はい!元バイク屋のフォアグラさんです、こんにちは。
よく100馬力なんてパワーは必要ないとか、排気量は400ccもあれば十分という話を聞きますよね。もっぱらSNS界隈でも、大型バイクのアドバンテージを解説すると「排気量マウント」だの「日本の道路で大型なんて必要ないだろ」と、まるで悪者かのように叩かれる、逆排気量マウントが少なくありません。今回はそんな大型バイクは本当に不要なのかということについて真面目に考えてみたいと思います。
確かに250クラスのバイクでも高速道路に乗ることも二人乗りもできますし、制限速度等も同じで、1000ccを超えるバイクと比べても何も制限は変わらないですよね?ではなぜわざわざ大型自動2輪免許まで取得をして、100万円200万円もするような高いバイクを買う人がたくさんいるんでしょうか?ちょっとその理由についても考えてみましょう。
あらかじめお伝えしておきますが、この記事は排気量でバイクの良し悪しや、ましてや小排気量車に対してマウントを取るようなものではありません。大型自動二輪のメリットや事実をただお伝えしていきますので、誤解しないよう話を聞いてくださいね。
大型バイクは必要か?
まず結論からお伝えしましょう。
大型バイクは必要なのかどうかというと必要です。
「だって250ccのバイクでも100km/h以上出るし、2人乗りだってできるし、大型と比べても何も困ることないよ」
と思われる方も多いことでしょう。250ccでも大型バイクでも法的な制限は何も変わりません。
「じゃ大型なんて必要ないし、250ccがあれば十分じゃない?」
いや、そこは違います。もちろん250ccで十分という人もいるでしょう。でもそうじゃない人、そうじゃないケースっていうのも多々あるんです。250ccでは不十分な場合というのは後ほど詳しくお伝えしますが、ここではまずその概念考え方をお伝えします。
そもそもバイクは実用車として利用しているよりも、趣味の乗り物として所有している人の方が多いと思います。それこそ実用性を前提に考えれば、150 ccのスクーターでも法的制限は大型と同じなのでOKってわけですよね? さらに言えば便利で安全で快適な中古の軽自動車が、大型バイク以下の予算で買えるわけですからね。
そう!趣味として満たされる、本当に自分が満足できるかどうかと考えると、人によっては大型っていう選択肢が必要になってくるんです。
そしてただ選択肢を広げるためだけに大型バイクが必要なのではなく、1000ccを超える排気量や100馬力を超えるパワーは、実はちゃんと使いどころもあるんです。
次はよく言われる、「そんな大きなパワーは公道じゃ使い切れないから必要ないよ」っていう意見に対してお答えをしていきましょう。
大パワー不要論への回答
ではいよいよここからが本題といってもいいでしょう。
「そんなパワーを使い切れない、使う場所がないから必要ない」理論に対する回答ですね。
ここも結論から言いましょう。大型のパワーを使い切ることはありません。でも100馬力はあった方がいいんです。
確かに100馬力も150馬力もあると、簡単に200km/h以上の速度が出てしまいます。よく誤解されているのは、このパワーを使い切るというのは、決して200km/h以上出すということではないんです。
例えば峠道のコーナーの立ち上がりで、クリッピングポイントを過ぎて大きくアクセル開ける瞬間、大排気量のバイクの場合は中型クラスではとても体感できないレベルの強いトラクションをかけて地面を蹴り出してくれます。自分のアクセル操作に対してストレスなく瞬時に応答してくれてグイグイ加速していく、これはトルクの強いバイクならではの感覚です。さらに近年のトラクションコントロールを搭載したバイクであれば、安心して大きくアクセルを開けることができ、多くの人がその圧倒的なパワーを手軽に扱えるようになりました。
そしてエンジンのトルクはほぼ排気量に比例します。そのエンジンがOHCだろうがDOHCだろうが何気筒だろうがバルブ数がいくつであろうが、ほぼ排気量に依存します。つまりこの感覚ばかりは大排気量車でしか味わうことができない感覚だといえます。
また1500ccや2000ccもあるアメリカンだと、車体は大きく重くバンク角もありません。その大排気量エンジンは峠道を楽しむためのものではなく、ドコドコとゆったり走るように、低回転でも大きなトルクを発揮するためのものです。
ここで理解していただきたいのは、100馬力を超える大パワーは必ずしも200km/h以上出すためのものではないということと、エンジンの性能を使い切る、使い続けることだけが楽しさではないということなんですね。
人それぞれ楽しみや快感を感じるシチュエーションは異なると思いますけれども、自分はやはりコーナー特に登りの立ち上がりでアクセルを大きく開ける瞬間が好きで、この一瞬、この数秒のトラクションのかかる瞬間からのダッシュのために大型をわざわざ選んでいると言っても過言ではありません。
変人のように聞こえるかもしれませんが、便利で安全で快適な中古の軽自動車が50万円も出せば買えるのに、わざわざ大型免許をとって100万円を超える実用性のない危険な乗り物を購入している時点で、大型乗りは誰もが多少変なのかもしれませんけどね。
逆に中型にはトルクが小さいからこそ高回転まで回すことができる楽しさ、そして小さくて軽いエンジンだからこそのヒラヒラと軽快に走る事ができる楽しさがあります。
大型で高回転高出力を維持し続けることは、一般道では不可能です。中型が楽しいとか大型の方が優れているといった話ではなく、それぞれに楽しいポイントが違う、楽しみ方が違うということなんですね。
