はい!元バイク屋のフォアグラさんです、こんにちは。
さて今回は 意外と知らないヘルメットの話。1万円と5万円のヘルメットの違いについて解説をしていきます。
皆さんAraiやSHOEIのヘルメットを見て「高ぇな」と思ったことありますよね?
最近では5万円どころか6万円・7万円なんていうのも当たり前。片やAmazonを覗いてみると5000円程度からフルフェイスヘルメットが売られています。そんな安物であったとしてもきちんとPSCマークはついているし、1万円少々出せばJISマーク付きのものも購入できます。一見すると5・6倍、物によっては10倍もの価格差があるようには思えませんが、実際何が違うのでしょうか?
そこで今回は安いヘルメットと高いヘルメットの違いについてしっかりと解説をしていきましょう。
材質の違いについて
まず安物と高級品の最も分かりやすい違い、それは材質です。材質を見るだけでそのヘルメットのグレードが分かると言っても過言ではありません。特別なカーボン製などを除き、基本的にヘルメットというのは樹脂でできていて、大きく2種類に分類されます。それは「FRP」と「ABS」です。
FRPの特徴
順番に説明をしていきましょう。まず価格が高い方でFRPというもの。これは高級ヘルメットメーカーで主に採用されています。5万円・6万円という価格帯のヘルメットはこの素材が使用されているものがあります。樹脂にグラスファイバーなどの強化繊維を補強材材として複合化することで、強度と剛性を大幅に高めているのです。
この補強材を調整することで必要なところに必要な分だけの強度を持たせることが可能なのです。ですので特に守らなければならない部分を強化させ、より安全性の高いヘルメットを作ることが可能ということ。逆にそこまで強度が必要ないという部位であれば、あえて弱くして軽量化を図ることもできます。つまり部分的に強度をコントロールすることができる、高い対衝撃性を確保しているにも関わらず重量は軽くできる。こういった設計の自由度が高いというメリットがあるのです。
そして補強繊維が入っていることで、強い衝撃を受けた際の壊れ方というのも違うのです。
補強繊維が入っていないABSのような単一樹脂の場合、強い衝撃を受けたら裂けたところからピキピキと割れていくこととは皆さんもご存知の通りです。しかしFRPの場合は、補強繊維によって割れの広がりを防ぐ力が働きます。そのため連続した衝撃が様々な角度からの衝撃に対しても強いのです。ですのでこのFRPのヘルメットは高品質であり、価格も高いのですね。
ABSの特徴
そして価格の安いABSは成型が容易で大量生産に適しています。しかしこちらは先ほどFRPで説明したような強化繊維が含まれていない、単一樹脂です。ごくごく一般的なプラスチックというのを想像していただければ分かりやすいかと思います。
1万円台のような低価格のヘルメットは、ほとんど全てがこのABSを使用しているはずです。3万円を超えるヘルメットでも普通に使われています。結構いいお値段のヘルメットだったとしてもABSを使用しているモデルはたくさんあります。ちなみにこの記事制作時点のAraiとSHOEIの現行モデルは、そもそもABSを使用しているモデルはないはずです。
実はこのABSの弱点というのは耐衝撃性だけではありません。熱や紫外線にも弱く、劣化が早いのです。バイク用ではありませんが、産業用のヘルメットにおいては推奨されている使用期限が、FRPは5年ですが、ABSは3年とされている場合もあるのです。もし気になるようだったら、あなたが今使用しているヘルメットの材質を調べてみてください。
「これ、あえて分かりにくいようにしてるんじゃないの?」と思ってしまうメーカーや商品のページがあったりしますので、そこはちょっと闇を感じますね。
製法の違いについて
「FRPが良いのは分かった。とはいえいくらなんでも数倍の価格さっていうのは、いくらなんでも高すぎやしないか?」と考える人も少なくないでしょう。では思わず納得してしまう、そのFRPのヘルメットを作る手間と技術力について解説をしていきましょう。
まず最初に言ってしまいましょう。FRPのヘルメットというのは、実は人の手によって1つ1つ手作りされたものなのです。
20以上のパーツに分かれたガラス繊維を、20工程以上かけて型に手で貼っていきます。それもただ貼るだけではなく、部位ごとに貼る枚数や大きさも異なり、不純物が混ざらないようクロスを貼る専任の担当者が専用のルームで作業するのです(ASTONEの場合)。
当然工場には設備も必要ですし、専門の職人も必要なのでお金ががかかるのです。
「このご時世に、まさかヘルメットが1つずつ手作りされているとは思っていなかった」という方も多いのではないでしょうか。型に流し込んで、工場でポコポコ作られまくっている、そんなイメージ持っていませんでしたか?
確かにABSのヘルメットであればそんなイメージ通りで、機械に材料を入れてボタン1つでシェルが完成するので、誰でも簡単に安く大量に作れるのです。
もうこの時点で1万円・2万円で買えるABSのヘルメットよりも、大幅に高額になってしまうということをご理解いただけるかと思います。
でもそれだけではないのです。FRPと一言で言っても、各メーカーの設計思想や成型技術というのは様々で、衝撃に対する強さを重点的に強化していたり、軽量化との両立を図っていたり、そこは各社が長年培ってきた経験や重視するポイントを基に、現時点での最適解である設計をしているはずです。
また、そもそもFRPヘルメットの製造をするということは、高いレベルの設計・技術力だけでなく、手作業でヘルメットを作ることができる職人も必要とするため、とてもハードルが高いのです。
「ASTONE」がFRP製ヘルメットを発売!
