SDGsの普及と共に、脱炭素社会(カーボンニュートラル)を目指す近年では、モーターやバッテリー技術の進展と共に、様々な乗り物の電動化が進んでいます。今回は、そんな電動モビリティー(EV)の中においても、自由度と進化が目まぐるしい2輪車であって、東京モーターサイクルショー2024に電動車両を出展しているメーカーさん(会社さん)を中心に、モーター開発者の話を直接聞いてきた筆者だからこその”話したくなるワンポイント”を交えながら、最新の電動バイクをご紹介していきたいと思います。
今回の取材では、主にInstagramでバイクの楽しさを紹介している@r3rieさんに同行していただけたので、それぞれのブースで跨りモデルなどもやってもらってしまいました。ちなみに、写真で着ているジャケットは、レディースサポートスクエア内で出展されていたJ-AMBLEさんが展開するブランド”Urbanism”の新作をお借りしてきたものです。
株式会社エスター(エネルジカ)
株式会社エスターは、国内ではあまり知られていませんが、世界最高峰の性能を持つパワフルかつタフな電動バイク、”energica(エネルジカ)”の輸入販売元です。所望する形状に加工しやすく、リチウムイオンバッテリーに比べて有害物質の含有量が少ないリチウムポリマーバッテリーを採用するEGOは、最高出力126kW(171馬力)、最高速度240km/hを誇り、市街地航続距離が420kmに達するといいます。
さらに、これだけの性能を誇りながら、登録は250ccクラスと同等な取り扱いとなっており、車検は不要とのことで驚きました。つまり、定格出力は、20kW以下という事なのでしょうか・・・?
一般的な電動バイクの航続距離が数十kmなのに対し、あまりにも航続距離が長いので、本当にこんなに走るのか?と尋ねてみたところ、巨大なバッテリーと、回生ブレーキ(モーターの駆動をオフにした際に、モーターを発電機として機能させ、バッテリーの充電を行う)の作用により、これだけの航続可能距離を実現しているのだそう。このため、高速道路を走行するよりも、市街地を走行するストップ&ゴーの方が航続距離が延びるというガソリンエンジンではあり得ない不思議な一面もあるといいます。
写真は、ESSEESSE9というネイキッドタイプの電動バイクで、最高出力は80kW(109馬力)、最高速度200kmを誇ります。急速充電を行うと30分から40分で充電が完了し、市街地航続距離が420kmというから、実用レベルと言えますよね。ただし、巨大なバッテリーを搭載した半面、車重が重くなってしまった(公表していない)という難点があるそうです。
しかし安心してください!このバイク、電動アシストでバック機能も付いているので、取り回しも安心ですよ!
株式会社コハクジャパン(Surron)
JNCCが主催するWEXに参戦する”Surron”の輸入販売元の株式会社コハクジャパンさん。写真のUltra Beeは、バッテリーを含む車両の総重量が88kgと超軽量で、最大出力12.5kW、最高速度90km/hを誇る本格的なオフロードバイクです。なお、定格出力は6kWなので、軽二輪の扱いとなります(定格出力1kWのLight Beeは、原付二種扱い)。
競技用車両としても使用されるこのバイク、長時間使用での弱点は熱ダレだそうで、バッテリーの発熱による出力抑制をどのように調整するかが競技でのキモになるのだそう。確かに、高回転での連続使用は、バッテリーやモーターに負担をかけるため、航続距離意外にもEVの課題の1つなのだなと感じました。
”Surron”の車両は、国内各地で試乗会などが開催されているため、日時や場所を確認の上試乗会に参加し、その乗り心地を試してみるのも良いのではないでしょうか。
TALARIA MIRAI
バーサティリティー(多様性)を求めて開発されたTalaria社の電動ダートバイクは、公道仕様モデルとして、原付1種扱いのXXXと、原付2種扱いのMX4がラインナップされています。いずれもパワーユニットには、ローター部分に永久磁石を埋め込んだ高性能なIPMモーターを搭載しているそう。IPMモーターとは、ローターに永久磁石を埋め込む事で、磁界を作り出すための二次電流が不要となり、高効率かつ高精度な速度(回転)制御が可能となるモーターと言われています。さらに、発熱量も小さいため、放熱要素を小さくする事ができ、結果としてモーター全体の小型化を図る事ができるそうです。
写真のMX4は、最高速度が72km/hで、航続距離が約85kmであり、回生ブレーキが4段階で調整可能とのこと。バッテリー重量を13kgとしながらも、バッテリーを含む車両重量を69kgとしている超軽量バイクである。
回生ブレーキの効き具合を調整できるのは、ギアを使ったエンジンブレーキのフィーリングに近く、内燃機関(エンジン)を搭載したバイクに慣れている方にも馴染みやすい感覚かもしれませんね。
FELOテクノロジー/スピードマスター
フューチャー、ファンクション、ファンといった3つの基本理念を掲げるフェローテクノロジーのバイクは、見るだけでも楽しくなるくらい遊び心溢れたものが多いです!特に写真M壱は、Hondaのモトコンポにインスパイアされ、昨年のコンセプトモデルから、市販用に進化を遂げていました!
