はい!元バイク屋のフォアグラさんですこんにちは。
さて今回は、皆さんが誤解しまくっている添加剤について解説をします。
一言で「添加剤」と言っても様々な種類があります。燃料に入れる物、オイルに入れる物、冷却水に入れる物、これら全て添加剤と言うことができますが、混同している方がかなり多いと感じています。特に燃料添加剤とオイル添加剤の混同が。
燃料添加剤はガソリンが通るフューエルラインという経路に作用するものであり、オイル添加剤はオイルが通るオイルラインという経路を通る、つまりそれぞれ別の箇所に作用するものであり、目的も効果も成分も全く異なっているのです。
今回は使用する場所における添加剤の違いと、その効果や目的の違い、そして水抜き剤は本当に効果があるのかという疑惑について、自分の考えをお伝えしていきたいと思います。
燃料添加剤について
一般的に車やバイクにおける添加剤といえば、大抵は燃料添加剤かオイル添加剤のどちらかでしょう。そこでまずは燃料添加剤について詳しく解説しましょう。
燃料添加剤で最も有名なものは、やはりWAKO’S(ワコーズ)のフューエルワンでしょう。競合品としては自分がお勧めしているAZのFCR062、シュアラスターのLOOPパワーショットとLOOPスムースショット等があります。
これらは燃料添加剤と言われるように、ガソリンや軽油に入れて使用するものです。
ではこのフューエルワンをはじめとした燃料添加剤とは一体どのような効果があるのか?実は色々な作用があるのです。最も代表的なものはエンジン内部の洗浄です。
効果その1 エンジ内部の洗浄
エンジンの内部には「カーボンデポジット」と呼ばれる固着した汚れがあって、そのカーボンデポジットが溜まってしまうと、エンジン本来のパワーが出せないばかりか、燃費も悪くなっていきます。この汚れを落とす成分はPEA(ポリエーテルアミン)というもので、ある程度以上の価格帯の燃料添加剤であれば大概使われています。
用品店でワンコインで購入できるような安いものには、PEAではなくメタノールのようなアルコールの類が含有されているものもあり、これはエンジンの金属の腐食やゴムに攻撃性があるので、自分はお勧めしません。
また昔はPEAではなくPBA(ポリブデンアミン)というものが使われており、熱に強かったがゆえ燃焼しきらずに、これ自体がデポジットになってしまうという、本末転倒とも言えるデメリットがありました。よく「添加剤なんか入れない方が良い」という人がいるのは、こういった安物の添加剤の攻撃性や昔の添加剤のPBAのことを言っているのではないかと思います。
現在のメインであるPEAは強いアルカリ性の物質で、酸化したエンジン内部のデポジットを還元、溶かして除去してくれます。とはいえPEAも燃えにくい性質を持っていますので、規定量を守らないと逆効果になってしまいます。たくさん入れて濃くしたら汚れがよく落ちるというわけではなく、むしろそれ自体がデポジットの原因にもなり得るので、規定量が最も効果的だということを覚えておいてください。
効果その2 エンジン内部以外も洗浄
そしてこのような燃料添加剤の作用は、エンジンの洗浄効果だけではありません。燃料に入れて使うものですから、燃料が通るところ全てに作用します。つまりガソリンタンクやインジェクター、キャブレーター、吸気バルブ、こういったものです。これら燃料が通る経路をフューエルラインと言います。
この添加剤にはエンジンを綺麗にするPEA以外にも、錆止めをする成分や酸化を防止する成分が含まれています。ガソリンタンクの中の錆を抑え、燃料の酸化を防ぐことでガソリンの劣化や固着を予防します。そのため積雪地域で「冬の間バイクに乗らないよ」という方は、よく燃料添加剤をガソリンに入れておくのです。
燃料添加剤を使う目的としては、大半の方がエンジンの洗浄作用だと思いますが、実は他にもこんなメリットがあったのです。
ちなみに「PEA100%!」と謳っている高額な燃料添加剤もあります。これはまさに洗浄作用に特化した商品であると言えるでしょう。ただし先ほどもお伝えしたように、PEA自体は燃えにくいものなので、規定量を超えて使用すると燃えカスがデポジットになってしまうことも考えられます。
あくまで自分の考えではありますが、結局のところPEA濃度はある程度以上に濃くしてしまうと逆効果になってしまうを考えると、フューエルワンやFCR-062のような、PEAを含有した低価額の添加剤で十分ではないかと思います。
