ライダーにとっては一番起こしたくない転倒。自身にも危険が及ぶだけでなく、バイクにも傷がつき最悪廃車なんてことも考えられます。
バイク用品店やライダーが集まる観光スポットの駐輪場で、胴体から突き出た棒のような機器が装着されたバイクを見たことありませんか?これは「スライダー」という機器で、転倒時にバイクの各部にかかる衝撃を軽減するパーツなのです。
本記事ではライダーにとって一種のお守りとして機能する、スライダーの装着メリットと種類について紹介します。
スライダーを装着するメリット
先述した通り、スライダーは転倒時におけるバイクの各部品の損傷から守ってくれるパーツです。
本来はサーキットで転倒を起こした際、戦列に復帰しやすくするために取り付けられるもの。そして、ツーリングにおいても転倒時に車体への被害を抑える役割を担ってくれます。装着するメリットは主に3つ。
メリット
・転倒時にバイクへのダメージを軽減
・転倒後のリカバリーがしやすい
・装着時の重量に大きな変化はなし
上記について順を追って解説します。
転倒時にバイクへのダメージを軽減
スライダーを取り付ける理由の筆頭として、バイクへのダメージ軽減が挙げられます。
重量のあるバイクは高価な部品を搭載している車種が多く、走行時だけでなく立ちごけを起こした際の損傷も致命傷となりがちです。場合によっては万単位のお金が修理費用で吹っ飛んでしまう可能性も。さらに、エンジンやフロントフォークといった個所が損傷を受けると自走不可となってしまいます。
上記のようなリスクへの備えにスライダーが役に立ちます。全てのダメージを防ぐわけではないものの、立ちごけ時はスライダー部分が地面に接地するため、バイクの基幹となる部品を損傷から守ることができます。一方で走行中の転倒の際は、文字通りスライダーが地面との摩擦で車体を滑らせることでダメージを軽減します。
また、スライダーの多くは樹脂製のジュラコンと言われる素材を使っています。
POM(ジュラコン®)はエンジニアリングプラスチックの一つです。また「PolyOxyMethylene」ポリオキシメチレンの略称で、一般的にはポリアセタールと呼ばれる熱可塑性樹脂の一種です。
参考:プラポート
ジュラコンは他のプラスチック製の素材に比べると、以下の特徴を持ちます。
ポイント
・摩擦係数(滑りにくさを表す値)が小さく、滑りやすい。
・耐摩耗性(素材の削れにくさ)が高く、削れづらい。
ジュラコンは滑りやすく削れづらい性質を利用して、車体へのダメージを抑える素材です。
しかし一方で、滑りすぎて対向車線にはみ出す等、二次被害が発生する危険性も含みます。対策として、一部のメーカーでは表面にアルミ製の部品を装着し、滑りやすさを防止する製品が販売されています。
他にも金属製のスライダーも販売されていますが、スライダー本体にかかる衝撃により接地部回りに被害が及ぶ可能性が指摘されており、役割を十分に果たせません。購入の際は、ジュラコン素材をメインに据えたスライダーを検討するべきでしょう。
転倒後のリカバリーがしやすい
スライダーを装着したバイクが倒れるとスライダーが地面に接地するため車体がわずかに浮きます。
この状態のバイクは、車体そのものが地面に接地したバイクと比べると引き起こしやすくなります。免許を取得する前の教習を思い出してみてください。教習車を倒した際に、エンジンガードが地面に付いて車体本体と地面の間に隙間が生まれませんでしたか?バイクを起こす際は体を車体に密着させて姿勢を低くし、足に力を込めることで起こすという流れですが、車体が浮くことで引き起こしの体勢が取りやすくなります。
また、ライダー本人へのダメージ防止にも役立ちます。バイクにしがみついた状態で転倒すると、地面と車体の間に足が挟まり大きなケガを負う恐れがあります。しかし、スライダーが地面に設置することで、車体の重量が100%かからなくなり、ケガを防ぐことに繋がります。
スライダーはバイクにもライダーにも優しいパーツと言えるでしょう。
装着時の重量に大きな変化はなし
スライダーはパーツ重量が軽く、押し歩きの際に重さを感じない点がメリットの1つ。スライダーの役割に近いパーツとしてエンジンガードがありますが、こちらは転倒時にエンジンの破損から守ってくれます。しかし、こちらは金属製の太いパイプを縦、または横方向に取り付けるため車重もより重くなります。極端な話ですが、エンジンガード取り付けによる重量変化で車体が倒れやすくなってしまっては本末転倒です。
また、エンジンガードを取り付けるとバイクの見た目が大きく変わるため、取り付けに消極的なライダーもいます。一方でスライダーは意識して見なければ分からない程に目立たないパーツの為、さほど見た目を損なわずに車体を守ることができます。
スライダーの種類
スライダーは装着箇所によって様々な種類があり、守りたい部品周辺への取り付けが基本的なスタイルとなります。
しかし、バイクパーツメーカーの「ACTIVE」によると、複数のスライダーの併用による衝撃の分散が転倒時のダメージ軽減に期待できるとのこと。転倒に対するリスクをより抑えたい場合は、後述する様々な種類のスライダーを取り付けてみるのも良いかもしれません。
アクスルスライダー
アクスルスライダーは前後輪のタイヤの中心部に取り付けるパーツです。「アクスル」とは、車輪を取り付ける軸(車軸)の事。フロントタイヤ部分に取り付けることでフロントフォークを、リアタイヤ部分に取り付けることでスイングアームを保護できます。どちらも損傷すると修理費用が高額になりがちなため、小さい部品ながらも侮れない力を秘めています。
エンジンスライダー
エンジン回りが損傷するとオイル漏れが発生し、自走不可となるだけでなく二次被害も発生する恐れがあります。エンジンスライダーはエンジンの近くに取り付けるタイプやエンジンを覆うように取り付けるタイプに大別されます。形状も表面積が広いものや、突起のような形で販売されています。
フレームスライダー
バイクの骨格ともいえる存在であるフレームを守るものとして取り付けるスライダー。メーカーによってはエンジンスライダーと同様、エンジン回りに取り付ける用途で販売されているものもあるため、定義は少し曖昧なところもあります。
マフラースライダー
その名の通りマフラーを損傷から守るためにリア部分に取り付けます。マフラーそのものが車体から出っ張ったパーツであり、他の部位に比べて長いスライダーが多く販売されてています。
おわりに
バイクはただでさえ重いのに、取り回しで油断すると倒しやすく、破損に加えて高額な修理費用のダブルショックを受けることに…。
スライダーは地面と接触する際に発生する衝撃を緩和し、車体へのダメージと共にライダー自身のメンタルへのダメージも軽減してくれます。万が一の際に愛車を守る手段として装着してみてはいかがでしょうか?
投稿者プロフィール
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主に千葉、神奈川へツーリングに行くことが好きな鈴木敬です。ライダー歴は今年で3年になりました。スズキですがYAMAHA MT-25乗りです笑
一緒にツーリングに行っていた友人がバイクを降りてからソロツーリングメインになり、月一の遠出やソロキャンプを楽しんでいます。
一人気ままなツーリングをしながら得た知見をお伝えしていきたいと思いますので、よろしくお願い致します。
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