装着時の違和感も少なく、また近年進化が著しいソフトプロテクターの実態を調査すべく、二輪用品量販店さんにおじゃまして、実際に見て、触って確かめて来たものも含めて検討しています(なお、店舗内での写真は全て許可を得て撮影しています)。
今回は特に、下記のグラフのように損傷による死亡原因として頭部に次いで割合が高い胸部に関するプロテクターを中心に説明していきたいと思います。
なお、警視庁の調べによると、胸部プロテクターの装着割合は増えつつあるものの、2025年現在で僅か9.9%なのだそう。これはやっぱり、ウエアーに標準装備されている事が少なかったり、装着自体が面倒だったり、ゴツク見えてしまったりといった面が大きいのかもしれませんよね。今回の紹介では、こうした、ゴツク見えるといった点なども考慮していますので、参考にしていただけたらと思います。
- プロテクターの安全基準
- CEマーク:EN規格レベル1
- DAYTONA(デイトナ):SAS-TEC®(CP-07)
- KOMINE(コミネ):エニグマ ライト CE1 チェスト DC プロテクター
- Furygan(フュリガン):D3O®GHOSTチェストプロテクター
- CEマーク:EN規格レベル2
- DAYTONA(デイトナ):SAS-TEC®(CP-09)
- KOMINE(コミネ):エニグマG2チェストプロテクター
- POI(ピーオーアイ):OP CHEST PROTECTOR-CE
- DEGNER(デグナー):エアスルーチェストプロテクター
- TAICHI(タイチ):ネックスエアー チェストプロテクター
- インナープロテクター
- その他、自分で切り出せるプロテクター?
- まとめ
プロテクターの安全基準
近年のバイク用プロテクターでは、CEマークの有無を安全性の基準としています。このCEマークというのは、欧州適合性を示すマークであり、対応する製品における欧州整合法令をクリアしたという証なのだそう。このためCEマークが無いと、欧州連合市場における流通・販売ができないと言われています。そして、バイク用プロテクターにおけるCEマークを取得するための安全基準を定める規格が、EN規格です。
理解しやすくするためなのか、メーカーや販売店などでも「CE規格:レベル〇」などと称される事がありますが厳密には、「EN規格においてCEマークを取得している」という事になります。そして、バイク用プロテクターのEN規格は、「胸部プロテクター:EN 1621 – 3」、「脊椎プロテクター:EN 1621 – 2」、「それら以外の部分のプロテクター:EN 1621 – 1」といった3つの製品種別に分類され、現在では、それぞれの製品においてレベル1とレベル2といった基準が設けられており、レベルが高い方が外部から付与された力の伝達率が低く(内部へのダメージが少ない)、安全性が高いと位置付けられています。
CEマーク:EN規格レベル1
DAYTONA(デイトナ):SAS-TEC®(CP-07)
衝撃吸収材がテトラ構造で、体のラインへの適応性が抜群です。実際に手にとってみた感想としては、かなり薄手(約1cm)で軽いというものでした。実物を手にとって確認したところ、衝撃を受けた部分の衝撃吸収材が凹むように密集することで衝撃を吸収するのかと思ったのですが、SAS-TEC特有の瞬間硬化型の特殊発泡ウレタンが使用されており、衝撃吸収材自体が硬くなるようです。
ちなみに、素材の水分吸収率が低いため手洗いは可能ですが、洗濯機では洗わないように指定がされています。
KOMINE(コミネ):エニグマ ライト CE1 チェスト DC プロテクター
一見して通気性が高い事が判るプロテクターです。樹脂により覆われている面積の割合が少なくソフトタイプである事から、プロテクターとして頼りなさそうにも見えますが、瞬間硬化型の素材を使用しているため、プロテクター性能は高いです。そして、肉抜き部の割合が大きいため、軽量であるというメリットもあります。
また、CEマークを取得している胸部プロテクターの中では、かなり安価である事も魅力的です。
Furygan(フュリガン):D3O®GHOSTチェストプロテクター
知的衝撃吸収材D3O®を使用したプロテクターです。D3O®という素材は、通常はゲルのように柔らかく、強い衝撃を受けた場合には、瞬間的にその形状を維持するように硬化する素材です。実際に手に取って、強めに叩いてみたのですが、強めに叩く程度の衝撃では柔らかい状態のままでした。実際に触ってみた感想としては、ゴムのような感じで、この柔らかさは、ライダーの動作を妨げる事が無いだろうというものでした。
なお、1点だけ難点を言うと、D3O®という素材の密度が高いのか、重量的には意外と重く感じました。
CEマーク:EN規格レベル2
DAYTONA(デイトナ):SAS-TEC®(CP-09)
SAS-TEC®(CP-07)と同様に、衝撃を受けた際に瞬間的に硬化(硬い触感になる)素材を使用しています。このSAS-TEC®(CP-09)は、JMCAの推奨プロテクターでもあるため、安全性という面では高い信頼があると言えるでしょう。プロテクターの板面には、複数の貫通穴が設けられ、通気性の向上が図られている。
