今回の体験は友人から、「こんなのがあるみたいだよ!面白そうだよね!?」と、埼玉県のバイクショップ『OVER LAP Tow wheel』さん(以下、OVERLAP)のホームぺージが送られてきたことがきっかけでした。
友人がなぜこのシミュレーターについて知ったのかというと、SNSでたまたま見かけたのがきっかけだったらしいのです。後で判った話ですが、代表の吉田社長は職人気質で、こういったメディアの取材等は基本受ける事が無く、今回のシミュレーターについてもはじめて取材を受けてくれたのだそう!
詳細は伏せますが、今回の体験記事は、偶然と運とが重ね合わさった事で成立しています!
これから体験したいと思う方はもちろん!ちょっと興味を持った方にも是非、MotoGPオフィシャルライディングシミュレーターがどんなものなのかを知っていただければと思います。
事前インタビュー

ホームページにも記載がありますが、シミュレーター体験には準備や事前説明があるため、予約時間の10分前には到着するのがマストです。
今回は事前に少しお話を伺いたいと思い、30分ほど前に到着しました。
第一印象とお店の空気
お店でお会いした吉田社長の第一印象は、正直なところ
‟THE職人”というものでした。
ただそれは当然のこと。
ここは遊び半分で来る場所ではなく、ショップという仕事場であり、真剣に“練習”をするために用意されたスペースなのです。
吉田社長自身が長年ロードレースに携わる人間として、‟本気のトレーニング手段”として導入したシミュレーターだからこそ、体験といえども軽いノリは歓迎されない――そんな空気を感じました。
日本でたった3台!イタリア製

ちなみに今回体験させていただいたMotoGPオフィシャルライディングシミュレーター『MOTO TRAINER』は、国内ではここ、OVER LAPにある3台だけという特別なものです!
それもそのはず、こちらのシステムは、吉田社長が独自輸入したもので、3台のうち、実際に稼働しているのはこの2台のみなのだそう。
システムはイタリア製で、具体的な価格は伏せますがとても高額なものです。
さらに、このシステムは電源が200Vであると共に、設置調整にも一日がかりとなるため、貸し出しとなると吉田社長の同行も必要となるのだそう。
このため、イベントなどでのために貸してほしいと安易に言われるがそんなに軽い話ではないと、少し冗談ぽく語ってくださいました。
導入目的は「練習」
この高価なシステムを導入した目的は何か…というのは、誰でも気になるところですよね?
実際にお聞きしたところ、答えは明確でした。ずばり、‟練習のため”なのだそう!
練習してもらいたいのは、タイムと向き合う上級者だけではありません。
むしろ、サーキット初心者や、これからサーキットを走りたい人にこそ使って欲しいとのお話でした。
‟サーキットは安全”と言われることもありますが、‟実際には危険!”ものすごく危険です!
だからこそ、基礎を身につけてから走ってほしいというのが、吉田社長のお気持ちなのだそう。
そういった意味では、サーキット初心者の私は、このシミュレーターの体験者にうってつけだったわけです(笑)
サーキット走行の基礎がしっかり出来ている人なら操作可能なのだそうですが、このシミュレーターを体験する人の8割から9割は、最初はまともに操作できないのだそうです。
それだけ、速く走るための基礎というのは難しく、そして重要なのでしょう。
ヨーロッパでの活用
ヨーロッパでは日本のようなライセンス制の走行枠がなく、サーキットを走る機会が限られているのだそうです。
そのためイタリアなどではファクトリーにこのシミュレーターが設置され、MotoGPライダーが実際に練習で使用しているとのこと。
つまりこのシミュレーターはアミューズメント機器ではなく、プロも活用する本格的なトレーニング機材なのです!
OVER LAP Tow Wheelはこんなお店

OVER LAPの代表の吉田社長は、全日本ロードレースチームのTeam PLUS ONEで監督を務めると共に、ご自身もJP250に参戦していらっしゃる現役ライダーでもあります。
そうした関係から、OVER LAPで手掛けるカスタム車両はレース車両を主体としており、オリジナルのフレームスライダーや、レース専用パーツも取り扱っています。また、ラッピング加工も手掛けており、今回伺った際にもラッピングの施工が成されていました。チームでのロードレース参戦車両がカワサキのZX-25Rであることから、同車両のカスタムパーツやチューニングノウハウが特に豊富です。

OVER LAP Tow Wheel
住所 :〒305-2211 埼玉県鶴ヶ島市脚折町4丁目15番25号
電話 :049-298-5146
営業時間:10:00-18:30
定休日 :月曜日、火曜日(他、レース開催日、イベント開催日は休み)
HP :https://overlap.site/
※シミュレーターの予約も上記HPから可能です。
システムについて

先にも書きましたが、国内にあるのはコチラにある3台限り(稼働は2台)!
体験車両は実車を使用することができ、実際にサーキットを走るバイクでシミュレーションを実施する事ができます。体験に行った際には、Honda CBR1000RRと、YAMAHA YZF-R6が設置されていました。

