はい!元バイク屋のフォアグラさんです、こんにちは。
さて今回は峠(ワインディング)で楽しいバイクや、安全な楽しみ方について解説をします。
このご時世に峠なんていうテーマでお話しすると、反応が荒れそうな気もしなくはないですが、フォアグラおじさんが若かりし頃はまだヤンチャな走りをしているライダーも少なくありませんでした。
「峠なんて興味ねぇわ。スピード出したいヤツはサーキットでやってろ」て思われる方も多いと思いますし、自分もそういった考えです。本来峠は「速く走る」ことには関係なく、楽しく気持ちよく走れる、最高にツーリングに向いた道なのです。そしてそんな峠を楽しく走れるバイクの中には、ライダーを育ててくれるバイクが数多く存在するのです。
そんな峠で楽しいバイクや、今のワインディングの楽しみ方を早速解説していきましょう。
峠で楽しいバイクの条件
ではまず峠で楽しいバイクとは、どのようなバイクなのかということについて解説をしていきます。簡単に言うと走る・曲がる・止まるという基本的な性能がしっかりしているバイクです。
走る性能が高いと言うと1000ccを超える排気量とか、180馬力なんていう数値的なイメージをしてしまう方がいるかもしれませんが、当然こんなパワーは常人が扱いきれるものではありません。ましてや公道上でそんな圧倒的なパワーを発揮できるところもなく、発揮 しようものなら命と免許はいくつあっても足りません。
大きな排気量とパワーというのは、走りに余裕を持たせるものであり、決して発揮させるものではないのです。ある程度のパワーがないと走る性能が高いとは言えませんが、絶対的な速度だけで言えば250ccや400ccでも十分な速度域に到達します。ただ、やはり出力の低いバイクの場合は、登りコーナーでの立ち上がりの際には物足りなさを感じることはあると思いますけどね。
公道である峠において大事なのは、走るパワー以上に曲がる・止まる性能です。そしてこの曲がる・止まるに共通する最も重要な要素、それは車体の軽さです。
車体が軽ければ倒し込みも倒しやすくなり、ブレーキも当然よく効くようになります。なんならパワーがなくても、車体が軽ければ加速性能も良くなります。ですのでこの軽さというのは非常に重要。
実際にタイトなコースや下りでは、200馬力近い1000ccのスーパースポーツよりも、600ccや中型クラスの方が意外と速いタイムが出たりもします。もちろん公道で競走なんかしちゃだめですよ、念のため。
それともう1つ重要な要素があります。スポーツタイプかどうかということです。軽量なバイクだったとしても、あまり峠で走りを楽しめないバイクというものもあります。
オーナーの方がいたら申し訳ないのですが、例えばドラッグスター250。このバイクは確かに軽いのですが、ワインディングをテンポよく気持ちよく走れるかと言うと、あんまりそういった走りには向いていません。「最低限のパワーはあるし、車体も軽いのになぜ?」と思われるかもしれませんが、このバイクはホイールベースが1,530mmと長く、腰の位置も低いので、ちょっと曲がりにくいバイクなのです。
このホイールベースというのは前輪と後輪の距離のことを言い、長ければ長いほど直進安定性が高まる反面、旋回性能は低くなります。キャスター角も35°と深く寝ているため、お世辞にも峠で楽しいバイクということは難しいでしょう。中にはこういったバイクでこそ綺麗に走らせるのが楽しいなんていう方もいるようですけど、一般論として聞いてください。
では逆に、峠最速との呼び声高い2スト250ccのレプリカ、ホンダのNSRやヤマハのTZR などがありますが、これらは走って楽しいバイクなのでしょうか?まさに上記のドラッグスター250の対極とも言えるようなバイクが、でもこれはこれで、実は「誰もが走って楽しいか?」と言われると、その解釈は難しいところです。
初心者でも峠を楽しく走れるバイクとは?
では多くの人が峠を楽しく走ることができるバイクというのはどのようなバイクなのか? そして初心者が乗っても楽しめ、かつ速いバイクについて解説をしていきます。
2ストレプリカは上級者向け?
