はい、元バイク屋のフォアグラさんです。こんにちは。
今回は「バイクを買うなら新車か中古かどっちがいいのか?」論争について、自分の考えをお伝えしていきます。
当然ながらこのことに対して絶対的な正解というものはありません。ただし、それぞれの特徴を理解することで、自分にはどちらが適しているのかとことも分かりますし、今回は極上中古車についても合わせて解説をしていきます。
バイク屋勤務をしていたため、それぞれの利益率、リセールバリューなども大体把握できていますし、国産車か外車かによっても変わります。ですのでこの記事は皆さんの知らない裏事情も含めて、今後のバイクライフの役に立つ情報をお伝えできるはずです。
狙うべき中古車の特徴
ではまず狙うべき中古車、選ぶ価値のある中古車の特徴について解説をしていきます。
自分が考える「選ぶ価値のある中古車」というのは基本的に
・市場相場が下落している車種
・高額なパーツがついている個体
・走行距離が多い個体
です。
ちょっと例外的にはなりますが、中古でしか購入できない絶般車というのも選ぶ価値は十分にあると思います。
市場相場が下落している車種
選ぶ価値のある中古車その1、市場相場が下落している車種です。
例えばスズキのBandit1250Sというモデル。スズキのフラッグシップネイキッドであるBandit1250のハーフカウル版のツーリングスポーツモデルです。
ん?リッターオーバーネキッドのハーフカウル版? そう、当時のライバル車はホンダのCB1300SUPER FOURのハーフカウル版CB13000SUPER BOLD’ORだったのです。
BanditはSUPER BOLD’ORに比べて性能的に何か劣っているってこともなく、大きなトラブルがあったわけでもありません。問題があったわけじゃないのです。
が、Banditの中古車の一例をあげると、2007年式4万km大きな傷もなく車両本体価格は36万円、支払い総額42.2万円です。
対して同程度のCB1300 SUPER BOLD’ORを探してみると2008年式4万3000km同じく大きな傷はなく車両本体価格は79.8万円円、支払い総額89.8万円という値付けです。
違う店の在庫なので一概に比較はできませんけれども、同程度の車両でありながら倍以上の価格の開きがあるのです。
「俺は絶対にCB1300 SUPER BOLD’ORが欲しいんだ!コレじゃなきゃ嫌なんだ!」というこだわりがあるのならCB1300 SUPER BOLD’ORを選ぶべきだとは思いますが、「快適にロングツーリングができるバイクが欲しい」「ビッグネイキッドベースのツアラーが欲しい」という希望しかないのであれば、全く同じようにバイクライフを楽しむことができるBanditがおすすめです。
50万円近く浮くわけですから、その分で北海道ツーリングにも2・3回行けてしまいますよね。ただし将来的に売却をする場合に買い取り価格も安くなりますので、その点はあらかじめ理解しておきましょう。
とはいえ、買い取り価格以上に購入価格はお得になっているはずです。
高額なパーツがついている個体
次にお勧めしたいのは高額なパーツが取り付けてある個体です。その理由は高額なパーツが取り付けられていたとしても、販売価格は大きく変わらないからです。
例えば20万円の社外マフラーが付いていたとしましょう。このマフラーが付いていることで販売価格がどのくらい高くなるのかと言うと、良くて5万円くらいでしょう。むしろブランドや状態によってはノーマルと変わらなかったり、場合によってはノーマルよりも安くなっている場合さえあります。
カスタムが施された車両というのは、正直なところ売りにくいのです。マフラーのように多くの方が好んで交換するものであればまだ良いのですが、それでも「騒いマフラーは嫌」という声は少なくありません。車検に通る・通らないの問題ではなくて、社外マフラーというだけで販売できる対象のお客さんは減ってしまうのです。
さらに言うと250ccなどの小排気量のバイクで、さらにローダウンしてある車両などは、それだけで小柄な方にしか売れないバイクになってしまうので、高額なパーツが取り付けてあったとしても、その価格相応の上乗せをすることはできないのです。
これは言い換えると、自分好みのパーツがついている個体は超お買い得ということです。
どうせマフラーを交換するつもりなら、最初から好みのマフラーが取り付けられている個体を選べば、マフラー代が浮きます。小柄な方で購入後にローダウンをするつもりなら、最初からローダウンキットが取り付けられた個体を選べば、ローダウン代が浮きます。
というわけで、「どうせ取り付けるであろうパーツ」がついている個体というのは、お買い得感が高いと言えるでしょう。
走行距離が多い個体
