バイク乗りにとって、出かける時には雨対策は必須です。バイクの雨対策は、レインウェア選びともう一手間の対策が大切。バイクライフをより快適にするために、体験談を交えながら、本当に必要な雨対策とおすすめ商品についてご紹介します。
バイクでの雨対策は予報に限らず必要
雨対策は、雨天時に安全に快適に走るために大切なだけでなく、予報にかかわらず常に準備しておくことで余計な心配をせず安心して過ごせるということもあります。天気予報を常に気にしているから大丈夫、というライダーでも、最近のゲリラ豪雨に見られるように、急な天候の変化に備えるためにレインウェアを用意しておくことは安心につながります。
特に出かける先が山方面の場合、山の天候は変わりやすく、場所によって全く天気が違っていることもよくあります。私は山方面にツーリングに行った時に、長めのトンネルを超えた先が土砂降りだったことがあります。
またツーリング先でトラブルや予定変更などで時間がかかり、滞在時間が長くなる可能性もありますから、雨対策はしておいて損はありません。
バイクの雨対策が必要な理由
バイクに乗っている時に雨に濡れると、次のような危険な状態になることがあります。
体が冷える
雨に体が濡れると、体温を奪われて冷えてしまいます。体が冷えると凍えてうまく操作ができない可能性があります。
視界が悪くなる
ヘルメットやスクリーンに雨が当たり、視界が悪くなると、障害物を見落としたり反応が遅れたりして、事故につながる可能性があります。ヘルメットの外側だけでなく、蒸れて内側が曇ってしまい、より視界が悪くなることもあります。
運転しにくい・走りにくい
体が濡れることや蒸れることで不快感を感じて思ったような操作がしにくくなり、バイクの運転がしにくくなることがあります。雨でタイヤが滑りやすくなり、実際に道路の状態も雨で悪くなって、マンホール上や道路の白線など、滑りやすい場所ができて危険になります。
相手からも見えにくい
雨が降ることで視界が悪くなり、対向車や歩行者などから自分のバイクが見えにくくなり、事故につながる危険が増します。
バイク用レインウェアに必要な機能
一般的なレインウェアに必要な機能から、バイクウェアに必要な機能の目安をご紹介します。
耐水圧が高い
防水性が高いレインウェアは、水が入って来にくいということで、耐水圧が高くなっています。耐水圧の高い生地を使用したウェアは、外界から衣服内への雨の侵入を防ぐことができます。
耐水圧とは、どのくらいの水圧に耐えられるかといった数値です。耐水圧試験はJIS規格で定められているので、一定の基準を満たした表記がされています。
1cm四方の筒を生地に対して垂直に立て、そこに水を注いで生地から漏れずに筒の中に入った水位が耐水圧を表す数値です。筒の中に30cmの高さまで水を溜められたら、耐水圧は300mmということになります。
一般的な耐水圧の目安
300mm 小雨
2,000mm やや強い雨
10,000mm 大雨
20,000mm 嵐
JIS規格では耐水圧2,000mm以上がレインウェアと認定されますが、バイク用ではこの性能では足りません。
バイクでは走行して強風を体に受けることになり、暴風雨の中にいるのと同じような状況でさらに水圧が高まります。また、バイクに乗った体勢だと、肘や膝やお尻・背中などウェアの生地には圧力や引っ張る力がかかっています。そのため、バイク用でのおすすめ耐水圧は10,000mm以上です。さらに走行速度が高くなるほど、より高い耐水圧が必要となります。
雨など天候にさらされる状態のスキーやゴルフで10,000mm以上、登山では命に直結するため20,000mm以上が必要と言われることもありますから、バイクでも同程度のものを求めても良いと考えられます。
また、防水性と合わせてよく見られる機能に撥水(はっすい)性があります。撥水とは、生地表面を水が転がり落ちるような作用で水を弾く機能で、生地に「水をはじく」加工がしてあるものを撥水加工と言います。「水を通さない」防水性とはまた違う効果なので、レインウェアを選ぶ際には注意が必要です。
透湿性が良い
透湿性とは、蒸気状態の水分を生地の内側から外側へ逃がす性質のことです。透湿性が低いと、ウェア内が汗で蒸れてしまい、蒸気がこもってびしょ濡れになり不快になりますし、体温低下の原因にもなります。
透湿性の高い生地で作られたウェアは、汗をかいても蒸れにくいので快適に着用できます。透湿性は、生地1㎡あたり24時間の間に何グラムの水分を外に出したかという数値となります。
