ライダーとパッセンジャーが一緒にバイクの鼓動を感じ、風や季節を感じるタンデムライディング。
オートバイが好きなひとなら、だれもが楽しみたい乗り方ですよね。
しかし、タンデムには特有のコツと注意点があります。
そこで今回は、バイク歴40年の私「むらなす」が安全で快適に楽しめるタンデムライディングのコツを詳しく解説します。
タンデムでの失敗経験も書いてますので、ぜひ最後までご覧ください。
それでは、タンデムライディングに出発進行~!
※この記事の中では、前に乗って運転する人(運転者)をライダー、後ろに乗る人(同乗者)をパッセンジャーと呼びます。また、二人乗りのことを「タンデム」と記載します。
タンデムの法的条件
タンデムをするには、法的にいろいろな条件があります。交通法規を守って乗りましょう。
一般道でタンデムできるのは、免許取得後1年以上経過したライダー
タンデムできる二輪免許を取得後、1年間は一般道で二人乗りできません。免許取得後1年未満のライダーがタンデムをすると、罰せられます。
タンデムできるバイクの免許は小型限定を含む普通二輪免許、または大型二輪免許です。
原付免許ではタンデムできません。
高速道でタンデムできるのは、20歳以上かつ免許取得後3年以上経過したライダー
タンデムできる二輪免許を取得後、3年間は高速道で二人乗りできません。高速道路でタンデムできるのは20歳以上で、タンデムできる二輪免許取得後3年を経過したライダーです。
ちなみに、高速道路を走行可能なバイクは、排気量が125ccを超えるバイクです。
タンデムできるバイク、できないバイク
タンデムできるのは、50ccを超える排気量のバイクです。50cc未満のバイク(原付)はタンデムできません。
50ccを超える排気量のバイクの場合も、タンデム装備のあるバイクでなければなりません。
タンデム装備とは、パッセンジャー用シート(座席)、パッセンジャー用ステップ(足のせ)、持ち手(タンデムベルトやタンデムバー)です。
50ccを超えるバイクであっても、タンデムの装備がないバイクでは、タンデムしてはいけません。
タンデムの危険性
あえてタンデムの危険性を説明します。
タンデムにはいろいろな危険性があります。
- ブレーキの効きが低下する(制動距離が伸びる)。
- 加速が悪くなる(特に小排気量車)。
- 俊敏な運転(乗り方)がしづらい場合がある。
- パッセンジャーの体重がライダーにのしかかる(ブレーキ時)。
- バイクの後ろが沈む(ヘッドライトが夜は上を照らす)。
- 転倒すれば、ライダーもパッセンジャーもケガをする。
危険性を語れば、キリがありません。
しかし、危険性をよく理解し、危険を回避するタンデムの乗り方をすることはできます。
タンデムのとき、ライダーはパッセンジャーの命を預かっています。安全第一で運転しましょう!
また、万一の場合に備え、乗る前に保険の内容を確認することは必須です。
タンデムする前の準備
出発する前、ライダーとパッセンジャーは入念に準備して、打ち合わせもしておきましょう。
パッセンジャーの服装
パッセンジャーも、命を守る服装をしましょう。
- ヘルメット…法律で着用が義務付けられています。
- グローブ…素手は危険! 皮革などの素材を使用したバイク用グローブがベターです。なければ軍手(滑り止め付き)を着用しましょう。
- シューズ…理想はバイク用のシューズやブーツですが、運動靴(スニーカー)でもOKです。できれば くるぶしを守るために、ハイカットのスニーカーを履きましょう。パンプスやヒール、サンダルやスリッパは危険です。
- ウェア(トップス)…夏も長袖を着用し、肌が露出しないトップスを着用しましょう。日焼けを防ぎ、万一転倒した場合も擦過傷(すり傷)を軽減できます。
- ウェア(ボトムス)…くるぶしまで隠れる長ズボンを着用しましょう。短パンや半パンなど、肌が露出するボトムスは危険です。
出発前ミーティング(打ち合わせ)
特に初めて乗る(または乗り慣れてない)パッセンジャーに対し、ライダーは乗る前に下記の説明をして打ち合わせをしておきましょう。
- 発信合図…パッセンジャーに発進を知らせる(予告する)合図を決めておきましょう。
声をかける、ひざをトントンするなどです。
