はい!元バイク屋のフォアグラさんです、こんにちは。
さて今回はツーリング先でのトラブル対応の考え方や、今からすぐにでも準備して欲しい対策をお伝えします。
今回は具体的な作業の手順や内容ではなく、皆さんがしがちな今から準備、できることや確認しておくべきことについてお伝えします。
今回の内容は、まずは車載工具について。
次に転倒でレバーなどが折れた時の対応について。
そして誰にでも起こる可能性の高いタイヤのパンクとバッテリー上がりについてです。
では早速解説に行きましょう
車載工具は100均でOK!
まずは車載工具の解説からです。昔は新車のバイクを買うと簡単な車載工具セットが付属したものですが、現在は付属しない場合が多いようです。ではどのように揃えたら良いでしょうか?
結論から言ってしまうと、とりあえずは100均工具でOKです。
よく「緊急時に折れたり舐めたりしたら大変だから、車載工具はブランド工具を買うべきだ」という人がいますが、100均工具でもちゃんと使えば、そんなにすぐ舐めたり折れたりするようなことはありません。強いて言えばドライバーだけは舐める可能性が比較的高いので、ソコソコの物を用意した方がいいかもしれませんが、それでもいわゆるホームセンター工具レベルで十分でしょう。
緊急時に大切なのは高品質な工具ではなく、その作業に必要な工具があるかどうか、最低限の作業ができるかどうかということです。たとえバイク専門の整備士であっても、素手ではネジ1つ外すことができないのです。緊急時に役立つのは1万円のレンチが1本あることではなく、しょうもない品質でもとりあえず揃っている980円のツールセットの方なのです。
ではどのような基準で車載工具を選べばいいのでしょうか?
どこまで対応できるか&するつもりか
車載工具を選ぶ基準の一つは、まず自分の技術を考慮して、どの程度までのトラブルであれば対応できるのか、またするつもりでいるのかということです。
当然ですがプラグ交換をできない人が、プラグレンチを持ち歩いても仕方ないですよね?
そして、どこまで作業をするつもりなのか?という割り切りも大事です。たとえば先ほど例に挙げたプラグ交換。
単気筒のバイクであれば簡単にプラグ交換をすることができますし、そもそも単気筒の場合はプラグが原因でエンジンがかからなくなってしまった場合はどうにも動きません。ですので単気筒車に乗っている方であれば、プラグ交換くらいは応急処置することにしようと決めておいて、その作業に必要な工具を選定すれば良いでしょう。
単気筒でもフルカウル車の場合は、カウルを外す必要も出てきたりするので、必要な工具には違いが出てきます。
また多気筒の車種であれば、最悪1 気筒死んでしまってもなんとか走ることはできます。ですので極論ではありますが、逆にプラグが同時に複数本ダメになることはまずないので、1気筒死んでもバイク屋までなんとか走れるだろうと割り切ってしまうのもありです。
またご自身が任意保険などの レッカーサービスに加入しているかどうか、そしてそのサービスにおける無料搬送距離によっても、対応したい範囲というのは変わってきます。
ご自身が加入しているレッカーサービスの無料搬送距離が短い場合は、ある程度自分で対応できるように、ツールはしっかり揃いた方が良いと自分は考えます。逆に300kmとか距離無制限のロードサービスに加入している方であれば、北海道ツーリングでも安心して走ることができますよね。つまり加入しているサービスの無料搬送距離によって、対応するべき応急処置の幅が変わってくるのは必然で、携帯するべき車載工具や補修部品の量も変えるべきなのです。
余談ですが、ツーリングに行くような休日の場合はレッカー業者の拠点が休みであることも多く、市街地から遠く離れたツーリングスポットだと、上限が30kmや50km程度では全然足りなかったりもするのです。ロードサービスにかかる費用というは一般的に700円/km程度が相場ですから、100kmだと7万円!意外とバカにならない金額がかかってしまいますね。
車載工具はコンパクトに
あくまで緊急時用の工具ですから、できればシート下に収まる程度にしておきたいです。シート下に収納スペースがない車種であれば、イメージ的にはシートバッグのポケット1つ分くらいでしょうか。そのためには小さい工具を選ぶということが非常に重要です。とはいえ小さければいいのかと言うと、それも違います。
ドライバーの選び方
特に気をつけてもらいたいのがドライバー。例えばコンパクトだからと言って柄の短いスタッピードライバーを選んでも、全然力が入らず硬いネジは外せません。このスタッピーというものは、通常の長いドライバーでは入らないような狭い隙間で使うものです。ネジが外せないのでは持っている意味がありませんからね。
とはいえ長いドライバーをプラスとマイナスの2本持ち歩くのも、スペース効率がよくありません。そこでお勧めしたいのが差し替えるタイプのドライバー。
これなら割と力も入りやすいですし、1本分のスペースでプラスもマイナスも使用できる上、サイズ違いのドライバーを追加する場合もほとんどスペースを取りません。
ヘキサゴンレンチの選び方
それと気をつけて欲しいのがヘキサゴンレンチ(六角レンチ)です。
自分はこのようなショートタイプのセットを携帯していますが、短いヘキサゴンレンチには大きなデメリットがあります。
