こんにちは、整備士ライダーのヨシキです。いつも私のメンテナンス記事を読んでいただきありがとうございます。
普段このシリーズはサンデーメカニック初心者の方に向けて、バイクの基本メンテナンスについて紹介していますが、今回は少し上級編“フォークオイルの交換”について解説していこうと思います。
フォークオイルはフロントフォークの性能を左右する重要なパーツ。“最近乗り味が硬い気がする”と思ったり、“コーナリングのフィーリングが重たい”といった症状は、もしかしたらフォークオイルの劣化が原因かもしれません。
チェーン調整やエンジンオイル交換など、基本の整備ができる人ならフォークオイルの交換もさほど難しくはありません。挑戦してみてはいかがでしょうか。
フォークオイルとは
そもそもフォークオイルとはフロントフォークの中に注入されたオイルのことで、スプリングの減衰力を調整する役割を果たしています。
減衰力とは、振動を制限する力を示し、フロントフォーク内部のスプリングが伸び縮みするスピードを調整しています。一般的に減衰力が高ければサスペンションの動きが硬くなり、反対に弱ければサスペンションの動きが柔らかくなります。
フロントフォークの種類によってはこの減衰力を調整するためのアジャスターが付いており、好みや走るシチュエーションによって減衰を変化させてみると、驚くほど走行フィーリングが変化します。
フォークオイルが劣化するとバイクの動きがギクシャクする
フロントフォークの動きを左右するフォークオイルですが、劣化や汚れによって粘度が保たれなくなってくると減衰が効かなくなり、バイクがギクシャクするような動きをします。
以前と比べて路面の振動を多く拾うような感触があったり、減速時にフロントが沈みすぎるような動きをしているのであれば、もしかしたらフォークオイルが劣化しているサインかもしれません。
フォークオイルの交換目安
一般的にフォークオイルの交換目安は5,000㎞~10,000㎞といわれています。もし純正の取り扱い説明書があるなら、メーカーの指示に従いましょう。
ちなみに私個人の話をするなら、街乗り専用なら10,000㎞、峠などのワインディングを走るなら5,000㎞、オフロードを走るなら3,000㎞を交換の目安としています。
フォークオイルの番号と硬さ
また、フォークオイルのパッケージにはそれぞれ粘度の番号が振ってあり、数字が大きくなるほど硬く、低くなるほど柔らかくなります。
例えばヤマハの標準的なオイルはG-15ですが、もう少し柔らかい方が好みという方であればG-10に変更するのもおすすめです。
この様に、減衰調整のアジャスターが付いていないバイクは、フォークオイルの硬さを変更することで減衰力が調整できるので、“ロングツーリングではサスが硬くて手がしびれる”なんて人はフォークオイルを柔らかくしてみると改善するかもしれませんね。
フォークオイル交換に必要な道具
さて、ここからは実際にフォークオイルを交換してみましょう。
必要な道具は次の4つ。
- 専用レンチ
- 定規
- 注射器
- メスシリンダー
- スタンド
定規は100均のもので構いませんが、30センチくらいの長さがあった方が使いやすいです。注射器はオイルの油面を調整するために使用するので、なければスポイトでも問題ありません。
メスシリンダーはオイルを計量するときに使うので、500ccくらいまで測れるといいですね。
フロントホイールを外してフロンフォークを抜き取るので、それでもバイクが倒れないスタンドが必要になります。オフロード車の場合は腹下でリフトアップするタイプ、オンロード車の場合はフロントスタンドがあると便利でしょう。
それでは実際に交換の方法を見ていきましょう。
フォークオイルの交換方法
作業手順は一般的な正立フォークの場合の方法を記載します。画像は倒立フォークなのであくまでイメージとしてご覧ください。
手順1:バイクをメンテナンススタンドでジャッキアップし、フロントフォークを外す
まずはフロントフォークを取り外します。このとき、先にフロントフォークのトップキャップを緩めておくのがポイント。後の作業が楽になります。
手順2:トップキャップを開けて油面を測定、フォークオイルを抜く
フロントフォークを取り外したら、トップキャップを開けて油面を測定、フォークオイルを抜き取ります。
純正の規定量が分かる方であれば油面測定は不要です。
アジャスターなどがある場合はサービスマニュアルの指示に従って作業しましょう
また、減衰調整を行うアジャスターが付いている車両はメーカーのサービスマニュアルの指示に従って作業を行います。もし持っていない場合は無理に作業を続けるのはやめておきましょう。
手順3:フロントフォークを完全に縮めてオイルを規定量入れる
フォークオイルがすべて抜けたら、今度は新油を注入します。フロントフォーク完全に縮めてから規定量を入れ、泡立ちが収まるまで待ちます。
手順4:ゆっくりフロントフォークを伸ばしてエア抜きする
油面の気泡が消えたら、ゆっくりフロントフォークを伸ばしていき、エア抜きを行います。このとき、勢いよくフロントフォークを伸ばすとオイルが噴き出すことがあるので、ゆっくり、慎重に行いましょう。
手順5:エアが抜けたら油面を規定値に合わせて完了
最後にフロントフォークを完全に伸ばした状態で油面を測定し、規定値に収まっていれば元に戻して完成です。
作業後はバイクにまたがってフロントフォークがきちんと動いていることを確認し、オイル漏れや違和感が無いか目視で点検。ゆっくりと試運転して異常が無ければOKです。
カートリッジタイプのフロントフォークや倒立タイプはオイル交換の難易度が高め
ざっくり説明してしまえばフロントフォークのオイル交換はトップキャップを開けてオイルを抜いて、規定量のオイルを入れたら終わり、という単純な作業です。
しかし、フロントフォークには“倒立式・正立式・カートリッジタイプ”など様々な種類があり、今回紹介したのは正立式のオイル交換の方法です。
倒立式や、カートリッジタイプは、行う作業は基本と変わりませんが、内部構造が複雑であったり、サスペンションをロックするためのスパナが必要になるなど、使用する工具や手順が増えるため難易度は高めです。
挑戦するときはサービスマニュアルがあるといいかもしれませんね。
カートリッジタイプのオイル交換をするなら専用オイルも用意しておこう
カートリッジタイプのフォークオイルを交換するときには、カートリッジタイプ専用のフォークオイルを選んでください。カートリッジタイプは構造上、フロントフォークの中に減衰を調整するためのカートリッジが別タンクになっており、使用するオイルも専用のものとなっています。
オイルを選ぶときにはパッケージにカートリッジタイプ用と記載のあるものを選んで購入してください。
フォークオイルの交換ができるようになればサスセッティングがDIYでできるようになるかも!
フォークオイルの交換は、日常整備に慣れている人であれば難易度自体はそれほど高くはありません。専用の工具とオイルさえあれば誰にでもチャレンジできます。
最悪、整備に失敗したとしてもエンジンが壊れるなどの大ダメージはありませんので、そういう意味では比較的チャレンジしやすい整備かもしれませんね。興味が湧いた人はお試しあれ。
投稿者プロフィール
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元モトクロス国際B級ライダーのヨシキです。
趣味は林道探検、オフロードバイクでどんな山道も散策します。
今は整備士として活躍しているので、メンテナンス、DIYでできる整備など、お役に立てる情報を発信していきたいと思います。もちろんレーサーならではのライテク記事も執筆していくのでおたのしみに。
【愛車たち】
SUZUKI RM-Z250,HONDA CR125,SUZUKI RM80L
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