こんにちはヨシキです。今回は最近ネット上で物議をかもしたバイクの“ローダウン”についてのコラムです。先に結論から言ってしまえば、元レーサーであり、整備士でもある私の見解としては基本的にローダウンはあまりおすすめできないというのがスタンス。
というのも、ローダウンはバイクの重心が下がり、基本設計に影響を及ぼします。その結果、旋回性能が極端に変化し、コントロール性が悪くなるからというのが理由です。
けれども少しでも足つきをよくするためにローダウンをしたいという気持ちはよくわかります。なので今回はローダウンのメリットやデメリットをご紹介したうえで、少しでも足つきが良くなる裏技を紹介していこうと思っています。
ぜひお付き合いください。
バイクのローダウンとは
そもそもバイクのローダウンとは何ですか?という方のためにざっくり説明をしておくと、バイクの車高を純正よりも低くセッティングすることをローダウンといいます。
ローダウンの方法としてはフロントフォークの突き出し量を変えたり、リアサスペンションのリンクを変更したり、タイヤサイズを小さくしたりとやり方はさまざま。手軽にできるものもありますが、大きくローダウンしようと思うとカスタムパーツを装着するのが一般的です。
最近ではバイクの足つきをよくするためにローダウンをする車両が増えてきている
以前はスタイルのカスタマイズとして行われていたローダウンですが、最近では車高の高い輸入車や、アドベンチャーバイクが増えたことで小柄なライダーが足つきをよくする改造としてローダウンが行われています。
なので、車高自体は落としていないものの、シート高を低くして足つきを良くするなど、シート周りに注目したローダウンも見られるようになりました。
ローダウンのメリット
さて、ローダウンはあまりおすすめしない筆者ですが、もちろんローダウンにも次のようなメリットがあります。
- 足つきが良くなる
- 重心が下がる
- カスタム性が増す
などなど、意外とメリットが大きいのも特徴です。
足つきが良くなる
ローダウンの最大のメリットは足つきが良くなることですね。足がピッタリ地面につくバイクは安心感がありますし、停車中の不安も低減できます。
バイクに乗っているときの安心感は余裕のあるライディングが出来るようになるので、ある意味安全運転にも役立っていると言えるかもしれません。
重心が下がり安定する
ローダウンを行うと人の乗車ポジションが下がるためバイク全体の重心が下がり、直進時の安定性が高まります。
ふらつきが出にくくなるので、高速道路などでは安定した走行が可能になりますが、これには副次的なデメリットもあるので後程解説します。
カスタムスタイルが出る
ローダウンは車のみならずバイクのカスタムスタイルとしても有名です。特にハーレーなどのアメリカンバイクにはローダウンサスなどのカスタムパーツが豊富に存在し、ローダウンはかなり身近な改造となっています。
リア下がりのアメリカンバイクってなかなかカッコイイですよね。
ローダウンのデメリット
意外とメリットがあるローダウンですが、もちろんデメリットもあります。ローダウンのデメリットは次の3つ。
- 車体バランスの悪化
- 曲がりにくくなる
- バランスが崩れて転倒の原因になる
ローダウンのデメリットもあわせてみていきましょう。
車体のバランスが悪くなる
ローダウンはマシンの基本設計を変えてしまうので、バイク全体のバランスが悪くなってしまいます。バイクは車と違い不安定な乗り物です。なのでメーカーはタイヤサイズ、フレーム寸法、サスペンション長を細かくセットアップし、人が乗ったときに最適なバランスを保つように設計しています。
ローダウンはこのバランス崩す作業にもなるため、過度な車高の変更はマシンの運動性能や安定性を損なう可能性があります。
旋回性能が低下しバイクが曲がりにくくなる
ローダウンはマシン全体の重心が下がり、安定性が増す反面、車体を倒し込みにくくなるので曲がりにくいバイクになります。重心の高いコマより重心の低いコマの方が安定するのと同じですね。
けれどもこの意図しない低重心は、バイクの操作性を低下させ、曲がりにくいバイク、もしくはコントロール性の低いバイクになってしまう可能性があります。
重心は低い方が安定するように思われるかもしれませんが、低すぎると今度は逆にバランスを崩しやすかったり挙動がクイックになりすぎるなど弊害もあります。
重心は低ければいいってもんでもないのが車両バランスの難しいところですね。
過度なローダウンは転倒の原因になる場合がある
とにかく足つきを良くしたいあまり、過度にリアだけを下げるような極端なローダウンは転倒の原因になることもあります。
例えば、リアだけを思いっきりローダウンした場合、バイクはかなりのリア荷重となります。これだと常にフロントの荷重が抜けている状態になり、フロントタイヤのグリップ力が低下。カーブの侵入で上手くフロントタイヤが接地しなくなると、あっという間にスリップダウンしてしまいます。
しかもフロントからイクので、このこけ方はかなり怖いです。
過度なローダウンはこういった危険もあるので、ほどほどにしておくのが良いでしょう。
ローダウンは危険なのか?
