はい!元バイク屋のフォアグラさんです、こんにちは。
さて今回は、バイクを3万kmで壊してしまう方法を解説します。バイク屋さんで働いていると3万kmでもひどい状態だなと思うものや、10万km超えでもまだ売り物になるかもと思えるものがあります。
ではどのように扱われたら、たったの3万kmでダメにしてしまうのでしょうか?
その扱い方をあえて知ってこれを回避する方が、10万kmを超えても良好なコンディションを保つ方法よりも簡単です。
というわけで今回は3万kmでバイクをダメにする方法について解説します。
まず最初に
すぐダメになってしまったバイクの共通点という話に入る前に、事前にお断りをしておきます。そもそもこの「ダメになってしまう」「壊してしまう」という表現は非常に曖昧な表現です。
この記事では分かりやすく「ダメにしてしまう」という表現を使いますが、意味合いとしては調子の悪いバイクになってしまう、修理が必要になってしまうという解釈をしていただければと思います。
では本題に入りましょう。
オイル交換をサボる
すぐダメになってしまったバイクほぼ100%に共通していること、それは油脂類の交換を怠っていたことです。これはおそらくどのバイク屋さんに聞いても共通した見解でしょう。
言うまでもなく、最も重要なのはエンジンオイルの交換です。
車種にもよりますが、メーカー推奨の交換サイクルは6,000kmや1万kmなどと、一般的にバイク屋さんが推奨しているオイル交換よりも長めに設定されています。これは以前の記事で解説しましたが、決してバイク屋さんがオイル交換を頻繁に行わせて儲けてやろうと、悪どい考えをしているわけではありません。シビアコンディションと呼ばれる過酷な使用下で、かつ低価格のエンジンオイルを使用していたとしても、3,000kmで交換していれば問題が起こるとは考えにくいからであると自分は考えています。
またオイルは早く交換しても、経済面以外でのデメリットは何もありません。
やはり短命で終わってしまうバイクというのは、オイルをまともに交換されていないケースが多いです。そんなバイクのオーナーは、前回のオイル交換からどのくらいの期間が経ち、どのくらいの距離を走ったか覚えていないのです。ですので自分はやはり、原則3000kmでの交換をお勧めしています。また3000kmに達しなくとも、できれば半年に1回、少なくとも1年に1回くらいは交換してあげたいです。
使用するオイルは2輪用の規格を通っていて粘度が合っていれば、安い鉱物油でも構いません。日本で売られているエンジンオイルで、規格をパスしているものであれば問題ありません。ただその中でも、自分は低価格でも比較的性能の高いグループ3と呼ばれるオイルが良いと考えています。どうしても不安ならメーカー純正オイルを選べば間違いありません。
またエンジンオイル以外にも油は使われています。ドライブチェーンやワイヤー類、リンク部、ベアリングなどです。こういった部分への注油というのは非常に重要で、油分不足により摩耗が早まり、寿命が縮まります。動作が渋くなって操作性が低下するだけでなく、摩擦の増大によりフリクションロスも発生するため、実質的な性能の低下にもつながります。エンジンオイルだけでなく、各部のグリスアップも忘れずに定期的に行うようにしましょう。
湿気に無頓着
ではバイクの保管環境について解説をします。すぐダメになるバイクは結構な確率で野ざらしです。野ざらしとまでは言わずとも、保管状況が悪く、車体の下部が錆だらけであることが多いです。
「自分のバイクは屋内保管だから大丈夫」「高級バイクカバーを使っているから大丈夫」なんてタカをくっていませんか?確かに屋内保管や高品質なバイクカバーを使用しているのであれば、ある程度は安心ですが、実は意外と見落とされていることがあるのです。それは湿気です。
ご存知のように錆はバイクの大敵であり、寿命を大きく縮めます。この錆を発生させないためには湿気の対策がマストです。この湿気対策のために、ガレージにエアコンを設置している人もいるくらいなのです。
濡れたら乾かせ
まず基本的なことですが、雨に濡れてしまった時はしっかり拭き取って乾かすということ。これだけでも全然違います。
バイクを大事にしたい、長持ちさせたいという意識が高い方なら、雨に濡れた後はしっかり洗車をするというのも良いと思いますが、この洗車の後も、しっかり拭き取りや水切りをしてください。バイクカバーをかけるのは、完全に乾いてからにしましょう。
カバーはバイクが冷めてから
また、車体がまだ温かいうちにカバーをかけるのもアウト。エンジンやマフラーの温度でカバーが溶けなければいいんでしょ?と思われるかもしれませんが、もう少し待ってほしい。カバー内に熱がこもり、外との温度差によって結露が発生してしまいます。ですのでしっかりとエジンやマフラーの熱が冷め切るまで、カバーをかけるのは我慢しましょう。
カバーそのものも大事
さらにカバーそのものの機能も大事。よく厚手であればあるほど良いと考えている人も少なくありません。厚手であればあるほど通気性は当然悪くなる傾向にあり、重量も重くなるので、カバーをかけること自体が億劫になって、そもそもカバーをかけなくなってしまったり、カバーそのものの重さにより風でこすれて、クリア塗装にダメージを与えることもあります。
また薄くても、ビニールのような安いバイクカバーはそもそも湿気さえも通さず、蒸れてしまって最悪です。ですので自分は、ほどほどの厚さの物で、ベンチレーション機能が付いている物をお勧めしています。決して高級品である必要はないと思っています。
