はい、元バイク屋のフォアグラさんです。こんにちは。
さて、今回はエンジンの種類や基本的な仕組みを理解できる内容です。
「心臓部」と表現されることからも分かるように、バイクにおける最も重要なパーツの1つ、エンジン。勉強したいと思いつつも、なかなか難しくて先送りにしている人多いと思います。この記事でバッチリ理解できるように作ってありますので、是非この機会に学んでいってください。
エンジンの気筒数と配列について
「4サイクル」ってなに?
今、最も一般的な4サイクルエンジンというものは、シリンダー(気筒)の中をピストンが上下することでパワーを生み出しています。
そして4サイクル、つまり4つのサイクルというのは「吸入」「圧縮」「燃焼」「排気」のことです。
1:吸入
ピストンが下がることで負圧が生じ、外から空気を取り込みます。この時、取り込んだ空気にガソリンを噴射し、混ざり合った混合気がシリンダー内に取り込まれます。この工程では左上の吸気バルブが開いて、右上の排気バルブは閉じています。
2:圧縮
ピストンが上に上がって混合気をギューッと圧縮していきます。この時は吸気側、排気側のバルブはどちらも閉じた状態です。
3:燃焼
ピストンが最も高い位置に来て、混合気が最も圧縮された状態になるやいなやプラグが着火させ、ガソリンを含んだ混合気は一瞬で燃焼します。その爆発力でピストンを一気に押し下げ、クランクシャフトを回転させるパワーがここで生まれるわけです。
4:排気
そのままピストンはまた上に上がろうとしますので、その時に排気バルブが開いて中に溜まった燃えカス、つまり排気ガスを外へと押し出します。 押し出したところで、今度はまた綺麗な空気を取り込むために、最初の工程の吸気に戻るのです。
エンジンは走っている間、ずっとこうして休むことなくパワーを生み出してくれているのです。
気筒数と乗り味の関係
ではこの基本原理を理解したところで気筒数の話に移ります。
例えば400ccのバイクなら、単気筒であれば400ccのシリンダーが1つ、2気筒であれば200ccのシリンダーが2つ、4気筒であれば100cのシリンダーが4つ存在します。
気筒数が多いほど高回転型になるため高出力にすることができます。また4気筒などでは、ピストンがお互いの振動を打ち消し合うため、スムーズな乗り心地にもなります。
では気筒数が多ければ多いほど優れているのか?と言うと、そう単純な話ではありません。部品点数の多さにより重量が重くなってしまったり、製造コストが高くついたりします。ですのでパワーよりも軽さが求められるオフロードバイクなどは単気筒のエンジンが多く採用されています。
また振動というものについても、必ずしもスムーズなものが優れているとは言いきれません。確かに高速道路のような道を長距離巡航するのであれば、振動は少ない方が楽でしょう。しかしこの振動というのもバイクの個性の1つです。ハーレーなどを想像してもらうと分かりやすいのですが、モーターのように滑らかなエンジンだったら、ちょっと寂しくないですか?
そうなのです。抑えられる振動をあえて抑えないでリジッドマウントにするケースもあるくらい、この振動というのも個性でありバイクの味なのです。

ですので気筒数というのは、完全に好みや使い方にマッチしているかどうかということだけであって、何気筒が必ずしも優れているとか、正解というものはありません。
シリンダーの配列の違い
また同じ2気筒や4気筒の中でも、並列とかV型、水平対抗などがあります。これらはシリンダーの並べ方の違いで、性能にも違いが出てきます。
・並列は一直線に並べた最も基本的な構造です。高出力に設計しやすい上、重量を軽くできたり、重心を車体前方に集中させることでフロントに荷重がかかり安定します。
・V型はシリンダーを斜めに互い違いに配列するため、横幅をスリムにすることができて空気抵抗を減らしたり、燃焼間隔が均一ではないためトラクションのかかりを感じやすいというメリットがあります。ただしハーレーに関しては性能というよりも、どちらかというと横から見た時の美しさとか、独特の排気音が目的でV型にしていると言えるでしょう。
・BMWに代表される水平対向では、重量物であるシリンダーを車体の低い位置に設置することができるので、重心が低くなります。熱を持ちやすいシリンダーヘッドを効率的に冷やすこともできますね。
同じ気筒数であっても、シリンダーの配列によってこのような違いもあるのです。
4サイクルエンジンの仕組みや気等数について、なんとなく分かっていたのだけど詳しく理解はしていなかったという方も、モヤモヤがすっきりしたでしょうか?
バルブの駆動方式について
先ほど4サイクルエンジンの仕組みで説明したように、エンジンというのは吸入、圧縮、燃焼、排気という、この4つのサイクルを目まぐるしく繰り返しています。エンジンは1分間に数千回転、中には2万回転近く回るものもありますので、そのサイクルがいかに速いかが分かります。
高性能なエンジンではこの繰り返される吸入→圧縮→燃焼→排気の工程を、より速く、より効率的に行わなければなりません。
そのためには繰り返し開いたり閉まったりしているバルブを、いかに正確に素早く動かすかということが重要になり、様々なバルブの駆動方式が考案され、改良されてきました。
今のバイクのエンジンのバルブ駆動方式は、「OHV」「OHC」「DOHC」という3種類に大別されます。
OHVの特徴