デメリットばかりに注目してしまいましたが、皆さんが気になるであろう“ローダウンは危険なの?”という疑問に関する答えとしては“ほどほどなら問題ない”という回答になります。ちなみに私の言うほどほどとは、後付けパーツをせず、セッティングで対処できる範囲のローダウンまでですね。
やりすぎなければローダウンは決して悪ではない
実はバイクは最初からある程度車高を調整できる機構が付いています。例えばフロントフォークの突き出しを増やしたり、リアサスペンションの硬さ変更でバイクを沈みやすくするなどすれば、10~20mm程度は車高を下げられます。
この範囲のローダウンであれば、バイクのバランスは崩れませんし、操作性も犠牲にならないはずです。もともと、つま先しか届かなかった人なら、2センチも車高を落とせばある程度足つきは良くなるでしょう。
何でもかんでもアフターパーツで車高を落とすのは正直どうなの?と疑問に感じることはありますが、メーカーが用意してくれている幅での調整やローダウンは、ライダーが乗りやすくなるためのセッティングとして積極的に行うといいと思います。
ローダウンリンクの装着など、バイクの基本設計から外れるローダウンはオススメできない
調整幅では物足りないからといって、ローダウンはリンクやダウンサスといったアフターパーツで車高を落とすのはバイクの設計を変えてしまうので、あまりおすすめはできません。
もちろん、そういったことも考えて作成している優良なパーツがあることも事実です。ですが、もしそれをやるならリンクだけではなく、フロントフォーク、ハンドル、ペダル位置など、すべての部品の見直しが必要ではないでしょうか。
ピンポイントの部品だけ交換して足つきを良くする安易なローダウンはできれば避けたほうが無難です。
ローダウンはバランスが大事。足つきばかりを優先しない方が結果的に安全
結局何がいいたいのかというと、ローダウンが悪いのではなく、大切なのはマシンのバランスを崩さないカスタムが重要ということです。
足つきばかりを優先して、曲がらない不安定なバイクにしてしまうよりも、多少足つきが悪くても走行中は安心してコントロールできるマシンの方が間違いなく安全です。
想像してみて下さい。停車中に足つきが悪くて立ちごけするのと、走行中にバイクが曲がらなくて転倒するのとどっちが危険でしょうか?間違いなく後者ですよね?足つきばかりを意識せずに、ぜひ走行中の安定感にも注目してバイクをカスタムしてあげてください。
ローダウンパーツを装着しなくてもできる足つき対策
“そうはいっても足が付かないバイクは怖い!”そんな方もいることでしょう。安心してください。ここからは整備士ヨシキがローダウンパーツを付けずに足つきが良くなる方法を3つご紹介していきます。
対策①シートのあんこ抜き
まずはシートのあんこ抜き、いわゆるダウンシートってやつですね。作り方は多少手間がかかりますが、特殊な工具は必要ありませんし、根気さえあれば誰にでも作業はできます。ただ、車種によってはシートの取り外しが大変だったり、シートカバーの張りが上手くいかずに変形してしまうこともあるので、失敗したくない方や、整備に自信が無い方はショップに相談してみると良いでしょう。
では、やり方の解説です。まずはシートを外してカバーを止めているホチキスをはがします。するとシートのベースとなるスポンジが出てくるので、これを削ります。
あまりやりすぎると座り心地が悪くなるので、形が崩れない程度に削ったら、もう一度シートカバーをかぶせて“タッカー”という道具でホチキス止めをすれば完成です。これで簡単に10mmはシート高が下がります。
対策②フロントフォークの突き出し量変更など、セッティングを見直してみる
先程もご紹介したように、バイクはフロントフォークの突き出し量を変更したり、リアサスペンションの硬さを変えるなどして、セッティングによる車高調整が可能です。
前後のバランスを考えながら調整すればオプションパーツを付けなくとも車高が下がります。
ちなみにフロントフォークの突き出しアップは10mm程度まで。リアサスの硬さ変更はプリロードを基準に行うようにしましょう。セッティングには整備書が必要なので、整備に自信が無い方はお店に頼んでみて下さいね。
対策③ライディングブーツを着用する
“足つきが悪いなら足を延ばせばいいじゃない”ということでライディングブーツの着用も足つきの改善に役立ちます。
ライディングブーツは安全性を保つためにスニーカーよりも厚底に作られています。意外とこれだけでも足つきが良くなるのでお試しあれ。
ローダウンの範囲は20ミリまでに抑えておくのがベスト
いろいろ述べさせていただきましたが、改めてもう一度まとめると、私自身ローダウンのすべてを否定しているわけではありません。車高はあくまで調整の範囲内で済ませておきませんか?ということを言いたいわけです。
確かに足つきは大切ですが、足つきに重きを置きすぎるあまり、走行中のバランスが崩れてしまっては本末転倒です。中にはバランスを考慮して作られているローダウンパーツもありますが、それでも全体のバランスを考えればローダウンの限界値は20ミリが限度でしょう。これ以上は乗りにくいバイクになってしまいます。
それでもどうしてもローダウンしなきゃ怖くて乗れない、という方はローダウンのデメリットをしっかり理解して、より一層安全運転を心がけてツーリングを楽しみましょう。
バイクのクセを理解しているかどうかで転倒率は大きく変わってきます。“ちょっと下げすぎちゃったかな?”と自覚があるローダウンをされている方は是非、動きのクセを見つけてバイクの挙動と向き合うライディングを心がけてくださいね。
投稿者プロフィール
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元モトクロス国際B級ライダーのヨシキです。
趣味は林道探検、オフロードバイクでどんな山道も散策します。
今は整備士として活躍しているので、メンテナンス、DIYでできる整備など、お役に立てる情報を発信していきたいと思います。もちろんレーサーならではのライテク記事も執筆していくのでおたのしみに。
【愛車たち】
SUZUKI RM-Z250,HONDA CR125,SUZUKI RM80L
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