このM壱は、原付1種扱いのパワートレインを備えると共に、専用の出力用コネクターを接続することで、ポータブル電源としても利用する事ができるようになるという特徴を持ちます。レジャーシーンに持ち込んだ場合には、移動に、給電にと、一石二鳥のEVとなりますね!ちなみにM壱は、着脱可能なリチウムイオンバッテリー(48V、20Ah)を搭載し、スマートフォン換算で約73回分もの充電が可能になるそうです。
また、FW-03は、原付2種扱いとなる遊びに特化したバイクで、駆動輪をキャタピラに変換する事でスノーモービルのような使い方も!さらに、最長航続距離が160kmと、レジャーバイクの域を超えた実用性も備えています。
株式会社MSソリューションズ(XEAM)
XEAMは、株式会社MSソリューションズが2017年に立ち上げた電動バイクセレクトブランドです。このブランドの特徴は、取扱車種が多く、いずれもユニークなデザインの車両であるという事だと感じました。
写真のTS PRO STREET HUNTERは、定格出力1kWの原付2種扱いの車両であり、2個のバッテリーを搭載することができます。バッテリーの搭載数により、航続可能距離はもちろん、最高速度も変化するそうです。具体的には、バッテリー1個搭載時には、最高速度75km/h、航続距離70kmであるのに対し、バッテリー2個搭載時には、最高速度85km/h、航続距離140kmとなると言います。
なお、取扱車種が多いと書いたように、TS PRO STREET HUNTERには、車両ベースを共通としつつ、外観をよりネイキッドタイプに寄せたTS PRO WANDERERも存在します(トップ写真の白い車両)。
株式会社ハチハチハウス
エリートマックスは、株式会社ハチハチハウスが取り扱う電動キックボード、電動スクーター、及び電動アシスト自転車のブランドです。電動キックボードは、免許不要で乗る事ができる車種を含み、最高速度は20km/h以下に設定されています。
バッテリーとモーター、車輪、及び保安部品といった必要最低限の構成要素から成り立つこうしたEVは、多様性に富んだ形態も魅力の1つです。大径タイヤを備えて安定した走行性能を誇る車種を選ぶか、よりコンパクトで軽量な車種を選ぶかなど、利用シーンを想定した車種選びが重要になってきますね。
なんといっても、小型軽量であるという点が特徴で、最も軽い車種は、僅か16.5kgと、一般的な電動バイクのバッテリー重量と同等な車重とされています。折り畳み可能な車種も多く、持ち運びも容易な事から、レジャーシーンなどでの活躍も期待されますね。
その他、電動バイク出展メーカー
カワサキモータースジャパン
写真のZ7 Hybrid、Z-e1に加え、NINJA 7 HYBRID、NINJA e-1をラインナップするカワサキモータースジャパン。筆者もNINJA e-1には試乗させていただきましたが、やはり航続距離がネックと感じていた点からすると、電動のみにこだわらず、ハイブリッドという形式を採用したバイクが、実用性の面で有利に働きそうな気がしています。
ビー・エム・ダブリュー株式会社(BMW)
写真のCE04は、BMW Motorradを代表するEVの1車種であり、筆者も少し乗らせていただいた事があるのですが、出足の加速感がすさまじいバイクです。着脱不可なバッテリーであるため、巨大かつ大容量なバッテリーを搭載することができ、その航続距離はMax130kmと公表されています。充電が200V電源であるという点はネックとなりますが、インバーターなどを利用すれば、家庭用電源からの充電も可能となります。
まとめ
いかがでしたか?こうして見るとEVも、レジャーで活躍するモデルから、本格的なレースへの参戦を見越したモデル、通勤、通学に適したモデル、そして、超高性能なモデルまで、ずいぶんと多様性に富んだモデルが市販されるようになりましたよね。充電時間や航続距離などの課題はあるものの、我々の生活圏内でも見かける機会が多くなったEVは、今後、実用性をさらに高められていく事が期待されますね。
投稿者プロフィール
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BMW F900XRとDucati MonsterS2Rでチョイノリからロングツーリング、サーキット走行まで楽しむリターンライダー。
リターン後のツーリングは首都圏内での日帰りをメインとして、美味しい物や良い景色を堪能している。
ご当地"グルメ調査隊"と称してマスツーリングの企画運営なども手掛けることから、バイクの様々な楽しみ方を伝えて行く事を目標としている。
若い頃は、日帰りで埼玉-青森間を往復したことがある、 "自称"やれば出来る男。
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