はい!元バイク屋のフォアグラさんです、こんにちは。さて今回は中型バイクと大型バイクの違い、その危険性についても検証・解説します。
250ccや400ccにお乗りの皆さんは、大型バイクってどんなイメージでしょうか?デカい、重い、速い、そんなイメージを持っている方も多いと思います。自分もそうでしたし、実際その通りだと思います。
「4~50馬力の400ccでもめちゃくちゃ速いのに、150馬力ってどういうこと?すごいスペックで気にはなるけど、結局無駄だろうし、何より危険でしょ?」と思う方も多いでしょう。今回はそんな大型バイクの特徴や危険性について解説をしつつ、世間的によく誤解されている点も解消できるような内容です。
大型バイクの特徴と危険性(スポーツバイク編)
今回は大型バイクの特徴や危険性をテーマとしているわけですから、いかにも大型バイクと言えるような車種で比較をしていきたいと思います。
ではまずスポーツバイクについて比較をしていきましょう。
今回例に上げるのはカワサキの4気筒スーパースポーツの兄弟同士、250ccのNinja ZX-25Rと1000ccのNinja ZX-10R。大きさや重さ最高出力の違いはこんな感じ。
最高出力
数値にしてみてまず目を引くのは、最高出力の圧倒的な差です。250クラスにおいて市販車最速クラスのZX-25Rですが、ZX-10Rはなんとその4倍を超える最高出力を発揮します。ZX-25Rに乗っている方にお聞きしたいのですが、めちゃくちゃ速いですよね?一般道において十分すぎる速さですよね?200馬力超えとか理解不能な領域、とりあえず「危なそう」と思うのではないかと思います。「48馬力でも車を米粒にできるくらい速いのに、200馬力ってどういうこと?」と。
自分も以前53馬力の400ccに乗っていた頃にそう思って、大型自動2輪の免許を取得しました。大型バイクが欲しいというよりは、150馬力というものがどんな世界なのかを知りたいという好奇心でした。
最高速と加速性能
では実際の最高速の違いを見てみましょう。ZX-25Rは45馬力の2020年モデルではありますが、「Webオートバイ」にて175km/hという記事がありました。対してZX-10Rは2021年モデルで292km/hと大きな差があります。
加速性能も見てみましょう。0-100km/h、つまり時速100kmに到達するのにかかる時間がZX-25Rが約6秒、ZX-10Rについてはデータを見つけられませんでしたが、一般的に1000ccのスーパースポーツは3秒台前半から中盤程度です。100km/hに到達するのにたった3秒って「公道でそんな加速をしたら危険すぎる」と思いますよね?自分も全く同感です。
車体サイズ
そして車体の大きさについても考えてみましょう。
こうして数値化してみると、この大きさについてはあまり差がない印象です。しかし実際にまたがってみると、その印象というのはガラっと変わります。乗る前に、またがろうとした時点でその違いにまず気付きます。「うわっ!めっちゃ足上げなきゃいけないじゃん」と。
そしてまたがってからもそのシート高の数値以上に高く感じ、足付きも数値以上に悪いのです。その理由はタンクとシートの幅が全然違うからなのです。
同じ4気筒とは言え、そのタンクの幅は大きく異なり、かなり股を広げたガニ股状態になります。必然的にシート幅が広くなり、またがってもまっすぐ真下足を下ろすことができません。ですのでシート高の数値以上に足付きが悪く、デカいバイクに乗っているということを体感することになります。
このことについてはもう百聞は一見にしかず。近くのバイク屋さんで1度またがってみると一瞬で理解できるはずです。
そんな幅も広く、圧倒的なパワーもあり、「とてもじゃないけど扱いきれない」と感じる方も多いでしょう。なんだか「大型スーパースポーツは怖い、必要ない」そんなイメージを植えつけてしまったかもしれません。
ではこんな化け物のように、とんでもなく速いスーパースポーツバイクは危ないのでしょうか? その考え方、結論については、最後にしっかりとお伝えしましょう。
大型バイクの特徴と危険性(アメリカン編)
ではアメリカンなど走行性能に重きを置いていないモデルについてはどうなのでしょうか?スピードが出るような絶対性能が高いバイクではありませんが、こちらは安全性が高い車種と言えるのでしょうか?
