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足着きに悩まない、転ばない! 未来技術が登場中【2022年版 バイクの電子制御サポートを解説 part.3】

飛躍的に進化し続けるバイクの電子制御技術。最終回となるpart3では、ようやく市販化された次世代システムや、未来的に採用の可能性がある技術を紹介します。
停止時に自動で車高を調整し、足着きがしやすくなるシステムをはじめ、レーダーによる追走や死角検知、さらには転倒防止など先進テクノロジーのオンパレードです!

【自動車高調整システム】停止時にシート高をダウン、これは安心!

バイクを選ぶ際、「足着き性」の良し悪しがポイントとなる人は多いですよね。特にアドベンチャーモデルやオフロード系は、サスストロークが長いため、車高が上がり、シート高も高いです(シート高800mm超えがフツーで、中には900mm近いモデルも……)。

ローシートやサスのショート化といった解決法はありますが、バイク本来のハンドリングと乗り心地は変化してしまいます。

こんな問題を解決してくるのが「自動車高調整システム」。電子制御で停車時のシート高を自動的にダウンし、走り出せばアップするので、足着きと操縦性を両立できるのです。

2022年9月現在、このシステムを搭載しているのは、ハーレーダビッドソンのパンアメリカ1250スペシャルのみ。システム名は「アダプティブライドハイト」です。サスペンションメーカーのSHOWAが開発した「イーラ・ハイトフレックス」をベースに、ハーレーが制御プログラムを独自開発しています。

パンアメリカ1250スペシャル。停止中は自動でシート高が低くなり、走行すると車高がアップ。足着き性を維持しつつ、走行性能を犠牲にすることもありません。

パンアメリカ1250スペシャルは、メインキーをONにするとシート高が 1 ~ 2 インチ(約2.5~5cm)ダウン。下がる量は設定したリヤのプリロード(バネの強さ)によって変化し、最も低い位置は830mmです。
なお、メインキーがOFFのままだとシステムが作動せず、車高が下がりませんのでご注意を。

走行を開始すると自動で車高が上がり、ライダーの体重や荷物に応じてプリロード(バネの強さ)を調整してくれます。車高調整システムには4つのモードがあり、ブレーキングの状態を検知して停止時までに完全に下げることや、低速時でも車高を下げない設定も可能です。

なお採用するのはパンアメリカ1250スペシャルのみで、標準仕様のパンアメリカ1250には装備されていません。

フロントフォークとリヤショックの上部に設置した車高調節用の油圧バルブをECUが制御。サスに組み込まれた油圧ジャッキにより車高をダウンさせます。part2で解説したセミアクティブサスも装備。

このシステムは残念ながら、まだまだ普及していません。システムが高価なため、今後も大型プレミアムモデル向けとなりそうです。しかし、ビギナーにとって実にありがたい装備なので小排気量モデルにもいずれ採用してほしいものですね。

【レーダー】前車追走クルコンや死角検知を実現!

周囲の状況を感知し、ライダーに衝突を警告したり、前方車両との距離を適切に保ったりするのが「レーダーシステム」です。

クルマではかなり普及してきたメカで、バイク用はドイツのボッシュが開発した「アドバンストライダーアシスタンスシステム」(ARAS)が実用化されています。

2022年9月現在、採用車は1290スーパーアドベンチャー(KTM)、R1250RT(BMW)、ムルティストラーダV4S/S Sport(ドゥカティ)、Ninja H2 SX/SE(カワサキ)。国産車では唯一H2SXのみ搭載しており、最後発として'22年に登場しました。

ヘッドライト下にミリ波レーダーを内蔵。写真はNinja H2 SX SE。

ミリ波レーダーを発し、反射で前方の車両の存在を検知します。クルマではカメラとの併用が一般的ですが、バイクではレーダーのみ実用化されています。

ARASのシステム。レーダーと各種センサーがバイクの頭脳であるECUと密接に結びついています。写真はNinja H2 SX SE。

具体的には次のような機能があります。

①アダプティブクルーズコントロール
②前方衝突警告
③死角検知

まず①アダプティブクルーズコントロール(ACC)は、「前車追従型クルーズコントロール」とも呼ばれ、レーダーで捉えた前方車両との距離をキープし、自動で速度調整してくれるシステム(“クルコン”の詳細はpart2を参照)。

【2022年版】初心者も安心!バイクの電子制御サポートを解説【part.2 クルコン、電サスetc】

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一般的なクルコンは一定の速度をキープするのみで、前車との距離はライダーが調整する必要がありましたが、ACCはその進化版。前者との車間距離もバイクがやってくれるので、クルージングがよりラクチンになります。なお車間距離は設定で変更できます。