ちなみにAZのFCR-062の注意書きには「燃料に対して最大で0.3%まで」という記載があります。そんなにシビアに計測する必要はありませんが、推奨される規定量の3倍や4倍というような極端な量を投入することはやめましょう。
洗浄目的以外の添加剤
このようなフューエルラインの汚れを落とすものだけでなく、その綺麗な状態を維持することが目的だという添加剤も存在します。
カーボンの付着を抑え、エンジンの綺麗な状態を維持するためのWAKO’Sのフューエルツーやマイクロロンの燃料添加剤などは、洗浄だけではなくフッ素系樹脂でコーティングを行う作用もあると謳っています。
そして燃料添加剤はこのようなフューエルラインを綺麗にする、コンディションを維持するというものだけではありません。最近はあまり見なくなりましたが、パワーアップや加速力のアップなどを謳った「オクタンブースター」と呼ばれるものもあります。
これは燃料のオクタン価を上げる作用があるのですが、現在使用している燃料で異常燃焼が起きていない限り必要はないでしょう。ハイオクを使用しても異常燃焼するほどの改造を行っているのなら分かりますが、そんな方は滅多にいないはずです。また結局この手の商品にも大抵洗浄成分が含まれていて、もしかしたらエンジンが綺麗になることでのパワーアップを、オクタンブースターによる効果と勘違いさせたいのか?とも勘ぐってしまいます。
とはいえ、そもそも添加剤による洗浄作用で、すぐに劇的な効果を体感できるということは通常ありえません。じっくりと使うことで、少しずつ少しずつデポジットが溶けていくものですから、過度な期待は禁物です。
オイル添加剤について
次はオイルの添加剤について解説をしましょう。燃料添加剤は燃料に入れるのに対し、当然このオイル添加剤はエンジンオイルに入れるものです。冒頭で燃料が通る通路とエンジンオイルが通る通路は全く別物であるとお伝えしました。では、このオイル添加剤はどのような効果が期待できるのでしょうか?
その効果は大きく2つの種類に分けられます。1つは先ほどお伝えした燃料添加剤にあったようにオイルが通るところ、つまり潤滑している部分を綺麗にするというもの。そしてもう1つは、金属であるエンジンパーツの表面をコーティングしたり、改質したりすることで摩擦を軽減するというものです。
では1つずつ解説をしていきましょう、と言いたいところですが、皆さんがバイクに入れているエンジンオイル、実はこれにはすでに添加剤が含まれています。
エンジンオイルというのは、鉱物油や化学合成油といったベースとなるオイルがあって、そこに各種添加剤を添加して1つの商品として完成します。その添加剤にはエンジンの汚れを分散させるものや、酸化を防ぐもの、粘度指数を上げるものなど様々です。
つまり一般に売られているエンジンオイルは、もうすでに添加 剤が含まれていて、オイル添加剤というものは、この完成されたエンジンオイルにさらに添加剤を入れてその機能をよりアップさせたいという方以外は、基本的に必要ありません。
はい結論から言ってしまいましょう。
オイル添加剤を入れるくらいだったら最初から高品質なオイルを入れておきましょう。
ただし一般的に売られているエンジンオイルというのは 、その商品のパッケージからはブランド名やベースオイルの種類くらいしか分かりません。規格についても書いてありますが、燃費性能や環境負荷なども考慮されて評価されるため、自分のバイクにとって良いものかどうかというのは分かりません。
自分のバイクは20年も前のもので、走行距離も10万kmを超えているとか、エンジンから異音がするようになったとか、ダイナモに乗せたらパワーが出ていなかったとか、まあそういったバイクであれば別に添加剤を使用してオイルの性能を強化するっていうのはありかもしれませんね。
と、ここまでご理解いただいたところで、オイル添加剤の解説に入ります。
オイル添加剤の効果
まずはオイルの通る通路を綺麗にするタイプのもの、言ってみればフラッシングのようなイメージですね。代表的な商品はワコーズのeクリーンプラスですが、これはバイクに使うことはNGです。理由については後ほど解説します。
そしてもう1つ、エンジンパーツの摩擦を軽減するもの。摩擦を軽減する、つまりフリクションロスを軽減することでパワーを復活させたりメカノイズを軽減させたりする効果が期待できます。代表的なものはスーパーゾイルやマイクロロン、丸山モリブデンなんかですね。実はこの摩擦を軽減する作用を持つものも、バイクに使えるものは数少ないのです。
なぜ4輪用添加剤はNGなのか?
