景勝地などが多く観光ビジネスが盛んな地方では、新型コロナウイルスに起因した自粛体勢は地方自治に大きなダメージを与えました。そのダメージは、新型コロナウイルスが5類感染症に移行して観光客が戻りつつある現在でも、尾を引いています。
そんな中、コロナ禍においても災害対策にバイクを取り入れる事に積極的に取り組んでおり、バイクでの地元観光地視察などを行っていた伊豆市の菊地市長と、原動機研究部のメンバーが、他都市における観光客の呼び込み、特にライダーを誘致している現場を視察するツーリングを行うという事で、1泊2日のツーリングに同行してきました。
ちなみに”原動機研究部”というのは、原動機好きな高校生やOBなどの若者達により構成され、静岡県伊豆市を拠点として様々な事に取り組んでいる地域サークルです(以下、原研と略す事もあります)。
臨機応変なスケジュールと意外なゲスト
この日の集合場所は、静岡県田方郡にある”道の駅伊豆ゲートウェイ函南”です。この道の駅は、伊豆縦貫自動車道における有料区間の手前で、伊豆半島の入口に位置することから、伊豆半島ツーリングの集合場所などにも適しています。
意外で贅沢なゲスト
今回のツーリングの第1目的地は伊豆半島を飛び出して、直線距離で約100kmの北西に位置する山梨県北杜市です!なぜ北杜市?と思う方は、漫画、スーパーカブを読んでみてください!
そう、第1目的地である北杜市は、アニメ化もされている漫画、スーパーカブの舞台となっており、作中に登場する場所を”聖地”として、ライダー誘致を図っているのです。
そんな、アニメ、漫画の聖地を”巡礼する”今回のツーリングでは、同じくアニメ化されている漫画、”ばくおん”の作者であり、原研の外部副顧問でもある”おりもとみまな先生”と、漫画、スーパーカブのスピンオフ漫画、”スーパーカブRei”や”終末ツーリング”の作者であり、おりもと先生の漫画家仲間でもある”さいとー栄先生”も同行されるという、なんとも贅沢なツーリングとなりました!
タイトなスケジュールでも焦らず安全に、そして楽しく!
今回のツーリングの出発予定時間は昼の12時!
暖かいとはいえ陽は短くなっている10月、下道100km超を走るツーリングにしては、スタートが遅めとなったのは、視察者である菊地市長の公務の予定が詰まっていたからなのだそう!忙しい中、若者達とのツーリングに参加するタフさに脱帽です。
出発時間が迫り、皆がそわそわし始めた頃、公務を終えた菊地市長が、今回のツーリングのために我々MotoConnectがカワサキモータースジャパンさんからお借りした車両”KLX230SM”で登場しました!
自衛隊出身の菊地市長、オフロードモデルとモタードモデルとの違いはあるにせよ、自衛隊時代に乗った事があるというKLXを思い出し、「軽くて良いよね!」、「普段使いでもこれ位の排気量があると楽しいよね!」と、この日のツーリング中、終始笑顔で語っていました。
少し時を戻して・・・出発予定時間ギリギリの登場となってしまった菊地市長、集まった人々が”大人”だけであれば、休憩をとってもらってからと気を使われるところなのでしょうが、今日の合流先は若者を中心とした原研!休憩もそこそこに出発という流れになります!こうした若者達の”変に気を使わないところ”が、菊地市長も気持ちが良いようす。ちなみに今回伊豆市からは、菊地市長の他に波多野市議も参加されています。
出発後の最初の中継地はライコランド富士店です。原付2種から大型バイクまでの大所帯での長距離移動ですから、隊列がばらける事は必至!このため、インカムを介したLINE通話を駆使してそれぞれの位置情報を共有しながら目的地へ向かいます。
途中、インカムから聞こえてきた会話の中には、「菊地君、乗れてるね!」
なんてものも!・・・菊地君?そうなんです!菊地市長は、ご自身の事を”菊地君”と呼んで欲しいと言っているのです。こうした歩み寄りがあると、若者達も意見交換がしやすくなりますよね。
一方ツーリングは、出発時間帯が昼であることもあり、一部渋滞にも巻き込まれたため、僅か30kmほどの移動にも関わらずライコランド富士店への到着は、予定よりもかなり遅れてしまいました。第1目的地である北杜市では、北杜アニメツーリズム協議会の方と合流する事となっているため、現地に連絡を入れると共に、ここからは、原付下道組と、大型高速組とに分かれ、なるべく先方に迷惑をかけないようにする算段を立てての出発です!
