はい!元バイク屋のフォアグラさんです、こんにちは。
ご存知の方も多いと思いますが、あの名車CB400SUPER FOURが2022年11月までに生産終了するとのことです。
不人気でラインナップから消え去ってしまうのは致し方ないことなんですけれども、人気があって売れ続けているにもかかわらず、姿を消してしまうというのはなんとも歯がゆいものがありますよね。
というわけで今回は、惜しまれつつ消え去っていく400cc4気筒ネイキッドにフォーカスを当てて解説をしましょう。
400ネイキッドのマイルストーン CB400SUER FOUR
ではまずCB400SUPER FOURの魅力というものを改めて考えてみましょう。(ここからは便宜上「CB400」 と呼びます)
自分を含め、初めて自分で運転したいわゆる「大きいバイク」が、このCB400という人も多いのではないでしょうか?
さすが教習車として採用されているだけのこともあり、非常にクセのないハンドリングに自然なタッチのブレーキで、教習の最中はバイクの良し悪しがわかるほど経験もなく気付くことができませんでしたが、乗りやすかったですよね。
ちなみに教習仕様車はエンジンの出力特性やブレーキ・サスペンション等も違っていて、一般に市販されているモデルよりさらに扱いやすくなっています。
そして一般に市販されているCB400に関して。特にリッタークラスのスポーツバイクに乗っている人なら感じやすいと思うのですが、メチャクチャ扱いやすいだけでなく、メチャクチャ速いんですよね。
もちろん、普段から乗っている100馬力以上の大型バイクの方が速いに決まっています。でも確かにCB400は速いんです。
アクセルを開けること、ブレーキを引くこと、車体を倒すこと、すべてにおいて恐怖感がなく自然に無意識に動く、自分が意図とした通りにそう、そしてその意図の範囲を決して超えることはない。結果、速いんです。
そしておそらく普段は250ccなど、CB400よりも小さいバイクに乗ってる人にも、このCB400は意外と乗れてしまうのだと思います。
実際、自分が勤めていたひとつのバイク屋では、代車としてCB400を使用していました。250ccのバイクの預かり修理の時などで、最初は「久しぶりに400は怖い」なんていう人は少なくないんですけれども 、後日バイクを返しに来ると、「やっぱCBは良いし、乗りやすい」なんて言って返しにきました。
しかしCB400に負けない素晴らしい名車が他にもたくさんあったんです。ではそんな名車たちは振り返ってみましょう。
CBのライバル達 カワサキ編
カワサキが出した400cc4気筒ネイキッドといえばZRX400とZEPHYR(ゼファー)とZEPHYRχ(ゼファー カイ)で、この3車種の中で唯一の水冷エンジンを搭載しているのがZRX400です。
ZRX400 & ZRX-Ⅱ
往年のローソンレプリカZ1000Rを彷彿させるスタイルです。そしてスタイルだけでなく、性能面でも定評のあるカワサキの水冷4気筒エンジンのZX400KEは高回転までストレスなくて一気に吹け上がる、カワサキらしさを存分に堪能できるエンジンです。
80年代90年代のカワサキのエンジンらしくカムチェーンのメカノイズが大きいですが、多くの場合トラブルというわけではなく、それも含めて当時のカワサキらしさとして楽しんでください。
ちなみにこのZRXのスタイルは、ツボにハマる人には思いっきりハマりますが、苦手な人には苦手で、そこで発売の次の年にZRX-Ⅱという丸目ヘッドライトを装着したモデルを発売しました。ですが、やはり四角いヘッドライトにビキニが付いているモデルの方が人気はありました。
ZEPHYR & ZEPHYR χ
そしてZEPHYR(ゼファー)とZEPHYR χ(ゼファーカイ)。
これはどちらも空冷エンジンなのですが、最初に発売されたのはZEPHYRです。レーサーレプリカブームの末期の1989年に登場し、高性能なスポーツバイクに疲れたユーザーの受け皿として人気を博しました。
このZEPHYRは絶対的な性能へのこだわりを捨て、外観の美しさや乗りやすさに特化していたので空冷2バルブエンジンを採用。
そして96年にモデルチェンジが行われZEPHYR χとなってエンジンは4バルブ化し、外観の美しさだけでなく性能にも磨きをかけました。
今このZRX、ZEPHYR、ZEPHYR χの全てが価格高騰していて、状態が良ければ100万円を超えてきますね。
カワサキは個性的な外観と性能のZRX、美しさのZEPHYRと、その立ち位置を明確にしてCBを迎え撃ちました。
ZANTHUS
実は高性能な走りに特化したZANTHUS(ザンザス)というバイクもあったんですが、こちらは販売面では大コケしました。
