ロイヤルエンフィールドのヒマラヤを知っていますか?
ヒマラヤとは、インドに本社と生産拠点を持つロイヤルエンフィールド社が製造している、411ccのアドベンチャーバイクです。
今回は、そのヒマラヤに試乗してきました。一般ライダーとしての目線で、微妙な排気量ともいえるヒマラヤのインプレッションをご紹介します。
ヒマラヤの長所と短所、ヒマラヤに向いているライダー、向いていないライダーについても解説しますので、ぜひ最後までお付き合いくださいね。
ヒマラヤって、どういうバイク?
「ヒマラヤ」はインドのロイヤルエンフィールド社が製造販売しているオートバイです。カテゴリーはアドベンチャーバイクになります。
ヒマラヤという名前は、インドのヒマラヤ山脈に由来しています。「ヒマラヤ山脈をバイクで旅する」というコンセプトで誕生しました。なのでオンロードはもちろん、オフロードやラフロードの走行が可能です。長時間・長距離走ることも想定しています。
ヒマラヤを製造しているロイヤルエンフィールド社は、現在はインドに本社と生産拠点がありますが、もともとはイギリスで創業した、世界最古ともいわれている老舗のオートバイメーカーです。
今回試乗したヒマラヤは、2022年式のEuro4モデルです。正規取扱店によれば、デザインも乗り味も、2023年式のEuro5モデルとほぼ同じとのことです。
今回の取材にご協力いただいたのは福岡県福岡市のバイクショップ、スピードモーターガレージ。北部九州で唯一のロイヤルエンフィールド正規代理店です。
スピードモーターガレージの原田社長様と河野工場長様が、ヒマラヤについて詳しく教えてくださいました。
スピードモーターガレージ
住所:〒819-0162 福岡県福岡市西区今宿青木1025-22
電話:092-805-5522
営業時間:10:00-19:00
定休日:毎週日曜日、月曜日
ヒマラヤの試乗インプレッション
ひとことでいえば「乗りやすく扱いやすい」です。運転のフィーリングや車体の細部について、試乗で感じたことを解説します。
エンジン
エンジンは411cc、SOHC空冷単気筒。いわゆるビッグシングルです。エンジンはセルモーターで一発始動。すぐにかかり安定します。
エンジン始動して聞こえてくるのは「トトトン」という感じの軽快な排気音。「ドドドッ」というような重厚な音ではなく、回転フィーリングもなめらか。
そしてビッグシングルなのにあまり振動を感じません。筆者の愛機(カワサキ250TR)より振動が少ないと感じました。
運転フィーリング
エンジンのパワーは「おとなしい」というのが正直な感想です。しかし、必要にして十分。411ccの単気筒エンジンなので爆発的な加速ではないけど、アクセルを開けていくと、いつのまにかスピードが乗ってきて60km/hに達していました。
扱いやすいパワーなので「アクセル全開」を楽しめるバイクです。
ただ、排気量が411ccなので、パワーはおとなしめ。大きいパワーを望むライダーには物足りないかも知れません。
しかし筆者のような「下道大好き、酷道・険道大好き変態長距離ツーリングライダー」には「もってこい」のバイクです。
アクセルストロークは短く、アクセルをたくさんひねらなくてもエンジン回転が上がります。単気筒エンジンのおだやかなパワー出力特性にマッチしており、扱いやすくラクに感じました。
アクセルストロークが短いと、長距離を走り続ける際に手首の負担が少なくなり、疲れを軽減できます。
ハンドリングは、やや重い(粘る)と感じました。これは、フロントに21インチのタイヤを採用しているためです。
やや重いとはいえ、ハンドリングは素直で意のままに操作できます。イヤな重さのハンドリングではなく、妙なクセもありません。
そして、コーナーではとても安定しています。まるで敷かれたレールの上を走っているかのような安定感。フロント21インチタイヤのジャイロ効果により、コーナーリング中も安定しています。