”かたくなに皆で行く”では無く、”臨機応変に対応してリカバリーする”という若者のスタンスは重要ですよね。
原付組は、到着後まもなく出発しましたが、私は後発の高速組に同行して行く事に!しかし高速組も、150ccの二人乗りを交えながらの走行ですから、ペースはバラけます。
高速道路を走った菊地市長、KLX230SMの乗車姿勢は風をもろに受けるので、なかなかキツイとおっしゃっていましたが、平然と走っていた様子を見ると、市民や議会の色々な意見を真っ向から受ける事に比べたら、高速道路の風当りなんてものは、大した事無いのかもしれません・・・
途中、清水のパーキングに立ち寄った際に他の高速組と連絡を取っていたのですが、どうやら電動バイクのバッテリー残量がヤバイという情報が・・・今回のツーリングでは、こうした事態も想定して、車両や荷物を積載できるトラックを同行させていたのですが、車両自体がココに無いのではどうしようもない!
一悶着の後、合流場所を調整して出発です!なんとか落ち合った高速料金所の対比場所で、ポータブル電源を取り出し、緊急充電を開始します。その後、電動バイクは時間とバッテリーを考慮して、一旦帯同を離れて宿泊先のチェックインへ向かいました!
あの漫画の聖地に到着!そして巡礼
予定時間より30分程度遅れて到着したのは、漫画スーパーカブの聖地、“スーパーおの”さんです。ここでは、“スーパーおの”の店長であり、北杜アニメツーリズム協議会(以下、北アニと略す場合があります)の会長でもある小野さんと、同理事の榎本さんとに迎えられ、聖地としてのライダー誘致の現状をお聞きしました。
店内の一角には、“スーパーカブコーナー”が設けられており、アニメ、漫画ファンの方々が持ち寄った作品等が展示されていました。また、“スーパーおの”さんを訪れるファンは、単に店の内外を撮影するだけでなく、商品を購入していってくださるので有難いとも仰っていました。
巡礼はあくまで安全最優先!
17時をまわり陽が落ちた中、完全に暗くなる前に別の聖地へ!先導は贅沢にも、作中で礼子が乗っていたものと同型の赤いクロスカブです。向かう先は“フレンドパークむかわ”!ここでは、北杜市の聖地を回るスタンプラリーや、北杜市で行われるイベントなどについてのお話を伺いました。
その後、新たな聖地として加わった“おいしい学校”に向かう予定だったのですが、完全に陽が落ちてしまったため、初めての道をバイクで集団移動するのは危険との菊地市長の判断で、今回はこのまま宿へ向かう事となりました。
宿泊先、エコパ伊奈ヶ湖に到着
エコパ伊奈ヶ湖は、南アルプス市の観光宿泊施設なのですが、こちらは漫画“ゆるキャン△”の聖地に加えられた場所です。この日は真っ暗になってしまっていた事、翌朝は忙しかった事などが重なり、施設見学を行う事はできませんでしたが、なんと500円からキャンプができるという事だったので、プライベートでも訪れてみたいと思いました。
この日の夕飯はBBQです。かしこまった会食では無く、こうした立食に近い状態の食事ですと、それぞれの距離が近くなり、色々な人と話す機会も増えます。この日も原研メンバーの若者達は、市長や市議と意見を交わしていました。また、市長は、普段あまり触れる事の無い漫画やアニメの話しにも興味を持たれていました。
ライダー誘致を続けるには・・・
私はここで、北アニの榎本さんとお話をする機会があったのですが、“誘致”というのは、地元民が関心を持たないと続かないと仰っておりました。つまり、いくら当事者が盛り上がり、外の人達が“聖地”と言って訪れても、それが地域活性につながらなければ、“迷惑なだけ”になりかねないという事です。北杜市の場合、地元に根付いたスーパーである“スーパーおの”さんが、積極的に誘致に関わり、周囲の地元民にも周知させてくれている事から、地元民からの関心度も上がってきているのだそう。
そして、もう1つ言っていたのが、遠くから訪れてくれる方は、やはり大型バイクの方も多い!北杜市に点在する聖地を駆け抜けて写真を撮るというのも有難い事だけれど、せっかくなので、作中の主人公達が見ているであろう市内外の景色を、“スーパーカブ”の速度で走って堪能してみてもらいたいとの事でした。細い路地も多く、原付や軽自動車の需要が高い市内で、多くの大型バイクがビュンビュン走って行くと、”何事か?!”と感じてしまう地元の方々もいるかもしれませんものね・・・
夕食の後は、宿舎に入り、“おりもとみまな先生”や“さいとー栄先生”を交えて漫画界の裏話などをお聞きしながら盛り上がるという、貴重な体験をさせてもらいました。
2日目の朝、早朝5時に襲来した美人顧問!
2日目には、仕事の都合で初日合流できなかった原研の顧問“大槻ひびき”さんがいらっしゃると聞いていました。しかし、その来訪時間は5時との事・・・
ご、5時?!!!
