こんにちはヨシキです。突然ですが読者の皆さんに質問です。自分でバイクをいじるとき、“ボルトが硬くて回らなかった!”なんて経験はありませんか?
特に旧車乗りの方ならネジ山がサビついてしまっていてボルトが外れず、途方に暮れてしまう。なんてこともあるでしょう。
サンデーメカニックにとって、回らないボルトほど怖いものはありません。そこで今回は、整備士ヨシキが回らなくなってしまったボルトを外す、プロの技をご紹介していきます。
大体のボルトはこの方法で外せます!回すことをあきらめてしまったボルト。ぜひ今回の記事を読んで再チャレンジしてみてはいかがでしょうか。
ボルトが回らなくなってしまったら?
ボルトが回らなくなってしまったら、まずは落ち着いて状況を確認しましょう。ボルトが回らなくなってしまう理由は主に次の3つ。
- ネジ山がサビて固着してしまっている
- ネジ山にゴミが挟まってかじってしまっている
- ネジやボルトの頭をなめてしまって力が掛けられない
頭をなめてしまった場合は後述する方法でチャレンジするとして、とりあえずボルトの頭がしっかりしているのならまだ外せるチャンスがあります。まずはボルト周りをワイヤーブラシなどで洗浄して、余計なサビや汚れを落とすところから始めましょう。
手始めに潤滑剤をかけてみよう
第一工程は潤滑剤をたっぷり掛けて油を浸透させます。潤滑剤はなんでもいいですが、強いて言えばCRC5-56やラスペネあたりが強力でおすすめです。
潤滑剤には、油の浸透力によってきつく噛みこんでいたネジ山をスムーズに回したり、錆を落とす効果があります。
また、ネジ山部分がナットを貫通し、おしりが見えているタイプのボルトは、ネジ山とナットの間に付着したごみや汚れが回らない原因になっている場合があるので、頭だけではなくネジ部分にもしっかり潤滑剤をかけておきます。
工具はなるべくソケットレンチの使用がおすすめ
十分に汚れを落とし、潤滑剤がボルトに馴染んだらゆっくりとネジを緩めていきます。このとき、使う工具は6角タイプのソケットレンチがおすすめ。12角のメガネやスパナは上手くボルトに力が加わらず、頭をなめる原因になりますので、硬いボルトを外すときはソケットレンチを用意しておきましょう。
焦らずに絞めたり緩めたりを繰り返していく
ボルトを緩めるときは力任せに回してはいけません。絞めたり緩めたりを繰り返して1/4回転ずつ緩めていくようなイメージで回していきます。
このとき、いつまでたっても緩みそうな手ごたえが無いときは一旦ここで作業をストップしておきましょう。
それでもだめだったときの必殺技
潤滑剤を浸透させてソケットレンチを使っても回らない。なめてしまいそう。こうなってしまったら必殺“ガスバーナー作戦”を使います。
金属は熱すると膨張し、冷やすと縮みます。この性質を利用するのがガスバーナー作戦。ボルトを加熱することで、ネジ穴が膨張。このわずかな隙間を利用してボルトを回しやすくしていきます。
ただし、この方法は一歩間違うと火事の危険性もあるので注意が必要です。必ず近くに消火器を用意しておくことと、ガソリンタンクのそばのボルトにはこの方法は使わないことを徹底しましょう。
ガスバーナーであぶる
ボルトをあぶる道具は作戦名のとおり“ガスバーナー”。ホームセンターで売っているもので構いません。これを使って、ボルトが真っ赤になるまで加熱。すぐに回すことでネジを緩めていきます。
しばらくするとボルトが冷めて回りにくくなるので、そうなったら再度加熱していきます。
ほとんどのボルトはこの方法で外せます。むしろこれで回らなければかなり重症です。エキパイやマフラー周りのボルトが外れない方は試してみてはいかがでしょうか。
ブレーキ周りや樹脂パーツ近くのボルトは熱さない
この方法、注意点として“熱に弱い部品”の近くで使ってはいけません。樹脂パーツやブレーキ周りは熱に弱いためバーナーであぶると思わぬ部品が破損してしまいます。
また、熱が伝わると、遠くの樹脂パーツが変形することもあります。ガスバーナーであぶるときはできる限り余計なパーツは外しておきましょう。
ボルトを熱したら膨張してかえって回らなくなりそうだけれど?
“ボルトを熱して膨張させる”と聞くと、ネジ穴でボルトが膨張して、かえって回らなくなりそうと思う方もいるでしょう。ですがその点は心配ありません。実はボルトとネジ穴は金属の素材が違います。素材が違うと膨張率も異なるため、ネジ穴やボルトがそれぞれ変形。わずかな隙間が生まれます。
この隙間が錆を落としたり、固着をはがしてくれるので、ボルトが緩むという仕組みです。
専用の工具でボルトを加熱する
ガスバーナーは怖くて使いたくない!