ブレーキはよく効きます。シングルディスクですが、車重の軽さもありコントローラブル。ブレーキの装備も必要にして十分です。
どこまでも走って行けそうなヒマラヤ
ヒマラヤに試乗した瞬間「このまま長距離ツーリングに行きたい!」と思いました。ヒマラヤはどこまでも走っていけそうで、長時間ずーっと乗れそうな、そんなバイクです。
外観
武骨な外観です。ムダがないというか、質実剛健。現在の日本はもちろん、世界中のどのメーカーも作っていないようなデザインとコンセプトで、どこか懐かしく好感が持てる外観です。
足つき・乗車ポジション
シート高は800mmで、身長174cmの筆者は足つきに余裕があります。ヒザにも余裕があり、ヒザが少し曲がります。
アドベンチャーツアラーだけど、シート高がそこまで高くないので、乗った瞬間に「あ、乗りやすい」という印象を受けました。
乗車ポジションはラクです。直立に近い乗車ポジションでリラックスできる感じ。「インドのヒマラヤ山脈を走るバイク」というコンセプトがうなずけました。
これなら長距離、長時間のツーリングもできそうです。
車重は199kgで車体が大柄だけど、取り回しもラクなバイクです。
車体まわり
ヘッドライト上に標準で装備されているウィンドシールドは小型ですが、効果はあります。試乗中、時速60km/hでスタンディングしてみたら、顔にかなりの風圧を感じました。座ると、顔に風圧は感じません。高速走行や長距離ツーリングのときは、疲労軽減に効果がありそうです。
燃料タンクは15Lです。販売店によれば、実際の燃費は平均して30km/L前後とのことなので、1回の燃料満タンで400kmくらいは走れそうですね。
シートは硬すぎず、軟すぎず、絶妙な硬さです。長距離走行に対応できるよう、シート設計されています。
ヘッドライトとメーターパネルはフレームマウント。筆者は愛機がハンドルマウントのカワサキ250TRなので少し違和感を感じましたが、慣れの問題だと思います。
サイドスタンドを出してバイクを置いた状態は、やや立ち気味。バイクを置く場所によっては、倒さないように注意が必要です。
ヘッドライトにはハロゲンバルブが採用されています。ハロゲンバルブは世界中のどこでも手に入りやすく、メンテナンスや交換のしやすさを考慮した設計です。
全体的に「構造がシンプル」という印象を受けました。製造元(地元)のインドやツーリング先での整備性を考えて、複雑な機構や電子装備などは極力少なくしてあります。「ヒマラヤ山脈をバイクで走る」というコンセプトが、ここにも現れていますね。
向き不向きがあるヒマラヤ
ヒマラヤはライダーにより、好き嫌いが分かれるバイクです。ヒマラヤに向いているライダーと向いていないライダー、それぞれいます。ヒマラヤを検討するのであれば、ヒマラヤの長所と短所をよく理解しておきましょう。
ヒマラヤの長所と短所
長所
- 扱いやすいパワーなので、アクセル全開を楽しめる
- 長距離を走ることができる
- 荷物の積載性がよい
- 整備性にすぐれている(複雑な機構や電子装備は最小限)
短所
- 大型二輪免許が必要(排気量411cc)
扱いやすいパワーで乗りやすいのですが、ネックはその排気量です。411ccなので、ヒマラヤに乗るためには大型二輪免許が必要になります。
ヒマラヤをおすすめできるライダー、できないライダー
ヒマラヤをおすすめできるライダー
- 大型二輪免許を持っているが、大排気量・ハイパワーを求めていない
- 長距離ツーリングや下道ツーリングが好き
- のんびり走るのが好き
- ときには林道も走りたい
- 生産国にこだわってない
おすすめできるのは、筆者のように大型二輪免許を持っており、250ccのアドベンチャー的なバイクに乗っている、長距離ツーリングが好きなライダーです。
筆者は愛機がカワサキ250TRなので、ヒマラヤに試乗してすぐ「お、パワーがある!」と感じました。