現代で言うところのストリートファイターともいえるコンセプトでしたけれども、当時はそのコンセプトそのもの、さらに、なんといってもあまりにも奇抜なデザインは受け入れられませんでした。
CBのライバル達 スズキ編
スズキの400cc4気筒ネイキッドは水冷のBandit(バンディット)400とGSX400 IMPULS(インパルス)、そして油冷のイナズマ 400というバイクがありました。
2000年代に入るとGSR400 という先進的で高性能のネイキッドも発売になりますが、こちらは先ほどお伝えしたザンザスと同様にストリートファイター的なバイクでもあったので、オーソドックなネイキッドとは少しイメージが異なります。
スズキもカワサキ同様、優等生的であるCBを迎え撃つために個性を明確にしています。やはりCBの完成度が高かったためか、優等生同士で勝負してもなかなか勝つことは難しかったのかもしれませんね。
Bandit400
まずBandit400。このBanditは250ccと400ccがあって、車体構成が共通なんです。ということは当然400としては軽いということになります。さらに軽いということは速いということでもあります。
そう、このBanditはとても速いバイクだったんです。
一般的なバーハンドルとレーシーなセパレートハンドルを選ぶことができたということからも想像できますよね。
そしてBadit400には「VCエンジン」と言う可変バルブ機構を搭載したエンジの400Vというモデルも存在しました。
可変バルブといえばCB400にも搭載された、ホンダのHYPER VTECが有名ですが、このVCエンジンとHYPER VTECエンジンは少し違い、ちょっとマニアックな話になってしまうので、今回は割愛します。
そんな感じで、このBandit400は競合する車種と比べても、速さや軽さに特化した車種と言えるかと思います。
GSX400 IMPULS
また、同じく水冷エンジンを搭載した3代目GSX400 IMPULUS。このIMPULSはとてもオーソドックスな外観のネイキッドで、これぞネイキッドといったデザインですね。
ちょっと旧車チックでボリューム感のある車体。一見スズキとしては珍しく大きな個性がないようにも思えます。
ただこのバイクは、Banditと違って性能や特別な機構というわかりやすい個性ではなく、言ってみれば徹底的に「オートバイらしさ」にこだわっているいうのが個性じゃないかなと自分は考えます。カスタムの素材としても変な癖がない分、いじり甲斐もあります。
そして決して性能も劣っているわけではなくて、むしろトルクフルな水冷エンジン、年式によってはブレンボキャリパーも装備されていて、性能も平均以上と言えるかもしれません。
この400クラスとしてはボア/ストローク比が0.9と比較的ロングストローク気味の設計です。ちなみにちょっと驚きなのが、実はこのインパルスのエンジンのベースなっているのはカタナ400なんですね。
イナズマ 400
最後に紹介するのはイナズマ400。個人的にすごく好きな一台です。
このイナズマの特長は何といってもそのデカさ。なんとこのイナズマは1200ccのモデルと車体構成が共通なんですね。
当然デカい。どう見ても大型バイクそのものです。
確かに1200のイナズマはリッターバイクとしては割と小柄な方ではありますけれども、それを差し引いても余りにもデカ過ぎます。
スズキってコストカットのためなのか、このようなことを他の車種でもよく行っているんですよね。ですので体が大きくて、「ちょっと普通の400だと少しカッコつかないんだよなぁ」なんて考えている方にはうってつけですね。
さらに特徴的なのがこのバイクは水冷でもない空冷でもない油冷というスズキならではの冷却方式を採用しています。
この油冷というのは基本的には空冷と同じように走行風を利用して冷却を行いますが、エンジンオイルを効果的に使い冷却効率を高めた方式です。水冷よりもシンプルな構造で、空冷よりも冷却効率がいい、そんな冷却方式が油冷です。
そんな外観も中身もスズキイズム全開の個性派ネイキッド、それがこのイナズマというバイクなんです。個人的には丸目のオーソドックスな外観のネイキッドの中でイチ推しの一台ですね。
CB400最大のライバル? XJR400
最後はCB400の最大のライバルだったと言って良いでしょう、ヤマハのXJR400(XJR400Rも便宜上を同様にXJR400と呼びますのでご了承ください)。
このXJRの最大の特徴は空冷であることと、空冷でありながら水冷のライバルたちに遜色のない性能を備えていたということですね。
また、モデルや年式にもより、ライセンス生産品との話を聞きますけれども、ブレンボのキャリパーやオーリンズのサスペンション(ヤマンボやヤマリンズなんて揶揄される)が奢られています。