大型のメリットとデメリット
では大型バイクのメリット・デメリットについて解説をしていきます。
まずメリットですが、今をお伝えしたような大型ならではの性能の楽しみ方ができることのほかに、所有感、快適性、耐久性なんかが挙げられますね。逆にデメリットは経済性、大きさ、重さです。
大型のメリット
所有感については、やはりそのメーカーの中で上位 または最上位のものを所有しているっていう満足感。車体や排気量の大きさだけでなく、様々な装備において上位グレードのものが使われています。当然一つの工業製品として所有欲をより満たしてくれますね。特にリッターオーバークラスのフラッグシップモデルは各メーカーの最上位モデルであり、威信をかけて作り上げたひとつの結論ともいえるモデルです。
先ほどお伝えしたように排気量が大きい分、当然トルクも大きくなります。馬力というのはトルク×回転数で計算され、トルクが大きいと低回転で高出力を発揮しやすく、低回転でも速度を出すことができるように設計できます。たとえば同じ4気筒のバイクで400ccが100km/hで走る場合のエンジンの回転数が8~9,000rpm位でも、1300ccなら4,000rpmで100km/h出せてしまうといった具合ですね。
そのため高速巡航時などでも疲労に直結する不快な高周波の振動が少なく、快適に巡行を続けられるので疲れにくいと言えます。
そして意外と見落とされがちなのが耐久性です。
工業製品というものは一つ一つの部品が大きいほど当然耐久性が高くなります。さらに先ほど言ったように排気量が大きいほどエンジンの常用回転域も低くなるので壊れにくいと言えます。もちろん走り方やメンテナンス次第ではありますが、基本的には大型の方が頑丈で長持ちすると言えます。
これが大型のメリット、所有感・快適性・耐久性です。
大型のデメリット
まず経済性。当然ですが大型自動2輪免許が必要になりバイクの車体そのものも高価格です。普通自動2輪免許に加えて10万円以上必要な上、車体価格も高額となります。大きな排気量、大きな出力をもたらすエンジンが高価なだけでなく、それを受け止めるだけの足回りなども中型に比べて上位の装備が奢られているので必然ですね。
そして大きさと重さ。これは車種やジャンルによってはメリットともなりえますが、多くの車種において排気量が大きくなると車体も大きく重くなる傾向があります。
大きければ自宅の駐車スペースに置くことができなくなったり、足つきが悪くて扱いに不安を覚えるかもしれません。また重ければ取り回しにも苦労しますし、乗っていてもコーナーを軽快にクリアしていくことも難しくなります。
大きく重くなればなるほどバイクを倒してしまうリスクも高まり、倒した時のダメージも大きくなります。
これが大型の一般的なネガティブイメージであって、デメリットであるかと思いますが、実は近年のモデルでは車種によっては、大きさと重さについてかなり解消されてきました。
例えば自分が所有しているネイキッドのDUCATIモンスター1200という車種は、排気量は1200 ccとバリバリの大型です。でも日本を代表する中型ネイキッドのCB400Super Fourとの比較したこちらの表をご覧下さい。
まず大きさ。全長は上の表の様に3.4cmしか変りません。そして車重は10kg少々の差なんですね。確かにモンスターは2気筒、CBは4気筒という差はありますけれども、一概に大型だから大きくて重いという安直な考えは、今のご時世はナンセンスと言わざるを得ません。ヤマハのMT-07なら、700ccながら184kgと CBより20kg近く軽いんですね。
大型だからデカい、大型だから重いと決めつけるのではなく、車種や気筒数、車種のコンセプトを考えれば400ccクラスよりもコンパクトで軽いモデルも存在するんです。
まとめ
最後に誤解の無いように伝えをしておきますが、中型も大型もどちらが楽しいとか、どちらが優れているなんてことではなく、それぞれに違った楽しみ方や快感、満足感があるということを、皆さんに理解していただきたいんです。
ですので大型を経験して中型の方が楽しいと中型に戻ってくる人もいますし、自分のように大型も中型も好きで両方所有する人もいます。
よく「排気量が大きい方が偉い」という排気量マウントなる不毛なマウンティングを耳にします。逆に「大型のパワーは無駄」などと、大型は不必要なもの、つまらないものと決めつけてしまう人も目にします。
今、自分の家には現在1200cc・250cc・125ccと3台の違った排気量のバイクがあり、それぞれに良さがあり楽しみ方があります。排気量も多様性があり、それぞれに良さがあるんです。今後は排気量マウントではなく、排気量ダイバーシティ(多様性)でいきましょう。
今回も最後までご覧いただきありがとうございました。
この記事の内容は下の動画で詳しく説明していますので、こちらも視聴していただけると嬉しいです。
投稿者プロフィール
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元バイク屋のYouTuber。
バイクライフに役立つ情報を毎週配信。
メカの話やバイク購入アドバイスはもちろん、用品レビューやバイク屋裏話まで、バイク乗りなら誰もが気になるテーマばかり。
ちなみに中身はアラフォーのおっさん。
好物はサッポロ黒ラベルとキャベツ太郎だが、子どもができて以来、ふるさと納税で貰った無糖レモンサワーで節約している。
最近、血糖値と血圧を気にしているらしい。
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