一般的な発汗量の目安(人の体格や運動量により違いがあります)
安静時 1,200g(1時間あたり約50g)
散歩など軽い運動 12,000g(1時間あたり約500g)
ランニングなど激しい運動 24,000g(1時間あたり約1,000g)
蒸れにくいレインウェアでは透湿性5,000〜10,000g/㎡がベタベタしにくい目安となっています。スキーや登山などのレジャーでは、汗をかくことを考えて10,000 g/㎡以上、できれば20,000 g/㎡以上のものを選ぶと安心とされています。
そのためバイクでのおすすめの透湿性は、ライディングで運動をすることや高速に身体がさらされることを考えると10,000g/㎡以上が最低で、できれば20,000 g/㎡以上のものを選ぶのが良いでしょう。
私は農作業用の雨合羽を着てツーリングに行った時に、撥水加工はあるウェアであったものの時間と共に雨水が染み込み、さらに蒸れてきて汗で気持ち悪い状態で高速を走ったことがあります。パーキングに入った時には生地が少し歪み、ファスナーが下がらずにさらに苦労しました。
バイク用レインウェアの特徴
バイクで使用するには、やはりバイク専用のレインウェアが最適です。
耐水性や透湿性が高いものは、作業服や現場服、レジャー用などでたくさん販売されています。しかしさらにバイク用のレインウェアは、バイクに適した工夫がされて、ライディングに適した機能が充実したものが多くあります。
ネックガード
バイク用レインウェアには、首元からの雨水の侵入を防ぐ、大きめ(高め)のネックガードが付いているものがあります。バイクに乗って前傾姿勢になると、首回りから雨が侵入してくることがありますが、ネックガードがあれば浸水を防げます。
シームレスヒップ
バイク用レインウェアのパンツにはシームレスヒップで作られたものがあります。パンツ背面の縫い目がないので、縫い目からシートに伝わった雨水が侵入してくることがありません。
アジャスター(ベルト)
バイク用レインウェアには、袖口やウェスト部分などから雨の侵入を防ぎ、バタ付きを抑えるためのベルトがついています。
ベンチレーション
バイク用レインウェアには、背中や脇、二の腕内側部分にベンチレーションがついていて、ウェア内の蒸気を逃がしやすくなっています。ファスナーで開閉できるようになっていたり、メッシュ生地にかぶせがついていたりします。
ストレッチ
バイク用レインウェアでは、ストレッチの効いた生地で作られたものも販売されています。レインウェアはゆとりを持って着ることが多いですが、バタついたり膨らんだりつっぱったりしがちです。ストレッチ素材で作られたバイク用レインウェアは、前傾姿勢をとったり肘を曲げたりしてもつっぱりにくく、袖や裾が捲れたりする心配が少なくなります。
ダブルガード(前立てファスナー・袖口)
バイクに乗ると体の前面に風があたり、雨天時には前面から水が侵入してきます。前立て部分が二重でフラップが付いてダブルガードになっていると、雨水の侵入を強力に防いでくれます。袖口も二重になっていて、さらに内側がゴム付きであれば袖口からの雨水の侵入を防ぎます。
耐熱素材
全てではありませんが、耐熱素材が使われたバイク用レインウェアもあります。思わずエキパイに足の内側があたってしまっても、ウェアが溶けて穴が開いたりしないようになっています。特にアメリカンタイプのバイクに乗る人にはありがたい仕様です。
反射材
レインウェアには欠かせない反射材は、バイクウェアにもとても大切な要素です。背中、腕、パンツの裾、胸、ロゴマークなどに施され、夜間はもちろん雨で薄暗くなった時に、他のドライバーから見えやすくなります。
ポケッタブル
バイク用レインウェアは、ポケッタブルで小さく畳めて袋に入れることができるものが多くなっています。高性能のものほどかさばってしまうのは仕方ありませんが、小物入れやタンクバック、リュックなどに入る大きさのものは携帯しやすく便利です。
バイクの快適性があがる雨対策のコツ
バイクの雨対策は、バイク用レインウェアをただ着るだけではなく、色々なところに雨対策をすることでより快適に走ることができます。
スーツで着用する
バイクウェアは是非スーツ(上下)で着用しましょう。パンツの方が面倒でコートタイプを選んだり、レインスーツのパンツを履かなかったりするライダーもいますが、それでは雨対策は万全とはいきません。
特に下半身部分とブーツに雨水が侵入すると、不快で運転しにくいのはもちろん、乾きにくいのでその後晴れても濡れた状態が続いてしまいます。