「ASTONE」ってどんなメーカー?
スマートニュースなどでも取り上げられたのですが、コストパフォーマンスの高いヘルメットを製造している「ASTONE」というメーカーが、FRPヘルメットの製造販売を開始したのです。前述のようにFRPのヘルメットを作るということは決して簡単なことではありませんので、分かる人からするとこれは結構なニュースなのですね。
このASTONEという企業は、長年様々なヘルメットメーカーから委託を受けてOEM生産を行ってきたメーカーです。つまり色々なメーカーのヘルメットを作ってきたノウハウと、高い生産技術をすでに持っているのです。
実はこのASTONEを紹介するのは今回が初めてではなく、以前にフルカーボンのヘルメットを紹介した記事もあります。そして自分自身も自費で購入し愛用しているのが上のカーボンのシステムヘルメットです。FRPどころかカーボンヘルメットを作るだけの技術力を持ったヘルメットメーカーなのです。今まではOEM生産がメインだったので、その名前があまり表に出ることは少なく、現時点では知名度が決して高いとは言えませんが、結構すごいメーカーであるということをお分かりいただけたでしょうか。
新製品「FRP GT1000F」の特徴
では最後に、その新製品の紹介に入ります。「FRP GT1000F」という商品名です。
過去に紹介したASTONEのカーボンヘルメットと同じ「GT1000F」という名前から分かるように、形や機能というのは同じです。
皆さんが1番気にしているポイントであろう価格は、なんと3万円を切ります! FRP製のフルフェイスヘルメットが、送料込み・消費税込みで2万8,000円‼これ結構衝撃的な価格設定だと思いますよ。
さらに発売前の先行予約だと、これよりもさらにちょっと安くなるとか。
まずFRP製ということで、部分ごとに強化繊維を変えており、守るべきところはしっかり守り、重要度の低い部分は軽量化をするという設計がなされています。この辺りはASTONEの長年の経験が活かされているということでしょう。
実際に自分もこちら被って走行したところ、重量感もなかなかの好印象で、体感的にかなり軽めに感じました。実際の数値的にも 1400g±50gと、これもFRPの恩恵を受けているからこそでしょうね。自分は同じくFRPを用いたフルフェイスでAraiのASTRO GXも使用していますが、重量感に関してはむしろASTONEの方が少し軽く感じました。チークパッドの圧迫感はやや強めで、装着感はSHOEIというよりはアライ的な印象ですね。
付加機能
そして付加機能なのですが、まずはインナーバイザーです。最近のヘルメットではもう定番の機能ですが、やっぱりコレ良いですよね。
残念ながらAraiはこのインナーバイザーの機能がないので、自分はダークスモークのシールドを装着しています。ただ安全性という観点では当然ない方が安全と考えられますので、ここは好みが分かれるところでしょうか。
そして着脱式の内装や、インカム用のスピーカーホール、高効率のベンチレーションなど、現代のヘルメットとして重要なところはしっかりと押えている印象です。
Dリングではなく ワンタッチバックルを採用しているので、グローブをしたままでの脱着もスムーズです。
デザイン
機能以外の面でASTONE製品の評価が高いポイントとしては、やっぱりデザインでしょう。正直、高コスパヘルメットはどうも野暮ったいことが多いのですが、フランスデザインということもあり、ASTONEは形もデザインも割と良い感じなのです。シンプルなブラックとホワイトだけでなくマット(ツヤ消し)ブラックの用意もあり、グラフィックモデルも2種類用意されています。
エアロダイナミクスも考慮して設計されているとのことですから、スポーティーなバイクに良く合い、静粛性も意外なほどに高いです。
安全規格
正直、欠点らしい欠点はあまり見当たらない完成度ではあるのですが、強いてあげるとすればSNELLやMFJ公認といった、高いレベルの安全規格を取得していないという点でしょうか。とはいFRPなのでむしろ安心な方ではあると言えるはずなのですけどね。
無料サイズ交換可(1回のみ)
サイズ展開はM(57~58cm)、L(58~59cm)。XL(59~60cm)の3種類です
こういった通販でヘルメットを購入するとなると、やっぱり心配なのはサイズだと思いますが、1回までは無料でサイズ交換が可能となっています。着払いで返送すればOKなのです。もちろん厳密なフィッティングを求める方は、そもそも通販での購入自体お勧めできませんけどね。
そういった方は、それこそAraiやSHOEIのヘルメットを店舗で、しっかり専門のスタッフにフィッティングをしてもらう方が良いでしょう。
まとめ
この「ASTONE FRP GT1000F」はこんな方におすめです。
・低価格でも安心できるヘルメットが欲しい人
・安全性快適性機能性の全てを高次元で求める人
・ブランドよりも製品力で判断したい人
早期予約期間中であれば少し割引もあるので是非検討してみてください。
今回の記事は下の動画で詳しく解説していますので、こちらも是非ご視聴ください。
それでは今回最後までご覧いただきありがとうございました。
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投稿者プロフィール
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元バイク屋のYouTuber。
バイクライフに役立つ情報を毎週配信。
メカの話やバイク購入アドバイスはもちろん、用品レビューやバイク屋裏話まで、バイク乗りなら誰もが気になるテーマばかり。
ちなみに中身はアラフォーのおっさん。
好物はサッポロ黒ラベルとキャベツ太郎だが、子どもができて以来、ふるさと納税で貰った無糖レモンサワーで節約している。
最近、血糖値と血圧を気にしているらしい。
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