はじめに
転んだり、立ちゴケしたり出来る傷や、キーホルダーなどの金属がぶつかって出来る傷、
傷には様々な種類があります。
傷がつくと表面のコーティング等が剥げて、サビの原因になったり、見栄えも悪くなったりします。
ここでは、塗装面、未塗装樹脂、透明プラスチック、金属についた傷を目立たなくする方法をご紹介します。
なお、今回ご紹介した補修方法を実践される場合は、自己責任でお願いいたします。
1.「塗装面の傷」を目立たなくするには?
塗装断面は大きく分けると、
- クリア層
- 上塗り塗装層
- 下地塗装
の3つの層で構成されています。
塗装面の補修方法は、傷の深さがどこの層に達しているかで変わってきます。
ここでは、傷の深度ごとの補修方法をご紹介します。
爪で引っ掻いても引っかからない細かい傷にはガラスコーティング
爪が当たって出来たような浅く細かい傷には、ガラスコーティングのみで傷が消えることがほとんどです。
傷の周辺を広範囲に洗浄してから、ガラスコーティングを塗布します。
ガラスコーティングを狭い範囲でケチケチ使うと、仕上がりの光沢がちぐはぐになってしまうので、塗布する時は、広範囲に塗布するのがコツです。
爪が軽く引っかかる傷にはコンパウンド
傷に爪が引っかかるけれど、水をつけたら消えるレベルの浅い傷はコンパウンドで消えます。
コンパウンド初心者は油性がおすすめ
コンパウンドとは研磨剤のことで、水性と油性があります。
コンパウンドに慣れていない人は、研磨力の弱い油性コンパウンドの使用をおすすめします。
油性コンパウンドの成分には、主に研磨剤と溶剤が含まれています。
研磨剤で傷ついた表面を滑らかにすると同時に、溶剤が細かい傷に入り込み、傷を目立たなくする効果があります。クリア層をきれいに磨いていくイメージです。
磨き過ぎに注意
コンパウンドは、ヤスリの工程とおなじで、粗い研磨剤から細かい研磨剤へ段階的に使うことで、きれいに仕上げることが出来ますが、磨きすぎると、クリア層から塗装層まで削ってしまいます。磨き過ぎには注意しましょう。
コンパウンドは細目から使おう
コンパウンドの粒度は主に粗目、中目、細目の3種があれば、使い分けてきれいに仕上げることができます。
ただし、塗装面を磨く時は、一般的なヤスリとは逆に、最も粒子が細かい「細目」から使うようにしましょう。
なぜなら、粗目⇒中目⇒細目の順で使用すると、塗装面を必要以上に深く削ってしまう可能性があるからです。
まず、細目から使って磨き、それでも傷が消えなければ、中目、粗目の順番で、慎重に磨きましょう。
コーティング剤で深い光沢に
コンパウンドで傷が消えたら、コーティング剤で表面を保護しましょう。
表面の保護に、ワックスでも良いですが、コーティング剤に比べて被膜の持続性も短いため、こまめなメンテナンスが必要になります。
コンパウンドが使えない塗装面(つや消し塗装はNG)
マット(つや消し)塗装には使用できません。マット塗装にコンパウンドを使うと、表面がツヤツヤになってしまいます。
【注意】未塗装樹脂にもコンパウンドは使えません
コンパウンドは、未塗装樹脂の素材には使えません。使うと未塗装樹脂の細かい隙間にコンパウンドが入り込み、黒い樹脂が白っぽくなってしてしまうからです。1度塗ってしまうと、しつこく残ってしまいますので気をつけましょう。
塗装下地まで達した傷にはタッチペン・タッチスプレー
塗装面を超えて下地まで到達した傷には、タッチペンやタッチスプレーを使います。
タッチペン(小さい傷)
タッチペンは、ピンポイントに塗ることが出来て、なおかつ塗料が風で飛んだりする心配もありません。
塗布前の準備
タッチペンで塗装する前に、必ず傷口を脱脂しましょう。傷口に油脂が残っていると、塗料が剥がれやすくなってしまうからです。
脱脂にはシリコンリムーバー(スプレー)をかけて、キムワイプやきれいな布で拭き取りましょう。
3~5回重ね塗り
タッチペンでなるべくたっぷり塗りましょう。乾くと塗料は肉やせしてしまうので、3-5回は重ね塗りしていきます。乾いたら、塗っての繰り返しをします。
細かい傷には、つま楊枝を使うとキレイに塗れます。
コンパウンド(細目)で研磨
乾いた状態で塗料が傷口より少し盛り上がるくらいまでになったら、傷口周辺を傷ギリギリまでマスキングテープで囲い、盛り上がった部分をコンパウンド(細目)で削っていきます。
マスキングを傷から広めに取っていると、本来削らなくて良い傷周辺のクリア層まで削ってしまうことになるので、なるべく塗った部分だけ露出するようにマスキングしましょう。
マスキングテープは研磨で剥がれ、研磨範囲が広がってきます。
面倒ですが、その都度マスキングテープを張り直して地道に進めていきましょう。
仕上げスプレーで表面を保護
最後に、仕上げスプレー(クリア)を傷及び周辺に吹き、塗装部分を全体になじませて完成です。
タッチアップスプレー(広範囲の傷)
タッチペンでは塗装面が広すぎる場合に、タッチアップスプレーを使います。
タッチアップスプレーの使い方はタッチペンとほぼ同じですが、スプレーの扱いが慣れていない人にとっては、難易度高めなので、板金塗装等のプロにおまかせしましょう。
ステッカーで目隠しする
傷隠し用のデザインステッカー等を貼り、傷を目立たなくする方法です。
傷口を洗浄・脱脂後に貼り付けます。
傷口に空気が入ってしまう時は、薄めた石鹸水を傷口に塗り、石鹸水を押し出すようにシールを貼り付けるとキレイに貼れます。
2.「未塗装樹脂」の傷を目立たなくするには?
