安全運転には欠かせないと言われているリヤブレーキ。
「わかってはいるけれど、ついついフロントブレーキばかり使ってしまい、リヤブレーキが上手く使えない。」
「ライテク本を読んでも今一つ分からない。」
こんな悩みを持っている方、多いのではないでしょうか?
特にサーキットやオフロードコースなど、公道以外でバイクに乗る方はリヤブレーキの使い方は気になるところですよね。
そこで今回は“モトクロスライダーが教えるリヤブレーキの使いかた”を解説していきます。
元モトクロスライダーのヨシキが、実際に使えるリヤブレーキのテクニックを紹介。これでもうリヤブレーキの悩みとはさよならです。
リヤブレーキの役割
そもそもバイクのリヤブレーキは車体を減速させることはもちろん、車体をコントロールする役割があることをご存じでしょうか。
リヤブレーキを使いこなすには、まずリヤブレーキの役割を理解するところから始めていきましょう。
バイクを減速させる
まず、リヤブレーキの役割はバイクを減速させることにあります。リヤブレーキはフロントブレーキに比べて制動力が低いと思われがちですが、しっかりと効かせればリヤブレーキだけでも十分にバイクを減速させる力があります。
ではなぜリヤブレーキだけではバイクは止まらないのか。それは加重の掛かり方にあります
直線でバイクを走行中、減速のためにブレーキを掛けると、慣性の法則に従ってバイクの重心は前に移動します。
すると、リヤのタイヤは加重を失い、グリップ力が低下。この状態では、いくらリヤブレーキをかけてもタイヤの摩擦力が低く、バイクは減速してくれません。
これがリヤブレーキが止まらないといわれる理由です。
つまり、減速時に重心が前に移らなければ、リヤタイヤのグリップが失われずリヤブレーキが有効に機能するというわけですね。
重心を後ろに持ってくる一番簡単な方法は、減速時だけ乗車ポイントを後ろにずらす乗り方。
少し腰を後ろにずらすだけでブレーキングが劇的に変化するので、是非試してみてくださいね。
姿勢を制御する
リヤブレーキのもう一つの使い方はバイクの姿勢制御。カーブの侵入速度が速すぎてカーブを曲がり切れなさそうなときや、狭い道での低速走行時はリヤブレーキを効果的に使用することで安全に走行できます。
バイクの免許の試験であった一本橋を覚えているでしょうか。一本橋ではリヤブレーキを引きずりながら低速走行し基準タイムをクリアするのがセオリーだったはずです。
これこそまさにリヤブレーキでバイクの姿勢を整える使い方。
他にも、カーブでスピードを出し過ぎてしまったときに優しくリヤブレーキを掛けることでコーナーリングスピードを調整する使い方もあります。
【セルフチェック】リヤブレーキを正しく使えているかチェックしてみよう
とはいえ、正しくリヤブレーキを使えているのかどうかを自分で判断するのは難しいですよね?というわけでここからは自分でできるリヤブレーキを使えているかチェックを紹介します。
これから紹介する3つのポイントをチェックすれば、自分がどれだけリヤブレーキを正しく使えているか簡単に分かります。
それでは行ってみましょう。
ブレーキパットは減っているか?
まずはリヤブレーキパッドが減っているかチェックします。新品がどのくらいの厚みだったか分からない方は10,000キロ以上交換した記憶がなければ、ほとんど減っていないと判断していいでしょう。
リヤブレーキを使っていれば当然ブレーキパッドが減っているはず。ほとんど減っていなければ、リヤブレーキをほとんど使っていないと思っていいでしょう。
リヤブレーキのポジションは適切か?
リヤブレーキのポジションが適切ではない場合も、リヤブレーキを正しく使えていない可能性があります。
リヤブレーキの正しいポジションは、バイクにまたがって土踏まずをステップに置き、足首が自然な角度となったときに少しブレーキペダルに足が触れる程度です。
これよりもペダル位置が高くても低くてもリヤブレーキの操作性は悪くなってしまいます。もちろん個人の好みによって多少ポジションが違う場合もありますが、大きく適切な位置から外れている場合は調整してみるといいでしょう。
リヤブレーキペダルのポジション調整方法
用意するのはスパナ2本。
ペダル後ろのナットを緩めて、ロッドの長さを変更します。
ロッドを引き出せばポジションが高くなり、ロッドを短くすればポジションが低くなります。誰でも簡単に調整はできるので、気になる方チャレンジしてみてもいいかもしれません。
リヤタイヤをロックできるか?