“瞬間硬化型”とされる発泡ウレタンは、空気を急排出する穴が非常に小さく形成されているというイメージなのかなと思っています。ビニール袋の口をすぼめて空気を出す場合、ゆっくり押すと空気は普通に排出されますが、強く押した場合には反発されるアレです。このため、板面の貫通穴は、通気性の確保のみならず、柔らかさと硬化性のバランスを考慮したものでもあるのかなと考察しています。
KOMINE(コミネ):エニグマG2チェストプロテクター
エニマグライトのプロテクターと比べても、さらに肉抜き部分の割合が大きくなっているようにも見えるプロテクターですが、EN規格においてレベル2を取得していしています。いわゆる“壁”を繋げるようなリブ構造は建築上でも強度が高く、捻じれや衝撃にも強いと言われています。また、この壁部分が高さ方向に歪むことで、衝撃等も分散され、衝撃が内側に伝わることを和らげてくれるのでしょう。全体を覆うよりも工夫をこらした肉抜き構造とした方が衝撃吸収効果を高める事ができるというのは、不思議ですよね。
POI(ピーオーアイ):OP CHEST PROTECTOR-CE
厚さが16mmと、発泡ウレタン系のプロテクターとしては薄手であるため、ジャケットに装着した際のシルエットが綺麗だと定評があります。店舗には胸部以外のプロテクターがあったため触ってみたところ“ソフトタイプ”ではあるものの、意外としっかりとした硬さがあり、装着した際の安心感がありそうでした。
DEGNER(デグナー):エアスルーチェストプロテクター
昔ながらのハニカム型のリブ構造で、厚みがありながら軽いです!そして、開口率が高く、通気性が良いという点も特徴ですね。老舗の製品であるため、製品の性能は良いと思うのですが、デグナーの製品であるエアスルーインナー(PS-13)とエアスループロテクター(PS-14)専用と書いてあるため、一般的なジャケットのポケット等に適用するかどうかは、事前に確認が必要です。
TAICHI(タイチ):ネックスエアー チェストプロテクター
軽量・薄型。網目状に配置されたベンチレーションホールで抜群の通気性を誇ります。また、水よりも比重の軽いポリプロピレン樹脂を主素材として特殊成型技術によるハニカムコア構造で軽量化と高剛性を実現しているそうです。このため、長時間のツーリングでも疲労の蓄積を軽減してくれそうです。また、胸部全体を覆う構造であるため、セパレート型に比べてプロテクターとしての安心感が高いという事も言えますね。
インナープロテクター
バイク専用のウエアは機能性に優れていますが、時に、自分好みのオシャレなアウターを着たいという場合もありますよね。そんな時にも安全性を確保できるのが、インナープロテクターです。
DAYTONA(デイトナ):ストレッチインナープロテクター
衝撃時に瞬間硬化するSAS-TEC製プロテクターを装備したインナープロテクターです。インナー素材の伸縮性が高いため、体への密着感も高いです。このため、通常のライディングジャケットにプロテクターを装着している場合よりも動き易いように感じます。筆者も愛用しているプロテクターの1つです。
KOMINE(コミネ):エニグマライト CE インナーボディーアーマー
プロテクターにエニマグライトを使用しているため、通気性が高いのが特徴ですね。インナーとして伸縮性に優れた生地を使用しているという点ではデイトナのものと同様ですが、コチラの生地は、接触冷感生地であるため、暑い時期に特に適したインナープロテクターであると言えるでしょう。さらに、生地には抗菌・防臭加工を施しているそうで、汗をかいた際の気になるニオイ等も抑えられる事が期待されます。
その他、自分で切り出せるプロテクター?
POI(ピーオーアイ):HONEYCOMB SHEET
4mm、6mm、10mmの厚さがあり、自分で切り出して使用する事ができる衝撃吸収材です。設定の無い部分のプロテクターを自分で作る事ができるという点はもちろん、工夫次第で様々なところに応用できるというメリットがありますね。
まとめ
一口に“ソフトプロテクター”と言っても、素材や形状、特性などは、様々な物がありますね。プロテクターの外形的な形状は似たようなものが多いのですが、汎用性があるものだけでなく、専用品として売られているものもありますので、実際購入する際には、お手持ちのジャケット等に適合するかどうかの確認は必要だと思います。
私自身、胸部プロテクターを装着していたら肋骨を折らなかったのではないかという事故を起こした事があります。このため、プロテクターの装着自体に“法律的義務”はありませんが、万が一の時に命を守る可能性を高める手段の1つとして、バイクのカスタム以上に真剣に検討してみても良いのではないかと感じております。
投稿者プロフィール
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BMW F900XRとDucati MonsterS2Rでチョイノリからロングツーリング、サーキット走行まで楽しむリターンライダー。
リターン後のツーリングは首都圏内での日帰りをメインとして、美味しい物や良い景色を堪能している。
ご当地"グルメ調査隊"と称してマスツーリングの企画運営なども手掛けることから、バイクの様々な楽しみ方を伝えて行く事を目標としている。
若い頃は、日帰りで埼玉-青森間を往復したことがある、 "自称"やれば出来る男。
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