無言で急に発進すると、慣れてないパッセンジャーは驚きます。場合によっては、うしろに落ちる危険性もあります。 - 停車合図…ブレーキをかける前の合図も決めておきましょう。
ブレーキ時は体が前にいくので、パッセンジャーに知らせておくと心構えができます。 - 乗車姿勢(特にコーナーリング中)…コーナーリング中、ビビって体を起こさないように説明しておきましょう。コーナーリング中は、頭と体の中心線がライダーと同じ位置であればOKです。
- パッセンジャーが酔っていないことを確認…パッセンジャーがアルコールに酔った状態は危険です。違法ではありませんが、酔っていないことを確認してください。酔っていたり、二日酔いの場合は乗るのをやめておきましょう。
- 居眠り注意!…大人も子供も居眠りします。眠くなったらライダーに知らせましょう。ライダーはパッセンジャーが眠ってないか、挙動を確認してください。パッセンジャーが眠い時は停車して休憩することが大切です。
居眠りはバイクから落ちる恐れがあります。特に子供を乗せる際は注意が必要です。タンデムベルトを使えば落下の危険性を少なくできます。
いざ、バイクに二人で乗車!(タンデム発車前)
ライダーとパッセンジャーが出発前に、二人でバイクに乗車する際のコツと確認事項です。
- バイクの停車位置…滑りにくく、安定している場所にバイクを停めましょう。平坦なアスファルト(コンクリート)の地面がベターです。停車したら、たたんであるパッセンジャー用ステップを出します。
- ライダーが先に乗る…鉄則です。
- ライダーはハンドルを握り、フロントブレーキをしっかり握る…バイクが前後に動かないようにしましょう。
- 両足を踏ん張る…バイクを安定させましょう。両足がつかない場合や、つま先立ちの場合はサイドスタンドを出したままでもOK。
- ライダーが準備できたら、パッセンジャーはライダーの次に乗ります。
- パッセンジャーの手の位置(つかまり方)を確認しましょう。ライダーはパッセンジャーに違和感の有無など、聞いてください。パッセンジャーが足をステップにちゃんと乗せていることも確認が必要です。
- サイドスタンドが収納してあることを確認しましょう。
- ライダーはバックミラーの見え方を確認しましょう。パッセンジャーの影響で後方確認できないようであれば、バックミラーの位置や角度を調整してください。
これらの準備ができたら、出発OKです。
パッセンジャーの手の位置(つかまりかた)について
手の回し方(つかまりかた)はライダーとパッセンジャーの体格やバイクの構造により千差万別です。ケースバイケースで適切な方法を選びましょう。
両手をライダーの腰(下腹)に回す方法
よく見かける一般的な方法です。
ライダーにパッセンジャーの体重がのしかかってきます。ブレーキングは特に注意が必要です。
密着しすぎると、ライダーは運転しづらい場合があります。
片手はライダーの腰、反対側の手はリアのタンデムバーを握る方法
ライダーは運転しやすい方法です。ブレーキや加速の際、パッセンジャーの体が前後にぶれにくく安定しているので、パッセンジャーの体重がライダーかかりにくくなります。
ただし、慣れてないパッセンジャーは怖がることもあります。
また、タンデムバーがないバイクでは、この方法はできません。
肩をつかむのはNG!
ライダーの肩をつかむのは危険です。パッセンジャーが安定しないし、ライダーは運転しづらくなります。
ライダーにつかまりにくい場合は、タンデムベルトを使えばつかまりやすくなりますよ。
タンデム走行中のコツ
ライダー編とパッセンジャー編に分けて、それぞれのコツと注意点を解説します。
ライダー編
ライダーはパッセンジャーの命を守る義務があります。超安全運転に徹しましょう。
パッセンジャーが怖がるような運転をしてはいけません。
- 発進の合図…ライダーはパッセンジャーに「出るぞ」と声がけ、または合図しましょう。
- 後方確認…発進の際は必ず後方(特に右後方)を目視で確認!
- 停車の合図…停まるときも可能であればライダーはパッセンジャーに合図しましょう。
- ブレーキはゆっくり!…急ブレーキは危険!
パッセンジャーの体重がライダーにのしかかってくるから注意が必要です。 - ブレーキ時はニーグリップ!
