こんにちは整備士ライダーのヨシキです。今回のテーマは“安いヘルメット”は危険なのか?について解説していこうと思います。
SNSやYouTubeを見ていると某大陸性のヘルメットの耐久性を試していたり、安いヘルメットはすぐに壊れるといった情報をよく目にしますよね。確かにAraiやSHOEIといった一流ブランドと比べると安いヘルメットはどうしても見劣りしてしまいますが、本当に安いヘルメットは危険なのでしょうか?
レースの現場で見てきたヘルメット事情をお話しします。
ヘルメットは頭を守る大切な装備
まず大前提としてヘルメットは頭を守る大切な装備です。競技、公道に関わらず、できればフルフェイスヘルメットでの走行が望ましいでしょう。ハーフヘルメットで公道を走っている方をよく見かけますが、個人的には結構危険だと思っています。もちろんコースでは使用できないですしね。
ではいざフルフェイスヘルメットを買おうと思うと、今度は価格面がネックになってきます。AraiのハイエンドオフロードモデルV-CROSS4はペイントモデルで税込み67,000円。ちょっとためらってしまう金額です。
“レースに出るわけじゃないし…”と思ったらついつい安いヘルメットを選んでしまうのも無理はありません。でもヘルメットだけはあまり安いものはオススメできません。なるべく有名メーカーの正規品を着用しましょう。
ネットの安いヘルメットって大丈夫?
オススメできないってことは安いヘルメットは危険なの⁉と思われそうですが、そうではありません。安くても優秀なヘルメットはたくさんあります。
その見分け方はずばり“安全規格”をパスしているかどうか。安全規格をクリアしているヘルメットなら正直安いモデルでも全く問題ありません。高性能なモデルに比べると快適性の面で劣るかもしれませんが、頭を保護する能力は一定水準以上の品質を保っていると判断できます。
安価なモデルのヘルメットを購入するときは安全規格を基準に選びましょう。
ヘルメットの安全規格
ヘルメットの安全規格とは第三者機関によって安全を保障された品質規格です。ヘルメットの後ろにPSC,SG,SNELLといったシールが貼ってあるのを見たことがあるのではないでしょうか?
このシールが張られたヘルメットは安全規格を満たしたヘルメットです。安全規格の種類は全部で8種類。中には民間のものであったり独自の規格も存在するので、もっと細かく言えばたくさんあるのですが、私が注目したいのは次の5種類です。
- PSC:消費生活製品安全法に基づいた規格。日本のヘルメットはこの規格の製品以外は販売できない
- SG:一般財団法人製品安全協会に基づいた規格。PSCと違って任意の制度のため、なくても販売は可能
- JIS:日本産業標準調査会に基づいた規格。SG同様任意の精度
- SNELL:アメリカのヘルメット規格。世界で最も厳しい規格といわれている。ARAIはこのSNELL規格を取得
- ECE:国連欧州経済委員会に基づく規格。世界のモータースポーツシーンではこの規格を取得しているヘルメットならほとんどの競技で使用できる
このようにヘルメットの安全性能は世界中でテストされています。どの規格が最も安全であるかについては一概には言えないものの、ヘルメットを購入するときの判断基準としてチェックしてみましょう。
特に最近のヘルメットはSNELL規格を重視する傾向にあります。競技を前提に選ぶのであればSNELL規格を取得しているかチェックです。
極端に安いヘルメットはやめておいた方が無難
これらの厳しい審査をクリアするためにはやはりそれなりにコストがかかります。新基準を満たすヘルメットを開発する費用、検査にかかる費用、その人件費など。高いヘルメットはそれだけ手間とお金を掛けて作られています。一流メーカーのヘルメットが高いのも納得ですね。
そんな風に考えると、ネットの安いヘルメットの安全性に疑問が残るのは言うまでもありません。5千円以下で販売しているようなフルフェイスヘルメットは避けたほうが無難でしょう。
中古は絶対にダメ!
ちなみに、正規品であっても安いからといって中古を買ってはいけません。ヘルメットは外殻の“シェル”、衝撃を吸収する“衝撃吸収ライナー”、内装の“スポンジパッド”の3層で構成されています。
一見キレイなヘルメットでも一度大きな衝撃が加わると衝撃吸収ライナーが変形し、衝撃に耐えられなくなっている可能性があります。中古品は今までどのような使われ方をしていたかもわかりませんし、商品説明に書いてあることが本当かもわかりません。
命を守る大切な装備であるヘルメットは絶対に新品がおすすめです。
ヘルメットってどうやって選べばいいの?