手間はかかりますが、出発時または雨が降ってきた時には時間をとって、上下ともしっかりレインウェアを着用しましょう。
性能の高いものを選ぶ
バイク用のレインウェアといっても、全てが高性能だとは限りません。つくりが良くないと、走行中に水が入ってきたり、ファスナーが壊れて脱げなくなったりする場合もあります。普段の雨用レインウェアとバイクウェアとでは値段も違いますが、耐水圧が高く透湿性がよいもの、さらに丈夫なものを選びましょう。ゴアテックスは高性能な素材ですし、PUコーティングやTPUラミネートと記載されているものもおすすめです。バイク用レインウェアは、耐水圧や透湿性の数値が表記されているものがほとんどなので、よく表記をチェックして選びましょう。
アジャスターのついているもの(大きめ)
バイク用レインウェアは、普段着ているバイクウェアのさらに上に着るため、サイズが大きめを選ぶか、腰や裾などにアジャスター付きで調整できるものを選ぶと良いでしょう。通勤などでリュックを背負ってバイクに乗る人には、リュックごと着られるバイク用レインウェアもあります。店頭で見て試着するのもおすすめします。
ヘルメット・撥水スプレー
ヘルメットは、雨対策には機密性の高いフルフェイスがなんといってもいちばんです。また、撥水スプレーをシールドに吹きつけておくと曇り対策になります。雨天時にミラーシールドやスモークシールドは見えにくくて危険度が増すので、ノーマルシールドにすることもおすすめします。
グローブ
バイク用グローブは、雨天時に取り替えられるようにレイングローブを予備で持っていると便利です。それほどかさばらないので、バッグに入れておくか、シート下などに常備しておくのも良いでしょう。また、雨天時だけでなく晴れの時でも着用できるレイングローブもありますので、普段からレイン兼用グローブを着用するという方法もあります。
ブーツカバー
雨天時には、ブーツにもカバーを着けることをおすすめします。レイン用パンツと同様に、着用するのが面倒になりがちなパーツですが、ブーツの履き口は雨が侵入しやすい部分でもありますし、一旦ブーツが濡れてしまうと不快なだけでなく乾きにくいので、着けた方がその後のツーリングにも響きません。
バイク用ブーツカバーは、つま先やシフトチェンジで当たる部分が補強されているので、ライディングの動作を妨げにくくなっています。さらにポケッタブルでコンパクトに持ち運べるものを選ぶと良いでしょう。
ネックウォーマー
バイク用ネックウォーマーは、防寒としてだけでなく、防水性・透湿性の高い雨天時用のものもあります。バイク用ネックウォーマーは口元まで覆うものが多いので、吐く息によってヘルメットシールドが曇るのを軽減してくれる役割もあります。
タオル
普段のツーリング時にも言えることですが、濡れたものを拭けるタオルを必ず持参しましょう。休憩時に雨で濡れたものを拭くものがあるとないのとでは、ツーリングの快適性が大きく違います。
ビニール袋・防水ケース
濡れたものを入れられるように、ビニール袋を持って行きましょう。ツーリング時のバッグ、もしくはシート下など小物入れにいつも常備しておくのも良いですね。濡れたものをバッグに入れられるだけでなく、濡れさせたくない財布や携帯などを入れて守っておくこともできます。より丈夫なものでスマートに使いたいという人には、防水のジップケースが良いでしょう。
まとめ
バイクに乗る時には、天気予報さえ見れば安心と思い、ついおろそかにしがちですが、雨対策は必ずしておきましょう。バイク専用レインウェアを用意し、ヘルメットやグローブ、ブーツなど小物の雨対策もしておくと安心です。
雨天時にバイクウェアを着ることは、濡れないことで不快感を軽減するだけでなく、着た方がより安全にバイクが運転できるということなります。最近ではバイク用レインウェアでもお洒落なデザインのものがたくさんありますから、楽しく選んで着用し、雨の日でも快適なバイクライフを送りましょう。
投稿者プロフィール
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GPZ750R改に乗っているねこにんじゃと申します。
ライターでイラストレーターです。
「おすすめグッズを知りたいけど面倒だから誰かまとめて」
「整備について知りたいけど難しいから簡単に知りたい」
などなどのバイクライダーの希望をかなえます。
バイクライフがより楽しくなるような情報を、できるかぎりわかりやすくお届けしていきます。
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