確かに特別高品質と感じたことはありませんが、一般的なサスペンションやブレーキキャリパーが付いているよりも所有感があっていいですよね。
そして実際に乗ってみると 非常にハンドリングが素直で扱いやすいのです。
今まで紹介したカワサキやスズキの車種はどちらかというとCB400に対して違いを明確にしている印象でした。
すべてにおいて高性能なCB400に対し、その中でも「軽さだったらウチだよ」とか、 「エンジンだったらウチだよ」といったように長所が明確でしたよね。ところがこのXJRはどちらかというと乗り味はCBに寄せてきている印象です。
その上でCBに対して空冷のフィンの美しさや、先ほどお伝えした高級海外ブランドのブレーキキャリパーやサスペンション。
水冷のエンジンでもフィンがついているものがありますが、あれは見せかけだけの作り物です。
やはり実用物としての美しさ。XJRの本物のフィンはまさに機能美といえ、水冷エンジンの飾りでしかないフィンとは違いますよね。
人気車XJRが生産終了になったワケ
しかし個性でもあった、この空冷であることが、実はXJR 400の寿命を縮めてしまっていたんです。人気車種であったにも関わらず2008年に生産終了となったその最大の理由は、空冷であるがゆえに排ガス規制に対応できなかったということです。
よく空冷は排ガス規制に対応できないと言われますが、その理由をご存知でしょうか? これだけが理由というわけではないのですが、それはエンジンの温度が不安定になってしまうことや、金属の熱膨張によります。
みなさんご存知のようにエンジンなどに使われる金属というものは、熱によって膨張し体積が変動します。エンジンは高熱のものですから当然その影響を大きく受けるわけですね。
つまり設計段階からその膨張を計算に入れるわけなのですが、空冷だと水冷に比べどうしても温度を一定に安定させることができないので、設計上余裕を持たせる必要が出てくるわけですね。
とすると、その余裕を持たせた隙間からエンジンオイルが燃焼室に侵入し一緒に燃えてしまうことや、有害物質が発生してしまいます。
ですので、実際にこのXJRはよくオイルが減るという現象が起こりやすい車種なんですね。
またオイルの燃焼だけでなく、常に理想に近い温度に保つことができる水冷に比べ、どうしても空冷エンジンだと綺麗に燃焼しきることができません。
温度が不安定ということは温度が低かった場合はガソリンがうまく気化されず、炭化水素が発生してしまいます。とはいえ温度が高かった場合も、それはそれで窒素酸化物を大量に排出してしまいます。
この炭化水素も窒素酸化物もどちらも排ガス規制の対象となっている有害物質なので、もうどうにもならないんですね。
ですのでこの空冷という冷却方式は排ガス規制に対応させることが非常に難しく、水冷であったCBよりも随分と早い段階でその姿を消してしまったんだと考えられます。
他にも騒音規制の問題や、キャブレターだったこと、ヤマハが国内専売モデルを廃止する方針に切り替えたということなども挙げられますが、最大の理由は「空冷であったこと」これに尽きるでしょう。
ちなみに兄貴分でありグローバルモデルだったXJR1300は、インジェクション化や排気デバイスを変更することでなんとか2017年まで延命しています。
まとめ
というわけで今回はCB400SUPER FOURの生産終了という悲しいニュースから、90年代以降の400cc4気筒ネイキッドを振り返ってみましたがいかがでしたか?
ちなみに今この400cc4気筒のバイクは恐ろしいほど値上がりしています。100万円オーバーの個体もザラにありますし、現在所有していて乗り換えや売却を検討しているのであればチャンスかもしれません。
リッタークラスの外車スポーツや国産逆輸入のメガスポーツなどは全くと言っていいほど値上がりしてないので、今この差額を利用して乗り換えるのも手だと思います。
400ネイキッドを高く買ってもらえる今のような状態であれば、追い金なしで大型免許の取得費用と、リッタークラスの外車に乗り換えることもできるかもしれませんよ。
今回の記事はこちらの動画でも詳しく説明していますので、こちらもご視聴いただけると嬉しいです。
では最後までご覧いただきありがとうございました。
投稿者プロフィール
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元バイク屋のYouTuber。
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ちなみに中身はアラフォーのおっさん。
好物はサッポロ黒ラベルとキャベツ太郎だが、子どもができて以来、ふるさと納税で貰った無糖レモンサワーで節約している。
最近、血糖値と血圧を気にしているらしい。