車体のブレーキにはセンサーが取り付けられており、フロント側には、フロントフォークの沈み込みを再現するアクチュエーター(車両を下側に引っ張るベルト)が設けられています。なお、車体はフロントアクスルの軸で支持されているため、‟ハンドルを切る”という動作は行う事ができません。

このシステムでは、体験者の体重などによって、車体のバンク具合を変化させるといった調整ができるようです。また、シミュレーターでのデモ画面も、データ入力により増やしていく事ができるようでした。さらに、走行後には、自分の走行データとデモ映像のデータとの比較が表示され、そのシンクロ度合いがどういったものであるのかを確認する事ができ、自身の走行状態の良し悪しを視覚的に確認する事が可能となるのです。
実際にライディングシミュレーターを体験してみた

今回は体重に合わせてYZF-R6が搭載されている側のシミュレーターで体験することになりました。
体験前に体重を聞かれますが、これはシステムを正しく作動させるためのものです。
当然、女性の方にも聞かれると思いますが、‟セクハラだ!”とか思わないようにしてくださいね(笑)
基本操作のレクチャー

車両に跨ると、吉田社長から基本操作の説明があります。
ザックリとした説明は以下のようなものです。
・アクセルを捻るとハンドルに振動が伝わる
・フロントブレーキをかけるとフロントフォークが沈む
・アクセルをオフにして体重を左右にかけると車体が傾く
・アクセルをオンにすると車体が立ち上がる
このリアルな挙動、特にフロントフォークの沈み込みや、アクセルオンによる車体の立ち上がりに、思わず
「おぉ!」
と声が出ました!
ちなみに、車体のバンク角も体験者のレベルに合わせて調整できるのだそうです。
いきなりの“洗礼”

最初は何も告げられないまま、走行映像に合わせてシミュレーターを操作させてもらいました!
しかし、またく身体がついていかずにパニック状態に!
それもそのはず!この走行映像実は、2024年MotoGPクラスチャンピオンであるホルヘ・マルティンの走行映像だったのです!初見で身体がついて行くはずがありません・・・
その後、吉田社長がシミュレーション用に撮影した走行映像に変更してもらいましたが、それでも簡単ではありませんでした。
今思えば、最初のマルティン映像は、‟サーキットは危険な場所!だからこそ基礎が大事”という吉田社長からの
‟できるもんならやってみろ”
という洗礼(サービス)だったのかもしれません(笑)。
実走行よりもハードな運動!

察しの良い方も悪い方も既にお気付きかもしれませんがこのシミュレーター、実機である車体は大きく傾きますが、前には進みません。
そのため走行風や遠心力がなく、身体に負荷される外力は重力のみとなるのです!
実際のサーキット走行では走行風で身体が冷やされ、遠心力がバンク中の身体の支持をサポートしてくれます。しかしこのシミュレーターでは、味方にしたい風や遠心力の助けが無く、頼れるのは己の筋力だけになるのです!
つまり、実際のサーキットよりも孤独な闘いになるのです!
上手い人、慣れている人は、脚で安定して身体を支える事ができるそうなのですが、私は腕に力が入ってしまい、疲労感は倍増!汗も噴き出しました。
学ぶべきは基礎となる身体の動き

実機を使ってリアルな挙動を再現しているシミュレーターとはいえ、実際の走行とは違う点もあります。
例えば慣性力が働かないため、加速や減速時のGがありません。そして、高速域からのブレーキングで感じるあの独特の恐怖感もありません。
さすがに、コーナーが迫り、コレ、曲がれるのか?といった、いわゆるヒリヒリ感を味わう事までは再現できないわけです。
しかし、再現されないからこそ得られる大きなメリットもあります。
例えば、サーキットでは走り終えた後にアドバイスをもらうことはあっても、走行中にフォームをチェックしてもらうことはできません。これに対し、シミュレーターでは、走っている最中に修正を受けることができるのです。
さらに、疲労で集中力が落ちてくると、多くの人は自分のクセが出てきますが、その瞬間を見逃さず指摘してもらえるというのも大きなメリットですね。
吉田社長によると、このシミュレーターで学んでもらいたい最も重要な動作の1つが腰の使い方なのだそう。腕に力が入ってしまうのは、腰が平行に動いていないからだそうです。私の場合は、頭や上半身を中心にして腰を回すように動かしてしまっているため、バンク時に脚で体を支えられず、結果としてハンドルにぶら下がるような姿勢となり、腕に力が入ってしまっているのだそう。
要は、速く走れないだけでなく、疲れ易いフォームという事です。
昔のバイクでは、そうした乗り方をしていた時期もあったようですが、今のバイクではそういった乗り方は通用しないとのこと。現代のバイクは構造が昔とは違うため、求められる乗り方も変わっているのだそう。バイクが進化しているのに、乗り手が昔のままでは速く走れない。シミュレーターは、その現実をはっきりと知る事ができるものでもあります。
20分がとても長い
シミュレーターの体験コースは20分・30分・60分が用意されており、もっとも選ばれているのは30分コースとのことでした。私は初回ということもあり、まずは20分を選びました。
ところがこの20分が想像以上に長い!
モニターの映像にシンクロするために集中し、身体を動かし続けることとなり、無酸素運動の筋トレに近い疲労感に襲われます。
目の前のモニターと身体を動かす事に意識を集中していると、筋疲労はどんどん加速されていきます。一方で、こうした状況の中では、筋疲労の加速と反比例するように、時間がなかなか進んでいないように感じる不思議さを味わうことができます。
実際のサーキット走行でも、疲労がたまる後半は、たった20分の走行枠が凄く長く感じる事があります。このシミュレーターでは、そういった実走行での疲労感と時間感覚のズレも味わう事ができるような気がしました。
ライディングシミュレーターはこんな人におすすめ

