はい、元バイク屋のフォアグラさんです、こんにちは。
さて、今回はバイクの長期保管に関する手順や必要なアイテムを 1本の記事にまとめました。この記事を読むだけで寒冷地の冬や長期出張、大学生の長い夏休みの間などの保管方法をご理解いただけます。
過去にも同様のテーマの記事を書いていますけれども、ここ1年でバイク用のバッテリー充電器に大きな変化がありましたので、その点を付け加えてしっかりと解説をしていきます。是非最後までご覧いただき、バイクを良いコンディションで保管してくださいね。
長期保管に入る準備と必要アイテム
では長期保管に入る準備の流れと、それに必要なアイテムについて解説をします。
まずは長期保管するまでの作業の流れはこんな感じ

そしてこれらの準備に絶対に必要なアイテムというのはこちら。

そしてあった方が良いモノはこちら。

準備その1 ガソリンを満タンにする
では、長期保管に入る前の準備について説明をします。
まずは自宅から1番近いガソリンスタンドに行きましょう。そして燃料添加剤を入れた上で、できるだけ燃料タンクをガソリンで満たします。

ガソリンタンク内に隙間があると、長期保管の間の気温の変化により、開いた分の空気が結露して水分が発生しタンク内に溜まってしまうからなのです。
タンク内に水分が入ると錆が発生してしまい、インジェクションやキャブレターを詰まらせてエンジンがかからなくなってしまったり、最悪タンクに穴が開くということも起こり得ます。 しかもタンク内に発生した錆というのは、なかなか取り除くことができないのです。
ですので錆の原因となる水分を発生させないため、長期保管前には必ずガソリンタンクを満タンにしておきましょう。
準備その2 キャブからガソリンを抜く
タンクを満タンにして帰宅したら、キャブレターからガソリンを抜きます。ただしインジェクション車であればこの作業は必要ありません。

キャブレターには少量のガソリンが残っていて、時間の経過と共にそのガソリンが劣化して粘性を持ち、1mmにも満たない細いガソリンの流路であるジェットを塞いでしまいます。ですのでキャブレターのガソリンを抜く必要があるのです。
ただしキャブレターには常にタンクからガソリンが供給されていますから、その供給を断つ必要があります。
キャブの場合はこのような燃料コックがあるはずです。

このコックには2種類あって
1:オン・オフ・リザーブ(もしくはフューエル・オフ・リザーブ)
2:オン・プライマリー・リザーブ(もしくはフューエル・プライマリー・リザーブ)
の2種類です。

まずオン・オフ・リザーブのものから。
このパターンは燃料コックをオフにすればOKです。
そしてオン・プライマリー・リザーブのもの。
この場合はオンのままでOKです。
この状態でキャブレターの最下部にあるドレンスクリューを緩めます。

そうするとガソリンが排出されますので、必ずウエスなどで受けてください。気筒数分ドレンスクリューがあるので、2気筒なら2箇所、4気筒なら4箇所作業しましょう。
4気筒のように横幅が長い車両の場合、ロングドライバーが必要になることもあります。
排出が終わったら忘れずにまた閉め直してください。締め忘れると、再始動した際にガソリンがそのまま垂れてきてしまいますからね。
準備その3 洗車
ガソリンを抜き終わったら、今度は洗車をしましょう。

車両全体をざっくりと中性洗剤で洗い、ホイールなどの下部はアルカリ性のシャンプーを使います。アルカリ性のシャンプーは泥汚れのような酸性の汚れに強いのが特徴です。
ホイールの泥汚れや酸化した古い油など、汚れが落ちにくいと感じたことはないでしょうか?アルカリ性のシャンプーを使うとあっさり落ちたりもしますので、是非1本持っておくと良いでしょう。
そして塗装面にはコーティング剤を使用しておきましょう。Wako‘sのバリアスコートやシュアラスターのゼロフィニッシュなどのコーティング剤は、1回使用すると3ヶ月ほど効果が持続するのでおすすめです。
ポリマー系ではなく、ガラス系と書かれているものの方が被膜が長持ちします。
洗車が終わったら、いよいよ保管のための作業に入ります。
準備その4 各部のグリスアップ
ワイヤー類のグリスアップ
まずはワイヤー類のグリスアップです。

このグリスアップをサボると各部に錆が発生しやすくなり、バイクの寿命を大きく縮めることになります。また再動させた後、スロットルワイヤーやクラッチワイヤーが重くなってしまったり、切れて操作ができなくなってしまうということも多々あります。ですのでこの作業は必ずサボらないでやってください。
この際気をつけて欲しいのがグリスの種類。
よく556やラスペネのような防潤滑剤を使う人がいるんですが、あまりお勧めはしません。もちろんやらないよりは良いのですが、粘度が低いのでサラサラしていて、すぐに流れ出てしまうのです。ですので少し粘性のあるグリススプレーがおすめです。
先ほど調べてみたら、バイク用品の専門メーカーであるデイトナやヤマハの純正としてワイヤー用のグリスというのが発売されていました。
正直自分はこの600円くらいのグリススプレーで困ったことはないのですが、バイクのワイヤー専用として開発されたものを使いたいと方は、デイトナとかヤマハのものを使う方が精神衛生上良いかもしれません。
そして作業に不慣れな方は、このようなワイヤーインジェクターを使用すると、スムーズにグリスアップがしやすくなります。
チェーンの掃除とグリスアップ
ワイヤーの次は、チェーンのグリスアップです。せっかく綺麗に洗ったホイールに汚れが飛び散らないよう、ダンボールなどでしっかりガードしてから作業に入りましょう。