分かりやすい例としてちょっと古いのですが、日本を代表するアメリカンの名車ヤマハのドラッグスター250と1100で比較してみましょう。こちらがスペックの比較です。
車体サイズ&重量
こちらも車体の大きさは数値だけを見ると大差ないように感じますが、実車を目の当たりにしたらその迫力には大きな違いがあります。ドラッグスター1100は見るものを威圧するほどの存在感があるのです。
そして数値上で大きな差を感じるのはその重量の差。ドラッグスター250 は160kgであるのに対し、ドラッグスター1100はなんと278kg!約120kgもの差があります 。120kgと言うと250ccオフロードの名作セロー250の1台分違うことになります。
そう、大型アメリカンを扱う上で気を付けたいのはその重さです。シート高も低く最高出力も中型のスポーツモデル程度と一見扱いやすそうなのですが、とにかく取り回しが大変です。足がかかとまでベッタリ着いていても、絶対的な重量が凄いのです。つま先しか着かなくても絶対的な重量が軽いオフロードバイクの対局とも言えます。ちょっとバランスを崩すと、一瞬で支えきれなくなってしまいます。
運動性能
またこれはドラッグスター250にも共通して言えることなのですが、アメリカンは基本的にキャスター角が寝ているため、ハンドリングが重くなります。フロントフォークが寝ているためホイールベースが長く、さらに重いという特性から、大型アメリカンは旋回性能はもちろん、緊急回避性能も低いと言わざるを得ません。
アメリカンとスーパースポーツの比較 | ||
ドラッグスター1100 | ZX-10R | |
ホイールベース | 1,640mm | 1.450mm |
キャスター角 | 33.0° | 25.0° |
重量 | 278kg | 207kg |
シート高 | 685mm | 835mm |
最高出力 | 60ps | 203ps |
エンジンの出力特性はマイルドですが、安直に安心して乗れるとか安全性が高いとは言えないでしょう。スポーツモデルのようにブレーキも性能が高いものを装備しているわけではありません。車種によっては大型でもフロントブレーキがシングルディスクだったりもします。
とはいえスポーツモデルとは違って、そもそもライダーが走りを追求する気にならないということから、結果的に自然と安全運転になるのか、大型アメリカンの事故が特別に多いという印象はありません。
大型バイクは危険なのか?事故率から検証
では最後に、大型バイクは中型バイクに比べて本当に危険なのでしょうか?実はこんなデータがあります。バイク事故の排気量別の件数の割合です。
排気量別の事故件数割合
あらかじめご了承いただきたいのが、中型か大型かというのは免許区分であり、こちらのデータの区分は道路運送車両法上の軽2輪(いわゆる250ccクラス)と、小型自動二輪(251cc以上の車検の必要なバイク)に分かれています。400ccクラスも大型車も小型自動二輪に含まれてしまうので、中型か大型かというと正確なデータはないのですが、十分参考になる数値だと思いますので、見ていきましょう。
1位は50cc以下、つまり原付1種で負傷事故が2 輪車全体の40.6%、死亡者が2輪車全体の32.6%を占めます。
では50ccが一番危ないのかというと、必ずしもそうとは言えません。なぜなら保有台数が最も多いため、一概に50ccが危険だとは言えないのです。
次いで多いのが125cc以下の原付2種。負傷事故が32.1%、死亡事故が28.3%です。
問題はここから。いわゆる250ccクラスの軽2 輪と、車検が必要な小型2輪車です。
軽二輪つまり250ccクラスの負傷事故は17.2%であるのに対し、小型自動2輪は10.2%。
そして軽2輪の死亡事故は19.6%であるのに対し、なんと小型自動二輪も同じ19.6%。死亡事故の数値が同じということは、負傷事故の割合が高い250ccクラスの方が危険ということになるのでしょうか?
いいえ、そうは言えません。原付のところでも書きましたが、保有台数つまり絶対数が多ければ当然事故の件数も増えるわけですから。そう、大事なのは保有台数と事故の比率です。
保有台数と事故件数の比率
では250ccクラスと400ccや大型の小型2輪の保有台数にはどのくらいの差があるのでしょうか?ほぼ同時期のデータで見てみましょう。
ご覧の様に軽2輪の方が小型自動2輪よりも少し多いのです。
で、この数値の比率で考えてみると、負傷事故については軽二輪の方が割合が高く、死亡事故についてはより排気量の大きい小型2輪の方が割合が高いことになります。怪我で済む事故と、命に関わる大きな事故ですから、軽2輪の方が事故自体は多いけど大きな事故は少ない、排気量が大きいバイクは事故自体は少ないけど大きな事故が多い傾向であると言えそうです。
ただ、ここで1つ見落としてはいけないのが、ライダーのスキルや経験値です。大型自動二輪免許を持っている人を含むので、一般的に大きい排気量に乗っている人の方がスキルが高く、経験値も豊富であるケースが多いはずです。その点を鑑みてみると、やはり排気量が大きい方がわずかではありますが危険と言えるような気がしますが、あまり大きな差ではないです。
結論
ということは、結局はライダー自身のモラルが1番大事と言えるかと思います。この記事の前半部分でもお伝えしましたが、250ccのZX-25Rでも180km/h近く出るのです。なんてことはない20馬力しかない250ccのバイクだって100km/hくらいは出ると思います。これでも十分命を落とす速度ですよね。
200馬力あるから危険、300kgの重さがあるから危険なのではなく、結局のところ乗る人の自制心。パワーのあるバイクにまたがると、そのパワーを引き出したくなってしまう、重いバイクに乗っているのに無茶したくなってしまう、そういった気持ちを抑制できない人が事故を起こしてしまい、大型バイクは危険と思わせてしまっているのではないでしょうか。
大型バイクが決して危険なのではなく、危険なのは自制心のないライダーの方なのです。
危険運転をする人は250ccに乗ろうが危険なはずです。自分自身、大型バイクに乗っていて安全運転を意識しているつもりですが、「制限速度を超えたことはない」なんてことは言いません。今回データを調べていくうちに、ちょっと思い返すこともあり反省させられました。
まとめ
というわけで今回は中型バイクと大型バイクの違い、そして大型バイクは中型バイクと比べて危険なのかということについて考えてみましたがいかがでしたでしょうか?
どうしてもデータの区分で400ccクラスも小型自動二輪という区分になってしまうので、正確なデータがなく消化不良気味な方もいるかもしれませんが十分参考になる数値、ある程度納得感はあったのではないでしょうか。
今回の記事は下の動画でも詳しく解説をしていますので、こちらも是非ご視聴ください。
それでは今回も最後までご覧いただきありがとうございました。
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投稿者プロフィール
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元バイク屋のYouTuber。
バイクライフに役立つ情報を毎週配信。
メカの話やバイク購入アドバイスはもちろん、用品レビューやバイク屋裏話まで、バイク乗りなら誰もが気になるテーマばかり。
ちなみに中身はアラフォーのおっさん。
好物はサッポロ黒ラベルとキャベツ太郎だが、子どもができて以来、ふるさと納税で貰った無糖レモンサワーで節約している。
最近、血糖値と血圧を気にしているらしい。
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