まず先ほどお伝えした、かつての峠の王者2スト250レプリカ。峠といえばNSR・TZR・ガンマといったバイクを連想する方も多いと思いますが、このようなバイクは正直誰もが楽しく走れるようなバイクとは言えません。
超高回転型で扱いの難しい2ストロークエンジン、クイックなハンドリング、きつめのライディングポジションにゴムマットのようなペラペラのシート。お世辞にも乗りやすいものとは言えず、あまりにも本気すぎるため、このようなバイクを楽しいと感じることができるのは、ある程度以上のライディングスキルを持ち、かつスポーツバイクの特性を理解している方に限られるでしょう。これらのバイクが販売されていた当時、峠では現代の感覚で言う暴走行為が常態化していましたからね。
近年においては排ガス規制もあり、そんなカリカリのスポーツバイクは作られていません。
おすすめなシングルスポーツ
しかし経験が高くなくとも走りを楽しめるユーザーフレンドリーなバイクというのは増えています。例えばCBR250Rというシングルスポーツバイク。かつて1980年代後半に発売された同じ名前のCBR250Rは4気筒でしたが、こちらは単気筒で、全くの別物です。
当然昔のモデルの方が圧倒的に性能は高いため、昔を知る人からは「こんなのCBR250じゃねえ」なんていう声も聞かれましたが、これはこれで誰もが楽しめる良いバイクなのです。
単気筒ということもあり前期型27馬力、後期型29馬力と控えめ、トルクもフラットで扱いやすいこのエンジンは、後にクルーザースタイルのレブル250なんかにも転用されることからお分かりいただけるかと思います。
さらに適度な前傾姿勢は疲労も少なく、シートもきちんと厚みがあり、ロングツーリングも快適にこなせます。近年の中古バイク相場高頭の中においても価格は大きく上がっておらず、かなり購入しやすい価格帯ですので、初めてのバイクとしてもかなりお勧めですね。
ただツーリングよりも峠での楽しさを優先させたいというのであれば、同じく単気筒のNinja250SLもおすめです。
CBR250Rよりも10kg以上軽く、最高出力は後期型と同じ29馬力を発生します。出力こそ2気筒のNinja250Rよりも劣りますが、むしろスポーツ性はこちらの方が高いと言えるでしょう。このNinja250SLの「SL」というのはスーパーライトの略ですので、そのコンセプトからも峠での楽しさを伺えますよね。
ただ皆さん峠と言うと、こんなフルカウルのスポーツモデルばかりを想像してしまいませんか?実は自分としてはこのモタードというジャンルをお勧めしたいのです。
実は峠最強?な「モタード」
モタードというというのは、オフロードバイクをベースに前後17インチのロードタイヤを履かせた正真正銘のスポーツバイクなのです。オフロードバイクの軽さとロードタイヤのグリップ力は、峠においては最強の組み合わせです。いずれのモデルも単気筒のために絶対的な馬力はありませんが、車体は軽いのでしっかり登りでも楽しめますし、下りにおいてはもうスーパースポーツです。実際、自分もZX-12RでXR250モタードにさらっと抜かれたことがあります。
おすすめモタード(その1) DRZ400SM
そんなモタードの中でも特にお勧めしたいのはこの2台。まずはスズキDRZ400SM。この「SM」はスーパーモタードの略です。
モタードの弱点であるトルクの細さや最高出力の低さを排気量でカバー、400ccの水冷DOHC4バルブエンジンはなんと40馬力を発生させます。当時のライバル関係にあったXR400モタードは、空冷エンジンということもあり30馬力でしたから、かなり大きな差がありました。さらにベースはオフロードでしたが、足回りをオンロード用に最適化。峠はもちろんですが、ジムカーナにおいても人気の高い1台なのですね。
モタードの弱点であるトルクの細さや最高出力の低さを排気量でカバー、400ccの水冷DOHC4バルブエンジンはなんと40馬力を発生させます。当時のライバル関係にあったXR400モタードは、空冷エンジンということもあり30馬力でしたから、かなり大きな差がありました。さらにベースはオフロードでしたが、足回りをオンロード用に最適化。峠はもちろんですが、ジムカーナにおいても人気の高い1台なのですね。
おすすめモタード(その2) WR250X
そしてもう1台はヤマハのWR250X。これが出た時は衝撃でしたね。まるでレーサーに保安部品を取り付けただけのようなモデルでしたから。
エンジンもフレームも新設計、特にエンジンはかなりのショートストローク型で、最高出力の31馬力は1万回転で発生させられます。圧縮比も11.8とハイオク使用、そんな高性能エンジンと組み合わされるメインフレームはなんと鍛造アルミ、さらにフロントフォークは倒立式、しかもΦ数は46mmです。もう本当にレーサーレベルなのですね。今後もここまで本気なモタードっていうのは出てこないのじゃないかと思います。
