ピレリ ディアブロ スーパーコルサ、強さの秘密
スーパーバイク世界選手権(以下、SBK)は様々な市販スポーツバイクが戦う場所。プロトタイプのマシンが戦うMotoGPほど成熟したカテゴリーでなく、ライダーのレベルも様々。元MotoGPライダーもいれば、若いライダーもたくさんいる。トップカテゴリーのSBKはもちろん、国産600ccスーパースポーツやドゥカティのパニガーレV2などが走るWSSP、そしてニンジャ400やYZF-R3が走るSSP300まですべてのクラスでピレリタイヤが使われている。
同じクラスでも排気量やフレーム形式、重量、そしてライダーが変わればタイヤに求められるものは変わり、ピレリは20年間もこのフィールドで開発を続けている。多くのバイク&ライダーにフィットさせるタイヤづくりは、必然的に間口の広いものとなり、それは趣味でバイクに乗る我々にとっても大切なことだ。
どんなバイクに履いてもスッと溶けこみ、相性の良さを見せる歴代スーパーコルサシリーズの強さは、この開発背景が大きく影響している。2023年のSBK開幕戦で開催されたスーパーコルサV4のアジアローンチに参加するため、久しぶりにオーストラリアのフィリップアイランドを訪れて、そのことを痛感した。
まずは青い空と海に包まれるフィリップアイランドを堪能する
第四世代となったスーパーコルサV4のアジアローンチを、SBK開幕戦のフィリップアイランドで開催するのもピレリならでは。週末にレースを観戦し、月曜日にスーパーコルサV4の試乗会が行われる豪華なスケジュールだ。
土曜日は生憎の天気で寒かったが、日曜日は晴天に。青い空と海がフィリップアイランドらしさを象徴する。驚いたことにサーキットの入出場に渋滞はまったくない。観客は少なめで、年齢層は日本よりはるかに高く、イメージとしてはみんな10年以上SBKに通い続けているような感じ。停車しているバイクも新しいモデルは少なく、古めのバイクが目立つ。自由な観戦スタイルということもあり、コース上以外はゆったりとした時間が流れているような気がした。
SBK開幕戦はドゥカティが圧勝。SBKではアルバロ・バウティスタが3連勝、WSSPではニコロ・ブレガが2連勝、オーストラリアSBKではジョシュ・ウォータースが3連勝を上げた。
この夜、スーパーコルサV4のプレスカンファレンスを実施。レース用のスーパーコルサV4 SC、そして公道向けのスーパーコルサV4 SPともに大きく刷新していることがよくわかった。
SBK参戦20年目の集大成。バイクとライダーの一体感はさらに向上!
ディアブロ スーパーコルサV4の試乗会当日、SBKの余韻が残るピットに行くとスーパーコルサV4 SC1を履いたBMW S1000RRが並んでいた。僕はフィリップアイランドを走るのは、2017年のGSX-1000Rの試乗会以来、2回目。このコースはとにかく速度域が速い。他のコースにはないほど高速コーナーが多いのだ。
そんな中でスーパーコルサV4 SC1を履いたBMW S1000RRは見事なラインのトレース性を披露。慣れないコースに僕の身体と目を優しく順応させてくれる。
1コーナーからケイシー・ストーナーコーナーまでは超高速セクションで気が抜けない。2コーナーを立ち上がり、4、5速とスロットル全開のままシフトアップ。少しアクセルを戻して向きを変えてケイシー・ストーナーコーナーに進入。すぐにフルバンク状態になり、すかさずスロットルを全開にする。ちなみにこの時、膝を擦りながらメーターを見たら220km/hだった。SBKライダーたちは、一体何km/hで走っているのだろう……。
こんな速いコーナーは他のサーキットでは経験できないのだが、不思議と大きな不安はなく自信を持ってS1000RRと向き合えている自分がいるのだ。その後、このコースにしては小さなコーナーを2つクリアすると再び高速区間に。完全にバイクとタイヤを信頼して、前後輪にドンッと体重を預け旋回に持ち込む。するとバイクとの猛烈な一体感が訪れるのである。それは快感でしかない。
積極的に荷重を与えるほど応えてくれる
少しずつペースを上げていくと、V3よりも剛性感の高い感じが心強い。僕はプロライダーではないからそれほどフロント荷重を強められないし、スロットルも開けられないが、バイクとの信頼関係がどんどん強まっていくフィーリングにワクワクする。
強めにブレーキを残してもハンドリングに重さはなく、バイクが直立した状態から向きを変える過程での過渡特性がよく、安心してバンクすることが可能。向きが変わるのが早いため、加速時に余裕が生まれ、コーナーによってはトラクションコントロールを適度に介入させながら驚くほど力強い加速を披露してくれる。前後のバランスも向上していて、バイクを軽く、コンパクトに感じさせてくれるもの良い。
15分×3本を走行したところで雲行きが怪しくなり、試乗会は終了。実は今回は空気圧が少し高めで、温感でフロントが250kPa、リヤが230kPaという設定だった。フィーリング的にも下げてみたかったが、そのあたりは日本でも試してみたい。日本上陸は7月頃とのこと。ピレリが20年間続けてきたSBKのテクノロジーの集大成を、多くのライダーに体感していただきたい。
DIABLO SUPERCORSA V4 SC
フロント
110/70R17 54V SC1/SC3
120/70R17 58V SC1/SC2/SC3
リヤ
120/70R17 58V SC1
140/70R17 66V SC1/SC3
150/60R17 66V SC3
180/60R17 75V SC1/SC2/SC3
190/55R17 75V SC2
200/55R17 78V SC1/SC2/SC3
200/60R17 80V SC1/SC3
一般道を重視したスーパーコルサV4 SPも大幅刷新
ピレリがSBKで培った技術を投入した最高峰のストリートタイヤがスーパーコルサV4 SPだ。SCよりも温度依存性が低く、ウォームアップ性が早く、耐久性も高い。タイヤウォーマーを使わなくても安心して使うことができる。プロファイルはSCと共通だが、前後にデュアルコンパウンドを採用し、ショルダー部分はSC3コンパウンドを奢る。今後、様々なバイクに純正採用されていくはずだ。
DIABLO SUPERCORSA V4 SP
フロント
110/70ZR17 54W
120/70ZR17(58W)
リヤ
140/70ZR17 66W
150/60ZR17 66W
180/55ZR17(73W)
180/60ZR17(75W)
190/50ZR17(73W)
190/55ZR17(75W)
200/55ZR17(78W)
200/60ZR17(80W)
ハイグリップタイヤの王道が第4世代に進化!
物凄いバランス感覚を持っているなぁと思う。
投稿者プロフィール
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1974年、東京都生まれ。18歳からバイクライフをスタート。出版社に入社後、 20年以上バイク雑誌一筋で編集者生活を送り、バイク誌の編集長を8年ほど
経験。編集人生のモットーは、「自分自身がバイクに乗り、伝える」「バイクは長く乗るほど楽しい!」。過去 には、鈴鹿4耐などの様々なイベ
ントレースにも参戦。海外のサーキットで開催される発表会に招待いただくことも 多く、現地で試乗して感じたことをダイレクトに誌面やWEBに展開してきた。
2022年、フリーランスのモーターサイクルジャーナリストとして始動。