを疎かにすると、コーナーは組み立てられないのだ。
多くのライダーがワインディングのコーナーでヒヤッとした経験があるはず。そんな不安な思いを2度としないためにも、今回のテクニックを意識してみよう
コーナリングを「減速」「曲がるポイント」「旋回」「立ち上がり」4つに分解。
⚫︎減速 ブレーキは最初に強くかけ徐々に弱めていくのがコツ
⚫︎曲がるポイント コーナーの曲率がAの場合はA-1が「曲がるポイント」。Bの場合はB-1が「曲がるポイント」。ここでブレーキをリリース。同時に身体の重心をバイクの下方向に移動するようなイメージで抜重。バイクの向きを明確に変える
⚫︎旋回 旋回区間は、スロットルは閉めっぱなし。ここでスロットルを開け閉めしないといけない状況だと、「曲がるポイント」が間違っていたり、曲がり方が弱いということ
⚫︎立ち上がり スロットルを開けて立ち上がる。立ち上がったらすぐに次のカーブの「曲がるポイント」の予測に入る。
コーナーに進入し、思った曲率と違ったら「曲がるポイント」を変えよう
ベテランが先の見えないコーナーに躊躇なく入っているように見えるのは、この「曲がるポイント」を常に設定し、思っていたよりもコーナーの曲率がキツかったらすぐに変更しているから。では、そのポイントはどのように設定するのか? 下の図を見ながら解説しよう。
❶ワインディング走行中。コーナーが迫ってきてブレーキングを開始。
❷ある程度速度が落ちているがまだコーナーの曲率は不明。この段階では❸を曲がるポイントに設定
❸コーナーの曲率がAの場合は設定したポイント通りの場所で曲がり始める。そのまま旋回に移行し、スロットルを開けて立ち上がる。しかし、コーナーがBのように曲がり込んでいた場合は、「曲がるポイント」を❹に変更。わずかにブレーキを残しつつ❹に移動し、ここから曲がり始める。
このようにコーナーの曲率に合わせて常に「曲がるポイント」を予測。想像よりも曲がり込んでいる場合は、そのポイントを変更すれば良いのだ。
❸までくるとある程度コーナーの曲率がわかってくるはず。想像より回り込んでいる場合は「曲がるポイント」を❹に変更。「曲がるポイント」まで理想的な速度やラインで到達するためのポイントは、ブレーキを最後まで強くに握っていないこと。常にリリースできる状態で舐めるようにレバーに触っておくだけ。減速というよりは「曲がるポイント」を探すための操作で、「曲がるポイント」にきたらリリースしてバイクの向きを変える
視線を先に送りながら「曲がるポイント」を予測。コーナーに進入してからでもこのポイントをどんどん修正する。この予測と修正の精度を上げていくことがワインディング攻略の鍵だ
様々な情報を収集して予測の精度を上げる
このように、「曲がるポイント」を決め、それを予測し、変更することの繰り返しでブラインドコーナーは攻略できる。このテクニックを駆使すれば、どんな曲率のコーナーも曲がれるようになる。
最初は難しいけれど、まずはこういった意識を持って走ることが大切。そうしないとコーナーをやり過ごす走り方になってしまい、いつまでもコーナリングの達成感が得られないからだ。
また、カーブミラーを見たり、縁石やガードレールの角度などでも予測の精度を高めることができる。それには近くの路面ばかりを見ずに、遠くを見る意識が大切。目線だけで先を追いかけるのでなく、首と身体をイン側に向ける意識で常に先の情報を手に入れよう。
こういったテクニックが身に付いていくと、知っているワインディングよりも、ブラインドコーナーが連続する知らないワインディングの方が楽しくなっていくはずだ。
カーブミラーのあるコーナーでは必ず確認。対向車の有無だけでなく、コーナーの曲率も読み取ろう
コーナーの手前にはこの先のシチュエーションを表示する道路標識があることも。結構正確にコーナーの形を表示していることが多いので参考にしよう
投稿者プロフィール
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1974年、東京都生まれ。18歳からバイクライフをスタート。出版社に入社後、 20年以上バイク雑誌一筋で編集者生活を送り、バイク誌の編集長を8年ほど
経験。編集人生のモットーは、「自分自身がバイクに乗り、伝える」「バイクは長く乗るほど楽しい!」。過去 には、鈴鹿4耐などの様々なイベ
ントレースにも参戦。海外のサーキットで開催される発表会に招待いただくことも 多く、現地で試乗して感じたことをダイレクトに誌面やWEBに展開してきた。
2022年、フリーランスのモーターサイクルジャーナリストとして始動。