まずはチェーンに付いた汚れや古い油を落としますが、この際に必ずシールチェーンに対応したクリーナーを使ってください。安いからと言ってブレーキクリーナーやパーツクリーナーと書いてあるものを使用すると、シールチェーンのオイルシールに大きなダメージを与えてしまいます。ですので必ずシールチェーン対応と書かれたチェーンクリーナーを使用するようにしてください。ちなみに一部の旧車や小排気量車を除き、大半のバイクにはシールチェーンが採用されています。
このチェーンメンテの際に、センタースタンドがある車両であれば必要ないのですが、このようなメンテナンススタンドはもうマストです。

このスタンドを使えば、後輪をカラカラと回しながら作業することができます。様々な種類が販売されていますが、自分はこのグリップ形状になっている商品を使っています、というよりもわざわざ買い換えました。
バイクという重量物を持ち上げるには、かなり強い力でこれ回すことになりますので、角ばっているこのような商品だと、手がすごく痛くなるのです。

ですのでこのデイトナの物からKaedearの製品に買い替えたというわけです。
そしてこのスタンドは、チェーンメンテ以外にも保管中に活用できますので、是非持っておいて欲しいのです。その保管中の活用方法については後ほど解説をします。
そしてチェーンの掃除が終わったら、今度はグリスアップです。

よく「チェーンのこの部分に注油してください」なんて言われていますが、なかなかピンポイントで噴射するのは難しいです。
そういう場合はちょっとノズルを曲げてみて、後輪をカラカラとある程度勢いをつけて回しながら作業してみてください。意外と慎重にやりすぎると、逆に難しくなってしまうということもあります。
それでも、中々こんな隙間にだけルブを入れるということは難しいのです。
多少外れて当然、大事なのはグリスアップした後に、余分なルブを拭き取るということです。付けすぎた余分なチェーンルブはフロントのスプロケットに溜まって固着し、むしろ動きを妨げていることが多々あります。グリスアップを1周終えたら、ウエスなどで余分なルブを拭き取りましょう。
またホイールにも油が飛んでいないか一応確認しておきましょう。
これでグリッスアップも終了です。
準備その5 バッテリーの取り外し
いよいよ長期保管の難関、バッテリーの作業について解説をします。
バッテリー充電の超便利アイテム
難関と言いましたが、実はこの1年でバッテリーに関する作業が劇的に楽になりました。というのも、こんなアイテムが発売になったからです。

とにかく1番簡単なのは、Kaedearの「KDR-B13」というこのUSB充電器をバイクに取り付けることです。普段はスマホ充電用のUSBコンセントとして使用できるのですが、実はこれはバイクのバッテリーに繋がっています。そのためここにモバイルバッテリーを接続して、逆にバイクのバッテリーを充電できるのです。
「バイクからバッテリーを取り外すことができない」「バッテリーを取り外せるけどめんどうくさい」という人は、これを1度バイク屋などで取りつけてさえしまえば、バッテリーの充電はもうここにモバイルバッテリーを挿すだけなのです。アパートやマンションの駐車場でも使えるので、もう衝撃的に楽です。
そしてもう1つ、こちらは普段USB電源として使用することはできず、充電機能のみに特化した「KDR-B12」です。

消しゴムよりも少し大きい程度の超コンパクトな充電器。付属のケーブルをバイクのバッテリーに取り付け、このSAE端子をシート下のスペースなどに出しておきます。これだけで取り付けは完了。それ以降はこの充電器側のSAE端子を接続し、同じようにモバイルバッテリーをこのUSB-C端子に接続すればおしまいです。
これらの充電器を使えば1・2ヶ月に1度ぐらい充電してやれば十分でしょう。
この画期的な2つのバッテリー充電器は、どちらもKaedear製の物です。
お値段はUSBコンセントとしても使えるKDR-B13が7,988円、充電専用のKDR-B12が3,988円と、どちらもかなりリーズナブルです。
取り外し&充電時の注意点
すでにバッテリーの充電器を持っているという方は、注意点がいくつかあります。
まずはバッテリーを車体から取り外す時、必ずマイナス側から外してください。
また、再び取り付けをする時はプラス側から取り付けをしてください。

この順番を逆にしてしまうとショートしてしまうことがありますので、必ず守ってください。
そして取り外したバッテリーを家の中で充電するわけですが、風通しが良く火気のない場所に置くようにしてください。

