はい、元バイク屋のフォアグラさんです、こんにちは。
今回は乗りやすいバイク、扱いやすいバイクというのは、どのようなバイクなのか解説をしていきます。
よく「乗りやすいバイク」なんて簡単に言われていますが、乗りやすいバイクとは具体的にどんなものなのでしょうか? また「初めてのバイクに最適」なんて言われるバイクもありますが、それもまたどのような特徴があるのでしょうか?
なんとなくぼんやりしたイメージで語られることが多い「乗りやすい」「扱いやすい」「初心者向け」といったものを、元バイク屋である自分が自分の言葉で解説をしていきます。この記事の最後では、そのような特徴を持った中型バイクの実例も上げていきますので、初心者のバイク選びにおいては強い見方になるのではないかと思います。
「乗りやすいバイク」の特徴
「乗りやすいバイク」とはどのような特徴を持ったバイクのことを言うのでしょうか?
結論から言うと以下のような特性を持ったバイクであると考えます。
・フラットなトルク特性
・しなやかな足回り
・クセのないハンドリング
これだけで聞いてもピンと来ませんよね? では1つずつ解説をしていきましょう。
フラットなトルク特性
「フラットなトルク特性」というのは、エンジンの特徴のことを言っています。
いきなりちょっと難しい話にはなるのですが、エンジンの性能・特性というのは、下の様な性能曲線というもので表されます。
このグラフの右上がりの曲線はパワー(馬力)カーブ、真ん中の横に伸びている緩い曲線がトルクカーブです。そしてこのトルクカーブが水平に近いことを「フラットなトルクカーブ」と言います。エンジンの回転数に関わらず、ほぼ一定のトルクを発揮するということです。
乗ってみた感覚で言うと、アクセルを開けて加速をしていく際に、安定した加速感を得ることができます。自分がイメージしている通りの加速感を得られやすいので、乗っていて急にパワーが出てきて驚いたり、恐怖を感じるということがないのです。
この逆の特性を「ピーキー」と言って、特定の回転域、特に高回転域になると突然ドーン!とパワーが盛り上がるものを言います。
これはこれで楽しいですし、うまく乗りこなせれば速く走れるのですが、乗りやすい・扱いやすいとは言えません。スーパースポーツモデルなどに多い特性です。
ですのでまずエンジンについては、フラットなトルク特性であるほど乗りやすいと言えるでしょう。
しなやかな足回り
次に「しなやかな足回り」とはどのようなものなのか説明をしていきましょう。
足回りというのはサスペンションやブレーキなど、言わばバイクの下半身です。
■サスペンション
まずはサスペンション。イメージして欲しいのは荒れた路面を走っているシーンです。
路面の凹凸から来る衝撃をしっかりと吸収して、乗り心地がいいサスペンション、これがしなやかなサスペンションというイメージです。車での例になってしまいますが、フランスのプジョーの車などはこの衝撃をうまく吸収して乗り心地が良いため「猫足」などという表現をされます。
柔らかく、そしてよく動いて、振動を綺麗に収めてくれる、そんなサスペンションのバイクは乗りやすいのです。そのしなやかなサスペンションの対極にあるのが、剛性の高いカッチリとしたサスペンションです。これもやはりスポーツバイクのイメージです。
300km/hを超えるスピードで曲がっていくところを想像してもらいたいのですが、そんな場面でしなやかなサス柔らかいサスを装着していると、その過重に耐えられず車体が安定しません。このような高負荷で過酷な使用環境であれば、剛性が高い硬いサスペンションが必要になります。逆に一般道でこのような高剛性のサスは乗り心地が硬くなる上、荒れた路面では車体が落ち着きません。つまり乗りにくいということです。
■ブレーキ
そしてブレーキブレーキについて、よく誤解されていることがあります。
よく止まるブレーキが良いブレーキという風潮です。
現在売られている市販モデルのバイクで、一般道において制動力が不足しているというバイクはまずありません。
ノーマルのブレーキシステム、ブレーキパッドで十分安全で、しっかりとした制動力を持ったブレーキが装備されていますので安心してください。
ブレーキで本当に大事なのはコントロール性だと思います。ブレーキを操作する中で、レバーを引いたら引いただけ、踏んだら踏んだだけ、イメージ通りに減速してくれるというものが良いでしょう。
そのコントロールができる範囲が狭いもの、ブレーキをちょっと握り込むだだけでカクンと止まろうとしてしまうものは、コントロールが難しいブレーキです。
社外品のブレーキキャリパーに交換してある中古車などでは時々ありますので、そういった車両は要注意です。
クセのないハンドリング
そして最後は「クセのないハンドリング」。
ハンドリングというのは、どうしても感覚的な話にはなってしまうのですが、こちらもノーマル状態であれば、まず問題はありません。
ただしキャスター角が小さいスポーツバイクなどでは、入力に対して過敏に反応してしまったり、逆にフロントフォークを伸ばすカスタムが施されているアメリカンなどでは、ある程度切ると突然切れ込んできたりと危険です。そして一般的にバイクというものは、試乗してから購入することができないので、YouTubeの動画や雑誌、ネットの情報などから推測するしかありません。
このハンドリングについては、どうしても感覚的なものもあるので、いろんなバイクを乗って経験していくしかないかもしれません。
乗りやすいバイク/乗りにくいバイクのイメージ少しずつできてきたでしょうか?
