こんにちはヨシキです。中排気量以上のバイクにお乗りの皆さん、突然ですが“車検がもっと安く仕上げればいいのに”と思ったことはありませんか?
バイクの車検といえば何かと費用が掛かりますし、2年に1度とはいえ、車検のたびにバイク屋さんにお願いするのも手間がかかるので、何となくネガティブなイベントに感じてしまいますよね。
確かに車検は安全に公道を走る為に重要なルールなのですが、面倒なものは面倒です。そこで今回はそんな方に向けて、車検の費用を安く抑えてアッという間に車検を終わらせる裏技”ユーザー車検”をご紹介していきます。
ユーザー車検とは、オーナーが自ら検査場に出かけて検査を受ける検査方法のことで、コツさえわかってしまえば誰にでも可能です。
もちろん注意点はいくつかあるのですが、そこは現役整備士ヨシキが気を付けたいポイントを詳しく解説。車検を安く、手軽に取りたい方、次の車検はユーザー車検に挑戦してみてはいかがでしょうか。
ユーザー車検とは?
ユーザー車検とは、バイクのオーナーが自分で車検の検査を受けに行く検査方法の一つです。
検査を受ける場所は“運輸局(通称陸運局)”と呼ばれる各都道府県にある国土交通省管轄の検査場。この運輸局の中にある事務所で手続きを行い、敷地内にある検査場で検査官による検査を受けます。
全ての検査項目に合格したら、受付で車検証を受け取り、車検完了です。
ユーザー車検を受ける場合に特別な資格はいらない
点検を受けるのに素人が検査を受けてもいいの?と疑問に思うかもしれませんが、検査を受ける人に特別な資格は必要ありません。
検査自体は“検査員”と呼ばれる法令のプロたちが実施。対象のバイクが車検に合格する基準で整備されているかを厳しくチェックします。
車検で点検される項目
車検でみられる項目は次の8項目
- 外観検査:ナンバーが折り曲げられていないかなど、不正改造の点検
- 灯火類検査:ウインカーやライトがすべて点灯するか点検
- 光軸点検:ヘッドライトがまっすぐ前を照らしているのかを検査
- 警笛:ホーンが鳴るか
- スピードメーター:スピードメーターは正しく動作しているか
- 制動検査:ブレーキは正しく機能するか
- 排気ガス:排気ガスに含まれる有害物質が一定の基準をクリアしているか(初年度が平成10年以前の車両は検査対象外)
- 音量測定:マフラーの音量が一定の音量を下回っているか検査(初年度が平成22年以降の車両のみ)
基本的にノーマルであればまず検査に落ちることはないのですが、マフラーを交換していたりヘッドライトをLEDに変えていたりすると検査不合格になる可能性があります。
意外と車検って見るところが少ない!?
これを見た方の中には
“意外と検査項目少なくない!?”
“オイルやチェーンは点検しないの!?”
と思った方もいるのではないでしょうか。その通りです。実は車検ではエンジンオイルやチェーンブレーキパッドの残量は検査対象ではありません。
このあたりの詳しい解説はこの後“ユーザー車検のデメリット”で触れていきましょう。
なぜユーザー車検だと安くなるの?
ユーザー車検が安く済む理由は、車検に価格費用の中でも高額な検査代行料と車検基本料がかからないから。バイク屋さんの車検とユーザー車検でどのくらい価格が変わるのか気になる方は、車検見積もりの検査料の部分を除いた金額が概ねユーザー車検でかかる費用の概算になります。
車検費用の内訳
とはいえ、車検見積もりは項目が細かく分かれているのでちょっと見にくいですよね。簡単に車検費用の内訳をご紹介しておきましょう。
大手用品店 | ユーザー車検 | ||
車検代行費用 | 整備料 | ¥5,500 | ¥0 |
法定点検料 | ¥24,200 | ¥0 | |
事務手数料 | ¥3,100 | ¥0 | |
法定費用 | 重量税 | ¥3,800 | ¥3,800 |
自賠責保険料 | ¥8,760 | ¥8,760 | |
検査手数料 (印紙代) | ¥1,800 | ¥1,800 | |
合計費用 | ¥47,160 | ¥14,360 |
ユーザー車検は整備が無ければ3万円以上安く実施できる。ディーラー等では排気量によって整備費用に価格差がある場合もあるが、法定費用に排気量は関係無いので価格差がないのも特徴。
車検にかかる費用は大きく分けて“法定費用”、“検査料”、“整備料”の3つに分けられます。このうち法定費用とは、
- 検査手数料
- 重量税
- 自賠責保険料
上記3つ含む一律の費用のことで、これはどこで車検を依頼しても変わりません。
重要なのは車検基本料と代行手数料。これはバイク屋さんの利益の部分なのでお店によって変動します。
技術料は整備にかかる費用で、修理代金に相当します。
代行手数料がかからない分、ユーザー車検は安くなる
仮に修理や整備が無かった場合、ユーザー車検では代行手数料、車検基本料がかからないので、その分車検費用が安く抑えられます。
ユーザー車検のデメリット
費用が安く済むとはいえ、ユーザー車検にはデメリットもあります。それが先程も触れた“車検の検査項目の少なさ”です。
車検はあくまで“最低限公道を走るために定められたルールを守っているのか”を検査するだけであって安全に乗れる状態であるかどうかを点検しているわけではありません。
極端な話をすれば、ブレーキパッドが摩耗して危険な状態であっても制動力があれば車検には通りますし、アイドリングがばらついて上手くエンジンが吹けなかったとしてもエンジン状態を検査する項目はありません。