まずヘキサゴンレンチを使用する六角穴付きのボルトというものは、強いトルクで締めつけていることが多いため、短いと力が足りず外すことすらできない可能性というのがあるので、ロングタイプを選びたいところです。しかしセット物にしてしまうとかなりスペースが必要なので、ロングタイプで自分の愛車に使われているサイズのみを携帯するという方法もあります。
ただし、そのためにはどの程度のトラブルまで自分で対応するつもりなのか、そしてそのトラブルに対処するために必要なボルトやネジのサイズを把握して、用意しておくということが重要です。こんな長いセットを丸ごと持ち歩くよりも、本当に必要なものを2・3本持ち歩く方が断然おすめです。
こんなことを言いつつも自分がショートタイプを選んでいる理由は、スペース効率の良さと、今乗っている車種でロングタイプのヘキサゴンレンチを必要とするような修理の場合は、結局応急処置では済まないことが想定され、ロードサービスを呼ぶと割り切っているからなのです。
スパナの選び方
他にも両口スパナのうち、特に使用頻度の高い8mm /10mmそして12mm/14mmの2本を持っておくと、大概の対応ができます。
17mmも欲しいと思われるかもしれませんが、車載工具の目的というのはあくまで応急処置です。車種によっては、17mmを必要とするような修理の場合は、先ほど言ったように諦めてレッカーを呼ぶことにすると割り切るのもアリなのです。17mmとなると使用頻度が低い割にかさばりますからね。
また「両スパナよりもコンビネーションレンチやメガネレンチの方が良いんじゃない?安心できるんじゃない?」と思う人もいるかもしれません。確かに安心して強いトルクをかけることができるので、整備品質という点ではメガネの方が良いのですけれども、車載工具に求められることは、とりあえず目の前のナットを回せるかどうかということだけです。
メガネの場合は角度がついているため、狭いクリアランスでは入らない場合もあります。コンビネーションレンチの場合は、単純に本数が2倍になってしまうため携帯性が大きく低下します。ですのでこの車載工具に関して最適解は両口スパナと言えるでしょう。
レバーが折れた!こんな時どうする?
バイクのよくあるトラブルに、転倒時にレバーが折れてしまうということがあります。マニュアル車の場合、運悪くクラッチレバーが折れて握れなくなってしまうと、それだけでバイクは動かすことができなくなってしまうわけです。もはやバイクは巨大なの文鎮と言っても過言ではありません。ではバイクを文鎮にさせないために取るべき対策について解説をします。
大きく3つのパターンがあるのですが、特に最後に紹介するものがおすめです。
その1:交換用レバーを持ち歩く
まず1つ目、単純に交換用のレバーを持ち歩くということ。レバー交換は作業としても決して難しくない作業です。また車載工具も。レバー交換に対応できるよう組んでおくことは難しくありません。
ただしデメリットもあります。ブレーキとクラッチのレバー2本を持ち歩くのは荷物になります。ロングツーリングなどであればバッグに忍ばせておけば良いのですが、シート下に収納させると考えると、ビッグスクーターでもない限りは厳しいです。そしていつ使うかどうかも分からない、なんなら一生使わないかもしれないレバーを購入しておくというのも、結果的にお金の無駄遣いになってしまうかもしれません。
その2:社外レバーに交換・レバーガードの装備
そして2つ目の対策、それは社外レバーへの交換と、レバーガードの取り付けです。
実は社外品のレバーにはショートレバーや可倒式レバーというものがあります。ショートレバーとはその名の通り短いレバーですので、転倒してもレバーよりバーエンドの方が先に地面と接触しやすいため、折れる可能性を低くすることができます。ただし操作には今までよりも強い力が必要となるため疲れたり、最悪指が攣ってしまうなんてこともあるかもしれません。ですので長時間走る方や、ショートレバーでもまだ不安だという方には、こちらの可倒式レバーがおすすめです。
可倒式レバーというのはこのように、力が加わるとレバーが倒れて折りにくいように設計されているものです。
また純正レバーのままでも、レバーガードを付けておけば安心ですよ。
ただし当然ですが、これらの対策を講じるためには費用がかかります。安物の中華品レバーであれば大体2本セットで4000円程度から、信頼できるメーカーの製品であれば1本あたり1万円程度からといったところでしょう。
その3:バイスプライヤーでの応急処置
そして最後に紹介するのは、自分が最もお勧めしたいもので、実際に自分も行っている対策です。先ほど実際に組んでいる車載工具の例をお伝えしましたが、その中にバイスプライヤーというものがありました。このバイスプライヤーを車載工具として積むだけで簡単に対策できるのです。
バイスプライヤー(ロッキングプライヤー)は握った状態でロックすることができるので、折れたクラッチレバーにバイスプライヤーを取り付けてロックをすると 、とりあえずレバーとして使えるようになります。
そしてこれは緊急時にはプライヤーとしても使用することができます。一般的なプライヤーと比べるとあまり大きなものはつめませんけれども、バイクの応急処置で使用する場合は大概、事足ります。もしバイスプライヤーで掴めないサイズのものであれば、ラジオペンチでなんとか頑張りましょう。