では次は乗りやすいというだけではない、初心者にお勧めしたいバイクの特徴について解説をしていきます。
初心者におすすめしたいバイクの特徴
先ほどお伝えした「乗りやすい」ということと違うのかと思われるかもしれませんが、この乗りやすいことに加えて、さらにいくつか特徴があるのです。
それはこんなポイントです。
・足付き性
・車両の重さ
・転倒リスク
この3つです。
足つき性
車両に跨った時に両足のかかとがベッタリつくのか、それともつま先だけなのか、また片足しかつかないのか。これは普段バイクを安全に乗る上で重要なポイントです。もちろん踵が両足ベッタリつくのであれば、それはなんら問題ありません。つま先しかつかないくらいでも、まあ問題はありません。押し引きする時は、基本的にバイクを降りた状態ですし、信号待ちでも片足がついていれば十分支えられます。
ただ両足が宙ブラリンの状態であれば、ちょっと注意が必要です。
そしてこの足つき性の目安になるのが「シート高」という数値です。車種ごとにこのシート高の記載がありますが、実はあまりアテにはなりません。
アテにならない理由1つ目は、シートやタンクの幅が考慮されていない、ただのシートの高さということでしかないからです。バイクに乗る時は足を広げて、タンクを挟む形になります。同じシート高の数値であっても、シートの幅やタンクの幅が広ければ、足つきは悪くなります。車体が細く幅が狭いほど、直立した状態に近い姿勢になって足つきは良くなります。
そして理由2つ目、体重による沈み込みが考慮されていないからです。
バイクに跨れば、自分の体重でサスが沈み込み、シートが低くなります。ですのでサスが柔らかくて、沈み込みが大きい車種であれば、実質的なシート高は低くなります。
シート高というのは無負荷状態での数値ですから、実際に跨ってみないと自分にとって高いのか低いのかは分からないのです。シート高の数値だけを見て「このバイクはシートが高いから諦めよう」「低いから大丈夫だ」と思わずに、まずは実車に跨ってから判断するようにしましょう。特にオフロードモデルなどは、シートの幅はとても狭く車体の沈み込みも最も大きいジャンルなので、お店で必ず跨ってから判断してください。
車両の重さ
当然軽い方が日常の取り回しは楽で、市街地の走行も気軽にできますので、初心者の方には軽い車両をおすすめするケースが多いです。
ただし長距離ツーリングをしたいと考えている方に関しては、この重さは走り出すと安定感へと変わり、体力の消耗を防いだり、高速走行時の横風に対して強くなったりとメリットもあります。
基本的には軽いモデルをお勧めしたいですが、用途や体格によってはあえて重いバイクを選ぶというのもありでしょう。
転倒リスク
そして最後、転倒リスクが低いものをお勧めしたいです。
大型免許のいらない400ccクラスであっても、アメリカンは比較的重くて長いため注意が必要です。
その威風堂々としたスタイリングは大型にも遜色ないくらいです。シートは低いので足着きは良いのですが、取り回しは決して良いとは言えず、バイクを降りて動かす時には注意が必要です。またがっている時は足で支えられますが、降りて動かしている時に倒してしまう事例が多いのです。
ただし、先ほどお伝えしたように400ccアメリカンの存在感は、中型クラスでは頭1つ抜けています。このスタイリングや存在感に惚れてしまったという方は、もうリスク覚悟で是非挑戦してみてください。
そしてもう1つの転倒リスク、転倒時のダメージが大きいモデルというのも要注意です。それはフルカウルのモデルです。
ネイキッドやアメリカンなどの場合は、ちょっと立ち転けした場合は小傷程度で済む場合も多いのですが、フルカウルの場合は必ずカウルにある程度のダメージが発生します。場合によっては割れてしまったりもします。外観上ダメージも分かりやすく、修理する場合にもお金がかかり、板金塗装のお店は4輪しか受け付けていなかったり、受け入れてくれたとしても、バイクは曲面や角が多くて作業が難しい上、複数の色を使っていることも多いので、結構割高だったりします。場合によっては修理ではなく、カウルの交換をすることにもなります。
アメリカンのように大きくて重いわけではないのですが、転倒してしまった場合に大きな金額が発生してしまう可能性があるといったことは理解して選ぶようにしましょう。
おすすめのバイク おすすめしないバイク
ここまで乗りやすいバイク、初心にお勧めしたいバイクの特性をお伝えしましたが、ここでは乗りやすいバイクや初心者におすすめしたいバイク、逆にあまりおすすめしないバイクとは具体的にどんなバイクなのかを、例を上げて紹介をしていきましょう。
250cc編
まず250ccクラス。基本的にはスーパースポーツ以外は、あまり心配ないかなと思います。そもそもこのクラスは、初心者をターゲットにして設計されたモデルが多いからです。
さらに言うと、スーパースポーツと聞いてNinja250やYZF-R25などを想像する方も多いと思いますが、ネイキッド版のZやMTとほぼ同一の設計ですので扱いやすく、これらは初心者にもおすすめできます。ハンドルこそセパレートハンドルではありますが、かなり高い位置に設定されてるんで、特に難しく感じることはないはずです。
