バイクに乗るときは、エンジンやブレーキなどの目に見える部分の点検をしっかり行うことが大切です。しかし、それだけでは十分とはいえません。
バイクには目に見える(分かりやすい)部分だけでなく、見えにくい(分かりにくい)部分にも消耗品がたくさんあります。
見えにくい消耗品は、走行によって摩耗や劣化していきます。特に、駆動系やブレーキ系の消耗品は、安全運転に大きく影響する部品です。
これらの消耗品は、交換時期を過ぎると、安全に走行できなくなる恐れがあります。そのため、定期的な点検と交換が欠かせません。
あなたのバイクの見えにくい消耗品、点検と交換は大丈夫ですか? この記事ではバイク歴40年の筆者が、自らの失敗談も交えながら、見えにくい消耗品について解説します。
あなたもこの記事を参考にして、見えにくい消耗品のメンテナンスをしましょう!
(トップ画像:フロントフォークオイルとオイルシールを交換中の筆者のバイク)
バイクの消耗品は2種類に分かれる
バイクの消耗品は、使用状況により劣化し、寿命が来たら交換が必要です。バイクはさまざまなパーツ(部品)や消耗品から成り立っており、その寿命(交換するタイミング)はそれぞれ違います。
消耗品には、定期的に交換が必要な消耗品と、使用状況により交換のタイミングが変わる消耗品の2種類があります。
定期的に交換が必要な消耗品
エンジンオイルやブレーキフルードなどは、定期的に交換が必要な消耗品です。走行距離はもちろん、乗らなくても一定期間が経過すると劣化するので、乗っていなくても定期的に交換が必要になります。
使用状況により交換のタイミングが変わる消耗品
スパークプラグやチェーン・スプロケットなどは使用状況により交換のタイミングが変わる消耗品です。乗らなければ劣化しにくいので、使用状況をチェックしておく必要があります。
見えないけど消耗品とは?
エンジンオイルやブレーキフルードは見えやすく覚えやすい部品なので、定期的に交換しているライダーが多いことでしょう。しかし、ブレーキパッドやベアリングなど、劣化や消耗が見えにくく分かりにくいパーツもあります。
見えにくく分かりにくパーツにこそ、注意が必要です。
駆動系
駆動系のパーツは、命に関わる重要な部品です。交換はプロに依頼しましょう。
チェーン
バイクのチェーンは、走行によって摩耗していく消耗品です。寿命は、走行距離や走行条件によって異なりますが、一般的には1万~3万km程度と言われています。
チェーンが摩耗したまま使い続けると、異音が発生したり、最悪の場合切れるなどのトラブルにつながりかねません。
スプロケットの上からチェーンを押して、ガタつきがあるようであれば摩耗しています。バイク屋さんなどプロに相談しましょう。
スプロケット
スプロケットもチェーンと同じように、走行により摩耗する消耗品です。スプロケットの寿命はチェーンより長いことが多く、一般的には1万~5万km程度が目安と言われています。
スプロケットが摩耗すると、チェーンの寿命を縮めかねないので、定期的な点検と交換が重要です。
できれば、チェーンとスプロケットを同時に交換するのが理想です。
筆者の失敗談…スプロケットの山(歯)が消えてカラ回り!
10年ほど前、愛機を運転中にリアタイヤ付近から「カカカカッ」と変な音がして、加速が鈍くなりました。
これは、リアスプロケットが摩耗しチェーンと噛み合ってなかった、つまりカラ回りしていたのが原因です。チェーンがいつ脱落してもおかしくない、とても危険な状態!