バイスプライヤーは安いものだと500円くらい、100均でも店によっては300円商品として売られていたりもします。
ツーリングでの最多トラブル! パンクとバッテリーあがり‼
ではツーリング中のトラブルで特に多く、誰にでもいつでも起こり得るパンクとバッテリー上がりについて解説をします。
あわてるな!タイヤのパンクの対処法
まずパンク。現代のバイクの多くはチューブレスタイヤが採用されていて、自転車のようなチューブは存在しないのです。今でもクラシックタイプやオフロードモデルなどではチューブタイヤを採用していますが、スポーツバイクやスクーター、アメリカンなどほとんどのバイクはチューブレスタイヤです。
このチューブレスタイヤのメリットは、釘などが刺さっても空気が抜けにくく、多少の距離ならそのまま走れてしまうのです。
パンクに気付かず、そのまま走っていたなんていうこともあるくらいです。ですのでチューブレスタイヤの場合は、釘などが刺さっていてもすぐに抜いてはいけません。抜いてしまうと、その穴から空気が抜けてしまうからです。
当然理想はパンク修理キットを携帯し、その場で修理をしてしまうことです。実はパンク修理というのは全然難しくなくて、中には修理キットも携帯を前提としたコンパクトなものも出ています。
問題はパンク修理した後の空気の補充で、昔は使い捨てのCO2ボンベなどを使用していましたが、今は充電しておいた電動エアポンプをツーリングバッグに忍ばせておけば安心です。
パンク修理ができない人でもこれがあれば、釘を抜かずにこのエアポンプで補充しながらバイク屋で走るといったこともできるかもしれません。あんまり大っぴらに言えることでもないので、自己判断でお願いしますけれどもね。
自分が使用しているエアポンプは中華製にありがちなタッチパネルではなく、物理ボタンを採用した国内メーカー品で、グローブを装着した手でも簡単に操作ができるのです。もちろん日常の空気圧管理や自動車にも使えたりもするので1つ持っておくとかなり便利です。
バッテリーの突然死? バッテリー上がりに要注意
ツーリングに特に多いトラブルその2、バッテリー上がり。
バッテリーの突然死って聞いたことありませんか?他のパーツと違ってバッテリーの場合は前兆もなく、突然セルが回らなくなる、エンジンがかからなくなるなんていうことが多々あります。
というのも昔のバッテリーは徐々に性能が落ちていくというものでしたが、近年のバッテリーの多くは高い性能を維持することができ、寿命も長くなった反面、突然寿命を迎えるというものになっています。アナライザーという機械である程度寿命を予測することはできるのですけれども、実は大して正確に判断はできません。ですのでバッテリーの突然死なんて言われるのです。
他にも意外と多いのが、鍵をパーキングの位置で抜いてしまって、ずっとテールランプがつきっぱなしだったというケース。
昔のキャブレター車の場合は、セルが回らなくなってもキックや押しがけでエンジンをかけることができましたけれども、近年のインジェクション車の場合は、完全放電してしまうとそれもできません。こうなってしまうとレッカーを呼びたいところですが、「ジャンプスターター」というモバイルバッテリーを少し大きくしたような機械を持っていればなんとかなります。これを携帯しておけば、万一の際にバッテリーにつなげて、セルを回すことができるようになるのです。
中華メーカーの安いものであれば 5~6000円程度売られていますが、今から買う人はこの電動エアポンプとジャンプスターターが一体化したこちらの商品が良いと思います。これをツーリングの際にバッグに忍ばせておけば、パンクにもバッテリー上がりにも対応できます。
Kaedear(カエディア)という国内メーカー品なので安心感もあり、アフターフォローにも定評があります。それでいてこのメーカーの商品は価格も中華製品と変わらない水準です 。長く使えるものでもありますので、1つ持っておくと日常の空気圧管理、そしてツーリングやドライブの安心感が格段に上がると思います。
まとめ
今回はツーリングでのトラブルの緊急対応について解説をしてみましたが、いかがでしたか?この記事は下の動画でも詳しく解説しているので、是非ご視聴ください。
そしてこれを参考に、ちょっと車載工具を見直してみようかなと思っていただけると嬉しいです。
ということで、今回も最後までご覧いただきありがとうございました。
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投稿者プロフィール
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元バイク屋のYouTuber。
バイクライフに役立つ情報を毎週配信。
メカの話やバイク購入アドバイスはもちろん、用品レビューやバイク屋裏話まで、バイク乗りなら誰もが気になるテーマばかり。
ちなみに中身はアラフォーのおっさん。
好物はサッポロ黒ラベルとキャベツ太郎だが、子どもができて以来、ふるさと納税で貰った無糖レモンサワーで節約している。
最近、血糖値と血圧を気にしているらしい。
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