「バイクのメッキパーツをコンパウンドで磨いちゃダメ」って知っていましたか?
知らないで、塗装面と同じようにコンパウンドやワックスをかけると面倒なことになるかもしれません。
今回は、バイク部品に多く使われているクロムメッキ(装飾クロムメッキ)のメンテナンスについてご説明します。
そもそもメッキとは?
メッキとは、「金属素材や非金属素材の表面に薄い金属の膜を加工する表面処理技術」です。
素材の表面に金属膜を形成することで、素材をサビや劣化、摩耗から守り、耐久性をアップさせます。
バイクパーツでよく使われるクロムメッキとは?
クロム(Cr)という金属で加工されたメッキのことをクロムメッキ(またクロームメッキ)といいます。
クロムは・銀白色で硬く、常温では安定していてサビにくく、耐食性、耐熱性に優れています。
クロムメッキの断面構造
表面からクロム層、ニッケル層、素材の順番で構成されています。
クロムメッキがサビる原因は?
クロムメッキのサビる原因は、大きく次の2つが考えられます。
クロム層が壊れた箇所からサビが侵入
クロムメッキ表面のクロム層は硬く、耐候性や耐蝕性に優れているのですが、非常に薄いため、一度壊れると、内部にサビが進行しやすくなります。
元々ある小さな穴からサビが侵入
クロムメッキには、もともと見えない無数の微細な穴(ピンホール:メッキ加工時に発生する水素ガスの気泡が原因)が開いています。
そのため、サビの原因となる酸素や水分、塩分が穴に入り込むことで、素地の鉄と反応し、腐食を引き起こすのです。
つまり、クロムメッキは、表面に傷を付けなかったとしても、メンテナンスしていないとサビる可能性があるのです。
上の写真は、筆者のバイクマフラーカバー表面の写真です。
ほとんどメンテナンスしていなかったこともあり、小さいブツブツのサビが発生しています。
クロムメッキに研磨剤はダメ!!
クロムメッキに研磨剤入りのコンパウンドやワックスは使えません。
研磨剤入りのコンパウンドやワックスで磨くと、キレイにしたつもりでも、実はメッキ表面に細かい傷をつけているからです。
表面に出来た小さい傷から、サビの原因となる水や酸素、塩分が侵入するのです。
クロムメッキのメンテナンス方法
クロムメッキを長持ちさせるには、なるべく表面を傷つけないようにするのが鉄則です。次の方法でメンテナンスしましょう。
普段のメッキメンテナンス方法は?
毎日のメンテナンスは、専用のウエスか、柔らかい布で優しく乾拭きして、表面に付着した汚れをお落としましょう。
洗車時のメッキの洗い方は?
洗車ブラシのような表面を傷つけやすいもので擦るのはやめましょう。柔らかい洗車スポンジを使い、泡で汚れを浮き上がらせるように洗うのがベストな洗い方です。
表面の輝きがくすんできた時は?
研磨剤なしのメッキ専用のクリーニング剤で洗浄しましょう。
このとき、ブラシなどでゴシゴシ擦らずに柔らかい布等で、優しく汚れを浮き上がらせるように洗浄しましょう。
クリーニング剤を使用したときは、洗剤分をしっかり洗い流しましょう。
注意:メッキ専用のクリーニング剤でも、メッキへのダメージは少なからずあるので、ケミカル保護被膜剤でメッキを保護し、クリーニング剤の使用頻度を下げるとよいでしょう。
ケミカル保護被膜剤は次でご紹介します。
クロムメッキの劣化を予防しよう
クロムメッキは、サビる前に予防することで、美しい輝きをキープすることが可能になります。
新品の段階からケミカル保護被膜剤でコーティング
クロムメッキの表面は、新品の段階から目に見えない小さな穴が開いていることは、先ほどもお伝えしました。
そうであれば、そもそもメッキのピンホール自体を保護剤でコーティングしてしまえば、未然にサビを防ぐことができ、メッキを長持ちさせることができます。
汚れがついたらすぐに落とす
メッキに付着した汚れには、サビの原因となる塩分や水分などが含まれています。
汚れを見つけたら、以下の段取りで汚れを落とし、サビの原因物質をなるべく早く除去しましょう。
「なるべく表面を傷つけずに汚れを除去する」ことが重要です。
- まずは、柔らかい布でやさしく「乾拭き」
- 乾拭きで落ちなければ、「水拭き」
- 水拭きで落ちなければ、「中性洗剤で洗浄」
- 中性洗剤で落ちなければ「専用クリーナー」
メッキがサビてきたらどうすればいい?
とりあえずキレイにしたいなら①:サビ取り剤でサビを除去する
サビ取り剤を使えば、メッキのサビの多くはきれいに落ちます。ただし、メッキ表面を傷めてしまうというデメリットもあります。
メッキ表面のクロム層も削ってしまうので、磨いたあとは、表面をケミカル保護被膜剤でコーティングしましょう。
とりあえずキレイにしたい②:メッキ塗装する
こちらも根本的な解決にはなりませんが、サビが進行してしまった場合や、部品の劣化を少しでも遅らせたい、見た目を少しでも良くしたい場合にはおすすめです。
黒サビ転換剤で赤サビの進行をストップ
赤サビは進行が早く金属の劣化を早めますが、黒サビに転換することで、サビの進行をストップさせることが出来ます。
メッキ風塗料で表面をメッキ塗装
黒サビ転換剤が乾いたら、表面にプライマーを塗り、塗料の足つきを良くします。
メッキスプレー等を何度か重ね塗りします。
最後にクリア塗装して完成です。
新品の輝きを取り戻したいなら①:新品と交換する
メッキが剥がれたということは、既に素材自体がサビなどで劣化している可能性があるので、安全性から考えると、新品への交換をおすすめします。
新品の輝きを取り戻したいなら②:再メッキする
旧車など、手に入りにくいメッキ部品は、再メッキする方法があります。
ただし、再メッキにはメッキを剥離させる薬品工程などがあるため、部品の厚さやサビの進行度合によっては、再メッキ前に部品に穴が空いてしまうこともあります。バイク店やメッキ業者に相談してみましょう。
再メッキにかかる費用は、目安としてフロントフォーク1本でおよそ2万円が相場のようです。ただし、材質の状態や形状などによって変動しますので、実際に見積もりを事前にとられることをおすすめします。
まとめ
- クロムメッキには小さい穴が無数存在しているので、そのままにしておくとサビの原因となる。
- 研磨剤入りのコンパウンドやワックスは、クロムメッキを劣化させるので、研磨剤が入っていないメッキ専用のクリーナー等を使う。
- クロムメッキ表面をケミカル保護被膜剤でコーティングすれば、サビを未然に防ぎ、長持ちできる。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
投稿者プロフィール
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【チャリダーからライダーへ】8年前、自転車整備の延長で、ほぼ一人でメンテできるスーパーカブ110(ja10)と出会い、世界が広がる。
【スーパーカブ】走行距離9万キロ。試行錯誤のメンテで失敗(エンジン焼き付き)もあるが、不調から回復するカブから元気をもらっている。
東京生まれ。沖縄在住25年。50歳で人生初の脱サラ。2023年からライターとして活動。「自分で直せる」を皆さんにお伝えできたら嬉しいです。
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