寒いとなぜタイヤのグリップ感が希薄になるのか?
冬はタイヤのグリップ感が希薄……。バンクさせたら滑りそう……。暖かい時と走り方を変えているつもりはないのに、走っているとそんな気持ちになる。「もしかしたら気のせい?」と思い込みたくもなるが、ライダーが不安や怖さを感じる直感は大抵正しい。では、そんな不安な気持ちを解消する方法はあるのだろうか?
不安に感じる大きな要因はいくつかあるが、一番はタイヤのゴムが寒さで硬くなっているから。タイヤは暖まらないとグリップを発揮できなのだが、冬は夏ほどタイヤが暖まらないし、多少温まってもすぐに冷えてしまう。そしてサスペンションのオイルも寒ければ作動性が落ちる。
また、ライダーが寒さで硬直することも不安の要因。寒くてリラックスできないと腕に力が入りセルフステアを妨げてしまうし、曲がらない!と思うとさらに力が入って悪循環となる。詳細は下記参照。
なので、「冬はグリップ感が希薄になるもの」と割り切るのが得策。無理せず乗り方を工夫し、さらに冬の走りが快適になるグッズも活用したい。
理由はわからなくても「何だか怖い」と感じる直感は正しい。そんな時は無理せず、乗り方を工夫して不安を払拭しよう。また、ルート設定を海沿いなどにして標高の高い場所を避けるようにするのも楽しむポイント
冬の峠では融雪剤がまかれることも。これは塩化カルシウムで、サビの原因になりやすいため走行後はすぐに洗車を。また日陰は午後まで凍結していることもあるので注意
身体の力を抜けばタイヤのグリップを増やせる
冬の走りが不安な人は、まずは走りの組み立てを再考してみよう。バイク走りの面白さは確かにバンクすることにある。しかし、バンク時間が長い走りは冬に限らずリスキーで、決してポジティブではない。
峠ではカーブの手前でしっかり減速。そしてしっかり向きを変え、旋回は短めにして立ち上がるのがセオリー。冬は特にバンクさせない走りを心がけたい。
ブレーキやスロットル操作はもちろんだが、ベテランは身体の中の重心を移動させたり、前後の荷重配分を変えることグリップを増やそう。ただし、キャリアが浅いと荷重コントロールによるグリップを増やすライディングは難しいため、そんな時は身体の力をできるだけ抜くことを心がけよう。
身体の力を抜くだけで、バイクにしっかりと荷重がかかりタイヤのグリップが増えるし、ライダーの操作も伝わりやすくなるからだ。
冬はタイヤが暖まりにくいため、しっかりとタイヤを温める意識で走りたい。特に休憩後の走行は注意。後輪は高いギヤ&低い回転からスロットルを開けることで、フロントタイヤはブレーキングで揉むように温めよう
冬の走りに安心感をもたらしてくれるアイテムを活用しよう!
冬は、前途したテクニックや走りの工夫で安心感を得ることもできるが、そうはいっても限界はあるので、以下の機能やグッズに頼って不安のない走りを獲得したい。
その1 電位制御のモードを下げ、トラコンやABSなどの介入度は多めに
ライディングモードが装備されているバイクであれば、モードを下げて安心感を得よう。特にタイヤが冷え、身体が硬直している走り出しはこういったモードをフル活用したい。
その2 サスペンションをよく動くセットにしてみよう
サスペンションに調整機構がついていれば、プリロードや減衰力を少し抜いて、バイクがライダーの操作に対して反応しやすい状態にしよう。
その3 気温が低くなるとタイヤの空気圧が下がるので注意!
気温が下がると空気が収縮し、タイヤの内圧が下がる。空気圧が低いと暖まらない以前にタイヤが本来の仕事をできないため、ツーリングに行く前に確認しよう。
その4 曇り止めのシールドを使おう
冬はシールドが曇りやすくなるため、ピンロックなどの曇り止めシールドがおすすめ。頻繁にシールドの開閉をしなくて良いため、寒さ対策にもなる。
その5 グリップヒーターや電熱ウエアを使おう
冬は指先がかじかんで思い通りの操作が出来ない。また、分厚いグローブにより操作性の悪さを感じる方も多いだろう。そんな時にグリップヒーターがあれば薄手のグローブが使えるし、確実なレバー操作が可能。さらに電熱ウエアがあると、身体や腕の力を抜くことができるためタイヤのグリップを感じやすくなる。ただし、身体は暖まっていてもタイヤは冷えているので注意しよう。
その6 温度依存の低いツーリングタイヤを選択するのもあり
ハイグリップタイヤは温度依存が高いため、熱が入っていないとグリップを発揮できない。逆にツーリングタイヤは温度依存が低いため、冷たい路面でもグリップを感じやすい。暖かい時期もツーリングがメインなのであれば、このタイミングで「スポーツバイク=ハイグリップタイヤ」という概念を変えるのもあり。
冬は空気の密度が高まり、気持ちの良いエンジンフィーリングを味わえる季節。また澄んだ空気で景色がクリアに見えるメリットもある。テクニックだけでなく、色々や機能や物に頼って、身体とタイヤの硬さを和らげて冬の醍醐味を楽しもう。
投稿者プロフィール
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1974年、東京都生まれ。18歳からバイクライフをスタート。出版社に入社後、 20年以上バイク雑誌一筋で編集者生活を送り、バイク誌の編集長を8年ほど
経験。編集人生のモットーは、「自分自身がバイクに乗り、伝える」「バイクは長く乗るほど楽しい!」。過去 には、鈴鹿4耐などの様々なイベ
ントレースにも参戦。海外のサーキットで開催される発表会に招待いただくことも 多く、現地で試乗して感じたことをダイレクトに誌面やWEBに展開してきた。
2022年、フリーランスのモーターサイクルジャーナリストとして始動。