一般的に走行距離が多いほど販売価格が安くなっていることは皆さんご存知のことでしょう。1万kmと 3万kmなら3万kmの方が安いし、 3万kmより5万km、7万kmの方がより安くなるのは当然です。ではなぜ走行距離が多いと安くなるのか? それはより寿命が近いと考えられるからです。
自分の経験上、バイクというのは3万km、5万kmでガクっと買い取り価格が落ちます。売る方としても売りにくくなるのです。お客さんは「3万kmはまあまあ走ってる。5万kmだとかなり走ってる。 7万kmだと、もうそろそろヤバいんじゃない?」くらいの印象を持たれているのです。
中古車と言うと、「走行1万kmぐらいだったら安心だな、買いやすいな」というイメージの方が多いのですが、自分的には1番選びたくない走行距離なのです。なぜなら多くの方がそう考えているので、走行距離が1万kmのバイクというのは買う時は結構高いのです。でも3年4年とそのバイクに乗ると、結局多くの場合そのバイクは3万km ・5万kmのバイクになるのです。
そうです。買う時には割り高感があるのですが、売る時には安くなってしまう。それが1万kmという走行距離の中古車なのです。あまり距離を走らないというのであれば良いのですが、ちょいちょいツーリングに行くつもりで1万kmのバイクを購入すると、すぐに価値が下がってしまいます。
さらに言うと1万km前後というのは、様々な消耗品が一旦寿命を迎えつつあるタイミングでもあります。3万kmとか5万kmであればすでに何周かしているので、消耗品のタイミングなどを考える必要はありませんが、購入後すぐにタイヤやチェーン、ブレーキパートなどの交換が必要になるかもしれません。
ですので「自分はちゃんと走るぞ」と決めている方は、信頼できるバイク屋さんできちんと整備された距離の多い個体を、保証付きであえて狙っていくというのがおすめです。
1万kmのバイクが3万kmになると大きく価値が下がりますが、5万kmのバイクが7万kmになったところで大して変わりませんからね。
走行距離が超少ない車両っていいの?
では次に走行距離が極めて少ない、1000km以下のような中古車の実情と、こんな人におすすめというパターンを説明しましょう。
走行距離が少ないワケ
走行距離が極めて少ない中古車について、「なんでこんなに走っていないのに手放したの?」とか「なんか不具合があったから手放してに違いない」と警戒するお客さんが多いのですが、そんなことはまずありません。
こういったバイクを手放した理由は様々ですが、特に何か問題があるわけではないのです。例えば
・バイクを買ってすぐに転勤になったが、次の家ではバイクを置く場所がない
・乗ってみたけどちょっと期待と違った
・買ってすぐに、もっと欲しいバイクが発表されてしまった
・実際に乗ってみたらバイクが怖かった
・家族に内緒で買ったのがバレた
など、もう色々です。
中には「1000kmも慣らし運転をしてたら1年かかってしまう。慣らし運転が終わった中古車に乗り換える」なんていう人もいました。ですので問題を抱えた個体ということは、まず無いので安心してください。
それにまだ走行距離が数百kmというバイクなら、多くの場合はまだメーカー保証の期間内だったりします。
超低走行車をお勧めしたい人
では極端な低走行個体はお買い得なのかと言うと、そういうわけでもありません。新車とほぼ変わらない値付けをされているので、中古車としての旨みはあまり無いのです。
それに新車同様であったとしても、やはり中古車は中古車ですから、書類上もワンオーナー車ではなくなります。ワンオーナー車のメリットというのは、実際のところはほぼないのですが、中古車としての付加価値にはなるので、査定ではプラスに働きます。
超低走行車をお勧めしたい人というのは例えば
・新車が品薄でバックオーダー状態で待たされる場合
・メーカー系列のディーラーでないと買うことができない新車モデルだが、付き合いのあるバイク屋で買いたいという場合
レアケースですが、上記のお客さんのように「慣らし運転はめんどくさいけど、新車のようなバイクが欲しい」という方も当てはまるでしょう。
ちなみにこういった極上中古の場合、利益率はかなり低い傾向にあります。当然ですが買ったばかりでほぼ新車のような状態ですから、あまり安く買い取ることはできません。買い取るバイク屋さんから見ても、買い取ってから高額な修理パーツが必要になるリスクも無いので、すごく買い取りやすく、それでいて比較的すぐ売れる。
走行距離1000kmの国産の人気車であれば、売価の8割を超える価格で買い取る場合もあります。
逆にマイナーな外車だったりすると、例え新車同様であったとしても半額程度の価格でしか買い取れないなんてこともあります。
中古車のバイク屋の利益率
ここでは元バイク屋勤務という経験を活かして、中古バイクの利益率について、ぶっちゃけた話をしていきたいと思います。