なんでも、せっかく山梨まで来るのだから、日の出の富士山が見たいとの事・・・まぁ、忙しい人だから流石に5時は無いでしょう!という皆の予想を見事に覆し、大槻さんは宣言通り、早朝5時に到着!
”えぇぇぇぇ!”という皆が動揺しながら外の様子をうかがうと・・・この日の5時の天気は見事な曇り!
流石に富士山も日の出も無理でしょう・・・という事で、出発時間まで待機というオチまで付けてくれました!
寒い朝、走りやすい道、そして紅葉の見ごろ
軽い朝食を済ませ、出発は6時半!この時間になるとなんと、一時的に雲がはれて青空も見えました!・・・が、寒い!流石に山梨県北部の山の上です!
ここから目指すのは、第2の目的地!河口湖と山中湖の間に位置する忍野村の観光名所である忍野八海です!朝の山梨は走りやすい!車が少ないので、幹線道路を走っていたとしても渋滞知らずなのです!
そして、山梨県北部から富士五湖エリアへ向かうには、山越えをする必要があるのですが、この山越えが寒かった!今回は国道137号という比較的緩やかなルートで行ったのですが、途中にはスキー場もあるような場所!そりゃぁ寒いですよね!しかし、寒さが厳しいために紅葉は綺麗で、ちょうど見ごろを迎えていました!
ちなみにこの日も、ガソリン給油のために先発したメンバーと、のんびり出発したメンバーとでばらけてしまうというハプニングが!まぁ、集合場所に皆で集まれば問題無しということで!
景勝地忍野八海に到着!分刻みで動く市長は離脱?!
忍野八海に到着した一行は、山梨有数の観光地を散策します。一回りしただけでも、ここの観光地は外国人観光客が多い事がわかります。都市の規模としては伊豆市よりも小さな忍野村にも関わらず、これだけの人を集められている事に市長、市議は注目していました。
比較的コンパクトな主要池を一回りしたとことで、菊地市長はタイムアップ!午後からの公務のために、一人伊豆市へ戻る事に!忍野八海の清流で打たれた蕎麦を楽しみにしていただけに残念そうでした。KLX230SMで帰路に就く菊地市長、アクティブですね!
早めの昼食はもちろん蕎麦!・・・ではなく?!
残った面々は、蕎麦の“試食が無料”という看板が出ている製麺所へ!
しかし、コロナ禍の影響で試食は中止してしまっているとの事・・・地方自治だけでなく我々の腹にまで影響を与えるコロナ・・・なんとも恨めしい!
仕方ないので、早めの昼を食べるべく、お店を探しに!食べるのはもちろん蕎麦!・・・かと思いきや、まさかのうどん!しかもこれは、山梨の郷土料理である“ほうとう”では無く、山梨のもう1つの名物うどんである“吉田のうどん”系のうどんです!私、吉田のうどんのあの硬さが大好きなので、美味しくいただきました!
無事に到着道の駅伊豆ゲートウェイ函南
忍野八海からの帰路は、原付二種を含む一行だったので自動車専用道路に乗れないといった規制はあったものの、事故や違反も無く無事に道の駅伊豆ゲートウェイ函南に到着しました。
隣接施設のめんたいパーク伊豆を見学した後に終礼です。終礼は、原動機研究部の顧問である大槻ひびきさんから・・・
寒かったけど、楽しく安全に走れた事、自分は初めて1日に100km以上もバイクで走って疲れ切ってしまったけど、メンバーの皆は前日も同じ距離以上走っていたのに元気ですごい!といった事や、また皆で走りに行きたいといった事、帰りもそれぞれ気を付けましょう!といった事でまとめられました。
視察ツーリングを終えて
ハプニングもあったツーリングでしたが、事故や違反も無く、無事に走り終える事ができたので、結果オーライといった感じでしょう!一方で、今回のように仲間内だけの集まりでは無い場面では、無理のないプラン作りをした方が良いという反省点も見つかったのではないでしょうか。
しかしながら、自分達で行動を起こす事で、様々な人々を巻き込み、繋がりを作っていけるパワーというのは、スゴイですよね!原動機研究部の今後の動向にも期待していきたいと感じました。
投稿者プロフィール
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BMW F900XRとDucati MonsterS2Rでチョイノリからロングツーリング、サーキット走行まで楽しむリターンライダー。
リターン後のツーリングは首都圏内での日帰りをメインとして、美味しい物や良い景色を堪能している。
ご当地"グルメ調査隊"と称してマスツーリングの企画運営なども手掛けることから、バイクの様々な楽しみ方を伝えて行く事を目標としている。
若い頃は、日帰りで埼玉-青森間を往復したことがある、 "自称"やれば出来る男。
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