その頃、愛機には純正ではないアルミ製のスプロケットを入れてました。アルミは軽いけど、減りが早いのです。
行きつけのバイク屋の親父さんに「いつも点検しろ! そしてスプロケットを(純正の)硬いスチールに戻せ!」と怒られてしまいました。
足回り・ブレーキ系
足回り・ブレーキ系も、命に関わる重要なパーツです。交換の際は、バイク屋さんなどプロに依頼しましょう。
ベアリング
ベアリングは、回転部品(ホイール)の軸を支える部品です。
ベアリングは、走行によって摩耗や劣化していきます。特に、ホイールベアリングは、路面からの衝撃を吸収する役割も担っているため、走行距離が多ければ劣化は早い傾向です。
ベアリングが劣化すると、ハンドルがブレたり、バイクがふらついたり、異音が発生したりするなどの症状が現れます。
違和感を感じたら、早急にバイク屋さんなどのプロに相談してください。ベアリングも命に関わる足回り関連のパーツです。メンテナンスはバイク屋さんなどのプロに任せるのがよいでしょう。
ハブダンパー
ハブダンパーとは、車輪の中心部(ハブ)に組み込まれる緩衝材(ダンパー)です。伝達機構のバックラッシと回転部品の慣性によって発生するトルクの揺動を吸収する構造となっています。
ハブダンパーも経年劣化します。しかし、常に点検ができないパーツのため、ブレーキなどのメンテナンスで車輪を外す際に点検するとよいでしょう。
ブレーキパッド
ブレーキパッドも、走行により摩耗していく消耗品です。寿命は、走行距離や走行条件によって異なりますが、一般的には3,000km~10,000km程度と言われています。
ブレーキパッドが減ると、異音が発生するばかりか、ブレーキの効きが低下するのでとても危険です。
最低でも月に1度は点検し、ブレーキパッドの残量を確認しましょう。ブレーキパッドの残量が1mm以下になったら交換を検討しましょう。
ディスクローター
ディスクローターも、ディスクパッドほどではありませんが減ります。厚みがメーカー規定値よりも薄くなると、ブレーキの効きが低下するので危険です。
バイク屋さんなどのプロに、専用の計測器具でディスクローターの厚みを測ってもらいましょう。
エンジン系
エンジン系で重要なのはスパークプラグです。これが劣化すると、エンジンの性能を引き出すことができません。
スパークプラグ
スパークプラグは、走行によって電極が摩耗したり、カーボンが付着したりして劣化していきます。寿命は、走行距離や走行条件、バイクにより異なりますが、一般的には3,000km~5,000km程度が多いようです。
スパークプラグが劣化すると、エンジンの不調や燃費の悪化などにつながります。規定の走行距離に達したら、プラグを抜いて電極の摩耗やカーボンの付着などの状況を点検しましょう。
サスペンション系
フロントフォークオイルやフロントフォークのオイルシールにも気を配りましょう。フロントフォークのメンテナンスは、バイク屋さんなどのプロに任せるのが安心です。
メンテナンスには時間がかかるので、事前に予約を入れましょう。
フロントフォークオイル
バイクのフロントフォークには、オイルが封入されており、このオイルが減衰力を発生させクッションの役割をしています。
フロントフォークオイルは、走行によって劣化していきます。劣化したオイルをそのままにしておくと、減衰力が低下して走行性能や乗り心地が悪くなりかねません。
フロントフォークオイルの交換時期は、車種や走行条件によって異なりますが、一般的には5,000km~10,000km程度が目安と言われています。
フロントフォークオイルシール
サスペンションの役割を担うフロントフォークには、オイルが漏れ出ないようにするためのオイルシールがあります。
フロントフォークオイルシールも、走行によって摩耗していきます。摩耗したオイルシールは、オイル漏れの原因になりかねません。
オイル漏れは、フロントフォークの減衰力が低下するばかりでなく、漏れたオイルがタイヤに付着したらとても危険!
オイル漏れを起こす前に交換しましょう。
目安は走行10,000km~20,000km程度です。
ホース・ワイヤー系
バイクにはさまざまなホースやワイヤーがあります。メンテナンスで見落としがちなのはブレーキホースやスピードメーターワイヤー、クラッチワイヤーです。
ブレーキホース
ブレーキレバーからブレーキキャリパーまで、ブレーキフルードを送る役割を担っているのがブレーキホースです。多くは樹脂製です。
樹脂製のブレーキホースは、走行により劣化します。経年によっても少しずつ劣化します。
樹脂製ブレーキホースの交換時期はバイクや走行条件によって異なりますが、一般的には4年~5年程度です。
画像で紹介しているステンレス製ブレーキホースは樹脂製に比べ寿命が長いうえ、劣化・膨張しにくいのでブレーキの制動力アップを期待できます。筆者はステンレス製ブレーキホースに換えました。なかなかイイですよ。
交換は、バイク屋さんにお願いしましょう。
スピードメーターワイヤー
スピードメーターワイヤーは、フロンタタイヤホイールの回転をスピードメーターに伝える役割を担っています。
スピードメーターワイヤーの摩耗や劣化が進むと、スピードメーターが正しく作動しなくなったり、切れたりするなどのトラブルにつながります。
定期的にワイヤーのオイルアップや接合部のグリスアップをしましょう。
筆者はメンテナンスをサボったために、スピードメーターワイヤーを1年で切ってしまったことがあります。
読者の皆さんは筆者と同じような失敗をしないようにしてくださいね。
クラッチワイヤー
クラッチにはワイヤー式と油圧式があります。ここで説明するのは、ワイヤー式のクラッチについてです。
クラッチのメンテナンスが悪かったり劣化が進んだりすると、クラッチが重くなります。
操作性の悪さは、安全運転のためによくありません。もしもクラッチワイヤーが切れてしまったら、走行不能になってしまいます。
1〜2ヶ月に一度は、クラッチワイヤーの中にオイルを浸透させましょう。重くなったと感じたときや、違和感を感じたときもメンテナンスのタイミングです。オイルアップをすれば、クラッチワイヤーの寿命を伸ばせます。
クラッチワイヤーを点検をするときは、同時にクラッチの遊びも調整しましょう。
電装系
バッテリー
バイクのバッテリーの寿命は一般的に2〜3年と言われていますが、バイクの車種や乗り方により寿命は変わります。
バイクのバッテリーにとってよいことは、なるべく長い時間バイクに乗ることです。
バッテリーは、自然放電していきます。また、寒い季節には放電しやすくなります。
長期間バイクに乗らなかったり、短時間のライディングを繰り返したりすると、バッテリーの寿命を縮めることになりかねません。
実はつい最近、筆者は愛機のバッテリー上がりを経験しました。原因は通勤で5分以内のライディングを繰り返したからです。
そういえば、長距離ツーリングを2ヶ月ほどしていませんでした。バイクのバッテリーのためには、30分以上のライディングがよさそうです。
ヒューズ
ヒューズにも注意が必要です。ヒューズは走行による熱や振動で徐々に劣化します。
3年前後を目安に交換しましょう。
自分のバイクのヒューズボックスがどこにあるのか、知っておくことが大切です。
その他
燃料パイプ
ガソリンタンクからエンジンまで、ガソリンを送る役割をしているのが燃料パイプです。多くは樹脂やゴムでできており、経年により劣化します。
劣化により亀裂や破損が発生したら、とても危険! ガソリンが漏れたら火災につながりかねません。燃料パイプは5年前後を目安に交換することをおすすめします。
筆者の経験談…燃料パイプに亀裂!