ただし転倒時のカウルのダメージはちょっと不安材料かもしれません。
現在新車で買える中で気をつけた方が良いのはZX-25RとCBR250RRの2つです。
大型のスーパースポーツほどハードルが高いわけではありませんが、エンジン特性・ハンドリングともに本格指向で、このクラスでは頭1つ抜けています。また割と最近のところでは、Ninja250SLも割と本格的なシングルスポーツです。
8・90年代に1大ブームとなったレーサーレプリカについては、お世辞にも乗りやすいとは言えません。具体的にはキャブ時代のCBRやFZRといった4スト、NSRやTZRといった2ストのレーサーレプリカです。
そして実はビッグスクーターも簡単そうに見えますが、大きくて重い上、足付きも取り回しも実は悪く、ギヤがない分ライディングも結構難しかったりするので、小柄な方は要注意です。
スクーターでスラロームや1本橋の教習を受けた方ならお分かりいただけるかと思いますが、結構難しいのですよ。
ただしスクーターは他に変えられるものもありませんから、欲しいと思ったらもう行くしかありません。
400cc編
400ccクラスも250ccクラスでお伝えしたスーパースポーツやスクーターはちょっと要注意ということになりますが、もう少し幅が広がります。
400クラスになると、大型バイクと共通の車体を持つものもあって、それはご自身の対格と相談していただきたいと思います。
例えばカワサキのZZR400やスズキのRF400Rといったモデルは、排気量以外は600ccや 900ccといった大型の兄弟車とほぼ同一の設計であり、非常に大柄で重量があります。さらにフルカウルなので、転倒時のダメージも大きくなりやすいです。
そして先ほどでもお伝えしましたクルーザーモデルです。いわゆるアメリカンと呼ばれているドラッグスターやシャドウ、イントルーダー、バルカンといった90年代に大人気だったローアンドロングのスタイルを持つモデルです。このクルーザーは250ccクラスでは軽量コンパクトなモデルが多いのですが、400ccクラスになると突然大きく重くなります。
特にイントルーダーやブルバードは800ccのものと共通の車体です。400ccアメリカンはただでさえ大きいのに、大型と共通ということもあり、とんでもない迫力です。
もう1つ、カスタムされたSRのようなバイクも要注意です。
これは本当に調子が悪いものが多くて、エンジンもキック始動なので、慣れるまでちょっと苦労するかもしれません。キャブやエアクリーナーを交換してあるものはクセの強い個体の可能性があるので、可能であればエンジンの始動性を確認しておきたいです。
またカフェレーサーカスタムが施されていてハンドルの位置がやたら低い車体は、長距離ツーリングでは疲れやすく、肩や腕にも力が入りやすくて、慣れるまではうまく曲がれないかもしれません。
まとめ
最後に、乗りやすいバイクを考えるだけではなくて、乗りやすいライディングギアというのも重要です。
そこで手前ミソですが、自分が監修し、横浜のバイク用品メーカーKaedearと共同開発した「バイクがうまくなるグローブ」というものがあります。
操作性と安全性を追求したもので、操作性に優れる天然皮革を使用し、革の厚さも手の甲側と手の平側で変更してあります。手の甲に装備した頑丈なナックルガードは、手の動きを妨げないようにフローティング構造にして、さらにフィンガープロテクターと、手のひら側にもプロテクターを配置しています。
価格はオールシーズン用と、パンチングレザー仕様の夏用がどちらも税込み5,830円です。これから教習所に通う方から、操作性を重視するベテランライダーの方まで、是非検討してみてください。
というわけで今回は、乗りやすいバイク、初心者におすすめできるバイクについて解説をしていましたがいかがたか? ボンヤリしていたイメージが、なんとなくハッキリしてきた、バイク選びの参考になったというのであれば嬉しく思います。
この記事は、下の動画でも詳しく解説していますので、こちらもご視聴いただけると幸いです。
それでは今回も最後までご覧いただきありがとうございました。
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投稿者プロフィール
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元バイク屋のYouTuber。
バイクライフに役立つ情報を毎週配信。
メカの話やバイク購入アドバイスはもちろん、用品レビューやバイク屋裏話まで、バイク乗りなら誰もが気になるテーマばかり。
ちなみに中身はアラフォーのおっさん。
好物はサッポロ黒ラベルとキャベツ太郎だが、子どもができて以来、ふるさと納税で貰った無糖レモンサワーで節約している。
最近、血糖値と血圧を気にしているらしい。
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