元バイク屋のフォアグラさんです、こんにちは。
さて今回は、中古車を選ぶ際に皆さんがとても気にする一つの指標、走行距離について解説をしていきたいと思います。
自分は元バイク屋という経験があるので、おそらく多くの人の考えとは違うこと、違う視点からのことをお伝えできるかと思いますので、ぜひ最後までご覧いただき、次のバイク選びや今後のバイクライフにお役立ていただければと思います。
走行距離の考え方
皆さん、根本的な質問ですが、同じバイクで同じ年式と色で、同じくらいの外装の痛み方、どちらもフルノーマルで価格も全く同じ、そういった場合に走行距離が少ないバイクと多いバイクのどちらを買いますか?
聞くまでもなく、全員が走行距離が少ないバイクを選ぶことでしょう。
ではなぜ、走行距離が少ないバイクが良いのでしょうか?
それは走った距離が少なければトラブルが少ないとか、まだまだ乗れるのではないかとか、そういった考えによるところかと思います。ですので当然、走行距離の少ない方が価格が高くなる傾向にあります。その走行距離の考え方の根幹である、距離が少ないバイクはトラブルが少ない、長持ちをするということも大筋では正しいと思います。しかし必ずしもそうではありません。
このような場合、もちろん答えなんてないのです。けれども自分の過去の経験上、後者のようにちゃんとメンテナンスされたバイクであれば、安心して次のお客さんにお渡しすることができます。
逆に走行距離が少なくても、前者のように乗りっぱなしにされていた場合は、次のお客さんは距離も少なくてトラブルが少ないことを期待して買ったのに、意外とトラブルが続いてクレームになってしまうというようなこともありえます。
距離が少なくても雨にさらされてサビが出ていたり、逆に距離が多くても大事に屋内保管されている場合もあります。
またバイクというのは、定期的に走らせる方が良いコンディションを維持できます。流れる水は腐らないように、バイクも走ることで金属同士のキシミが取れたり、錆びつきにくくなったりもします。
ここで覚えておいて欲しいことは、走行距離というものは、あくまでそのバイクが今まで走ってきた距離であって、それ以上のことでもそれ以下のことでもない。決してバイクのコンディションを数値化したものではないということなのです。
「そんなことは当たり前じゃないか」と思われる方が多いでしょうけれども、実際にバイクを買うとなると、走行距離=車両のコンディションであるかのように考えてしまう人は、メチャクチャ多いのですよ。もちろん一つの目安としては参考にすべき大事な数値ではあるのですけれども、あくまで目安でしかないということを再確認してください。
自分もよく「ドラッグスター400が3万km40万円で大丈夫ですか?安いですか?」ということを質問されるのですけれども、そんなこと「わかりません」としか言いようがありません。前のオーナーがどんな扱い方をしていたかもわかりませんし、現車も見ていないのに、高いか安いかの判断はできません。買う店のアフターサービスについてもわかりません。
とはいえ、このように突き放してしまっては、元も子もありません。ですので、次はこの走行距離を正しく解釈できるように、実は車種ごとに違う走行距離の考え方というものについて解説をしていきます。
走行距離を気にした方がいいバイク、あまり気にする必要のないバイク
実は車種によって、同じ走行距離の個体であっても、受けているダメージが違います。
例えば250ccの4気筒スポーツ。これはとても走行距離を気にした方がいいバイク です。逆に1300ccのアメリカンバイク。これは言うほど走行距離を気にしなくてもいいバイクです。
何が違うのか?わかりやすいのはまずその大きさです。
当然といえば当然なのですが、部品というものは一つ一つが大きければ大きいほど頑丈になります。軽自動車とトラックでは、当然トラックの方が長持ちしますよね。ですので単純に大きいものの方が長持ちします。
さらにバイクに関して言うと、大型のモデルには品質そのものが高いパーツが使われていることが多いのです。そもそも新車の定価が高いので、より質の高いパーツを使用することができるというのは必然のことですよね。
また、長持ちするかどうかというのは、パーツの大きさや品質のみによって決まるものではありません。常用回転域というのも実は大切な要素なのです。
例えば同じ100km/hを出すのに、250cc4気筒は1万回転近くまで回さなければならないのに対し、1300ccの大型アメリカンは3000回転以下で達してしまったりもします。そしてこの2台が一緒に高速道路で、同じ300kmという距離を同じ100km/hで巡行していたとしても、250cc4気筒の方はアメリカンに対して3倍以上の数だけピストンが上下し、クランクシャフトが回転しているという計算になるわけですね。それでいて1つあたりのピストンの大きさは数分の1です。
しかしながらこの2台が店に並ぶと、同じ走行距離のバイクになってしまうわけです。ここまでの話を聞いて理解したあなただったら、傷み方が全然違うことは容易に想像できますよね?