筆者は燃料パイプの亀裂を経験したことがあります。バイク屋さんに愛車のタンク系メンテナンスを頼んだ際、タンクを外したときに燃料パイプの亀裂を発見してくれたのです。燃料パイプなんて、買ってから(10年間くらい)一度も見たことがありませんでした。
あのまま知らずに走り続けていたら…と思うとゾッとします。1年に一度は燃料パイプを点検しましょう
ハンドルグリップ
ハンドルグリップ(アクセルグリップ)も徐々に劣化します。しかし、多くのライダーは、徐々に劣化している事実に気が付きにくい場合が多いです。
たまには、バイク屋さんで新車のグリップを握らせてもらいましょう。新車のグリップは弾力があり、握りやすいと感じます。
新車と比較して、あなたの愛機のハンドルグリップが硬く感じるなら、劣化しているといえます。
硬くなったグリップは握りにくく、疲労につながります。雨天時は滑ることもあり危険です。1〜2年を目安に交換を検討しましょう。
見えにくい消耗品の交換時期は?
この記事で述べてきた「見えにくい消耗品」の交換時期は、バイクの乗り方や部品の特性(素材など)により変わります。消耗品はネットで調べたり、バイク屋さんに質問したりして、知っておきましょう。
重要なことは、定期的に点検することです。点検をかねて洗車することも有効です。バイクを丁寧に洗車すれば、バイクの異常箇所を発見できます。
一番いけないのは乗りっぱなし、ほったらかしです。
バイクの消耗品を交換したら記録しよう!
あなたのバイクの消耗品やパーツを交換したら、必ず記録を残しましょう。次回のメンテや交換のタイミングを予測するためにも、記録は重要です。
- 消耗品(パーツ)の名前
- 日時
- 走行距離
上記1〜3のほかに簡単なコメントも記録しておくと、次回交換する際に役立ちます。
記録はスマホのメモ帳が便利です。筆者はiPhoneのメモ帳に全て記録しています。
見えない消耗品も点検交換してバイクの寿命を伸ばそう!
バイクには、エンジンやブレーキなどの目に見える部分だけでなく、見えにくい部分にも消耗品がたくさんあります。
これらの消耗品は、走行によって摩耗や劣化していきます。特に、チェーン・スプロケットやブレーキパッド・ディスクローターは、安全運転に大きく影響するパーツです。
見えにくい消耗品は、交換時期を過ぎると、安全に走行できなくなる可能性があります。そのため、定期的な点検と交換が欠かせません。
点検は、自分で行うことも可能ですが、交換はバイクショップに依頼することをおすすめします。
定期的な点検と交換をすることで、バイクの安全性と寿命を延ばすことができます。見えない消耗品もしっかりメンテナンスして、あなたの愛機の寿命を伸ばしましょう!
この記事が読者の皆さまのお役に立てば幸いです。
皆さまのバイクライフを応援しています。
投稿者プロフィール
-
熊本県在住。生まれも育ちも熊本。
阿蘇をこよなく愛する生粋の熊本人。
昭和の時代に限定解除し、原付/中型/大型の所有歴あり。
現在の愛機はKawasaki 250TR。
愛機250TRで一日500km(下道)を走破することもある、元気おやじライダー。
「安全第一、無事帰る」をモットーに、今も安全運転を模索しながら走り続けている。
最新の投稿
- ツーリング2024年11月14日【地元ライダーが選ぶ】熊本県のおすすめロードとツーリングスポット&グルメ7選
- お役立ち2024年11月9日秋冬のツーリングウェアはコレ!気温15℃前後の服装をベテランが伝授
- コラム2024年11月3日違うジャンルのバイクに乗り換えて良かったこと、しんどかったこと
- コラム2024年10月12日【好きを仕事に】未経験からでも始められるバイク系ライターの成功方法とスキル