スクーターのステップ部分や泥除けなどに使われている黒いプラスチック部分が未塗装樹脂です。
未塗装樹脂の傷を目立たなくするには、以下の方法があります。
浅い傷の場合は?
研磨+塗装が最強
傷を400~1000番のヤスリで、粗目から細目まで使い、目立たなくなるまで研磨します。
研磨後、1度洗浄・脱脂をしてつや消し黒スプレーで塗装します。経年劣化で白化した場合にも使えます。
塗装することで、紫外線や有害物質からの影響を受けにくくなるため、未塗装樹脂パーツの寿命が伸びます。
未塗装樹脂の塗装に関しては、こちらをご参考ください。
研磨+ガラス系コーティングもおすすめ
傷が目立たなくなるまで、ヤスリがけをして目立たなくさせましょう。
400~1000番のヤスリを粗目から細目まで使って削ります。
傷が目立たなくなったら、仕上げにガラス系コーティング剤を塗布します。
ガラス系コーティングすることで、未塗装樹脂に残った細かい傷にコーティング剤が入り込み、黒ツヤを長期間持続させます。
効果は半年~1年くらいなので、定期的に塗る必要があります。
深い傷の場合
傷をパテ等で埋めてからヤスリがけします。
最後につや消し黒で塗装することで、新品に近い風合いに戻すことが出来ます。
3.「透明プラスチック部分」の傷を目立たなくさせるには?
ウインドスクリーンやヘルメットシールドの傷には?
粗目、中目、細目(液体コンパウンド)で磨きます。
きれいなスポンジ等にコンパウンドを少量付けて磨居ていきます。
磨く方向は円方向と縦横方向を交えて行うと、まんべんなく磨けます。
粗目や中目では透明だったスクリーンが半透明になってしまいますが、細目できれいな透明に戻るはずです。
ヘルメットシールドやショートのウインドスクリーンくらいの面積なら手で磨けますが、上半身全体をカバーするような大型スクリーンだと、手作業だけではかなり大変です。
広範囲の時は、電動ポリッシャーの助けを借りましょう。
4.「エンジン・マフラー」の傷を目立たなくするには?
エンジン・マフラーの傷は次の方法で目立たなく出来ます。
傷表面のサビ取り、洗浄・脱脂をした後、マフラーパテを傷口に埋め込みます。マフラーに穴が空いた場合は、付属のセラミッククロスを穴が塞がる大きさに切り、パテで埋め込み、穴を塞ぎます。
マフラーパテが完全に固まったら、ヤスリがけ(耐水ペーパー400番程度)をして、形を整えます。
塗装以外の部分をマスキングテープや養生テープ、ビニール等で覆い保護します。
耐熱ペイントで塗装(シルバー、ブラック、つや消しブラック等)します。薄く塗って乾かしながら重ね塗りを2~3回行います。
完全に乾燥した後、耐熱ペイントを塗ったパーツを180~200℃で20-30分加熱します。加熱することで、耐熱ペイントが完全に硬化します。
部品が小さければオーブン等で、大きければ、バイクに装着して走行することで硬化させます。
5.「カウル(ABS素材)の割れ」には?
ABS素材に限って、割れを直すことが出来ますので、お試しください。
アクリサンデーで補修できます。
ABSの接着面を溶かして「溶着させる」ので、強力に接着できます。
接着後、硬化が完了するまで24時間かかるので、接着後は1日空けてから走行しましょう。
最後に(傷は消えてもパーツは劣化している)
傷が目立たなくなると、「なおった」と思ってしまいがちですが、
実は、傷ついたパーツの性能は確実に下がっています。
例えば、ウインドスクリーンやヘルメットシールドの表面の傷は、コンパウンドで研磨することで、目立たなくなる代わりに、UVカット等の表面加工がなくなってしまったり、削ることでよりひび割れしやすくなったり、というリスクも秘めています。
また、タッチアップ等に使われている塗料は、純正の塗料とは違うため、ガソリンなどの有機溶剤に溶けやすいとも言われています。
傷の場所や程度にもよりますが、「傷は補修しておしまい」ではなく、「傷ついたパーツは確実に劣化している」ことを頭の片隅に留めておき、補修したパーツに何かしらの不具合があったときは、ためらわずに新品と交換しましょう。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
投稿者プロフィール
-
【チャリダーからライダーへ】8年前、自転車整備の延長で、ほぼ一人でメンテできるスーパーカブ110(ja10)と出会い、世界が広がる。
【スーパーカブ】走行距離9万キロ。試行錯誤のメンテで失敗(エンジン焼き付き)もあるが、不調から回復するカブから元気をもらっている。
東京生まれ。沖縄在住25年。50歳で人生初の脱サラ。2023年からライターとして活動。「自分で直せる」を皆さんにお伝えできたら嬉しいです。
最新の投稿
- アイテム2024年8月2日ライダーの必需品!おしゃれなバイクキャップと紛失対策!
- コラム2024年6月11日ヤフオク・メルカリの闇!?フリマアプリで中古バイクを買う時の注意点とは?
- コラム2024年6月3日島人ライダーが厳選!バイクで行ってほしい『沖縄の道の駅』6選
- メンテナンス2024年5月29日【定期点検】バイクの12か月点検は「絶対やった方が良い!」その理由を解説