ヒマラヤをおすすめできないライダー
- 大排気量、ハイパワーを求めている
- 走るのはオンロードのみ
- 国内メーカーが製造したバイクに乗りたい
逆におすすめできないのは、大排気量・ハイパワーのバイクに乗りたいライダーです。排気量411ccのヒマラヤは、大排気量のバイクに比べると非力です。パワーが欲しいライダーには物足りないかも知れません。
「せっかく大型二輪免許を持っているのだから、大排気量・ハイパワーのバイクに乗りたい。」という考えのライダーは、国産や欧米の大型バイクを選ぶほうがよさそうです。
あくまで筆者の個人的な主観ですが、大排気量リッターバイクのポテンシャル(性能)を国内の一般公道で使い切るのは難しいと思います。バイクのカテゴリーにもよりますが、大型SS(スーパースポーツ)のようなバイクは、日本の道路交通法や道路事情を考えれば、安全にエンジン全開できる場所はサーキットぐらいしかありません。
筆者のように、かつて大型バイク(カワサキGPz900R Ninja)に乗っていたけど、現在は250ccに乗っているというようなライダーに、ヒマラヤは共感できるところが多いのではないでしょうか。
ヒマラヤ主要諸元
全長:2,190mm
全幅:840mm
全高:1,370mm
シート高:800mm
排気量:411cc
重量:199kg
エンジン:空冷4ストローク 単気筒SOHC2バルブ
最大出力:17.9kW(24.3PS)/6,500rpm
最大トルク:32Nm/4,250rpm
トランスミッション:5速マニュアル
フューエルタンク:15L
ブレーキ:Front=φ300mmディスク/ABS Rear=φ240mmディスク/ABS
タイヤ:Front=90/90-21 Rear=120/90-17
メーカー希望小売価格(消費税込): 874,500〜894,300円
ヒマラヤはロイヤルエンフィールドが誇る長距離アドベンチャーバイク
ヒマラヤに試乗するまでは「411cc? インド製? 眼中にない。」と正直思っていましたが、今回試乗してこの先入観は見事にひっくり返されました。ヒマラヤのクオリティは予想よりはるかに高いし、乗って楽しいと思えたからです。
今の日本だけでなく世界中を探しても、ヒマラヤのようなバイクを作っているメーカーはほかにありません。古きよきイギリスの伝統と現代技術の融合、シンプルかつ質実剛健、実用的なアドベンチャーツアラーバイク。それがヒマラヤです。
大型二輪免許を持っていて、ミドルクラスのアドベンチャーバイクを検討しているライダーにはおすすめです。
標高3,000m以上の山岳地帯であるインドのヒマラヤ周辺を走る公式ツーリングを、ロイヤルエンフィールド社は毎年企画・開催しています。この公式ツーリングでは、ヒマラヤの信頼性および耐久性の高さが十分発揮され、証明されています。
ちなみに、2023年11月に新型ヒマラヤが発表されました。新型ヒマラヤは排気量が450ccで水冷単気筒エンジンに進化しています。
今後もヒマラヤから、目が離せませんね。
過度に飾っていない。必要にして十分な排気量と装備。質実剛健で実用的なアドベンチャーバイク、ヒマラヤ。
筆者はヒマラヤにホレました。すでに「欲しい」と思い始めています。
投稿者プロフィール
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熊本県在住。生まれも育ちも熊本。
阿蘇をこよなく愛する生粋の熊本人。
昭和の時代に限定解除し、原付/中型/大型の所有歴あり。
現在の愛機はKawasaki 250TR。
愛機250TRで一日500km(下道)を走破することもある、元気おやじライダー。
「安全第一、無事帰る」をモットーに、今も安全運転を模索しながら走り続けている。
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