さらに言うと250cc以下のバイクは車検がなく、定期点検もロクに受けていない個体というのが少なくありません。しかも前のオーナーはバイク初心者である可能性も高いです。大型バイクであれば、前のオーナーがある程度バイクに対してリテラシーの高い人である可能性が高いです。
もちろんこれは確率論の話であって、一概に言えることではありませんけれども、250ccは初めてのバイクに選ばれやすく、大型バイクはある程度経験を積んだ方が選ぶ可能性が高いというだけのことで、差別的な意図は全くありませんから、その点 は誤解しないでくださいね。
さて少しずつ走行距離についての考え方・見え方が変わってきたのではないですか?
単純に5万kmだから怖いとか、まだ2万kmだから安心して乗れるといった考え方から変わってきているはずです。
過走行車をおすすめできる人、できない人
最後に、走行距離の多いバイクを買っても大丈夫かどうかということですが、これは自身の事情や使い方、スキルのレベルによる所だけではなく、お店選びもとても大事な要素です。
極端な話をすると、バイクはフレーム以外のパーツは交換できるので、走行距離が例えどんなに多かったとしても、すべてのパーツを新品に入れ替えてしまえば、これはもう新車とかわりません。
つまり距離を多く走ったことによって、ヘタってきたり要交換のパーツをきちんと交換し、整備をしっかり行って、保証付きで売る店がどうかということは、走行距離の多いバイクを買う場合は非常に大事な要素です。
ですので現状販売や、どこまでパーツ交換が行われていたのかはっきりしない個人売買で過走行車を買うというのは、特におすすめできません。もちろん距離が少ないバイクであってもそのような買い方はあまりお勧めできませんけれども、特に距離の多い車両はリスキーと言えるでしょう。
ちなみに自分は過去7万kmオーバーの個体を購入した経験がありますが、しっかりと整備履歴を見せてもらい、保証付きで購入しています。その後8万5,000kmほどまで走りましたが、トラブルは一切ありませんでした。
いかにお店選びが大事かっていうことがわかりますよね。
そしてお店選びとは別に、ライダー側にフォーカスを当てて考えてみましょう。
価格の安さが魅力的な過走行車は、店側からすると非常に売りにくいので、仕入れ価格(=買取価格)がかなり抑えられている場合が多いのです。実は距離が少なくて価格が高いバイクよりも、利益率は高いケースというのが多いと思いますね。
つまり過走行車は買う時も安ければ、売る時はもっと安いと言えます。
ではリセールバリューの高い、距離の少ない個体を多少高くても買った方がいいのかというと、一概にそうとも言えません。
例えばあなたが年間1万kmを走るライダーだとします。購入時の走行距離がまだ1万kmだったとしても、5年間も所有すれば6万km。それはもう立派な過走行車で、まともな値段はつきません。
逆に最初から5万kmの個体を購入し、10万kmまで伸ばしても、そもそも購入価格が高くない上、1万kmのものが6万kmに増えた時のような下落幅ではありません。
そう、買った時は価値があるものでも、当然使用していくうちに価値は下がり、その下落幅は走行距離が少なかったものの方が大きくなるということです。
ですので、きちんと整備されている個体であるということを前提とすれば、距離を多く走る人は、最初から距離の多い個体を選んでしまうというのも、大いにアリなのです。
距離を多く走る人はバイク経験も豊富な場合が多く、多少のトラブルであれば自身で対処できたりもしますよね。もちろんトラブルが出る可能性は、距離が多い個体の方がリスクは高いはずですが、総合的に考えると得であるとも考えられます。
逆に年間1,000kmしか走らない人であれば、5年後10年後でもいい値段がつくでしょう。
まとめ
あくまで金銭的な価値という点に主軸を置いて考えるのならば、バイクに詳しく距離を多く乗る人は、過走行車を狙ってみるというのも正解の1つなのかなと思います。もちろん、きちんと整備された状態の個体であることが大前提ですけどね。
この記事は下記の動画でも詳しく解説していますので、こちらも是非ご視聴ください。
今回の話で「走行距離の考え方が少し変わったよ」という方が居らっしゃれば嬉しいですね。
それでは今回も最後までご視聴いただきありがとうございました。
投稿者プロフィール
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元バイク屋のYouTuber。
バイクライフに役立つ情報を毎週配信。
メカの話やバイク購入アドバイスはもちろん、用品レビューやバイク屋裏話まで、バイク乗りなら誰もが気になるテーマばかり。
ちなみに中身はアラフォーのおっさん。
好物はサッポロ黒ラベルとキャベツ太郎だが、子どもができて以来、ふるさと納税で貰った無糖レモンサワーで節約している。
最近、血糖値と血圧を気にしているらしい。
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