はじめに
チェーンを適当に選んでいませんか?
もしくは、バイク屋さんに任せっきりにしていませんか?
実は、ご自分でもチェーン交換は、コツさえ覚えれば比較的簡単にできます。
ここでは、チェーン交換を考えている初心者向けに、今乗っているバイクのチェーンに関する知識をお伝えします。
さらに、主に原付バイクに乗っている人向けに、チェーン交換の方法も解説しています。
これを読めばチェーンに関する知識と、チェーン交換をやってみたくなりますよ。
バイクのチェーンは大きく分けて2種類
大きく分けると、シールチェーンとノンシールチェーンの、2種類あります。
それぞれのメリットとデメリット、その見分け方も整理しました。
①シールチェーン
シールチェーンとは、ピン(チェーンの軸)とブッシュ(軸の周り)を潤滑するグリースをシーリングで封入したチェーンのことです。
現在では、原付きから大型車まで、幅広く使われています。
メリット
- 可動部分にグリースがシーリングされているので、グリスアップ等のメンテナンスが基本的に不要。
- 耐久性が圧倒的に高い。
デメリット
- ノンシールチェーンに比べて高価。
- メンテナンスには専用のクリーナーやグリースが必要(パーツクリーナー等の洗浄剤を使うと、シール材を傷める)。
見分け方
- チェーンを上から見て、外プレートと内プレートとの間が0.5mmくらいの隙間がある(もしくは、ゴムっぽいものが挟まっている。
- チェーンを外した時に、駒がゆっくりと曲がる(駒の動きに少し抵抗がある)。
値段
- 5,000円~10,000円が相場です。
②ノンシールチェーン
昔のチェーンはほぼ全てノンシールチェーンでしたが、現在ではシールチェーンに押されてラインナップは減少傾向にあります。
しかし、原付バイク等の小排気量バイクを中心に現在でも根強い人気があります。
メリット
- 安価、軽量(チェーンの動きが軽いため、小排気量バイクでは一定の人気があります。)
デメリット
- 耐久性がシールチェーンに比べて低い。
- 定期的な(約500km毎)グリスアップが必要。
見分け方
- チェーンを上から見て、サイドプレートと中の駒との隙間がほとんどない。
- チェーンを外した時に、駒が素早くグニャっと曲がる(駒の動きに抵抗がない)。
値段
- 1,000円~3,000円
チェーンの交換時期の目安は?
【走行距離で判断】
チェーンの種類によって耐久性が変わります。
交換時期となる走行距離のめやすは、
- ノンシールチェーン:およそ5,000㎞
- シールチェーン:およそ20,000㎞
と、シールチェーンの交換時期はノンシールチェーンの4倍も長いことがわかります。
【こんな症状が出てきたら、確実に替え時】
以下のような症状がチェーンにあった場合は、すぐに交換しましょう。
・走行中チェーンの動きにムラが出てきた時
個人的にノンシールチェーンでよくあった症状です。
「グワーン、グワーン」と、偏った鳴り方をし始めたら、チェーンが偏って伸びた合図です。
そのまま乗っていると、スプロケットも痛めます。
・スプロケット上でチェーンをつまみ上げたら浮く
チェーンの伸びを確認するオーソドックスな方法です。
偏って伸びている場合があるので、チェーンを回しながら、全体的に伸びがないかチェックしましょう。
・チェーンが錆びた
さびでチェーンの強度が低下している可能性があります。
サビの侵食が進むと、強度は保てずに錆びた箇所から断裂する可能性があります。
シールチェーンでも、さびがシール内部に侵入してグリースが漏れ出してしまうなど、機能低下や伸びの原因となってしまいます。
・チェーンの一部が「くの字」に固着した
真っ直ぐ伸びるはずのチェーンが、一箇所「くの字」にまがったままだと、そこが固着(焼付け)している可能性があります。
シールチェーンの場合は、シーリングが破れ、封入されていたグリースが抜けて内部で固着しています。すぐに交換しましょう。
ノンシールチェーンの場合は、注油しても動きが戻らなければ交換しましょう。
自分のバイクに適合するチェーンの選び方
チェーンにはサイズやリンク数があります。
