旧車が人気ですね。
旧車に触れて、現代のバイクにはない(旧車にしかない)装備の名前を聞いて戸惑ったことはありませんか? また、昔のバイクの装備や機能を理解したいと思ったことはありませんか?
バイクの装備やシステムを知ることは安全運転にも直結するので、旧車のオーナーや旧車を検討している方の「旧車独自のシステムを知りたい」という気持ちはとてもよく分かります。
そこで今回は「昔懐かしい、昔はあったけど今はない旧車独自の機構やシステム・装備」について、バイク歴40年の筆者が詳しく解説します。筆者が実際に1980年代に見聞きした一次情報を多く含みます。
この記事を読んで「昔は採用されてたけど、今はない」装備やシステムを理解しましょう。
当時の筆者の体験や経験、感想などもありますので、ぜひ最後までお付き合いくださいね。
※トップ画像:1985年の筆者とバイク仲間。左からヤマハRZV500R、カワサキGPz750R、ヤマハXJ400D(筆者)…大分県別府市にて
昔懐かしいエンジン系のシステムや機構
バイクの心臓ともいえるエンジンには、メーカーこだわりのシステムが昔からたくさん採用されてきました。この章では、昔懐かしいエンジンのシステムについて解説します。
ターボ
1980年代は、バイクにターボを搭載したモデルが各社から販売されました。
- ホンダ CX500Turbo(1981年)
- ヤマハ XJ650ターボ(1982年)
- スズキ XN85(1983年)
- カワサキ GPz750ターボ(1984年)
ただし、これらはすべて海外への輸出モデルで日本国内では販売されず、逆輸入車として存在しました。
筆者は1986年頃、カワサキGPz750ターボに乗せてもらったことがあります。今でも鮮明に覚えているのは、その凄まじい加速! 普通の750の加速とは全く違う異質なものでした。ターボが作動する回転域でドカンという感じの加速がきて、ビビったことを覚えてます。
しかし、車体価格が高く整備性がよくなかったためか各メーカーのターボ搭載バイクは売れ行きが低迷し、これ以降ターボ搭載のバイクが世に出ることはありませんでした。
ホンダの8バルブエンジンとヤマハの5バルブエンジン
バルブの数を増やし、パワーや吸排気効率の向上を目指すエンジンを搭載したバイクが昔は存在しました。
8バルブエンジンを搭載したホンダNR(NR750)
1992年、楕円形ピストンに8バルブという独創的なエンジンを搭載したNR750が登場。楕円形ピストンと8バルブは、元はといえば「4ストでレースに勝つ」を目標として、レース用に開発されたエンジン機構です。
NR750は8バルブの楕円形ピストンを採用し300台限定で、当時としては破格の520万円で販売されました。
市販車としては唯一、楕円形ピストンを採用したバイクです。この前にも後にも、楕円形ピストンエンジン搭載の市販バイクは世に出ませんでした。
5バルブエンジンを搭載したヤマハFZ750
量販車初の5バルブエンジンを搭載したヤマハFZ750は1985年に登場しました。吸気側のバルブが3バルブ、排気側は2バルブ。吸排気効率やパワー、燃焼効率の向上を目指していたのです。後継モデルのFZR750にも5バルブが継承されました。
しかしその後、5バルブエンジン搭載のバイクは登場せず、現在に至ります。レースにおいてはバルブの調整が難しいエンジンでした。
2ストエンジンと排気デバイス
2スト(2ストローク・2サイクル)のバイクも現在では見かけることが少なくなりました。環境への配慮などの理由で、国内4メーカーは2ストエンジン搭載の公道用バイクを現在製造していません。
かつて、レースで2ストが全盛だった頃、2ストエンジンの性能を向上させるために各メーカーは独自のシステムを採用していました。
- ヤマハ YPVS
- カワサキ KIPS
- スズキ AETC
- ホンダ ATAC
これらの機構は排気ポートにエンジン回転数により可変するバルブを搭載し、パワー出力特性の向上を狙ったものでした。
今も筆者が覚えているのは、80年代に先輩が所有していたヤマハRZV500Rです。キーをイグニッションの位置に入れると「ウィーン、ウィーン」というサーボモーターの音がエンジンから聞こえてきました。これはエンジン起動時のポート径を最適化するため、可変バルブ(YPVS)が動く音です。
排気ポートを最適化する可変バルブの働きもあり、RZV500Rは全回転域でとてもパワフルなバイクでした。
昔懐かしい足回り系の装備
足回りについても、現代ではあまり採用されなくなったシステムが1980年代前後には多く存在しました。この章では足回りに採用されていた昔懐かしい装備を解説します。
フロント16インチ
「フロント16インチ」と聞いてすぐに思い出すのは、その軽快なハンドリングです。筆者の家内の愛機は、フロント16インチを装備したホンダのVT250Fでした(1986年頃)。借りて乗ったとき「なんて軽いハンドリングなんだ!」と驚いたことを覚えています。