自分は5000円以下くらいの予算で、1年または2年程度で買い換えています。現在使用しているのは、程よい厚さで撥水加工が施されていて、UVカット機能もあり、ベンチレーション機能もついている、アクティブウィナーという日本のメーカーのものです。正直、特別優れた製品とは思っていませんが、価格と機能、気軽に買い替えられるという意味で気に入って使っています。強いて不満を上げるのであれば色が黒なので、日焼けして色が抜けやすいということくらいでしょうか。
湿気の溜まりにくいバイクカバーを使うだけでなく、湿気対策として、バイクカバーをかける前に毛布をかけるというのも有効ですが、雨が染みやすいカバーだと、かえって毛布が濡れてしまい本末転倒です。
安いバイクカバーで良いとは言いましたが、安すぎて雨が染みてくるようなものや、ビニールのように湿気を全然通さないものはお勧めしません。そして屋内保管の湿気対策についても話をしておきましょう。
室内保管時の裏技
屋内保管であったとしても、200万円や300万円もするような高級車や、希少な旧車であれば、さらに対策をしても良いかもしれません。
ガレージのように、その場で長時間の整備を行ったりするのであればエアコンの設置がおすすめですが、バイクをただ保管するだけであれば、エアコンを取り付けるのはお金も分かりますし、ちょっと大げさです。そこで自分が今実際に使用しているのが除湿機です。時々水を捨てる手間はありますが、広さ次第では除湿機だったら数千円から購入できますので導入しやすいと思います。
湿気以外にも気を付ける事
また湿度以外には、紫外線を防ぐということもとても重要です。バイクには金属以外にもゴム製のパーツが多く使用されています。ですのでゴム製のパーツには保護作用のあるスプレー、クレポリメイトなんかを吹いて紫外線対策をしましょう。Amazonであればバイク用品店なんかよりもだいぶ安く、500円前後で購入できます。
調子を悪くする一番の方法
1番バイクが調子悪くなること、それは長期間走っていないことです。
バイクに乗って走るというのはとても簡単なことのように思いますが、1番大事なこと、最低限のメンテナンス作業なのです。
やはりバイクは動かさないと、どんなに良いオイルを使ったところで、どんなに保管環境を整えたところで、きしみや錆が生じてしまいます。バイクという乗り物は、主に金属でできていますから当然ですよね。でもこれを意外と理解していない人が多いのです。
長期間乗らなかったバイクはガソリンタンクの錆や稼働部のきしみなどが発生し、走行距離は表記上1kmも増えていなくても、1万km走ったバイクよりも寿命が縮まっているかもしれません。
長期間走らないというのは、エンジンにとっても悪影響があります。
バイクは最後にエンジンを止めてから1週間くらいすると、オイルパンにエンジンオイルが落ち切ります。その時点ではまだ薄くエンジンパーツ表面に潤滑成分が滞留しているので大きなダメージにはなりませんが、さらに長期間エンジンをかけなかった場合は完全にオイルが落ち切ってしまって、エンジン始動時に大きなダメージを与えてしまいます。これをドライスタートと言います。
ちなみにこのオイルが落ち切るまでの期間は諸説ありますが、2ヶ月以上とされることが多いようです。
また、金属以外にもブレーキフルードや冷却水などの液体も劣化していきます。
特にブレーキフルードというのは吸湿性が高く、放置しているだけでも空気中の水分を取り込んでいきます。水分を多く含んだブレーキフルードは沸点が低くなってしまっているため、ブレーキ使用時の熱で沸騰し圧力を伝えられなくなってしまいます。これをペーパーロック現象と言って、突然全くブレーキが効かなくなってしまうので、めちゃくちゃ怖いです。
放置しているとこのような液物の交換などもおろかになりがちなので、最後にいつ交換したか記憶にない時は、念のために交換しておいた方が良いでしょう。ブレーキフルードも冷却水も一般的には2・3年くらい、車検のタイミングで交換することが多いとは思います。
まとめ
バイクは宝石や高級腕時計ではありません。丁寧に傷がつかないように大事に保管しておけば価値が下がらないというものではなく、むしろ価値は乗らない場合以上に下がってしまうこともあるのです。長期間動かしていないバイクは、本当に調子が悪いことが多いです。
単純に「走行距離が増える=バイクが傷む」と考えてしまう人が多いようです。確かに走行距離は中古車の市場価値を決める大きな1つのファクターではありますが、それは一般的にバイクの痛みの目安だとされているからです。
しかしそれはあくまで目安です。本当に乗らなければ、いくらメーターに表示されている距離は少なくても、本当にバイクが傷んでしまいます。
ということで、やはり時々エンジンをかけてバイクをきちんと走らせるということは、とても重要であるということご理解いただけたでしょうか?
この記事は下記の動画でも詳しく解説していますので、こちらもご視聴いただけると嬉しいです。
それでは今回も最後までご視聴いただきありがとうございました。
投稿者プロフィール
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元バイク屋のYouTuber。
バイクライフに役立つ情報を毎週配信。
メカの話やバイク購入アドバイスはもちろん、用品レビューやバイク屋裏話まで、バイク乗りなら誰もが気になるテーマばかり。
ちなみに中身はアラフォーのおっさん。
好物はサッポロ黒ラベルとキャベツ太郎だが、子どもができて以来、ふるさと納税で貰った無糖レモンサワーで節約している。
最近、血糖値と血圧を気にしているらしい。
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