なぜバイクに使うことができるオイル添加剤は少ないのか?その理由は以前の記事でも解説しましたが、ほとんどのバイクのエンジンは、トランスミッションと一体になっているからなのです。
車体の大きな4輪の場合、エンジンとトランスミッションは別になっています。エンジンにはエンジンオイルを入れ、マニュアルトランスミッションにはギアオイルを入れます。
しかし車体の小さいバイクという乗り物の場合は、設計上エンジンとトランスミッションを一体にするしかないのです。そうなってくると、エンジンオイルがギアオイルを兼ねる設計になってしまうわけです。それもコンパクトで信頼性の高い湿式クラッチが最も合理的で、一部の外車やスクーター、昔の2ストスポーツなどを除き、ほぼ全てのバイクはこの設計になっています。
エンジンオイルとして金属の摩擦を軽減させる機能が求められる反面、クラッチは摩擦を使って動力を伝えるパーツです。バイク用のエンジンオイルにはこの相反する2つの性能が求められるので難しさがあるのです。そんなバイク用のエンジンオイルに、摩擦の軽減だけに特化した4輪用の添加剤を入れてしまうと、クラッチが滑って動力伝達がうまくできなくなる可能性があります。ですのでバイクに使えると明記されている添加剤を使うようにしましょう。
また洗浄目的の添加剤についてもWAKO’Sに確認をしましたが、クラッチに悪影響を及ぼす可能性があるので使用しないでくださいということでした。バイクにも使えると言われている商品は、先ほどお伝えしたシュアラスターのLOOPウルトラクリーニングやカストロールのエンジンシャンプーくらいしか見つけられませんでした。
水抜き剤は効果があるのか?
そもそもこの水抜き剤というものは、一言で言うとアルコールです。アルコールをガソリンタンクに入れることで、中に溜まってしまった水と混ざり合います。その混ざり合ったいわば、濃いいお酒のようなものがエンジンに送られて燃焼されることで水が抜けるというものです。
それを再現しようと有名YouTuberが、ガソリンの中に水を入れその中に水抜き剤を入れてさらに撹拌し、その水と水抜き剤が混ざった液体を取り出して着火。水抜き剤はアルコールなので一瞬着火はするものの、水自体は結局そのまま残ったという実験を動画にしていました。その動画では水抜き材では水は抜けないと結論づけていたですが、自分の考えは少し異なります。
確かに水とアルコールを混ぜた液体に着火したところで、アルコールだけが燃えて水が残るのは間違いないでしょう。しかし室内で行われた実験とは異なり、エンジンの燃焼室は2000℃にも達します。そのような中にインジェクターを通してガソリンに混じって入ってきた微量の水が残ったとしても、一瞬で蒸発して排ガスと一緒に排出されるだろうと、自分は考えています。ですので理屈として、水抜き剤自体には水と混ざり合って、その水を蒸発させるだけの効果作用は期待できると思います。
ただしその実験動画でも言われていることなのですが、そもそもバイクのタンクというのは必ずしも1番低いところにフューエルホースがつけられていて、ガソリンを送り出しているというわけではありません。サイドスタンドの角度なども考えると、結局ガソリンよりも比重の重い水は、それよりも低い位置で溜まっていくと思います。ですので結論は、現実的に水を抜き切ることは難しいという点で同じです。
またさらに言うと、この水抜き剤はイソプロピルアルコールなので金属やゴムパーツへの攻撃性も気になるところです。燃料添加剤でもお伝えしたように、アルコール系の洗浄剤は金属の腐食やゴムへの攻撃性があります。そして水抜き剤というのはまさにアルコールそのものです。現実的にタンクの水を抜け切るかどうかというのは難しい、そしてエンジンには悪影響も懸念されるというわけで、自分は水抜き剤の使用はお勧めしていません。
まとめ
そんなこんなで添加剤の話を色々を語ってみましたが、お役に立ったでしょうか?「安いから」と安易に4輪用添加剤を使うと思わぬトラブルの原因にもなりかねません。バイクには必ず「バイク用」と謳っている製品を使う様にしてくださいね。
なおこの記事の内容は、下の動画でも詳しく解説していますので、こちらも是非ご視聴ください。
では最後までご覧いただきありがとうございました。
投稿者プロフィール
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元バイク屋のYouTuber。
バイクライフに役立つ情報を毎週配信。
メカの話やバイク購入アドバイスはもちろん、用品レビューやバイク屋裏話まで、バイク乗りなら誰もが気になるテーマばかり。
ちなみに中身はアラフォーのおっさん。
好物はサッポロ黒ラベルとキャベツ太郎だが、子どもができて以来、ふるさと納税で貰った無糖レモンサワーで節約している。
最近、血糖値と血圧を気にしているらしい。
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