OVER LAPさんでは、体験だけでなく指導付きのスクールも開催しています。
そして当然ながら、ライディングに関する吉田社長の解説は本気モードです!。
GPライダーがレース中にしている動きについても、
「気合です!」や、
「カッコいいからです!」
ではなく、きちんと車両特性に基づいてロジカルに説明してくれます。
例えばGPラダーがコーナー手前で行っている内脚を出す動作!コレは、フロント荷重を抜くための動作であり、リアのトラクションを稼ぐ作用があるのだそう!
こうすることで、アクセルを開けるタイミングを早める事ができ、結果として速く走れる!そういう理論なのだそうです。
速く走るためには、“なんとなくそうしてます”ではダメ!全部に理由があるのだと教えていただいた気がします。
こうした話を聞いているとこのシミュレーターは、“速くなりたい人専用の秘密兵器”のように感じてしまいそうですが、実はむしろ逆なのだというのが吉田社長の説明でした。
つまり、サーキット初心者や、これからサーキットを走ってみたいという人にこそ、身体の使い方を覚えてほしいという事なのです!
走る前に基礎を知る。なんだか塾みたいですが、実際にロードレース活動“クラブ活動”と称していますから、シミュレーターのスクールは、“バイク塾”と言っても過言ではありません。
しかも、車体は進まないので、厳しくされだ際の逃げ場がありません(笑)
さらに、こちらのバイク熟はツーリングライダーにも効果があるといいます。
要するに、身体の使い方が分かると、普段の走りがより安全でスマートなものになるということです。
つまり、“速くなる”だけでなく“カッコよく、余裕をもって走れるようになる”ということです。
遊び半分で行くと最初はギャップを感じるかもしれませんが、マジメに体験してみると帰る頃には、“なるほど、そういうことか”と妙に納得している自分がいる。
そんな、ちょっとスパルタで、でも妙に説得力のある場所だからこそ、真剣に基礎を学びたい人にお勧めです!
まとめ(体験後の印象、後日談)

今回のシミュレーター体験を通して、普段“普通に”バイクに乗っているつもりの私が、いかに身体を使えていなかったかを思い知らされました。バイクに乗れることと、速く・上手く走れることはまったくの別物でした。解っているつもりで解っていなかった部分を身体で感じ取る事ができました。
そしてその代償は翌日にやってきました。内転筋と大殿筋、さらに名前もよく分からないあちこちの筋肉が見事に筋肉痛!階段の上り下りがツライ!そんな学生時代の部活動を思い出すような体験から、改めて、バイクを操るには全身を使うのだという事を実感しました。
第一印象では職人の雰囲気を感じた吉田社長も、体験後に汗だくのまま質問してみると、とても丁寧に答えてくれる方でした。皆の練習のためにイタリアから高価なシミュレーターを輸入するという行動力。アニキ肌というか、本気で取り組む人には本気で向き合ってくれるタイプなのだと感じました。当然ですが、1度の体験で上達できるわけではありません。しっかり上手くなりたかったら継続的に練習する!コレが基本です!
皆さんも、是非体験から!そしてそのままバイク塾に入門してみてはいかがでしょうか?
ちなみに、なるべく伝わるように書いたつもりなのですが、それでも想像以上に疲れます。しっかり汗もかきます。このため、タオルと飲み物は必須装備!着替えを持参するとより安心かもしれません。
投稿者プロフィール
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BMW F900XRとDucati MonsterS2Rでチョイノリからロングツーリング、サーキット走行まで楽しむリターンライダー。
リターン後のツーリングは首都圏内での日帰りをメインとして、美味しい物や良い景色を堪能している。
ご当地"グルメ調査隊"と称してマスツーリングの企画運営なども手掛けることから、バイクの様々な楽しみ方を伝えて行く事を目標としている。
若い頃は、日帰りで埼玉-青森間を往復したことがある、 "自称"やれば出来る男。






























