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【元車両開発関係者が解説】初心者へ贈る「バイクのジャンル分け徹底説明」

バイクのジャンル分け、実はこれとても頭の痛いテーマです。各メーカーが好き勝手言っているだけで明確な規格があるわけではないので、同じ車種でも人によって分類が違ったりします。おそらく解説する人が十人いれば十通りの答えになるテーマですので異論はたくさんあると思いますが、今回はあくまでも私個人の初心者向け分類をご紹介してみようと思います。

初心者向けということで、教習車を基準に置き、ライディングポジションや操縦性の違いからざっくりとした分類をお話してみようと思います。

アンダーボーン

スーパーカブやスクーターなどシートの前方に空間があり、またがるのが容易なスタイルを持つのがアンダーボーンです。

ホンダ スーパーカブ110 引用元:ホンダ公式サイト

ヤマハ シグナス グリファス 引用元:ヤマハ公式サイト

シート前方のフレームが低い位置のみにあることからこう呼ばれます。
またがりやすさを重視しているところからわかるように、手軽さに重点が置かれたジャンルです。
手軽に近場を走り回るのに適していますので、バイクに接したことのない人の入り口としては最も適したジャンルでしょう。

反面、膝の間に燃料タンクやそれに類するものが無く体をバイクに固定しにくいため、バイクらしい体重移動、荷重移動を活用したライディングの楽しさを味わうことや、長距離を走ることには適していません。というか、そういう前提で設計されていませんので注意が必要です。

しかし単なる初心者向け、便利な移動の道具にとどまらず、スーパーカブやスクーターを極めようと挑戦するベテランが多いのも奥の深さを表しているジャンルです。
スーパーカブでロングツーリングに挑戦!とかすごく楽しいのですが、それは上級者向けの楽しみ方だったりします。無理があるから挑戦してみたくなる、という変わり者が多いのもバイク乗りならではかもしれませんね。

デュアルパーパ

いわゆるオフ車といわれるジャンルです。

ハスクバーナ 701 ENDURO 引用元:ハスクバーナ公式サイト

オフロードでの走行性能を優先しているためサスストロークが長く、そのサスストロークを確保するために車高が高くなっているのが特徴です。シート高も高くなっているため初心者は尻ごみしがちですが、車体の細さやサスペンションの沈み込みの大きさによって見た目より足つき性が良い車種が多くなっています。

ただしその柔らかいサスペンションによって運転操作による車体の挙動、特に前後方向の挙動が大きいため、初心者向けかというと微妙なジャンルです。
シートのスポンジの量が少なく、上体が立ったライディングポジションと相まって長距離ではお尻が痛くなりやすいのも難点ですね。

デュアルパーパスをベースに小径のオンロードタイヤを採用したモタードというジャンルもありますが、これは元々オンとオフ両方の路面が混在したコースで行われるレースのために造られた特殊な仕様です。

KTM 690 SMC R 引用元:KTM公式サイト

本来の設計から大幅に逸脱したホイール径を採用しているため操縦性に癖が強く、安全に走るには本来高いライディングスキルが必要となるジャンルです。
長いサスストロークを使って車体姿勢と前後タイヤへの荷重の状態をコントロールしながら走る面白さがモタードの醍醐味なのですが、初心者レベルのライディングスキルだと危険な場合も多くなります。

日本のメーカーはそれを嫌って超安定志向のサスペンションセッティングとなっている車種も多く、実質単なるローダウン仕様でしかない車種も見受けられます。
このような車種は癖の強いモタード本来の乗り味とはかけ離れてしまっていますが、初心者には逆にそんな車種のほうが安心でお勧めだったりします。

対して海外メーカーのモタード仕様車は本気のレース向けのセッティングになっていることが多いので注意が必要ですが、見た目だけではセッティングの違いは判別できませんので、モタードに強いバイク屋さんのアドバイスが重要となります。
比較的マイナーなジャンルなため、モタードに理解の深いバイク屋さんというのが少ないのも難点のひとつです。

クルーザー

最近はクルーザーと呼ばれることが多くなりましたが、元々はアメリカンと呼ばれていたジャンルです。アメリカ製のバイク、具体的にはハーレーダビッドソン製と、それを模したバイクがアメリカンと呼ばれていました。

ハーレーダビッドソン Fat Boy 114 引用元:ハーレーダビッドソン公式サイト

シート高の低さからくる重心の低さ、その重心の低さが生み出す安定感が大きな特徴です。ステップが比較的前方にあるのも特徴ですね。
難しいことは考えずにのんびり移動することを楽しむジャンルです。意外と本気で走ると速い車種も多いですけれどね。