開放型バッテリーの場合は充電中は科学反応によって水素ガが発生していますので、風通しが悪い場所に置くと引火・爆発の危険があるのです。
つい先ほどお手軽な充電器を紹介しましたが、100Vコンセントのタイプでもお勧めしたい物があります。 こちらオプティメイトです。
このシリーズは、自分がバイク屋さんで働いていた頃に店でも使っていましたし、今も自分で所有しています。オプティメイトは先ほどのお手軽タイプよりも手間はかかりますが、バッテリーの機能低下を起こすサルフェーションを除去する機能というものが付いてます。
そして1度接続してしまえば、次に乗り出すまでつなぎっぱなしでOK。その上にバッテリーをベストコンディションに保ってくれるのです。
確かに手間はかかりますし、値段も安いグレードで1万円、上は3万円程度と充電器としての価格も決して安くはありません ですが、お店でも使っていた経験から、自分はとても信頼している充電器です。
これで準備はできました。
バイクカバーもかけて保管をしておきましょう。
保管中と再始動時の注意点
保管についてはよく調べて気を使う方が多いのですが、再始動についてはあまり気にしない方が多いようです。実際YouTubeなどで調べてみても、あまり解説動画出てきません。
ということで、最後に保管中と再始動時の注意点を解説します。
保管中の注意点
まず保管中の転倒対策。長期間保管をする場合、台風や吹雪など強い風が吹く日もあるでしょう。今の時代、大きな地震ということも考えられます。 そんな時に不安なのはバイクの転倒です。特に長期保管中はしっかりとカバーを掛けていますから、風の煽りを受けやすいです。

ですので開閉式のベンチレーションが付いているカバーであれば開放しておいたり、ドローコードなどでバタつかないようにしておきましょう。
特に効果的なのは、先ほど紹介したメンテナンススタンドです。ここで出てくるのです。
サイドスタンドと反対側にかけて使用するものですから、これをセットしておけばまず安心でしょう。サイドスタンドで止めているバイクは、車体左側からの力をかけると簡単に倒れてしまいますが、その弱点を解消できるわけです。
再始動時の注意点
そして再始動時の注意点、バッテリーの取り付けです。
先ほどバッテリーを取り外す時はマイナス側からとお伝えしましたけれども、取り付けはその逆です。プラス側から取り付けをしてください。これもやはり同様にショートを防ぐためです。
そしてもう1つ、こちらはバイクの寿命にも直結する重要なこと。それはドライスタートを防ぐということです。
数週間エンジンをかけずに置いておくと、エンジンオイルが完全にオイルパンに落ち切ってしまいます。さらに時間が経つと金属表面の油膜まで落ち切ってしまい、エンジンの金属パーツが全く守られていない無防備な状態になってしまうのです。
そのような状態でエンジンをかけることをドライスタートと言って、最もエンジンにダメージを与える行為なのです。

ですので、保管中には月に1回ほどのペースでも良いので、時々エンジンをかけて油膜を再形成させてやっても良いかもしれません。
ただ、なかなかそれは難しいと言うのであれば、再始動をする前にプラグを外し、プラグホールからオイルを垂らしてあげましょう。エンジンオイルでも良いのですが、使いやすいのはこのスーパーゾイルスプレー。あのエンジンオイル添加剤のスプレーバージョンです。
そんなに頻繁に使うものでもなく使用量も少ないのですが、値段も2000円程度とお手軽で、非常に利便性は高いです。
このゾイルは元々エンジンオイルに添加することで金属表面の改質をするものですから、エンジンオイルよりも良いでしょう。何より、いちいちオイルをスポイトで取って垂らすよりも簡単で、手間も省けます。プラグホールからシュっと一吹きしてからセルを回してやることで、摺動部のダメージを大きく減らすことができます。
それでもまだ心配だという方は、マフラーのエキパイを外して排気側から注入するというのもアリでしょう。
走り出す前に
では走り出しましょう。でもその前にちゃんと日常点検も忘れちゃいけません。
普段はバイク屋さんやガソリンスタンドで月に1回空気を入れてもらっているような方でも、数ヶ月間乗らずにいたのであれば、自宅で補充していく必要があります。
電動エアポンプがあれば自宅での空気圧調整も簡単です。規定値をセットしておけばボタンを押すだけで充填完了。日常面はもちろん、出先のパンク対応などでも使用できるので、1つ持っておくと良いでしょう。
まとめ
というわけで長期保管の完全マニュアルを作ってみましたがいかがでしたか?
この記事は下の動画でも詳しく解説しています。そしてこの記事や動画の通りに作業していただければバッチリ、再動ダメージも最小限で抑えられるはずですので、こちらも是非ご視聴ください。
では今回も最後までご覧いただきありがとうございました。
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投稿者プロフィール
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元バイク屋のYouTuber。
バイクライフに役立つ情報を毎週配信。
メカの話やバイク購入アドバイスはもちろん、用品レビューやバイク屋裏話まで、バイク乗りなら誰もが気になるテーマばかり。
ちなみに中身はアラフォーのおっさん。
好物はサッポロ黒ラベルとキャベツ太郎だが、子どもができて以来、ふるさと納税で貰った無糖レモンサワーで節約している。
最近、血糖値と血圧を気にしているらしい。
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