クルマのようにコーナーでステアリングに介入して自動で曲がることはありません。しかし、IMU(慣性センサー)が車両の傾きなどを検知し、ACC作動時にコーナリングしていると判断すると若干速度をダウン。速度やバンク角に応じて減速するので、曲がりやすいです。

ムルティストラーダV4S/S Sportのアダプティブクルーズコントロール。アクセルを捻る必要がなく、車間まで自動調整してくれます。

②前方衝突警告は、前走車と衝突する危険を視覚的に警告するシステム。液晶メーターでの表示およびメーターパネル上部のLED点滅でライダーに危険を知らせ、追突事故のリスクを低減してくれます。

メーターに注視している時などに有効ですが、自動車用システムとは異なり、車両が自動停止することはありません(これは急制動でバランスを崩す恐れがあるためだと思われます)。ライダー自身でブレーキ操作する必要があります。

Ninja H2 SXではメーター上部の赤いLEDが点滅。液晶パネル内部にも警告が出ます。

③死角検知は、死角に車両がいる場合や後方から車両が急接近した場合、ミラーに装着されたLEDが点灯して警告するシステムです。

後方に搭載したレーダーが自車の左右車線後方をスキャンし、真後ろの車両は検知しません。現在、後方にもレーダーを搭載し、死角検知機能を持つのはムルティストラーダV4S/S Sport、Ninja H2 SX/SEのみとなります。

死角や左右後方からの接近車両をミラーのLEDで警告。カワサキはバイク初のミラー内蔵LEDを採用しています。

ホンダは「バイク用の衝突被害軽減ブレーキを研究開発中」と2021年11月に発表。衝突の危険がある場合、バイクの特性に合わせた自動ブレーキを行います。センサーがカメラかレーダーかは不明。

【転倒抑止システム】立ちゴケやUターンゴケともこれでオサラバ!?

究極の電子制御サポートと言えるのが「転ばないバイク」。バイクで転びやすい停止中や極低速時に補助してくれるバイクをホンダが研究しています。

この「ライディングアシスト2.0」は、2021年11月に発表されたシステムです。報道陣向けの発表会に筆者が参加してきたところ、前後輪でバランスを取り続けることで直立をキープし、空車状態でもスタンドなしで自立。ライダーが走らせると、普通なら転んでしまう2km/hの極低速でもフラつかずに旋回しました。

この機構があれば立ちゴケやUターンなど極低速の旋回といった転びやすい状況でも安心して走れることでしょう。

スタンドがない状態でも直立。ライダーが乗った状態で両手を離しても倒れません。二足歩行ロボット・アシモで培った技術が活かされています。

前輪のステアリングを自動制御すると同時に、後輪&車体を左右にスイングさせることでバランスを保つ仕組み。人間も倒れそうになる時、反対側に重心を移動してバランスを取るのと同じ理屈です。

なお、'17年の東京モーターショーなどで既に従来型ライディングアシストが公開済みでした。こちらは前輪のみ左右に動かしたりキャスター角を変動させることでアシストしていましたが、2.0では前輪に加え後輪にもバランス機構を追加しています。

この機構によって、ステアリングに影響を与えにくく自由に車体がロール可能に。しかも20km/h以上では制御をカットするため、より自然でライダーの動きをジャマしない乗り味になっています。

自動運転のように介入の度合いが大きければ、バイクならではの操る楽しみが失われてしまいます。しかし、そこはホンダ。FUNライドと安全性を両立してくれそうです。

車体後部にサーボモーターを搭載し、リヤタイヤと車体を左右にスイングさせる揺動機構でバランスを取ります。

「実用化はまだまだ先」とのことですが、期待せずにはいられないシステムです。

<まとめ>まだ身近ではないものの、将来的に普及を期待!

part3で紹介した電子制御システムは、まだまだ一般的に普及しておらず、ライディングアシストに至ってはまだ市販化もされていません。

しかし、part1や2で紹介したシステムも10年以上前にはほぼ普及していなかったものばかりです。電動化と合わせ、近い将来、普通に利用しているかもしれません。今後もバイクの進化に注目したいものです。

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沼尾宏明

ふだんフリーランスとして、主にバイク雑誌の編集やライターをしている沼尾です。 1989年に2輪免許を取得し、いまだにバイクほどオモシロイ乗り物はないと思い続けています。フレッシュな執筆陣に交じって、いささか加齢臭が漂っておりますが、いい記事を書きたいと思っているので、ご容赦ください。趣味はユーラシア大陸横断や小説など。よろしくお願いします。

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