そんな方にはボルトだけを熱する特殊工具を使ってみてはどうでしょうか。コイルをボルトの頭に巻き、電流を流すことでボルトだけを加熱。ピンポイントで対象物に熱を入れられるので周りの部品を壊してしまうリスクや、火災の危険性が下がります。
こちらはナットにも使うことができるのでとってもお得。
但しお値段がちょっとお高めながネックです。あると便利ではあるのですが、なかなか一般の方が手を出すには勇気がいりますね。
切断する
「加熱してもどうにもならない」
「完全に頭をなめてつぶしてしまった」
こうなったら最終手段、切断です。サンダーやグラインダーを使ってボルトの頭を削り取り、目的の部品を取り外します。
ネジ穴に残ったボルトは、ドリルで穴をあけて修正すれば問題ありません。手間はかかってしまいますが、どうしても回らないボルトはいっそ切断してしまうのも選択肢の一つです。
頭をなめてしまった!そんなときはリカバリーツールが存在する
とはいえ切断はあくまで最終手段。ボルトの頭をなめてしまっただけならリカバリーツールを使って外すことができます。リカバリーツールは特殊工具なので少しお値段高めですが、1セットあればこれほど心強い道具はありません。
頻繁にDIY整備をする方なら用意しておいても損はないでしょう。
なめてしまったボルト外し用の工具がある
実は、世の中には“なめてしまったボルト外し専用のツール”が存在します。ソケット部分が特殊形状をしており、角が丸くなったボルトをしっかりキャッチ。簡単に外すことができます。
商品名はさまざまですが、私の愛用品は“スパイダー”という特殊工具。この独特な形状があらゆるなめたボルトを回してくれるので、大変重宝しています。
手元に工具が無いときは1サイズ小さいソケットレンチを叩き込むのもアリ
特殊工具なんて持っていない!そんなときは1サイズ小さいソケットレンチをボルトに叩き込んで代用することも可能です。
ただし、この方法は特殊工具に比べると効果が弱いのと、叩き込んで使ったソケットレンチは使えなくなってしまうので注意が必要です。
ボルトやネジ穴を壊してしまった、ボルトが折れてしまったときは?
“どうしてもボルトが回らなかったので頭を切断した”
“緩めている最中にボルトが折れてしまった”
こうなってしまったらネジ穴を復元するしかありません。手間はかかりますが、工具さえあればそれほど難しい作業ではないので、万が一ネジ穴やボルトを壊してしまっても悲観しないでくださいね。
ネジ山がサビてしまったボルトやネジ山をつぶしてしまったボルトは、専用工具で清掃すれば再利用できる
まずはボルトのネジ山がダメになってしまった場合。これは“ダイス”と呼ばれる専用工具でネジ山を切り直せば再利用可能です。
ボルトにはネジ部分の径を示す“M 〇〇”というサイズと、ネジ山の間隔を示す“ピッチ”というサイズが決められています。これら2つのサイズがそろっているダイスを使わないと、正しくネジ山を切ることができません。
修正に挑戦するときは必ずサイズ確認をお忘れなく。
ネジ穴がダメになってしまったときはタップという工具でネジ穴を復元する
ネジ穴もサビや汚れでダメになってしまった場合は“タップ”と呼ばれるドリルでネジ山を作ります。こちらもダイス同様サイズがあるので、使用の際はネジ径とピッチを確認しましょう。
また、タップは斜めに入ってしまうとネジ穴を拡張してしまうため、必ずまっすぐ入れるように気を付けてくださいね。
折れたボルトがネジ穴に残ってしまったなど、完全にネジ穴がダメになってしまったときはドリルとリコイルキットで解決
折れたボルトがネジ穴に残ってしまったり、ネジ穴そのものが変形、拡張してダメになった場合は“リコイルキット”を使ってネジ穴を作っていきます。
使い方は、
- ドリルでネジ穴よりも1サイズ大きな穴をあけます
- 開けた穴に専用のタップで溝を切り、リコイルキットを埋め込みます
- 埋め込まれたキットのはみ出た部分を切断し、表面を軽く整えれば完成
手順は比較的簡単なのですが、ドリルで穴をあけるのが非常に厄介で、特にボルトが折れてしまった場合は少し苦労するかもしれません。
フレームなど、交換できない部品のネジ穴を壊してしまった場合はぜひ試してみて下さいね。
固着したボルトは根気さえあれば誰にでも外せる
以上、固着したボルトの外し方でした。結局、プロの現場でもボルトが回せなくて壊してしまうことはよくあります。特にサビがひどい車両はなおさらです。
そんなとき大切なのは、“回らなくなってしまったボルトを絶対に外してやるという根気”言ってしまえば根性です。ボルトやネジ穴は最悪壊してしまっても何とかなります。もう回らないとあきらめていたサンデーメカニックの皆さん。あきらめなければきっとボルトは外せます。頑張ってくださいね。
投稿者プロフィール
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元モトクロス国際B級ライダーのヨシキです。
趣味は林道探検、オフロードバイクでどんな山道も散策します。
今は整備士として活躍しているので、メンテナンス、DIYでできる整備など、お役に立てる情報を発信していきたいと思います。もちろんレーサーならではのライテク記事も執筆していくのでおたのしみに。
【愛車たち】
SUZUKI RM-Z250,HONDA CR125,SUZUKI RM80L
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