はい!元バイク屋のフォアグラさんです、こんにちは。
さて、バイクの販売をしていると、車種じゃなくて排気量を第一条件にバイクを選ぶ人もいて、その中で圧倒的に多いのが250ccという排気量なのです。
確かに250ccは車検を受ける必要がなく維持費も安く済みます。
でも多くのお客さんがこの250ccという排気量のバイクに対し、ちょっと都合をよく捉えすぎてしまっているように感じることが多々あります。
あらかじめお伝えしておきますが、この記事ではあまり知られていない250ccのネガティブな面もしっかり伝える内容となっています。とはいえ250ccのバイクに否定的なわけでは全然ありません。どんな排気量であっても、それぞれにメリットもあればデメリットもあります。ただ250ccの場合は、一般的にメリットばかりがクローズアップされがちで、あまりデメリットが意識されてないと感じているのです。
実際に250ccクラスのバイクを販売してきた自分の立場から、「こんなはずじゃなかった」と後悔することが無いよう、250ccクラスのあまり意識されていないデメリットについてもしっかりお伝えしておこうと思います。もちろん250ccだからこそ楽しめる、大型車では感じられない楽しみ方についても紹介するので、最後までお付き合いください。
250ccバイクの法的立ち位置と、なぜ車検が必要ないのか
250ccのバイクは「軽二輪」という分類、車で言う軽自動車のような立ち位置です。実際に今でこそ軽二輪の登録は、自動車や車検の必要なバイクと同じ陸運事務局が窓口となっていますけれども、令和元年までは軽自動車と同じ軽自動車協会で行われていたのです。
この軽二輪というのはあまり聞き慣れない言葉かもしれませんが、これは125ccを超え250cc以下の排気量のバイクのことを指します。ですので150ccのスクーターやアジア製の200ccなどのバイクも同じ分類になります。このクラスは車検を受ける必要がないにもかかわらず高速道路を走ることができたり、2人乗りをすることもできるのが特徴で、まさにイイトコ取りなわけですね。
それに対し250ccを1ccでも超えてしまうと「小型二輪」という分類になってしまいます。
小型と言われると小型自動二輪免許のイメージから125ccを想像してしまうかもしれませんけれども、400ccでも1300ccでも車検証の分類では小型二輪となります。「小型自動二輪」「普通自動二輪」「大型自動二輪」というのは、あくまで免許制度上の分類なのです。
排気量(cc) | 0~50 | ~125 | ~250 | ~400 | 400超 | |
道路交通法 | 車両の区分 | 原動機付自転車(原付) | 普通自動二輪車(普通二輪) | 大型自動二輪車(大型二輪) | ||
免許の種類 | 原動機付自転車免許(原付免許) | 普通自動二輪車免許(小型限定) | 普通自動二輪免許(普通二輪免許) | 大型自動二輪免許(大型二輪免許) | ||
道路運送車両法 | 第一種原動機付自転車(原付第一種) | 第二種原動機付自転車(原付第二種) | 二輪の軽自動車(軽二輪) | 二輪の小型自動車(小型二輪) |
自動車の場合はどれも車検が必要ですよね?ではバイクの場合、車で言うところの軽自動車である軽二輪だけが、なぜ車検がないという優遇されているのでしょうか?
実は昔は軽自動車も車検を受けなくて良かったのですが、その後車検が義務化されました。その際に軽二輪については義務化を見送り、そのままずっと現在まで至るというだけのことなのです。
正直、自分は車検そのものに大した意味はないと思っています。
自分で車検を通したことがある方ならわかると思いますが、チェックする項目はヘッドライトの光軸だったり、ブレーキがちゃんと効いてるかどうか、スピードメーターの精度は適正な範囲内かといったことくらいで、車やバイクのコンディションなんて関係ないのです。
それなら「そんな意味のないものにお金を使わなくてもいい250cc は最高じゃん」と思ったあなた、決してそういうわけではなく、落とし穴があるのです。
軽二輪の維持費について
車検が無いから維持費は安い?