OHVはやや前時代的な機構とも言え、今となっては決して高性能とは言えないエンジンです。ですが低回転から分厚いトルクを生み出すというだけではなく、その見た目の美しさや、シンプルでメンテナンス性も高いというメリットがあります。ハーレーといえばOHVというイメージは今でも根強いですよね。
OHVというのはオーバーヘッドバルブの頭文字。シリンダーヘッドの上部に吸排気バルブがあり、カムシャフトがありません。プッシュロッドという長い棒が、このロッカーアームを押し上げてバルブを開閉させます。

しかしこの重くて追従の低いプッシュロッドを必要とする構造では高回転化することは難しく、代わりにチェーンなどを用いたOHCへと移行していきます。
OHCの特徴
OHCというのはオーバーヘッドカムシャフトの略。往復運動していたプッシュロッドに代わり、回転するチェーンでバルブの開閉を行うようになったため、高回転でもしっかり追従していきます。

しかし人間とは探心が強いものでさらなる高転加を求めてしまいます。
OHCは1つのカムシャフトで吸気バルブと排気バルブの両方を駆動させていましたが、吸気側だけを駆動させるカムシャフト、排気側だけを駆動させるカムシャフトを持つDOHCエンジンが開発されます。
DOHCの特徴
DOHCというのはダブルオーバーヘッドカムシャフトの略です。 このDOHCの登場により、先ほど解説したカムシャフトを1つしか持たないOHCをSOHC(シグルオーバーヘッドカムシャフト)呼ぶようにもなりました。
OHCはSOHCとDOHCの総称だという方もいますが、一般的にはOHC=SOHのことを指し、DOHCをOHCと呼んだり記載することはありません。

このDOHCは現代においても最も高回転型の設計がしやすく、レース車両やスポーツモデルではほぼ全てがこのDOHCエンジンを搭載しています。吸気と排気がそれぞれ独立したカムシャフトを持つため、バルブやカムの配置に自由度が高まり、燃焼室もより効率のいい形状に設計することができるようになりました。
より高回転に、より高率にと考えられてエンジンのバルブ駆動方式は進化してきたわけです。が、気筒数同様にバルブ駆動方式も、高性能で複雑なDOHCが絶対正義というわけではありません。構造はシンプルな方がメンテナンス性が高く、価格も安いのです。(ハーレーのOHVエンジンに関しては安いとは言えませんが) SOHCよりもDOHCの方が、確かに高回転型の設計はしやすいのですが、部品点数も多くなり、緻密な設計技術も求められます。 当然トラブルが発生する確率も高まりますし、コストも上がります。
つまりこのバルブ駆動方式についても、モデルごとそれぞれ最適解があるということです。
エンジンの冷却方式について
なぜエンジンを冷やさなければいけないのか?
エンジンは走るほどに熱を持ちます。1分間に何千回転も回転し、内部では繰り返し、点火と燃焼が繰り返されているので当然ですよね。熱を持ちすぎると、点火する前に混合気が自己着火下してしまったり、金属が膨張してしまったりと、本来のパワーが出ないばかりか致名的なダメージを受けてしまいます。
そうならないためにもエンジンを冷やす必要があるのです
空冷の特徴
最もシンプルで原始的な方法は、バイクが走ることで当たる空気を使って冷やす空気冷却、略して空冷です。空冷エンジンは走行風を多く当てなければならないので、表面積をできるだけ大きくする必要があります。