極上というわけではない一般的な中古車であれば、お店の経営方針にもよるので一概には言えませんが、自分が勤務していた2つのバイク屋においてはどちらも大体30%前後の利益率を目指していました。 50万円で売られているバイクであれば、車両の買い取り価格と整備費用を合わせて35万円くらいのイメージです。
この利益率はリッターバイクや外車はもう少し高く、中型の人気モデルなどであればもう少し低くなる傾向にあります。
ちなみに19万8000円などの低価格で売られているものは、多くが0円だったり2・3万円くらいで引き取られた車両です。そういった車両は整備費用がかなりかかることが多いのです。当然整備するにも時間(=人件費)がかかります。そうすると利益率は50%くらい取らないと商売としては成立しなくなりますから、コストとしては10万円程度に抑えたいところです。
手のかからない30万円のバイクを売ると利益は10万円ですが、20万円のバイクは恐ろしく手がかかるのに同じ10万円しか利益が出ないのです。
よく「3万円で買い取ったバイクを20万円で売ってる‼」なんていう人がいますが、それだけ整備にお金と時間がかかっているので、むしろ利益の出ない初心者ライダーのための種まきであることをご理解いただきたいところです。
というわけでここまで中古車についてガッツリ解説をしてきましたが、最後は新車を購入するということは中古車と比べてどうなのか、裏話も交えてお伝えしましょう。
新車で買う意味
新車は儲かる?
まず最初に言ってしまいます。新車はあまり儲かりません。
自分が働いていたバイク屋では、新車は仕入れ価格とほぼ同じ値段で売っていました。100万円の新車を売っても車両からは数千円しか利益がなく、登録手数料が利益という状態でした(確かに他の店と比べても、かなり安く売ってはいましたが)。
新車に利益は全く見込んでいなくて、将来利益の出る中古車として仕入れるための種まきでした。
現在は定価販売が当たり前になっており、新車でもちゃんと利益が出ているのではないかなと思いますが、それでも中古車の方が利益は大きいと思います。
そういったことも踏まえて、経済的な観点から新車はアリなのかナシなのか?
自分の考えは大いにアリです。その理由は大きく2つあります。
新車という所有感
まず1つ目。なんと言っても「新車」という所有感。そして新車だからこそ慣らし運転から育てることができるという喜びです。
自分も今まで10台以上のバイクを乗り継いできましたが、現在所有しているハヤブサが初めての新車なのです。今まで所有してきたバイクもちろん大好きなのですが、やはりどこか不安がありました。前のオーナーはちゃんと大事にしてオイル交換とかしてくれていたのかな? ちゃんと慣らし運転してくれていたのかな?なんて感じです。ですが新車で購入するということは、そういった不安は一切ありません。これがとても嬉しいのです。
リセールバリューが高い
そしてもう1つはやはり経済的な観点から。そもそもバイクというのは、大事に扱っていれば価値が落ちにくい工業製品です。昨今のバイクブームがあったとはいえ、20年も前のバイクが新車の7割くらいの価格で当たり前に売られています。一部車種においては、当時の新車価格の倍の値付けがされていたりもします。車などと比べてもリセールバリューが異常に高いのです。
大事に扱う、良いコンディションを維持できるというのであれば、新車のバイクというのは非常にコストパフォーマンスが高い乗り物であると言えます。
以上の理由で新車を買うのは大いにアリです! 新車の所有感を楽しむことができ、育てることができ、売るときも高い価格で買い取ってもらえます。初期費用こそかかりますが、得られる満足度も非常に高いものがあるはずですよ。
まとめ
今回は中古車・新車・極上中古車のそれぞれの特徴や、利益率などの裏事情をお伝えしましたがいかがでしたか。それぞれにメリットとデメリットがあるので、これからバイクを買おうとしている人で、新車にするか中古車にするか迷っている人の参考になれば幸いです。
この記事の内容はこちらの動画でも詳しく解説していますので、是非ご視聴ください。
それでは今回も最後までご覧いただきありがとうございました。
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投稿者プロフィール
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元バイク屋のYouTuber。
バイクライフに役立つ情報を毎週配信。
メカの話やバイク購入アドバイスはもちろん、用品レビューやバイク屋裏話まで、バイク乗りなら誰もが気になるテーマばかり。
ちなみに中身はアラフォーのおっさん。
好物はサッポロ黒ラベルとキャベツ太郎だが、子どもができて以来、ふるさと納税で貰った無糖レモンサワーで節約している。
最近、血糖値と血圧を気にしているらしい。
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