各メーカーのホームページから、適合車種のチェーンサイズとリンク数が確認できます。
ここでは、主要なチェーンメーカー3社をご紹介します。
適合する規格のなかで、シールチェーン、ノンシールチェーンが選べます。
チェーンの交換方法
ここでは、初心者でも簡単にできるノンシールチェーンの交換方法をお伝えします。
(チェーン交換には、ある程度の知識と技術が求められるため、自信のない人はバイクショップでプロに頼みましょう。)
【必要な工具】
必要工具等:ラジオペンチ、グローブ
必要部品:新しいチェーン、クリップジョイント(新品チェーンに付いています)
【ノンシールチェーンの交換方法】
旧チェーンの継手(ジョイント)を外す
継手がクリップジョイントの場合:ラジオペンチ等でクリップをスライドさせて外します。
クリップを外したら、外プレートを外します。
外れにくかったら、マイナスドライバーを隙間に入れてテコの原理で外します。
旧チェーンに新チェーンを繋げる
旧チェーンの片側を外し、新チェーンの端を旧チェーンのジョイント部に繋げます。
旧チェーンを引っ張り、新チェーンをスプロケット上に通します。
この時、ジョイントが外れやすいので慎重に行います。
途中、チェーンが引っかかる場合は、ジョイントが外れかけているので、ゆっくり戻して付け直して再度引っ張ります。
新チェーン同士を繋げる
ジョイントピン立て新チェーンに取り付けます。
チェーンのリンク数は合っているのに、チェーンの長さが足りない時は、チェーンの張り調整で後輪のアスクルシャフトが後ろにずらしている可能性があります。
一度、アスクルシャフトとアジャスターを緩めて、新チェーン同士を繋げます。
プレートとクリップの取り付け
ジョイントピンに外プレートをはめ込みます。
クリップが入る溝が出るまで圧着します。
クリップを取り付けます。クリップには、装着する向きがあります。チェーンの進行方向に、背の丸い側(切り欠き部分がない側)が来るようにセットします。
ラジオペンチ等でクリップをスライドさせて溝に完全にはめ込んで完了です。
【更にクリップジョイントを強化したい場合】
クリップジョイントは、取り外しに便利ですが、使用する環境によっては、外れてしまうリスクもあるようです(高速運転やオフロード等)。
それを避けるために、クリップとチェーンを針金等で固定する「ワイヤーロック」という方法があります。
主にオフロードやレース車で使われていますが、やり方さえ間違わなければ、心強い強固なロック方法になりそうです。
【最高強度のジョイントはかしめジョイント】
チェーンのジョイントで最強のジョイント強度を誇るのは「かしめジョイント」で、主に中型以上のバイクチェーンに採用されています。
取り付け・取り外しには専用の工具が必要であることと、一定の作業技術も必要であることから、バイクショップ等の信頼できる技術者に施工してもらうことをオススメします。
【クリップの使い回しはNG、走行中にチェーンが外れることも】
クリップジョイントを使用する場合、絶対に避けてほしいことは、「クリップジョイントの使いまわし」です。
クリップジョイントもチェーンと同様に消耗品です。
摩耗もするし、金属疲労も起こします。
走行中にチェーンが外れたら、チェーンがムチのようにクランクケースが割ったり、後輪に引っかかってロックしたり・・・
想像するだけでゾッとしますね。
必ずチェーン交換時には、クリップジョイントも新品に交換しましょう。
【チェーン交換時にはスプロケットの摩耗も確認しましょう】
チェーン交換をしてもスプロケット自体が摩耗していたら、チェーンとスプロケットの間に隙間が出来てしまい、エンジンのパワーをしっかりと後輪に伝えられなくなります(パワーロスの原因)。
スプロケットの歯が尖り始めていたら、交換のタイミングです。
シールチェーンを装着している場合は、チェーンの交換時期がおおよそ2万キロと長いので、チェーンの交換と一緒にスプロケットも交換することをお勧めします。
チェーンのメンテナンス方法
【走行直後に行うのが効果的】