ブレーキ(減速)のとき、パッセンジャーの体重がライダーにのしかかってきます。これをハンドルだけで支えると、バイク操作に支障があり危険です。ひざや太ももでしっかりニーグリップして、体が前にいかないように支えましょう。 - 急発進、急停車は厳禁!
- 車間距離はひとり乗車のときより距離を開けて広く取りましょう。
- バンク角に注意!…コーナーリング(カーブ)でバイクを傾けすぎない。
慣れてないパッセンジャーは、コーナーリングで恐怖を感じます。
ひとり乗車の時よりスピードを落として、バイクのバンク角が深くならないようにしましょう。 - コーナーリングはリーンウィズがベター。
腰や尻が左右に動きすぎると、パッセンジャーは乗りにくくなりがちです。腰や尻が左右にずれないライディング(リーンウィズなど)にしましょう。ハング・オフはタンデムでは危険です。 - 走行中の会話は極力避ける。
会話で気が散り、前方や周囲への注意力が散漫になり危険です。できれば、インカムなどの装備を使うことをおすすめします。
パッセンジャー編
- 眠らない!
眠くなったら、すぐに(素直に)ライダーに伝えて停車してもらい、休憩しましょう。 - 発進
加速Gで後ろに落ちないよう、ライダーやタンデムバー(ベルト)につかまってください。ステップを後ろに蹴るような感じで踏ん張り、加速Gに対応しましょう。 - ブレーキ(停車)
減速Gで体が前に行かないようにしてください。タンデムバーがあれば、しっかり握る。ステップを前に押し出すような感じで踏ん張る。
ブレーキ時にパッセンジャーの体が前に行くと、パッセンジャーの体重がライダーにのしかかり、ライダーは運転しづらくなります。 - 目線
できればライダーと同じ方向を見ましょう。
周囲の状況がわかれば、発進や減速を察知して心と体の準備ができます。
コーナーリングが怖いパッセンジャーは、ライダーと同じように目線を前方に送ればイイですよ。 - カーブなどコーナーリング(リーン)中、パッセンジャーは体を起こさない!
体の中心線がバイクと同じリーンウィズがベターです。体を起こすと、バイクはさらに傾くので危険!
逆にイン側に体を入れすぎてもいけません。
力を抜き、体を柔軟にして、ライダーの体の動きに合わせましょう。
パッセンジャーは、頭と体の中心線がライダーと同じ位置であればOKです。
タンデムの降り方(降車)
タンデムは、降り方にもコツがあります。
- 滑りにくく、安定している場所に停車する。平坦なアスファルト(コンクリート)の上がベター。
- ライダーはハンドルを握り、フロントブレーキをしっかり握る。
- ライダーは両足を踏ん張る。またはサイドスタンドを出してバイクを安定させる。
- パッセンジャーが必ず先に降りる…鉄則です!
- パッセンジャーが先に降りたことを確認し、次にライダーが降りる
むらなすの失敗談
私(むらなす)が20代の頃の失敗談です。
当時の彼女(現在カミさん)とタンデムツーリングした際、休憩時にライダーの私がパッセンジャーのカミさんより先に降りたら…バランスが崩れてバイクごとカミさんも転びました。
あれから40年近く経った今も「あのときは アタシのことより、倒れたバイクの傷を心配してた!」って言われ続けてます(笑)
安全第一でタンデムを楽しもう!
ルールを守って乗れば、タンデムはとても楽しいです。
私の娘は小学校3年生(9歳)の頃から乗せてます。ハタチを超えた今も、一緒に乗ってくれます。
バイクが縁で仲良くなった彼女(現在カミさん)も、いまだに一緒に乗ってくれます。
さぁ、楽しいタンデムツーリングに出かけましょう!
この記事が、タンデムライディングのお役に立てば嬉しいです。
読者の皆様のバイクライフが楽しくなるよう、応援しています。
それでは、また。
投稿者プロフィール
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熊本県在住。生まれも育ちも熊本。
阿蘇をこよなく愛する生粋の熊本人。
昭和の時代に限定解除し、原付/中型/大型の所有歴あり。
現在の愛機はKawasaki 250TR。
愛機250TRで一日500km(下道)を走破することもある、元気おやじライダー。
「安全第一、無事帰る」をモットーに、今も安全運転を模索しながら走り続けている。
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