リラックスしてどこまでも走っていけそうなイメージがありますが、上体が立ち気味のライディングポジションによって路面からの衝撃がストレートに腰にくること、体重が分散されずにシートにかかることでお尻が痛くなることなどの理由により、意外と長距離は苦手です。

ツアラー

名前のとおり、旅のためのバイクです。旅といっても高速道路を長時間走り続けるようなツーリングを前提としているため、大柄なカウルを装着していることが多いのが特徴です。

ヤマハ FJR1300AS 引用元:ヤマハ公式サイト

高速道路での安定性を重視しているため、低速での取り回しは苦手としている車種もあり、初心者向けとしてはちょっと難がある車種も多いジャンルです。

ツアラーは基本的にはオンロードの車両をベースとしていますが、オフロード車をベースに長距離ツーリング向けに造られたのがアドベンチャーというジャンルです。

BMW R1250GS 引用元:BMW Motorrad公式サイト

本格的なオフロード性能よりも、長距離ツーリング中の少々のオフロードも難なくこなせるといった使い方を想定しています。タイヤがオンロード寄りの仕様となっているところが狙った使い方がわかりやすいポイントでしょう。

走り始めてしまえば軽快そのもので気にならない車種も多いですが、大柄な車体に高い重心位置が加わりますので、取り回しには慣れるまで苦戦するような車種も多く、初心者にはお勧めしにくい車種が多いジャンルです。

スーパースポー

SSと略されたりしますね。
ひたすらサーキットで速く!を目的に開発されているのがこのジャンルです。

カワサキ Ninja ZX-10R KRT EDITION 引用元:カワサキ公式サイト

サーキットよりもとにかく最高速、世界最速を狙う!といった目的で開発されたメガスポーツと言われるジャンルもあります。このメガスポーツもスーパースポーツに近いジャンルと考えてよいでしょう。

見た目の通り前傾姿勢が強いので、公道で乗るのは肉体的に厳しい車種も多いジャンルです。
このジャンルの魅力は一般公道では全く必要がない程の超高性能を所有できること。公道で乗りやすいかと聞かれれば全くそんなことはなかったりしますが、所有欲を満たすという部分では何物にも代えがたいものがあります。
トンガリすぎて初心者向けではない車種も多いですが、どうせほとんどのオーナーはその超高性能の大部分を使えていませんので、覚悟さえあれば挑戦してみるのも悪くないと思います。

ロードスポー

今回はこれまでに挙げたジャンルに含まれない車種をロードスポーツとしてひとまとめにします。カウル付きも無しも全部このジャンルです。ライディングポジションなど、おおまかな乗り方が教習車に近い車種ですね。

ホンダ GB350 引用元:ホンダ公式サイト

ヤマハ YZF-R3 引用元:ヤマハ公式サイト

ストリートファイターや、最近人気のネオクラ(ネオクラシック)なんかもこのジャンルです。

ドゥカティ ストリートファイターV4 SP2 引用元:ドゥカティ公式サイト

カワサキ Z900RS SE 引用元:カワサキ公式サイト

超おおざっぱな分け方ですが、前述のジャンル以外の車種を選べば、カウルがついていたりセパレートハンドルだったりと細かい違いはありますが、おおむね教習車に近い感覚で乗ることができるため、比較的初心者向けと言えると思います。

この中から見た目の好みや不安を感じない車重などの基準で車種を選べば、初心者でもあまり違和感無く車両に馴染むことができると思います。

まとめ

バイクのジャンル分けというものには意味がある場合もあれば、全く意味が無い場合もあります。同じジャンルでも全然乗り味が違う車種があったりしますから、本気でその車種のことを知りたければ購入前に是非一度試乗してみることをお勧めします。
まだまだ全国どこでも、と言うレベルにはいたっていませんが、昔に比べれば試乗会やレンタルバイクで購入前に体験できる機会は増えています。

初心者があまりにも手に余る車種に手を出すと、楽しさを味わう前にバイク自体に嫌気がさしてしまう可能性があります。
そのためある程度の下調べは有効だと思いますが、基本的には初心者向け、ベテラン向けで乗る車種を選ぶよりは、自分が乗りたいバイクに乗ったほうが楽しいと思います。ベテラン向けと言われている車種を選ぶ場合にはそれなりに覚悟が必要になりますが、四苦八苦して乗りこなしていくのもまた楽しいものですからね。

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NTMworks

長年オートバイ業界を裏側から支えてきた、元、車両開発関係者。 バイク便ライダーの経験や、多数のレース参戦経験もあり。 ライダー・設計者、両方の視点を駆使して、メカニズムの解説などを中心に記事を執筆していきます。 実は元、某社のMotoGP用ワークスマシンを組める世界で数人のうちの一人だったりもします。 あなたが乗っているオートバイの開発にも、私が携わっているかもしれませんよ。

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