フロント16インチの目的はレースのハードブレーキに対応するためでした。レースからのフィードバックで、80年代には国内メーカーから多くのフロント16インチモデルが販売されていたのです。
しかしその後、フロントの主流は17インチに変わり、フロント16インチは現在の新車ではほとんど見かけないタイヤサイズになっています。
コムスターホイール(ホンダ)
1970年代後半に登場し、その後のホンダ車に多く採用されていたコムスターホイール。スポークホイール並の軽さとキャストホイールのような強度を兼ね備え、コストパフォーマンスにすぐれたホイールでした。
多くのモデルに採用されたコムスターホイールでしたが、技術の進歩により、キャストホイールの軽量化と低価格化が進み、徐々に姿を消していきました。
アンチノーズダイブ
ブレーキング時のフロントの沈み込みを抑え、前のめり姿勢になりにくくするシステムで、レース用マシンからのフィードバックでした。確かに姿勢は制御できますが、フルブレーキ時のフロントフォークのフルボトムにおいて、タイヤのグリップが低下しても分かりにくいという欠点があり、その後はレースから急激に姿を消していきます。
1980年代の多くの市販バイクに、フロント16インチとセットで装備されていました。
筆者が1989年に所有していたカワサキGPz900Rにも装備されていました。それまで乗っていたヤマハのXJ400Dに比べ、確かにフロントの沈み込みが少ないけど、フロントタイヤの接地感が低いと感じたことを覚えています。
インボードディスクブレーキ(ホンダ)
インボードディスクとは、正式名称をインボード・ベンチレーテッドディスクブレーキといいます。制動性にすぐれる鋳鉄製のディスクがサビないようカバーで覆い、過熱を防ぐために冷気取入れ口と熱気の排出口を備えたブレーキでした。
当時のディスクブレーキは、サビを防ぐためにディスクにステンレスを採用していたので効きが悪かったのです。その欠点を克服するために開発されたのがインボードディスクでした。
画期的なシステムでしたが、ディスクブレーキの進化と低価格化で徐々に消えていったシステムです。
ヘッドライトやランプなど灯火系の昔懐かしい装備
この章ではリトラクタブルヘッドライトやハザードランプなど、灯火系の昔懐かしい装備を解説します。
リトラクタブルヘッドライト
1980年代には、リトラクタブルヘッドライトを採用したモデルが登場しました。リトラクタブルといえば、スズキの3型カタナを連想するライダーが多いと思いますが、最初に装備したのはホンダのスペイシー125ストライカーです。
空力特性(空気抵抗)を考慮して登場した装備でした。しかし、1998年にヘッドライトの常時点灯が義務化されたこともあり、現在の新車では採用できないシステムとなってしまいました。
ハザードランプ
1980年代には、ハザードランプを標準装備としていたバイクがありました。カワサキGPz750Rなどです。
緊急事態を他車に知らせるためのハザードランプ。車は装備が義務ですがバイクには義務ではないことから、ハザードを搭載するバイクは徐々に少なくなりました。
しかし、最近の大型バイクなどではハザードを装備しているモデルも存在します。
イグニッションの「P」
1980年代には、イグニッションに「P」の位置があるバイクが存在しました。キーを一番右に回すと、ヘッドライトのポジションランプが点灯したままキーを抜くことができたのです。
夜間の一時的な駐輪時などに、自車の存在を周囲に知らせるための装備でした。しかし、誤ってキーを一番右に回してキーを抜き、バッテリーが上がってしまうケースもありました。
イグニッションのPも徐々に減っていった装備ですが、最近のモデルでは純正で装備しているバイクが少数ながら存在するようです。
まとめ:昔のバイク装備を知っていれば、旧車に乗るとき役に立つ!
今回は、今となってはほとんど見かけなくなった昔懐かしい装備を解説しました。今はあまり見ないこれらの装備も、登場した当時は採用された理由がちゃんとあったのです。
もしもあなたが旧車に乗りたいのであれば、旧車に装備されているこれらの装備をよく理解しておきましょう。実際に旧車に乗る際、必ず役に立ちます。
この記事が読者の皆さまのお役に立てば嬉しいです。
読者の皆さまのバイクライフを応援しています。
投稿者プロフィール
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熊本県在住。生まれも育ちも熊本。
阿蘇をこよなく愛する生粋の熊本人。
昭和の時代に限定解除し、原付/中型/大型の所有歴あり。
現在の愛機はKawasaki 250TR。
愛機250TRで一日500km(下道)を走破することもある、元気おやじライダー。
「安全第一、無事帰る」をモットーに、今も安全運転を模索しながら走り続けている。
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