「止まる」というバイクの超重要な機能を司るブレーキ。命を預かり、走りを左右する重要なパーツだけにカスタムする効能が高いです。
とはいえ、ブレーキは、キャリパー、マスターシリンダー、ホースなど様々なパーツで構成され、どこから交換するのかわかりにくい。その辺も含めて解説していきましょう。
パッド:街乗りならレジン、性能重視ならメタル
まずブレーキカスタムの手始めにオススメしたいのが「ブレーキパッド」。ハードルが低く、おサイフにもやさしい上に効果が高いからです。
パッドの材質は、主に「レジン」(樹脂)系と「メタル」(金属)系があります。
レジン系(セミメタルとも)は、メタル系より効きがやや弱いものの、コントロール性に優れ、価格も控えめ。
メタル系(シンタード=焼結とも)は、摩擦係数が高く、制動力が強い。その一方で効力が一気に立ち上がるため、スポーツ走行向けです。ただし値段はお高めです。
今使っているパッドが減った段階で、交換と同時にカスタムするとよりコストを抑えられます。
デイトナのブレーキパッドは定番かつ様々な種類があり、自分が狙った性能のパッドが選べます。
ホース:膨張を抑え、手軽にカッチリした感触へ
「ブレーキホース」も手が出しやすく、効果があるブレーキカスタムです。
一般的にバイクの純正ブレーキホースはゴム製で、ブレーキフルードが通過する際、圧力でわずかに膨らみ、タッチが若干マイルドになります。
これをステンレスメッシュ製に交換すると、ホースの膨張を防ぎ、ダイレクトなブレーキタッチに変化します。
制動力そのものが上がるわけではありませんが、スポーティに走りたい人にオススメです。
メッシュホースは、チューブのまわりをステンレスメッシュで包み込み、ホースの膨張を防ぐ。1本1万円以下から購入可能。
キャリパー:制動力もフィーリングも変更できるザ・王道
そしてブレーキカスタムの王道が「キャリパー」です。
現在装着しているキャリパーよりパッドの面積が大きいタイプを選べば、制動力そのものを強化できます。
「4ポット」「2ポット」などのポットとは、ブレーキパッドを押すピストンの数を意味します。2ポットより4ポットの方がパッドを押す力が安定し、コントロール性に優れます。
高級なキャリパーは剛性が高いため、安定して高い制動力を発揮し、カッチリしたタッチを得られるのも特徴。
特にアルミブロックから削り出した1ピース構造のモノブロックは、一般的な2ピース構造のキャリパーよりブレーキング時のねじれが少なく、レースなどのスポーツ走行でダイレクトな効力を発揮してくれます。
低コストな純正キャリパーだと、オン/オフの2段階しかない操作感の場合もありますが、性能のいいキャリパーは、ブレーキのかけ始めからしっかり握り込んだ状態まで、その過程が何段階もあるカンジ。意のままに制動力をコントロールできるでしょう。
カスタムで人気があるのはイタリアンブランドのブレンボです。モトGPを筆頭にレースでの採用例が多く、信頼性は十分。安価なものから高性能タイプまで選べます。
ただし高級なキャリパーは値段もなかなか。ブレンボの場合、1ピース構造はアルミ鋳造製で10万円以上(左右セット)。アルミ削り出しは15万円以上は見ておきたいです(交換費用除く)。
キャリパーは意外と目立つ部分なので、性能向上のほかにドレスアップ効果もアリ。写真はブレンボの削り出しモノブロック(GP4-MS CNCモノブロックキャリパーキット P4 30 ニッケルコート)。最高峰モデルで価格は44万円也。
なおキャリパー交換の際は、自分の愛車に取り付けられるか、しっかり見極めるのが重要です。車種専用なら安心ですが、汎用タイプだと「取り付けピッチ84mm」などの表記があるハズ。これに適合した愛車用の「キャリパーサポート」を合わせて購入することで、様々な汎用キャリパーが装着できます。
その車種用のキャリパーサポートがあれば、「ラジアルマウント化」も可能。ラジアルマウントとは、キャリパーを固定するボルトをブレーキディスクと平行に配置した方式です。高性能なスーパースポーツに多く採用され、キャリパーのねじれが減るため、安定した制動力が発揮できます。
ただし、サポートとフロントフォークの固定部は一般的なサイドマウント(横からボルトを止める方式)のままなので、効果はさほど高くないと言えそうです(カッコイイのですが)。
写真のブレンボキャリパーとFフォークの間にあるのがキャリパーサポート。汎用キャリパーにカスタムする場合、まず愛車用のキャリパーサポートを探し、その取り付けピッチに合うキャリパーを探しましょう。
マスターシリンダー:自由自在な操縦性能をゲット
ブレーキのフィーリングを変えたいなら「マスターシリンダー」を交換しましょう。これは、レバーからの入力を油圧に変換し、キャリパーに送り込む装置(レバーの根本にある部品と言えばわかりやすいかも)。
ピストンが縦タイプの「ラジアルポンプ」は操作感がダイレクトで、これもオフ→オンまで途中の状態が何段階もあるフィーリングが得られるハズです。
マスターシリンダー。キャリパーを交換する際にコチラも一緒に変更すると、コストが省ける上に、一段と優れたタッチが得られます。
<まとめ>走りを変えたい人にオススメ。交換はプロにお任せ
キャリパーを交換すると、走りが大きく変わります。特に古いバイクは制動力が弱い場合も多いので、効果大。
なおブレーキは重要部品のため、分解整備や交換は、認証工場に任せましょう。命に関わるパーツなので、くれぐれも確実にお願いします!
バイクのカスタムについて詳しく知りたい方はこちらもぜひ参考にしてみてください↓
投稿者プロフィール
-
ふだんフリーランスとして、主にバイク雑誌の編集やライターをしている沼尾です。
1989年に2輪免許を取得し、いまだにバイクほどオモシロイ乗り物はないと思い続けています。フレッシュな執筆陣に交じって、いささか加齢臭が漂っておりますが、いい記事を書きたいと思っているので、ご容赦ください。趣味はユーラシア大陸横断や小説など。よろしくお願いします。