その軽量コンパクトさから、登山やトレッキングだけでなく、ライダーにも最適なテントが、フライシートのないシングルウォールテントだ。中でも、いま話題の前室付きシングルウォールテントであるネイチャーハイク「VIK Ultralight Single Tent」をキャンプ場で実際に使ってみたのでレポートしよう。
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設営の前に収納状態のお話を。まず、収納状態がとても軽いことに驚いた。テント生地が薄手なので柔らかさもある。テント本体も1本のベルクロテープ(バンド)でぐるりと圧縮して固定できるので、袋への出し入れもスムーズだ。こういう点は、撤収時のスピードアップにもつながるので、地味に評価できるポイントだ。
また、組立説明書は収納袋の裏に縫い付けられているので、絶対に無くさない。説明書が別についているものは風で飛んでいったりと面倒なので、こうした点も高評価だ。
テントの設営
①グランドシートの上にテント本体を広げる
まずは、グランドシートの上にテント本体を広げる。標準で付属するグランドシート「フットプリント(右写真)」はバスタブ(テント底面)にぴったり収まるサイズだ。なお、今回はわかりやすいように撮影用のグランドシート(黄色いグランドシート)を敷いている。
②テント本体上にポールを置き、四隅のグロメットにポール末端を差し込む
テントは左右非対称。テント側面の高さとハブ(連結部)から下のポールの長さが揃っていることを確認してから、ポールの末端をテント本体四隅のグロメットに差し込んでいく。これでポールが自立する。
③テント本体を上に持ち上げて、ポールの各部に吊り下げる
各部のポールクリップをポールに引っ掛けていくことでテント本体がポールに釣り下がり、本体生地にテンションがかかっていく。
④本体四隅のループ、前室・後室のぺグループにペグを打つ
本体四隅を引っ張って、たわみを取りながらループにペグを打ち込んでいく。次に前室と後室のぺグループを引っ張りながらペグを打つ。
⑤完 成
各部を手でゆすってみるなどして、テンションにゆるみがなければ完成。ゆるんでいる所があれば、ペグを打ち直すなどしてテンションを整える。説明書を見ながら慎重に作業したが、10分もかからなかった。段取りを覚えてしまえば5分でできそうだ。
本テントは、ダブルウォールテントのようにフライシートをかける必要がないので、あっという間に設営が終わってしまう。なお、強風時や風が強まることが予測されるときはガイライン(張り綱)を地面に打ち込むなどして耐風強度を上げておこう。
前室のキャノピーを使ってミニタープも作れる
タープ・キャノピー用ポールやトレッキングポールなどを使えば、前室のキャノピーを立ち上げることで、ミニタープとして使うこともできる。タープの上面は三角形となるが、小さいながらも日陰を作れるのだ。ただし、出入口のドアパネルはメッシュ生地なので雨天の場合は前室形態にしておかないと、室内に雨が入るだろう。
タープの作り方
今回は、一般的なジョイント式のタープ用ポールを使った。キャノピーに備えてある2つのペグロープの位置に合わせてポールを2本立て、ロープでテンションをかければ完成。前室のキャノピーはテントに向かって左上にしか跳ね上げられないので、風の強い日はテント本体の設置角度にも注意したい。
室内の広さや居住性は標準的なソロテントと同じ
室内の広さは標準的なソロテントと同じ。1人が寝る分には充分な横幅が確保されているが、シートバッグなどの大きな荷物を持ちこむのは難しそうなので、シートバッグはバイクに固定したまま、ファスナーにダイヤルロック等をして防犯対策しておくのがいいだろう。
なお、パッと見ではわからないが、このテントは左右非対称なので、寝る時は自ずと高さが確保されている方(テントに入って右側 ※左の写真)が頭の置き場になるだろう。この状態だと頭のすぐ横にポケットがあるし、ドアパネルのスライダー(ファスナー)も開閉しやすい。ただし、スライダーは1つなので中間位置で留めておくことはできない。ガバッと開けるのはおっくうなので、個人的には2つ欲しいところだ。
室内のユーティリティも標準的。ランタン等を吊るすことができる天井のループや小物を収納できるポケットもありナイトライフも快適に過ごせそうだ。
ちなみに、本テントは、前(ドアパネル)と後ろ(ドアではない)のパネルが完全にメッシュなので、3シーズンテントとして使う場合は、外気温、風、冷気の浸入に注意が必要だ。真夏の平地では涼しくて快適だが、春先や晩秋、標高の高いキャンプ場では朝方の冷気で体を冷やす恐れもある。
個人的には、前後メッシュパネルの外側にもう一枚、通常生地のパネルも備えてほしいが、コストは相当上がるだろうし重量や収納時のサイズも増してしまうだろう。悩ましいところだが、バリエーション展開に期待したい。
ところで、前後にメッシュパネルを備えているのに、ベンチレーション(通気口)が天井に2つも付いているのも特徴的だ。ベンチレーションは開閉具合を調整することができ、完全に閉じることもできるので、雨天時でも安心な仕様だ。
また、本テントはシングルウォールなのに後室スペースを備えている。後室のキャノピーにはファスナーがないので開閉することはできないが、後ろのメッシュパネルには横一文字のファスナーがあって後室スペースに手を突っ込んでアクセスできる。このスペースをどう使うかはアイデア次第といったところだろう。
前室のキャノピーも独創的だ。一般的なフライシートなら前室の中央にファスナーが付いており、観音開きで使えるが、本テントは右側のみにファスナーがある。なので、半分だけキャノピーを上げておきたい場合は、キャノピーの右端を左端に持って行き、中央で折り畳むようにして固定する仕様だ。
慣れるまでは戸惑いそうだが、前室自体の広さは、ロングブーツやヘルメットも余裕で置けるほどのスペース。雨天時はキャノピーを全閉にして、前室内での簡単な調理もできそうだ。ただし、その場合は、室内の結露や一酸化炭素中毒を防ぐためにもベンチレーションを開けておき、煙突のように使おう。
ちなみに、前室内での調理は、一酸化炭素中毒や火事など様々な危険をともなうので、ガスストーブ等の使用に限定し、薪や炭といった煙を多く出すものは使わないように。室内での調理も厳禁だ。一酸化炭素中毒は自覚症状が出ないまま危険な状態に陥るので、どんなに雨が降っていても寒くても、換気にだけは気を付けよう。
さて、このように、各部に独創的な作りを持ったシングルウォールテントとなっているが、収納時に軽量・コンパクトであること、設営や撤収が数分で行えることなど、ツーリングライダーにとってはかなり魅力的な製品だ。2万円以下でこの性能なら、コスパはかなり高いと言えるだろう。ロングツーリングで毎日キャンプを続けるようなライダーにはぜひ一度検討してほしいと思う。
■DATA:
価 格:19,800円(税込)
カラー:ホワイト
定員:1人用
サイズ:210×(65+80+50)×95cm
収納サイズ:46×φ16cm
総重量:1.06kg
フライ:15D Silicone Nylon/耐水圧PU 2,000mm
フロア:20D Silicone Nylon/耐水圧PU 4,000mm
ポール材質:7001高強度アルミニウム
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投稿者プロフィール
- 某有名ファッション系デザイン事務所、某バイクツーリング雑誌の編集長、某二輪大手販売店の本部事務所広告部勤め、某官公庁系コンサルティング事務所等を経て、二輪業界の表のみならず裏舞台でも暗躍する“知ってる人は知っている”コンサルタント。二輪車の利用環境改善や市場創造、若年層向けの施策が専門で、二輪雑誌・WEBでの連載・寄稿も多数。
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