車検がないということは当然維持費が安く済むというイメージを持っている方が非常に多いです。もちろんそれは事実であって決して間違ってはいません。ただおそらく期待しているほど車検のある400ccクラスのバイクとの差はないのです。
バイクの車検の費用は、例えば大手のバイク用品店である2りんかんで、何も替える必要がなければ、税込み価格で46,950円(2023年2月現在)とのことです。ではその内訳を見てみましょう。
例えば法定点検料。250ccだからといって点検を受けなくていいわけではありません。当然400ccや大型と同様にトラブルは発生します。大型車と比べると250ccの方が若干点検にかかる費用は安くなると思いますが、その差はせいぜい2・3割です。
また自賠責保険も共通して必要です。
車検が必要なバイクは24ヶ月で9,270円、軽二輪は9,770円(*2023年4月以降は小型二輪が24ヶ月で8,760円、軽二輪は8,920円)。むしろ軽二輪の方が若干高くなっています。軽2輪は加入期間を長くまとめて契約してしまえば1年あたりの保険料が割安になるので、一概に軽二輪の方が高いとは言えませんが、あまり大きな差ではないですよね。
こうして考えてみると、実は2りんかんの車検にかかる費用46,950円のうち、33,470円は点検料と自賠責保険料なのです。
軽二輪であればこの33,470円よりは多少安くなりますけれども、46,950円の車検代が2年ごとにまるまる浮くというわけではないことを理解してください。
点検の重要性
でも「点検なんて受けなくてもいいんじゃないの」って声も聞こえてきそうですが、車検が必要な小型二輪よりも、むしろ軽二輪の方が点検の必要性は高いのです。なぜなら一つ一つの部品が大きく作られている400ccや大型車よりも、250ccの方が単純に耐久性が低いからです。
そもそも物理的な話で、同じ材質であれば、物というのは大きい方が丈夫で耐久性があります。
また同じ名前のバイクであったとしても、250ccのモデルはアジア製、大型のものは日本製といった差があったり、一つ一つのパーツも大きなバイクほど高価なものが使われている傾向があるので、そもそもの品質に差がある場合もあります。
さらにバイクの場合は特に顕著なのですが、小さい排気量のバイクと大きい排気量のバイクは、エンジンの常用回転数が違います。
同じ100km/hを出すために250ccであればエンジンを1万回転まで回さなければいけないところ、大型車であれば4,000回転で達してしまうわけなので、同じ走行距離であっても、エンジンや車体の受けるダメージというのは当然異なってきます。ですので車検が必要な大きいバイク以上に点検の必要性が高いと言えますね。
しかし残念なことに、車検がないのを良いことに、点検をスルーして雑に乗られている250ccのバイクというのはたくさんあります。自分も買取り査定を行っていましたが、本当に軽二輪は状態が悪い個体が多かったです。
そんなバイクは当然危険であるだけでなく、将来的な買取り査定額も安くなってしまいますが、当たり前ですよね。
結局払ってこなかった点検の費用や整備にかかる費用というのは、手放す時に差し引かれてしまうので一緒なのです。それなら自分自身が安心して長く乗るためにも、常日頃から多少お金を使って点検整備、必要があれば随時修理をしておくという方が良いと自分は考えます。
任意保険について
さらにもう一つネガティブな話があります。
任意保険は4輪の場合、細分化された車種ごとのリスクに適切な保険料というのが設定されています。しかしバイクの場合は125ccより大きいが小さいか、つまり原付かそうでないかしか分類がありません。
そう考えると、正直250ccの保険料は割高感があると言わざるを得ません。
軽二輪を買う時の注意点
どうでしょう?車検がないから維持費がすごく安くなるというのは幻想だとお分かりですか?
そうなんです。おそらく皆さんが思っているほど400ccとの大きな維持費の差はないので、維持費が安いから250ccにするという選び方はやめた方が無難です。その好きになったバイクがたまたま250ccだったとか、軽いバイクが欲しいから250ccを選んだという買い方なら後悔はないでしょう。
また中古車の場合は、先ほどお伝えしたように車検がない分、ロクに点検も受けておらず放置されていた車両も多く、エンジンオイルすらまともに交換されてないような個体も少なくないのです。
車検を受ける義務があるクラスであれば、最低限点検は2年に1回行われていますけれども、中古車の軽二輪クラスは相対的にリスクも高いと言えます。
維持費が安いからとか、車検がないから点検に出す必要がないから、こんな理由で250を選ぶと後々後悔する可能性が非常に高くなるのでお勧めしません。多少維持費はかかりますが、400ccが欲しいと思ったら400ccを選んだ方が、きっと幸せなバイクライフを送ることができると思いますよ。
250ccならではのメリット
では最後に、250ccならではのメリットについても触れましょう。
250ccとは一括りに言っても、価格も性能も全然異なります。
例えば街中をトコトコと気軽に走りたい、車体も安く抑えたいという方に大人気だったのがスズキのボルティー。
当時の新車価格も30万円を切るなど、非常に話題になった人気の1台でした。
現在中古バイクの相場はかつてないほど高騰していますが、それでも20万円以下で購入できる個体というのは結構出てきます。
逆に現在の250ccで最も高性能と言えるのが、カワサキのZX-25R。
ボルティ-と同じ排気量ではありますが、車体価格も当時のボルティーの3倍以上となる93万5000円。当時とは当然物価の差もありますが、それを差し引いても、ZX-25Rを安いからという理由で購入する人はまずいないでしょう。車検がなくて維持費が安いからと言うのではなくて、このバイクに乗りたいからという理由で買うはずです。
というのも、200万円の大型スポーツバイクでも体感できない、このバイクにしかない楽しみ方や爽快感があるからです。
今、新車で購入できる唯一の250cc4気筒のバイクであり、レッドゾーンはなんと17,000rpmという超高回転型のエンジンを搭載しています。
大きな排気量のバイクで10,000rpmまで回してしまったらとんでもない速度域に達してしまいます。それでは回して楽しむとか、高回転まで回す爽快感なんていうのは、とても感じることができません。
そう!小排気量だからこそ回すことができる領域、爽快感、楽しみ方というのがあるのです。高回転をキープしたままワインディグを楽しむこともできます。
まとめ
日本の道路は狭く、速度制限も厳しいですよね。そんな中でも250ccであれば気軽に楽しめる。ポルティーのような性能が高くないバイクだって軽量でコンパクト、街乗りではおしゃれで映えます。大型のいかついバイクもかっこいいのですが、軽快にストリートを流すことができるバイクもおしゃれでいいですよね?
投稿者プロフィール
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元バイク屋のYouTuber。
バイクライフに役立つ情報を毎週配信。
メカの話やバイク購入アドバイスはもちろん、用品レビューやバイク屋裏話まで、バイク乗りなら誰もが気になるテーマばかり。
ちなみに中身はアラフォーのおっさん。
好物はサッポロ黒ラベルとキャベツ太郎だが、子どもができて以来、ふるさと納税で貰った無糖レモンサワーで節約している。
最近、血糖値と血圧を気にしているらしい。
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