左側が水冷エンジン、右側が空冷エンジンなのですが、ツルンとした表面の水冷エンジンに対し、空冷エンジンは凸凹としたフィンがあります。こうして表面積を稼いでいるわけです。昭和の末期には、このフィンに金属性の洗濯バサミをつけて冷却効率のアップを狙ったカスタムが流行りましたが、実際のところはほぼ効果はないそうです。
またこの空冷のフィンがかっこいいということで、水冷エンジンにもフィンが刻まれていたりもしますが、こちらは見かけだけダミーで、実際の冷却効果はやはりほとんどありません。

ところで皆さんちょっと疑問に思いませんか?走行風をエンジンに当てるだけで本当に冷やせるのかと。
はい、お察しのように空冷でも発熱量が大きいモデルは、フィンだけでは不十分な場合があります。そこでオイルクーラーというものが取り付けられたモデルがあるのです。

こんなパーツですね。ヤマハのXJRなどが代表格でしょうか。エンジンを走行風で冷やすだけではなく、このオイルクーラーにエンジンオイルを通し、こちらも走行風で冷却を行います。こちら拡大してみると、オイルクーラーにもたくさんのフィンがあり、表面積を稼いでいるのお分かりでしょうか? 元々オイルクーラーのないモデルでも後付けする人がいたりもしますね。
そんな空冷なのですが、やはり冷却水を使用していないため構造がシンプルなのが魅力です。比較的長寿命であるとも言われています。水冷に比べて温度の管理能力が低いため、熱膨張を考慮してピストンやシリンダーのクリアランスに若干余裕を持った設計となっているのです。
ただその温度管理能力の低さから排ガス規制に適合させることが難しく、近年急速に減少しています。
油冷の特徴
この空冷式をベースに発展させたのが油冷や空油冷と呼ばれるものです。
基本的な考え方や設計は空冷とほぼ同じと言って差しつかえないほどなのですが、よりエンジンオイルによる冷却を意識した設計となっています。
空冷の場合、エンジンに空気の当たらない部分は冷却しにくく、温度的に不安定という弱点があります。そこで熱を持ちやすい部分にはエンジンオイルを吹きかけて、内部から冷却するという方式を取っているのが油冷なのです。CB1100などはカタログ上では空冷と記載されているものの、油冷と言っても差し使えないほどエンジンオイルを積極的に冷却に利用しています。

現行モデルのスズキのジクサーは最新の油冷システムを採用しています。

ただ熱いところにオイルを吹き付けるというのではなくて、エンジンオイルをエンジンの周りの通路を通して冷却するという方式ですね。これは空冷というよりむしろ水冷に近いイメージです。排気量が小さく単気筒である場合においてはこの方法でも十分な冷却効果が得られるのでしょう。
水冷の特徴
そして最後、現時点で最も冷却効率が高く、温度を安定させることができる水冷です。走行風によりラジエーターを通る冷却水が冷やされ、その冷えた冷却水をエンジン周囲の流路に通すことによって安定した温度を維持することができます。

温度が一定の範囲内で安定しているため有害物質が発生しにくく、規制にも対応させやすいのです。
排ガス規制と聞くと、熱すぎると窒素酸物が多く発生してしまうからエンジンを冷やさなければならないと、冷却にばかり目が行きがちなのですが、実は温度が低くても別の有害物質である炭化水素が発生してしまうのです。ですので熱すぎても冷やしすぎてもいけないのです。水冷はこのちょうどいい範囲に維持する能力が高いのです。

またエンジンの周囲を冷却水が通っているため、エンジンのメカノイズが緩和されて騒音規制に対しても有利です。冷却水によって囲まれている構造をウォータージャケットと言ったりもします。

こういった排ガス規制や騒音規制の観点から現在新車で販売されているバイクのほぼ全てが水冷になっているというわけなのです。
まとめ
どうでしょう?エンジンの基本構造から始まり、気筒数や配列、バルブ駆動方式、冷却方式と、ギュッとまとめてみましたが、ご理解いただけたでしょうか?
この記事の内容は下の動画でも詳しく解説していますが、相当な情報量を詰め込んでいますので、ちょっと分からなかったっていう点については、繰り返しご覧になっていただけると幸いです。
それでは今回も最後までご覧いただきありがとうございました。
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元バイク屋のYouTuber。
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ちなみに中身はアラフォーのおっさん。
好物はサッポロ黒ラベルとキャベツ太郎だが、子どもができて以来、ふるさと納税で貰った無糖レモンサワーで節約している。
最近、血糖値と血圧を気にしているらしい。
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