ここからはヘルメットの選び方を紹介していきます。私が以前Araiのテクニカルさんに教えていただいた方法をそのまま紹介しますので是非参考にしてみて下さいね。
まずはフィッティングチェック
まずは頭のサイズを測ってフィッティングチェックです。布やテープを鉢巻のように額に巻いて、その長さを測ります。ヘルメットのサイズはある程度余裕をもって作られているのでそれほど厳密に測る必要はありありません。
頭のサイズとヘルメットのサイズの目安は次の通り。
実際に試着してみて頭が締め付けられるような窮屈感が無ければOKです。
頬のスポンジパッドは厚み調整できるものが多い
頭のサイズはピッタリでも、頬のスポンジパッドがきつかったり緩かったりする場合があります。こういう時は厚みの違うスポンジパッドを使って調節すると良いでしょう。
用品店では厚みの違うパッドを在庫していることもあるので、いまいち顔の周りがしっくりこないと思ったらお店の人に違うパッドがないか聞いてみましょう。
首を振ってヘルメットがずれなければ大丈夫
ピッタリのヘルメットが決まったら、最後に顎ひもを締めて首を前後左右に振ってみます。ヘルメットがずれなければOKです。縦方向のずれであれば多少許容できますが、横方向でずれてしまう場合はもう少し窮屈なヘルメットがおすすめです。
これなら安心!オススメヘルメットを紹介
最後に、ヨシキがオススメするフルフェイスヘルメットを4つご紹介します。これらのヘルメットはそのまま競技にも使える高性能ヘルメットなので安全面は申し分ありません。
気になる方は是非試着してみて下さいね。
ARAI V-CROSS4
国産ヘルメット2大巨頭の一つARAI HELMET。V-CROSS4はオフロード競技向けのヘルメットです。ゴーグルを固定するためのゴーグルロケーターを装備し。エアベンチレーション機構は暑い夏でも蒸れにくい構造です。
持つと少し重たく感じますが、被ってみると意外なほど重さを感じさせません。後頭部の設計が日本人寄りになっているので、後頭部の空間がやや狭めです。人によってはサイズ以上に窮屈に感じることもあるので、購入は試着をしてから決めるといいでしょう。
SHOEI VFX-WR
国産ヘルメットのもう一つの鉄板メーカーがSHOEI。SHOEIのオフロード用ヘルメット、VFX-WRは過去のVFXシリーズのを踏襲したデザインをしており、攻撃的でよりレーシーなスタイルに仕上がっています。
機能的にはARAIとほぼ変わりはありませんが、ベンチレーション機構がヘルメット内部に組み込まれている為、よりスタイリッシュなデザインになっています。
こちらはAraiに比べて後頭部が広めに設計されており、サイズよりも大きめに感じます。こちらも試着してからの購入がおすすめです。
LS2 EXPLORER F
LS2はアメリカとカナダで市場を広げるヘルメットブランドです。あまり聞き馴染みのないメーカーかもしれませんが、motoGPでは既に着用ライダーが出てきており、少しずつ知名度が広がってきています。
オフロード用である“EXPLORER F”はアドベンチャータイプのヘルメットとなっており、モトクロスなどの競技には不向きですが、林道ツーリングやエンデューロなどでは十分活躍します。
海外ヘルメットでありながら、JIS・SGを取得しているため、安全性の高いヘルメットです。
HJC CS-MXⅡ ドリフト
HJC HELMETSは韓国に本社工場を置く輸入ヘルメットメーカーです。安価ながら高い耐久性を誇り、国内外のライダーに広く愛されています。トップライダーも多く使用している為、モトクロスやエンデューロシーンでよく見かけます。
もちろんJIS・SG規格に対応しているので性能面も文句なし。デザインもオリジナルペイントのようなイメージでかっこいいですね。こちらのヘルメットは大変軽く、首が全く疲れないのがポイント。フィット感はArai、SHOEIに劣りますが、慣れてしまえばほとんど違和感を感じません。
コスパが良くて安全なオフロードヘルメットといえばHJCが一番かもしれません。
ヘルメットはケチっちゃダメ
当たり前ですが、ヘルメットはプロテクターの中でも最も重要な装備です。公道はもちろんモトクロスコースや林道を攻めるのであれば絶対に安物を買ってはいけません。
確かにハイエンドモデルのヘルメットの販売価格は5~6万円とやや高額です。ですが命に比べれば安いものではないでしょうか。ヘルメットはケチらずに高性能な正規品を選ぶ事。長くバイクライフを楽しむために必要な経費として割り切りましょう。
関連記事:
投稿者プロフィール
-
元モトクロス国際B級ライダーのヨシキです。
趣味は林道探検、オフロードバイクでどんな山道も散策します。
今は整備士として活躍しているので、メンテナンス、DIYでできる整備など、お役に立てる情報を発信していきたいと思います。もちろんレーサーならではのライテク記事も執筆していくのでおたのしみに。
【愛車たち】
SUZUKI RM-Z250,HONDA CR125,SUZUKI RM80L
最新の投稿
- コラム2024年12月5日絶版車を蘇らせる“レストア”ってどんな作業?修理とは違うの?
- メンテナンス2024年11月17日100均工具は使えない!?整備士ヨシキが100均工具の限界に挑戦!
- ライディング2024年11月10日ブレーキ操作が上手くなりたい!指の本数でわかる上達メソッド
- ヘルメット2024年11月6日安全なオフロードヘルメットの選び方を紹介!中華ヘルメットは危険!?