このモタードというジャンルは一見オフロードの様でそんなに速そうには見えませんが、峠の特に下りにおいてはスーパースポーツといっても過言ではありません。またオフロードがベースですから非常に操作性も高くて乗りやすいので、まさにライダーを育ててくれる上達の近道でもあります。フルカウルモデルのような華やかさはないかもしれませんが、玄人好みの楽しいバイクなのですよ。
最後は峠の安全な楽しみ方。「峠を楽しむって暴走族や走り屋のやることじゃないの?」そう思っているあなたに、現代版峠の楽しみ方をお伝えします。
現代版 峠の楽しみ方
まず昔と今では、峠の楽しみ方が根本的に変わったと言ってもいいでしょう。昔は速さやテクニックを追求している人が多かったのに対し、現代においては楽しさや気持ちよさを求める人が多くなったと言えるでしょう。
もしかしたらこの記事をご覧になっている方の中には、当時レーサーレプリカでブイブイ言わせていたという方もいるかもしれませんね。速さを求めた昔と、安全に楽しむ現代で、最も大きく変わったのはライン取りと言えるかもしれません。
ライン取りの変化
昔はアウト・イン・アウトでしたが、現在はセンター・センター・センターが基本です。詳しく解説をしていきましょう。
まずアウト・イン・アウトというのは速く走るためのライン取りです。このようにコーナーに入る前にはあらかじめアウト側(外側)に寄っておき、外側からコーナーに侵入します。そしてコーナーを通過する時はイン側(内側)につけます。クリッピングポイントを過ぎるとアクセルを大きく開けてアウト側に膨らみながら加速をして抜け出していくというイメージですね。
このようなライン取りをすることで減速を最小限に抑え、かつ加速の間を長く取ることができます。つまりストレートに最も近いラインの取り方です。
ではなぜこのアウト・イン・アウトが現代の峠においてセオリーとは言えなくなったのか?それは単純に危険だからです。
サーキットとは異なり、一般道は路面のコンディションが一定ではありません。ひび割れはもちろん、大きくくぼんでいることもあれば、レイングルーブが突如として現れることもあります。また道路の端には落ち葉や砂利・土・落下物もあるかもしれません。センターラインに寄りすぎると対抗車がはみ出してくるかもしれませんし、なんなら自身が少し操作を誤って対抗車線に飛び出してしまう可能性もあります。ですので現代における峠のライン取りはアウト・イン・アウトではなく、センター・センター・センターなのです。
今の基本は「センター・センター・センター」
もちろん厳密にど真ん中だけを走れと言ってるわけではありません。道路の端に寄りすぎたり、速度を出しすぎてアウト・イン・アウトのライン取りにせざるを得なくなってしまうような走り方は危険だということです。自分の場合ですが、車線の両サイド15%くらいには入らないようなライン取りを心がけています。大体中央の6割から7割程度で走るイメージですね。
まとめ
スピードは出さなくとも、リズミカルにコーナーをクリアしていくだけでも気持ち良いものです。大排気量のハヤブサで走る時は、登りのコーナーで立ち上がる際の大きなトルクが気持ち良く、小さなCBR250Rで走る時は下りのヒラヒラ感がたまりません。
峠とかワインディングと聞いただけで拒絶反応を起こしてしまう方も少なくないと思いますが、バイクを操る楽しさを最も感じられる道なのです。今もたまに昔の走り屋のような方がいるようですが、現代においては流行りませんし、白い目で見られるのが実情です。是非ツーリング先にスカイラインという名のつく道があれば、積極的に立ち寄るようにしてみてください。
というわけで今回は峠ワインディングについて解説をしました。峠で楽しいバイクってどんなバイクなのか、また昔と現代における峠の楽しみ方の違いご理解いただけたでしょうか。
今回の記事は下の動画で詳しく解説しているので、こちらも是非ご視聴ください。
それでは今回も最後までご覧いただきありがとうございました。
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投稿者プロフィール
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元バイク屋のYouTuber。
バイクライフに役立つ情報を毎週配信。
メカの話やバイク購入アドバイスはもちろん、用品レビューやバイク屋裏話まで、バイク乗りなら誰もが気になるテーマばかり。
ちなみに中身はアラフォーのおっさん。
好物はサッポロ黒ラベルとキャベツ太郎だが、子どもができて以来、ふるさと納税で貰った無糖レモンサワーで節約している。
最近、血糖値と血圧を気にしているらしい。
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