ノンシールチェーンとシールチェーン両方に共通しているメンテナンス方法は、ずばり「走行直後にウエスでチェーンをふき取る」ことをおすすめします。
【走行直後にチェーンをふき取る理由】
・走行直後は、チェーン全体が摩擦熱で温まるからです(外気温+20~30℃)。
・例えば、外気温が10℃の冬場でも、走行後のチェーンは30~40℃の熱を持っているので、グリース等潤滑油の粘度が低下して、ふき取りやすくなるのです。
・さらに、チェーンに付いた汚れが遠心力で浮き上がるので、効率的に汚れを除去できます。
【注油と仕上げのふき取りで完璧!】
汚れを除去した後は、チェーンの注油をしましょう。
チェーンに注油する場所は、次のとおりです。
- 外プレートと内プレートの間
- 内プレートとローラーの間
- ローラーやプレートの表面(表面の保護)
チェーンが温まっているため、潤滑油がチェーン内部に浸透しやすくなります(ノンシールチェーンの場合です)。
また、拭き取ることで、チェーン全体にグリースの被膜が施され、サビを防止するほか、スプロケットとの摩擦も円滑にします。
注油に関して、上記①と②はノンシールチェーンにのみ効果があります。シールチェーンには構造上、不要です。
上記③はシールチェーン、ノンシールチェーンともに表面のサビ防止という意味で大切です。
■まとめ(結局、シールチェーンとノンシールチェーン、どっちがいいの?)
【原付バイクはノンシールチェーンが向いている?】
馬力の小さい小排気量バイクにシールチェーンをつけると、走行音が静かになる反面、若干もっさりとした動きになります。
あくまで個人的な感覚ですが、シールチェーンの動きはもっさりした印象です。
原付きバイクのレスポンスや燃費を若干悪くしている気がします(ほんのちょっとですが)。
少しでも軽快に走りたいのであれば、ノンシールチェーンをオススメします。
ただし、チェーン交換は頻繁にすることになるので、自前で交換できることが前提になります。
なるべくチェーン交換の回数を減らしたい人には、「シールチェーンも有りです」。
正直、どっちかは好みの問題です。
原付バイクのライダーさんは両方試してみることをオススメします。
【中型以上はシールチェーンが一本勝ち】
原付きで感じるシールチェーンのもっさり感は、馬力が増す中型エンジン以上のバイクには微々たるもので、無視できるロスです。
それ以上に、シールチェーンにはノンシールチェーンにはない大きな恩恵を受けられます。
ここからは筆者の感想(スーパーカブ110に装着)です。
ほとんど伸びない
ノンシールチェーンに比べてシールチェーンはほとんど伸びませんでした。
「今までのノンシールチェーンは何だったのか?」と思うくらい伸びませんでした。
メンテ頻度が激減
グリスアップの頻度もノンシールチェーンの1/10くらいに下がりました。
チェーンとスプロケットの長寿命化
・チェーンが伸びないので、スプロケットの寿命も伸びました。
・シールチェーンの価格はノンシールチェーンに比べて2~3倍以上しますが、それに見合う性能と耐久性がありました。
なにはともあれ、シールチェーンの進化にはめざましいものを感じます。
原付バイクもシールチェーンが標準化される時代がもうすぐ来そうですね。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
投稿者プロフィール
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【チャリダーからライダーへ】8年前、自転車整備の延長で、ほぼ一人でメンテできるスーパーカブ110(ja10)と出会い、世界が広がる。
【スーパーカブ】走行距離9万キロ。試行錯誤のメンテで失敗(エンジン焼き付き)もあるが、不調から回復するカブから元気をもらっている。
東京生まれ。沖縄在住25年。50歳で人生初の脱サラ。2023年からライターとして活動。「自分で直せる」を皆さんにお伝えできたら嬉しいです。
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