リヤブレーキを思いっきりかけてリヤブレーキをロックできますか?うまくロックできない人はリヤブレーキの踏み加減があまく、普段からあまりブレーキを使えていないかもしれません。
リヤブレーキをロックさせるには意外と強くリヤブレーキを踏まなくてはいけません。タイヤがロックするかどうかの微妙なタッチをコントロールできるようになれば、間違いなくブレーキの使い方上級者です。
但し、このチェック項目は、公道では危険なので挑戦してはいけません。サーキットか専用コースでチャレンジしてみて下さいね。
※ABS装着車はABSが作動するまで踏み込めばロックしているのと同じくらいの踏み加減になります。
【シチュエーション別】リヤブレーキの活用法
リヤブレーキについて概ね理解してところで、ここからはリヤブレーキの活用法を紹介していきます。
リヤブレーキを使って他のライダーの目を引くテクニックをマスターしていきましょう。
一般道
一般道、特に峠などのワインディングを走っているときに、カーブへの侵入速度が速すぎてしまった。こんな経験ありませんか?
こんなとき、コーナーリング中にリヤブレーキを使うと態勢を立て直すことができます。
既にカーブへ侵入し、マシンがバンクしている(寝ている)状態ではそれ以上バイクを寝かせて更に強く曲げることはできません。このとき、フロントブレーキを握ってしまうとハンドルが切れ込み、荷重が一気にフロントへ移動、転倒の原因となってしまいます。
そこで使うのがリヤブレーキ。オーバースピードだ!と気が付いた時点で少しだけリヤブレーキを掛けると寝ていたバイクが起き上がり始めます。そのまま一度バイクが完全に起き上がるまで優しくリヤブレーキをかけ続け、ニュートラルな状態になったところで再度バイクを寝かせます。
このとき、リヤブレーキを強く踏みすぎるとリヤタイヤがロックし、転倒してしまうリスクがあるので無理は絶対に禁物です。
一度バンクしたバイクを立て直すことで、減速と、適切なバンク角が得られるようになるので、オーバースピードで侵入してしまった場合でも安全にカーブを曲がることができます。
しかしこの方法はむやみに使うとハイサイドが発生する恐れもある曲がり方なので、練習はサーキットの走行会などで行うことをおすすめします。
林道
「林道で倒木を越えたときにフロントが上がり過ぎて怖い思いをした!」こんな経験ありませんか?そんな方はフロントが上がったときにリヤブレーキを踏んでみましょう。
するとフロントタイヤは上がり過ぎず、後ろへまくれる心配がありません。
立ち木が多く、道幅がせまい林道ではこういったテクニックを活用すると丸太越えセクションも難なくクリア。ライディングテクニックの幅が広がります。
モトクロスコース
路面のグリップが少ないモトクロスコースではリヤブレーキの使い方ひとつでタイムが一気に縮みます。
代表的なテクニックといえば、リヤタイヤがロックするかしないかのぎりぎりのタッチでシフトダウンをするとリヤタイヤのスライドをコントロールしつつ、コーナーへ侵入する技術。
このテクニックは何度も反復練習をしてブレーキがロックするかしないかの微妙なタッチを体に覚えさせるしか習得する方法がないのですが、一度できるようになればその効果は絶大です。
公道と違ってコースで練習できますし、直線で行えば転倒のリスクも少ないので、脱初心者を目指すモトクロスライダーさんにはぜひ試してみてほしい技術です。
【まとめ】リヤブレーキを使いこなしてバイクライフを楽しもう
リヤブレーキは上手く使いこなせば公道でもコースでも安全にバイクをコントロールすることができるようになります。
バイクを上手くコントロールできるようになると曲がる・止まるを高い次元でスムースに行えるようになり、いつものバイクライフがもっと楽しくなるはずです。
公道でしか乗らないライダーさんにとっては練習の場所が限られてしまいますが、良ければ一度コースに足を運んで、ライディングテクニックを磨いてみてはいかがでしょうか?
投稿者プロフィール
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元モトクロス国際B級ライダーのヨシキです。
趣味は林道探検、オフロードバイクでどんな山道も散策します。
今は整備士として活躍しているので、メンテナンス、DIYでできる整備など、お役に立てる情報を発信していきたいと思います。もちろんレーサーならではのライテク記事も執筆していくのでおたのしみに。
【愛車たち】
SUZUKI RM-Z250,HONDA CR125,SUZUKI RM80L
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