ユーザー車検は検査を通すためだけの手続きなので、安全点検や整備は必ずプロに依頼しなくてはいけない点には注意しておきましょう。
法定点検ができない
では、バイク屋さんの車検では何を見ているのかというと“法定点検”という道路運送車両法で定められている、車の使用者が定期的に行わなければならない車の点検整備を実施しています。
この法定点検は国家整備資格を持った人間しかできず、検査項目は車検で行う24か月点検では約60項目の点検を行い、ブレーキパッドの残量、ドライブチェーンの摩耗、クラッチの動作、各油脂類の状態などを細かく点検整備を実施します。
なので、バイク屋さんの車検費用が高いのは決してぼったくっているわけではなく、細かな法定点検を実施しているためにどうしても費用が高額になってしまっているだけなのです。
法定点検は義務であるにも関わらず、未実施でも車検が通るルール上に、罰則規定もないため、ユーザー車検を実施した後に法定点検を行う方は少ないのが現状です。
ユーザー車検を実施する前、もしくは実施した後には必ず法定点検を受けるようにしましょう。法定点検は車検時期以外でもバイク屋さんで受け付けています。
法定点検には、24か月点検以外にも12か月点検があるので、1年以上点検していない方は一度検査を受けてみてはいかがでしょうか。
旧車や過走行車は安全のためにもユーザー車検はお勧めできない
そんなわけで、法定点検を行わないユーザー車検は車両状態によっては安全な整備状態にあるバイクとは言えません。旧車や過走行車は出先でのトラブルを防ぐためにもユーザー車検はやめておいた方がいいでしょう。
どうしてもユーザー車検を行いたいのであれば前述の通り、車検前に法定点検だけをバイク屋さんで行い、それから検査に向かってくださいね。
不合格になってしまうと整備が必要になる
車検に不合格になってしまうと不適合個所の整備が必要です。こうなると結局バイク屋さんに依頼するしかありません。すると結局バイク屋さんで車検を取るのと変わらない費用がかかるうえに、再検査のためにもう一度検査を受け直しになるので手間もかかります。
新車登録から5年以上経つバイクは事前にバイク屋さんで点検をしてから車検に行くのがおすすめです。
平日にしかユーザー車検はできない
運輸局は平日にしか開いていないため、平日が仕事の務め人には厳しいかもしれません。土日しか休みが取れない方は素直にバイク屋さんで車検を取るようにしましょう。
ユーザー車検の流れ
ユーザー車検は車検に必要な手続きをすべて自分で行わなくてはいけません。とはいえ、それほど難しい手続きはありませんので順番通りに進めていけば問題ないでしょう。
1.予約
まずは(独)自動車技術総合機構の自動車検査予約サイトから検査の予約をします。予約時間は時間で区切られているので予約時間を間違えないようにしましょう。
2.書類作成
次に書類の作成です。必要な持ち物は
- 検査表
- 重量税納付書
- OCRシート(第3号様式)
- 自賠責保険証
- 車検証
- 納税証明書
- 印鑑
もし事前に法定点検を受けたのであれば“分解整備点検記録簿”も用意しておきます。
納税証明書と印鑑以外は運輸局に書類が用意されているので、現地で入手可能です。自賠責保険の加入は近隣の整備振興会窓口で受け付けているので、窓口で“車検の自賠責をお願いします”といえば担当者が新しい自賠責保険証を用意してくれます。
このとき古い自賠責保険証が無いと、保険料が高くなってしまうので忘れずに持っていきましょう。
3.書類の提出
運輸局に用意されている記載例を参考に、必要事項を記載して検査手数料と重量税の印紙を貼り付けます。印紙は運輸局の窓口で販売しているので事前に購入しておく必要はありません。
必要な印紙の金額は重量税印紙が3,800円。検査手数料が1,800円です。重量税はバイクの年式によって異なり、新車登録時から13年経過すると4,600円、18年経過すると5,000円となります。
新車登録からの経過年数 | 重量税印紙代 | 検査手数料 |
13年未満 | 3,800円 | 1,800円 |
13年以上18年未満 | 4,600円 | 同上 |
18年以上 | 5,000円 | 同上 |
4.検査
書類の提出が終わり、受付が済んだら、検査表を受け取って検査レーンに並びます。検査の順番が来たら検査員に“初めてです”と伝えると丁寧に検査方法を教えてくれます。
4.車検証受け取り
検査に合格したら、検査表一式を窓口に提出。車検証を受け取ったら車検終了です!
お得なユーザー車検ですが日々の安全点検は忘れずに!
ユーザー車検はコストを抑えられる非常にお得な車検方法です。ですが法定点検は行わないため、精密な点検は必ず必要になります。
仮に法定点検をバイク屋さんで受けたとしても車検基本料分はお得に済ませられるユーザー車検。コストを抑えて車検を通したい方は是非おためしあれ。
投稿者プロフィール
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元モトクロス国際B級ライダーのヨシキです。
趣味は林道探検、オフロードバイクでどんな山道も散策します。
今は整備士として活躍しているので、メンテナンス、DIYでできる整備など、お役に立てる情報を発信していきたいと思います。もちろんレーサーならではのライテク記事も執筆していくのでおたのしみに。
【愛車たち】
SUZUKI RM-Z250,HONDA CR125,SUZUKI RM80L
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